米Adobe、モバイル版「Flash Player」の開発を中止、今後はHTML5に注力


 米Adobeは9日、同社の新戦略とリストラクチャリングの一環として、携帯端末ブラウザー向けFlash Playerの新規開発を中止すると発表した。Adobeでは今後、FlashはPCブラウザーとモバイルアプリの用途にフォーカスするとともに、HTML5に積極的に取り組んでいくとしている。

 携帯端末向けのFlash Playerに関しては、米Appleのスティーブ・ジョブズ氏がその技術水準を厳しく批判し、HTML5を推進。ユーザーからの再三の要望に対してもiPhone/iPadで決してサポートしなかったことから問題が注目されるようになった。その一方で、Google主導のAndroidはFlashを採用し、Flashの有無がスマートフォンの差別化要因のひとつにもなっている。

 今回、Adobeはジョブズ氏の批判を認めた格好で、Flash Playerは携帯端末での要求を満たすことができず、モバイルブラウザーの市場からは去ることになった。

 発表によると、現在予定されている「Flash Player 11.1 for Android」「Flash Player 11.1 for Blackberry Playbook」のリリースを最後に、今後新たな携帯端末向けチップセット、ブラウザー、OS向けにFlash Playerを開発することはないとしている。

 なお、すでに公開済みのFlash Playerに対しては、必要な重大バグの修正、セキュリティーアップデートを引き続き提供していく。また、ソースコードのライセンシーが独自実装を開発してリリースすることは許可するとしている。

 Adobeは今後、Flash技術をデスクトップPC向けに提供していく。特に高度なゲームとプレミアムビデオが目標分野となる。既にFlash Player 11では、ハードウエアアクセラレーションによる3Dグラフィックスによってゲーム端末品質のゲームを実現したほか、著作権保護機能を活用したHD動画再生機能等の様々な新機能を提供してきている。また既にFlash Player 12の開発にも着手している。こうした分野では、Flashはまだ業界にインパクトを与える余地があるとしている。

 携帯端末に関しては、FlashによるアプリをAdobe AIRによってラッピングし、主要なスマートフォンアプリマーケットすべてに対して提供できるようにする手段を提供するとしている。この分野でもFlash技術者は技術を生かす余地がある。

 Adobeは今後、HTML5に注力していく。そのために、国際標準化団体のW3Cや、WebKitプロジェクトとも連携しながら、Flashと同等の機能をHTML5でできるだけ早く実現できるよう協力していきたい考えだ。この分野では、Google、Apple、Microsoft、RIMとも協力していくとしている。


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(青木 大我 taiga@scientist.com)

2011/11/10 11:42