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【特別企画】SSDの選び方入門、カタチや性能、NANDの違いはどう判断すればいいのか?

幅広い製品を展開するMicron Crucial SSDのラインアップを整理

 ビジネスユーザーからコンシューマーまで、今や快適なPC環境に必須のアイテムとなった「SSD」。

 SSDを搭載することで、PCのパフォーマンスは大きく向上するが、その「選び方」がよく分からないと思う人も多いだろう。

 今回は、日常のビジネス業務を念頭に、その接続インターフェースや、採用されているNAND型メモリの違い、その性能への影響について紹介しよう。例にするのは、SSDの有力ブランド「Micron Crucial」の製品群だ。

サイズは2.5インチかM.2か、接続はSerial ATAかNVMeか

 一般的に現在のPCで利用されているSSDは、形状の違いによって、小さなボックス上のドライブである“2.5インチ型”、小型のカード形状の“M.2型”の2種類に分類される。2.5インチ型のSSDは、HDDと物理的な接続方法やドライブ自体のサイズが同じなので汎用性が高く、デスクトップPCやノートPCで広く利用されている。なお、デスクトップPCの場合は2本のケーブルで接続する場合が多い(ノートPCの場合は製品によってまちまち)。

2.5インチ型のSSD。最も普及しているタイプの製品

 一方、M.2型は比較的新しい形状の製品で、2.5インチ型よりもコンパクト。ケーブルなしでPCの基板に直接取り付けられる構造なので、ノートPCでの採用が増えている。また、M.2 SSDについては、PC内部のデータ転送方式が従来のSSD/HDDと同じタイプのSerial ATA方式のものと、従来規格よりも高速なデータ転送が可能なNVMe(NVM Express)方式の2種類に分かれる(2.5インチ型は一般的にはSerial ATA接続のみ)。特に、NVMe方式のM.2 SSDは今までのSSDよりも転送速度が速いため、パフォーマンスを重視する最新型デスクトップPCで採用される例もある。

M.2型のSSD。ノートPCやハイエンドPCでの利用が増加。超高速な転送方式にも対応

 現在、CrucialのSSDは、これらのすべての形状/転送方式の製品をカバーしている。そのラインアップは下記の通りだ。

  • Crucial MX500
    ……大ヒット中のSSD。2.5インチ型とM.2型をラインアップし、転送方式はSerial ATA
  • Crucial BX500
    ……低価格タイプの2.5インチ/Serial ATAの製品
  • Crucial P1
    ……M.2/NVMe方式の最新モデル。次世代NAND型メモリを採用する

 SSDの「性能」は、データを記録しておくNAND型メモリと、データのやり取りなどを制御するコントローラーの能力に左右され、NAND型メモリの搭載量によって「容量」が決まる。これらの部品の組み合わせにより、製品の価格の違いが生じてくる。すべての形状/転送方式をカバーするCrucialのSSDは、性能・価格のバリエーションも豊富で、使用するPCや予算に応じた最適な製品が選択できるようになっている。

次世代NAND、NVMeがより高速! ベンチマークで製品の違いを理解

 それでは、製品ごとの違いを、性能比較テストをもとに見てみよう。テストに使用したツールは、連続読み書き(シーケンシャルリード/ライト)と非連続な小データの読み書き(ランダムリード/ライト)の性能を測定する「CrystalDiskMark 6.0.2」に加え、ランダムリード/ライト性能を見るもう1つの指標として「TxBENCH 0.95 beta」を使用した。いずれも数値が大きいほど高速ということになる。また、SSDは大容量モデルの方が性能が向上するケースがあるので、その違いを見るために、MX500とP1については、500GBと1TBの各モデルでテストを行なっている。

 Crucial SSDのうち最高の性能を出したのは、最新のNAND型メモリと転送方式を採用したP1で、1TBモデルのテスト結果が特に優秀だった。P1が採用するQLC方式のNAND型メモリは、従来からのTLC方式のNAND型メモリよりも低価格で大容量化しやすい特徴があり、高速なモデルでありながら、価格が抑えられているのがポイントだ。耐久性の面ではTLC方式の方が優れているが、一般的な利用であれば大きな問題になることはないだろう。

CrystalDiskMark 6.0.2のテスト結果。ランダムリード/ライトは一般的なPC使用に影響しやすい“Q8/T8”の項目を掲載。シーケンシャルリード/ライトは最新型のP1がダントツで、特に1TBモデルが優秀。MX500とBX500はほぼ横一線だが、これはSerial ATA方式の限界値に達しているため。参考までにHDDでの測定結果も一番下に掲載している

 NAND型メモリ自体の書き込み性能はTLC方式の方が高速だが、コントローラーの処理の工夫などにより、今回のテスト結果にはその差は全く表われていない。ただし、大容量のファイルを一気に書き込む、大量のファイルを連続して書き込む、などといった条件次第では、MX500などの方が安定した性能を出せるケースも考えられる。実利用上は、OSの起動ドライブとして使用するのに向いているだろう。

