「さくらのVPS」ユーザーイベントを開催~開発コンセプトは、性能・安定性・低コスト


 さくらインターネットは5月26日、仮想専用サーバー(VPS)サービス「さくらのVPS」の利用者を対象にユーザーイベント「第1回さくらの夕べ」を開催した。契約数が15000件を超えたというリリースから2日後のことだ。さくらインターネット社長の田中氏は、集まったユーザー約50名を前に、和気あいあいとした雰囲気の中でサービスの内幕がユーモアをまじえて語られた。

さくらインターネット株式会社 代表取締役社長 田中邦裕氏

 さくらインターネット株式会社 代表取締役社長の田中邦裕氏は、「改めて、さくらのVPSについて」と題し、サービス開始にまつわるエピソードやコンセプトなどを語った。

 田中氏はまず、2009年5月に「VPSは劣化専用サーバ」と語ったWeb記事と、その1年4か月後にさくらのVPSを開始したときの記事を続けてスクリーンに映し、「えらい怒られました」と笑いを取ったあと、サービスを開始した要因を紹介した。特に、自身が個人で開発したサービス「とあるさくらのジェネレータ」が人気になりAmazon EC2に移した事件については、「第1回AWS User Group Japan勉強会」でゲストトークや乾杯の音頭までやったことなどを話して笑いを誘った。

 さくらのVPSの開発コンセプトについては、性能・安定性・低コストを挙げた。そして、「すべてを追い求めると大変。高機能や拡張性については、コストや安定性に響くためにひとまず置いておいている」と話し、特に拡張性については、仮想マシンのサイズを決めて高い稼働率で動かすことで低価格を実現していると説明した。なお、高機能や拡張性については2011年の夏から秋にかけて予定しているIaaSサービス「さくらのクラウド」(仮称)で補完する、との説明とともに、自ら「さくらのクラウド」を実際のコントロールパネル(α版)で操作してみせる一幕もあった。

 また、プランごとのユーザーの割合も公表し、4月以降で見ると半分以上が上位プランを選んでいることなどが紹介された。会場でも半数程度が上位プランを利用しており、その理由として「Ruby on Railsを使っているのでメモリを食う」と答えるユーザーもいた。

「VPSは劣化専用サーバ」と語った(写真左)あと1年4カ月後にさくらのVPSを開始(写真右)したことを紹介して笑いを取る田中氏
性能・安定性・低コストを実現して、機能と拡張性はひとまず置いておくというコンセプト4月以降で見ると、上位プランの利用者が半分強
さくらインターネット株式会社 開発第一チーム マネージャー 加藤直人氏

 「開発者が語るここだけの話」と題したトークは、開発第一チーム マネージャーの加藤直人氏に、新規事業室の横田真俊氏が質問する形で進められた。

 なぜ仮想化技術にKVMを選んだかについては、実サーバーに近い環境にこだわったこととFreeBSDが動く必要があったことを加藤氏は理由に挙げた。また、パフォーマンスについては、メモリのオーバーコミット(仮想マシンの割り当てメモリの合計が実メモリ容量以上になること)を避けて70~80%に抑えていることなども紹介した。

 カスタムOSの人気については、インストール回数はCentOSの32bit版が一番多く、続いてUbuntuの64bit版が多いと紹介し、ただしインストール全体で最も多いのは標準であるCentOS 64bit版の再インストールだと付け足した。また、利用者のWebブラウザは、Firefoxが40%でChromeが30%であり、一般のシェアから比べるとパワーユーザーが多いことも紹介された。

 そのほか、予定されている機能として、ファイアーウォール、IPv6対応、カスタムOSのバージョンアップ、システムのバックアップ機能の4つが説明された。

 トークは参加者も巻き込む形で進められた。参加者からの要望としては、コントロールパネルの機能強化としてDNSの設定機能やiOS対応などが挙げられ、聴衆側に回った田中氏がiPadで使えるVNCコンソールの要望を挙げたところ、参加者からHTMLで表示するVNCクライアントを作っているとの声もあった。参加者の中には、VPSを130台契約してActiveDirectoryで管理しているユーザーもいて、「契約の確認のハガキが130枚届いて大変」と笑いながら、コントロールパネルのAPIを要望として挙げていた。

カスタムOSのインストール回数。CentOSの32bit版が一番多く、続いてUbuntuの64bit版が多い予定されている機能

 トーク後の懇親会では、田中氏が「ネットでは、専用サーバーとVPSが競合するから本気を出してないんじゃないかと言われることもありますが、両方ともガチでやってます」と挨拶し、拍手を浴びた。


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(高橋 正和)

2011/5/30 06:00