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税務調査が急増中! 税務署が狙う個人事業主の条件とは?

プログラマー/システムエンジニアは申告漏れ金額が多かった!?

 筆者が7月になると思い出すのは平成29年(2017年)7月の税務調査。おそらく一生に一度の“記憶に残る”体験だった。個人事業主など確定申告をしている人には、なんとも嫌な響きを持つ税務調査。その税務調査を受ける人が急増している。

 一般的に令和〇〇年度は4月から翌年3月のことだが、税務署は7月から翌年6月を事務年度としている。令和6事務年度は令和6年(2024年)7月から令和7年(2025年)6月末。今、まさに新しい事務年度が始まったばかりだ。

 サラリーマンや個人事業主の所得税は1月~12月が対象期間で2~3月に確定申告を行う。法人の決算日は任意となるが、3月末決算の企業は5月末までに法人税を申告する。この辺りのスケジュールを考慮して事務年度が設定されたと思われる。

税務調査の件数は急増中

 国税庁は毎年11月に「所得税及び消費税調査等の状況」というレポートを公開している。レポートには税務調査を行った件数、申告漏れの件数、積極的に調査している業種、申告漏れ所得金額が上位の業種などが記載されている。昨年11月に公開された最新版の「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」を見てみよう。

 まずは税務調査の実地調査件数、申告漏れ件数、申告漏れ所得金額。

税務調査の実地調査件数・申告漏れ件数・申告漏れ所得金額の事務年度別推移と予測
税務調査の実地調査件数・申告漏れ件数・申告漏れ所得金額の事務年度別推移と予測

 最初のグラフは昨年7月に筆者が作成した、平成28事務年度から令和3事務年度の実数と令和4事務年度の筆者予測。左軸が実地調査(青線)と申告漏れ(オレンジ線)の件数、右軸が申告漏れ所得金額(棒グラフ)となっている。

 令和4事務年度の筆者予測は実地調査件数4万6000件、申告漏れ件数3万8000件、申告漏れ所得金額5000億円。これに対し昨年11月に公表された実数は実地調査件数4万6306件(+0.7%)、申告漏れ件数3万8421件(+1.1%)、申告漏れ所得金額5594億円(+11.9%)。実地調査件数と申告漏れ件数は、ほぼ筆者の予測どおりとなった。コロナ禍で減少した税務調査の件数は急増中だ。

 ということで、その次のグラフは平成28事務年度から令和4事務年度の実数に、この6月に終わったばかりの令和5事務年度の筆者予測を加えたもの。おそらく過去最高だった平成30事務年度と同等の税務調査件数まで急増、7月から始まった令和6事務年度は過去最高の件数・金額が予想される。

 税務調査という言葉の響きは、個人事業主や企業経営者にとっては好ましくない印象がある。だが、多くのサラリーマンや正しく確定申告をしている個人事業主や経営者にとっては、けして悪いことではない。令和4事務年度の税務調査による追徴税額が1015億円。国の税収が増えることは、多くの国民にとって望ましいことだ。一部の不正を行っている人以外は、税務調査は巡り巡って皆さんの生活を良くする活動と理解しよう。

税務調査を受けやすい個人事業主の条件は?

 税務調査を受ける人は1%以下。ランダムに対象者を選ぶなら100人に1人以下、100年に1回以下となるが、実際はランダムではなく、“怪しい人”を選んで税務調査は行われている。以下の6項目に該当する人は、税務調査の対象となりやすいと言われている。

  ①確定申告をしていない無申告の人
  ②申告漏れが多い業種を営む人
  ③売上がぎりぎり1000万円弱の人
  ④経費が多すぎる人、不審な点がある人
  ⑤現金商売を行っている人
  ⑥新分野のビジネスを行っている人

 順番に説明を加えよう

①確定申告をしていない無申告の人

 収入があるのに確定申告をしない人には、意図的に申告をしない人と、意図せず(理解せず)申告をしない人がいる。ちなみにサラリーマン時代の筆者は後者だった。20年ほど前、サラリーマンをしながら副業でケータイWatchデジカメWatchPC Watchなどで原稿を書いていた。

 記憶は薄いが、突然、税務署から封書が届き、振込用紙に記載された金額を納税することとなった。おそらく出版社側の支払い先が、正しく収入を申告しているか調べたら、筆者の無申告がバレた、ということだと思われる。サラリーマン時代の筆者は税の知識は皆無に等しく、意図せず(何も考えず)無申告となった。悪意を持って「バレないだろう」と意図的に申告をしない人も、取引先の法人が税務調査を受けると簡単にバレてしまうので注意しよう。

②申告漏れが多い業種を営む人

 「所得税及び消費税調査等の状況」のレポートには“1件当たりの申告漏れ金額が高額な上位10業種”と、“過去10年の上位5位業種”が掲載されている。

1件当たりの申告漏れ金額が高額だった上位5業種
過去10年、1件当たりの申告漏れ金額が高額だった上位5業種(「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」から抜粋し、「風俗業」「キャバレー(キャバクラ)」をピンク色、「経営コンサルタント」を青色、「プログラマー」「システムエンジニア」を緑色に色分け加工)