ランダムリード/ライト性能をTxBENCH 0.95 betaでも確認。リード/ライトともに優秀なのはP1の1TBモデル。MX500も1TBモデルが500GBモデルを1歩リード

 最後に、各シリーズのオススメモデルを考えてみよう。実際の価格は店頭や通販サイトで確認していただきたいが、性能と価格のバランスも加味したオススメは、MX500は予算に応じて500GBか1TBのどちらか、BX500は480GBモデル、最新型のP1であれば、より性能が出る1TBモデルがベストだ。

Serial ATA SSDの超定番Crucial MX500 SSD

 現在でも大ヒットを続ける定番製品。Serial ATA SSDは、インターフェイス速度の限界まで高速化しているため、リード/ライトの性能が他製品を圧倒している、というわけではない。しかし、高い耐久性や5年の長期保証など、クライアント向けSSDの上位モデルとしてふさわしい信頼性を確保していることが、本機の最大の強みである。

 また、DRAMキャッシュメモリ搭載の製品であるため、かなり使い込んだ環境でも読み出し速度の低下は少なく、書き込み速度の低下が比較的少ないことも見逃せない。Serial ATA接続のSSDとしては最高レベルの性能を備え、そして長期間使っても安心できる製品だ。

CrystalDiskMark計測結果
1TBモデル
500GBモデル
型番容量公称最高速度(リード/ライト)寿命耐久性保証(制限付き保証)
CT2000MX500SSD12TB560MB/s/510MB/s180万時間700TBW5年間
CT1000MX500SSD11TB560MB/s/510MB/s180万時間360TBW5年間
CT500MX500SSD1500GB560MB/s/510MB/s180万時間180TBW5年間
CT250MX500SSD1250GB560MB/s/510MB/s180万時間100TBW5年間
CT1000MX500SSD4*1TB560MB/s/510MB/s180万時間360TBW5年間
CT500MX500SSD4※500GB560MB/s/510MB/s180万時間180TBW5年間
CT250MX500SSD4※250GB560MB/s/510MB/s180万時間100TBW5年間

※M.2モデル

コストを抑えたパーツ構成で低価格化Crucial BX500 SSD

 Micron Crucial SSDのうち、エントリークラスに分類される製品。上位モデルのMX500に搭載されているDRAMキャッシュを省いた“DRAMレス設計”によって、低価格化が図られている。とはいっても、NAND型メモリには上位モデルと同様に自社製造の64層3D TLC NANDを採用し、便利なユーティリティー「Acronis True Image」を無料で使えるのもうれしい。

CrystalDiskMark計測結果
480GBモデル

 製品ラインナップは2.5インチモデルのみ。同水準の容量となるMX500の各モデルより価格はもちろん抑えめで、MX500にはない小容量モデルも用意されているので、コストを抑えたSSD導入を推進したいなら、こちらがオススメだ。

型番容量公称最高速度(リード/ライト)寿命耐久性保証(制限付き保証)
CT960BX500SSD1960GB540MB/s/500MB/s150万時間240TBW3年間
CT480BX500SSD1480GB540MB/s/500MB/s150万時間120TBW3年間
CT240BX500SSD1240GB540MB/s/500MB/s150万時間80TBW3年間
CT120BX500SSD1120GB540MB/s/500MB/s150万時間40TBW3年間

Crucail初のNVMe SSDはQLC方式の高コスパモデルCrucial P1 SSD

 Crucialブランドでは初のNVMe SSD。最新のNAND型メモリであるQLC方式のNAND型メモリを採用し、ミドルレンジ(公称最高速度2,000MB/s周辺)のSSDとしては非常にコストパフォーマンスが高い製品。オススメは、Serial ATAモデルと比べても割高感がなく、テスト結果も良好かつキャッシュ領域が広く確保されることで実用上も快適な1TBモデル。

 QLC方式のNAND型メモリは寿命が短いと言われることがよくあるが、SSDの耐久性を示す指標の1つであるTBWは500GB版で100TBW、1TB版で200TBW。高い信頼性がウリのMX500(180TBW/360TBW)に比べると短いが、BX500(120TBW/240TBW)に近い値を確保している。製品の保証期間は5年、製品の寿命を示す平均故障時間(MTTF)は150万時間と十分な余裕があるので、一般的なPC利用であれば、耐久性や寿命を気にする必要はあまりないだろう。

CrystalDiskMark計測結果
1TBモデル
500GBモデル
型番容量公称最高速度(リード/ライト)寿命耐久性保証(制限付き保証)
CT1000P1SSD81TB2,000MB/s/1,700MB/s150万時間200TBW5年間
CT500P1SSD8512GB1,900MB/s/950MB/s150万時間100TBW5年間

(協力:マイクロンジャパン株式会社)