ニコ動会員2万人、無所属ランナー藤原新選手のスポンサーに、有料会費を充当


ロンドン五輪男子マラソン代表の藤原新選手

 ロンドン五輪男子マラソン代表の藤原新選手が16日、動画サイト「ニコニコ動画(原宿)」の有料プレミアム会員に向けて、自身のスポンサーの募集を開始した。賛同したユーザーの月額会費(525円)1カ月分が、藤原選手への協賛金に充当される。募集は先着2万人。

 同日、ニコニコ動画に特設ページ「ニコニコユーザーのみなさま 私、藤原新のスポンサーになってください!!」が開設された。プレミアム会員はログインの上、同ページある「スポンサーになる!」ボタンをクリックすればよい。

 なお、スポンサーになっても追加費用はかからず、ニコニコ動画のプレミアムサービスもそのまま利用できる。スポンサーとなった会員は今後、2万人が集まった時点で協賛者リストとしてユーザー名がサイト上に掲示される予定。


特設ページ「ニコニコユーザーのみなさま 私、藤原新のスポンサーになってください!!」

 藤原選手は3月30日付で、自身の広報・宣伝・営業活動や権利関係のマネジメントなどを行う「株式会社藤原新」を設立し、自ら代表取締役社長に就いたが、未だに無収入のまま。企業スポンサーを探しつつも、広く一般の支援によって五輪で結果を残したいとの思いから、ニコニコ動画に協力を要請したという。

 一方、株式会社ドワンゴ(ニコニコ動画)、株式会社エムアップ、株式会社クロスブレイス、株式会社うぼんの4社は、藤原選手をバックアップする有志組織「アラタ・プロジェクト」を結成。株式会社藤原新より同選手の営業・広報・マネジメントなどの全業務の委託を受け、藤原選手をバックアップすることにした。

 まずはロンドン五輪に向け、ニコニコ動画と連携。ユーザーによるスポンサードのほか、藤原選手の情報を発信するニコニコ生放送の特別番組も制作する。さらに中・長期的には、「自ら走ることにより、多くの人たちに勇気や感動を与えたい」という藤原選手の活動をサポートしていく。

 なお、藤原選手は現在もフリーであり、アラタ・プロジェクトおよび有志企業の所属選手というわけではない。引き続き企業スポンサーを募集するとしている。

ロンドンに向けたワクワクドキドキ感や笑いのツボを共有

 16日には、藤原選手とアラタ・プロジェクトによる会見が都内で開かれ、ニコニコ動画ユーザーからスポンサーを募集するに至った経緯などが説明された。

(向かって右から)アラタ・プロジェクトの事務局長を務める株式会社うぼん執行役員の小山真氏、藤原新選手、株式会社ドワンゴ代表取締役社長の小林宏氏、株式会社ニワンゴ代表取締役社長の杉本誠司氏

 アラタ・プロジェクトの事務局長を務める株式会社うぼん執行役員の小山真氏によると、藤原選手はもともとニコニコ動画の会員IDを持つユーザーの1人だったという。そういった縁もあり、五輪までの活動費を出資してくれるスポンサーをニコニコ動画を使って募集できないかと思い、本人が直接、ドワンゴに頼み込んだ。

 これを受けてドワンゴでは、藤原選手を応援したいニコニコ動画のユーザーが簡単にスポンサーになることができるということで、賛同する会員の月額会費を協賛金に充当する今回の仕組みを考案したという。

 ニコニコ動画では今後、「ニコニコチャンネル」内に「新プロジェクトチャンネル」を設置し、海外からの生放送や動画投稿なども実施。応援してくれるニコニコ動画ユーザーらとのコミュニケーションをとっていく。

 藤原選手はニコニコ動画の特徴として、「率直に、リアルタイムに反響が見える」ことによる「ドキドキ感」を挙げ、「ただ単に観戦するのではなく、そのドキドキ感やワクワク感を一緒に体験できるような伝え方を新プロジェクトシャンネルを通じてできれば、いちアスリートとして本望」とした。また、「見せたい自分というか、僕は僕の笑いのとり方がある。そういうのも大事にしていけるのが、ニコニコ動画だと思う。ユーザーのみなさんに、私の笑いのツボを共有できたらうれしい」とも語った。

会見は生中継され、ユーザーコメントもリアルタイムに登壇者に映し出された

 企業協賛ではなく、広く一般からの協賛を選んだことについて小山氏は、「藤原選手が市民ランナーとしてこれまでやってきた経緯や選手としての信条・ポリシーを鑑みた時、1つの所属先に入ってその所属選手としてやっていくという既定のやり方よりも、広く一般の人のサポート・声援のもとでがんばっていきたいという思いが強くあったのが大きな理由」と説明。「とにかく、ニコニコ動画のユーザーと一緒になって、藤原選手のロンドンへ向かう気持ちを共有していきたい」とした。

 今回のような方法でマラソンランナーがスポンサーを募集するのは、藤原選手が知る限り他に例がないのではないかとし、「日本のアスリートのあり方を変える可能性がある。私も無職・無収入の中でがんばってきたが、同じ境遇にあるアスリートはたくさんいる。そういうアスリートへのエールになればと思い、まず私が旗振り役となり、藤原新プロジェクトチャンネルを楽しく、見てドキドキワクワクするものにしていく。8月12日は日の丸を閉会式の会場に掲げられるような走り、トレーニングをしていく覚悟」とした。

 スポンサー募集に続く今後のニコニコ動画における取り組みの詳細は、4月28日・29日に幕張メッセで開催されるイベント「ニコニコ超会議」および「ニコニコ超パーティー」で発表する予定だ。同パーティーの初日には藤原選手も登場。「すでに厳しいトレーニングに入っており、なかなかよいボディが出来上がっている。それをお披露目して、ちょっと走ってみたい」(藤原選手)。

報道陣の注文に対し、にこやかにポーズをとる藤原選手




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(永沢 茂)

2012/4/16 15:26