 平成25事務年度から平成30事務年度まで6年間は「風俗業」と「キャバレー(キャバクラ)」がトップ2を分け合っている。令和になり(新型コロナウイルス感染症の影響?)長年続いた不動のワンツー体制は崩れ、令和3事務年度以降は上位10業種から姿を消している。

 令和3・令和4事務年度と2年連続1位の座を獲得したのは「経営コンサルタント」。過去5年で4回ランクインしている。INTERNET Watchの読者に関係しそうな業種では「プログラマー」と「システムエンジニア」がランクインしている。これらの業種を営む人は税務調査の対象となりやすい。

③売り上げがギリギリ1000万円弱の人

 売り上げが1000万円を超えると、2年後に消費税の課税事業者となる。従来は売り上げ1000万円以下をキープすれば消費税の免税事業者のまま、フリーランスであれば50万円ほどの消費税の納税を回避できた。確定申告の際に、うっかり売り上げが1000万円を超えたとしよう。例えば売り上げが1005万円となった年に、12月分の売り上げから10万円を1月分の売り上げにずらすと、その年の売り上げは995万円となり、2年後は消費税の免税事業者にとどまることができる。こうした不正を思いつくのは個人事業主も税務署員も同じ。取引先とのやり取りやお金の動きを確認すればすぐにバレる。よって売り上げがギリギリ1000万円弱の免税事業者の人は税務調査の対象となりやすい。

 ただし、インボイス制度により、売り上げ1000万円以下の人でも、主な取引先が法人であればインボイス制度に登録し「適格請求書発行事業者」になった人は多い。これにより消費税の課税事業者になった人は、売り上げがギリギリ1000万円弱でも税務調査の対象とはならない。

④経費が多すぎる人、不審な点がある人

 経費を増やすことで課税所得が減り、納税額を減らすことができる。仕事に必要な支払いは、漏れなく経費に計上したいが、内容によって経費なのかプライベートな支出なのか曖昧なものがある。こうした経費はグレーゾーンで“解釈の違い”がある。

 行っていない出張の交通費を計上するなど、悪意を持って経費を水増しする人もいる。旅費交通費、接待交際費などが、同業他社と比べ明らかに経費の多い人は税務調査の対象となりやすい。

⑤現金商売を行っている人

 売り上げを少なく見せることで課税所得が減り、納税額を減らすことができる。法人取り引きは、入出金の銀行口座の履歴が残るし、取引先法人が税務調査を受けると売り上げの額は明白となるため「少なく見せる」ことはできない。

 個人相手の現金商売は、売り上げを少なく見せることが容易だ。100個売れたお弁当の数を80個と記録すれば、売り上げは2割減ることとなる。おそらく税務調査の対象となりやすいのは“行列のできる人気店”など、客数が多い割に売り上げが少ないとターゲットとなりそうだ。

⑥新分野のビジネスを行っている人

 「所得税及び消費税調査等の状況」のレポートの一文に「インターネット上のプラットフォームを介して行うシェアリングエコノミー等新分野の経済活動(注)に係る取引や暗号資産(仮想通貨)等の取引を行っている個人は、積極的に調査を実施しています。※注:シェアリングエコノミー等新分野の経済活動とは、シェアリングビジネス・サービス、ネット広告(アフィリエイト等)、デジタルコンテンツ、ネット通販、ネットオークションその他新たな経済活動のことをいいます」と表記されている。

 前述のように法人取り引き=B to Bより個人向け現金取り引き=B to Cは事業の実態を誤魔化しやすい。ネットオークションなどC to Cはよりいっそう実態が把握しづらい。また、仮想通貨などで“億り人”と呼ばれる億単位の資産を築く投資家も、新分野として調査の対象となりやすい。こうした事業を営む人は注意しよう。

インターネット取引を行っている個人に対する調査状況
「令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況」から抜粋

 筆者は2017年7月に税務調査を受けたが、この6項目のどれにもあたらない。筆者の場合は以下の理由だったと思っている。

  ・売り上げが急増した
  ・海外取り引きにより消費税の還付申告が行われた

 会計ソフトメーカーの役員や知り合いのライターさんから「奥川さんが税務調査されたのは税金の記事を書いているから」と指摘を受けたが、真実は不明だ。

 詳しくは税務調査の体験記として掲載した関連記事『税務調査は個人事業主の所にもやって来る! 税務署から電話が来てから追徴課税を納めるまで――実録:ある個人事業主の「初めての税務調査」体験記』を読んでいただきたい。ネットで見つかる個人事業主の税務調査の多くは、税理士の人がクライアントである個人事業主の税務調査をレポートしたもの。調査を受けた個人事業主本人が執筆したものは貴重な存在だと思われる。

税務調査は個人事業主の所にもやって来る! 税務署から電話が来てから追徴課税を納めるまで――実録:ある個人事業主の「初めての税務調査」体験記


 昨年夏、スマホの着信表示を見て驚き、スマホを落としそうになったことがあった。画面には「昭和税務署」と表示されていた。起業して11年。人生初の“税務調査”の事前通知だ。法人はともかく、個人事業主で税務調査を受けた人から話を聞く機会は滅多にない。今回は筆者の税務調査体験記をお届けしよう。


2018年3月23日掲載の記事で続きを読む

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