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各国でIPv6の導入が着実に進む、IPv6 Summit 2013開催
(2013/1/29 17:49)
IPv6普及・高度化推進協議会と財団法人インターネット協会IPv6ディプロイメント委員会の主催による、IPv6を取り巻く現状を共有し、今後のインターネットを考えるイベント「IPv6 Summit 2013」が29日、神奈川県横浜市日吉の慶應義塾協生館で開催された。
午前中のプログラムでは、社団法人日本ネットワークインフォメーションセンター(JPNIC)の佐藤晋氏が、IPv4アドレスの枯渇状況とIPv6の普及状況を紹介した。
現在インターネットで利用されているIPv4アドレスは、インターネット資源を管理するIANA(Internet Assigned Numbers Authority)の中央在庫が2011年2月に枯渇。IANAからアジア太平洋地域のAPNICに割り当てられたIPv4アドレスの在庫も2011年4月に枯渇しており、APNICからの割り当てを受けてIPv4アドレスの分配を行なってきたJPNICも、通常のIPv4アドレス割り当て業務を終了している。
佐藤氏は、APNICにはIANAから最後に分配されたIPv4アドレスの/8ブロック(約1678万個)がまだ残っているため、「原則として1組織につき1回限り、最大/22(1024個)まで」という条件ではあるものの、まだ新規のIPv4アドレス分配は受けられると説明。また、別の方法としては、他の組織からIPv4アドレスを譲ってもらう方法があるとして、IPv4アドレス移転の仕組みについて説明した。
JPNICでは、2011年8月にIPv4アドレスの移転手続きの受け付けを開始。以前は会社合併や事業譲渡などの際に特別な措置としてIPv4アドレスのWHOIS登録情報(登録名義)を書き換えてきたが、現在は移転元と移転先の合意確認のみで移転手続きが行われるようになっている。IPv4アドレスの移転に際して、金銭面などの取引条件などについてJPNICは一切関与しない形で、移転手続きの受け付け開始からこれまでに、計64件の移転が行われている。
佐藤氏は、海外でのIPv4アドレスの移転状況についても紹介。2010年2月に制度が開始されたAPNICではこれまでに計94件(APNICメンバー内での移転)、2009年6月に開始された北米地域のARINではこれまでに計38件の移転となっており、「こうしてみると日本の移転状況はそれなりに多い方だと思う」と説明。ARINからAPNICへの移転もこれまでに4件行われており、JPNICでも他地域とのアドレスの移転について検討中だが、各地域のルールに合わせる形で、JPNIC内での移転とは異なる制度、手続きになる可能性があるとした。
また、使用していないIPv4アドレスを返却して再利用する取り組みも進められているが、返却されたアドレスは現在残っているIPv4アドレスの在庫に積まれる形となっているため、もっと有効活用する手段はないかということで、現在議論が進められているとした。
IPv6アドレスポリシーの現状については、現状でIPv4アドレスの割り当てを受けている組織には、ほぼ自動的にIPv6アドレスの分配を受けられるようになっていると説明。また、現在では小規模な接続組織に対してもプロバイダー非依存アドレス(PIアドレス)の分配が可能となっており、JPNICから直接/48アドレスの割り当てが受けられ、従来必要とされてきたマルチホーム接続の要件も廃止される予定であることを紹介した。
IPv6アドレスの分配状況については、世界5地域の地域インターネットレジストリ(RIR)が現在保有するIPv6アドレスの在庫のうち、割り当て済みとなっている割合を紹介。APNICが3.8%、ARINが1.9%、欧州地域のRIPC NCCが4.0%、中南米地域のLACNICが6.8%、アフリカ地域のAfriNICが0.4%となっている。LACNICの割合が高いのは「ブラジルのあるISPにIPv6アドレスが/16で分配されたため」で、それ以外も全体としては順調にIPv6アドレスの割り当てが増えているとした。
財団法人インターネット協会IPv6ディプロイメント委員会のメンバーでNTTネットワーク基盤技術研究所の藤崎知宏氏は、主にアジア地域のIPv6の動向を説明。オーストラリアでは各州や連邦政府がITシステムへのIPv6導入を進めたほか、ISPの顧客へのIPv6サービス提供も進展。ニュージーランドでもISPなどでIPv6対応が進んでいるが、コンシューマーへの提供は遅れているという。
台湾では主要ISPが2007年からIPv6トンネルサービスを提供しており、最大手のHiNetは2011年からIPv6/IPv4デュアルスタックサービスを提供。香港では6つのビジネスユーザー向けISPが限定的にIPv6サービスを提供しているが、コンシューマー向けISPではトライアルを実施している段階にとどまっているという。
藤崎氏はこのほか、RIPE NCCが欧州各国のIPv6対応状況をレイティングしているサイトや、世界各国のIPv6普及状況を公開しているCiscoのサイトを紹介。各国ごとの差は大きいが、コンシューマーにIPv6サービスを提供している国も徐々に増えてきているなど、IPv6の導入は着実に進んでいると説明。また、各種データでは対応の割合としては日本はトップクラスだが、一般ユーザーへのさらなる浸透が必要だとした。