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タダで使えるウイルス対策ソフトはどこまで使えるか? “チェコ最大のIT企業”が提供する「アバスト」を徹底解説

「アバスト無料アンチウイルス」のメイン画面

 仕事や学業でPCを使うなら、セキュリティ対策は絶対に欠かせない。年間で数千円を払って対策ソフトを購入したり、あるいはWindows標準のソフトをとりあえずそのまま使うなど、さまざまな選択肢がある。

 そんな中でおサイフに優しく、それでいて十分実用的な無料のウイルス対策製品があることをご存じだろうか。

 チェコのIT企業最大手・アバスト(Avast)はその代表格といってよい開発メーカーで、日本でもPC上級者を中心に知名度は高い。

 アバストのウイルス対策製品は、いわゆる「フリーミアム」を採用。多彩な機能を求めるユーザーに対して付加機能を有償で用意しながら、それでいて無料版でもきっちりとPCを保護できるのが、最大のポイントだ。

 そこで今回は、最もベーシックな「アバスト無料アンチウイルス」のインストール方法から普段の使い方まで紹介してみたい。

※本稿で記述する内容は、「アバスト無料アンチウイルス」「アバスト プレミアム セキュリティ」のバージョン19.8.2393を元にしています。

ソフトは公式サイトからダウンロード、無料版の継続利用にメアド登録も不要

 ますは、利用にあたって必要なソフト(クライアント)をダウンロードしよう。アバストの日本語公式サイトにアクセスし、トップページの「PC用無料ダウンロード」をクリックする。このダウンロードファイルは200KB程度のごく小さなものなので、一瞬で終わるはずだ。

アバストの公式サイトから、ソフトを無料ダウンロード
ダウンロード完了。ファイルをクリックすれば、インストール開始だ

 なお、インストールにあたっての動作要件は対応OSがWindows 10/8.1/8/7、メモリー1GB以上、ストレージ容量が2GB以上。

 続いては、ダウンロードしたファイルをダブルクリックしてインストールを行う。Windowsの「ユーザーアカウント制御」に関するメッセージなどが表示されるので、1つずつ確認して、「OK」ボタンなどをクリックしていく。インストールに必要なデータがバックグラウンドでダウンロードされるため、多少の待ち時間が発生するものの、基本的には待つだけだ。

インストールファイルを起動中
インストール前の確認画面は、基本的にこれだけ。下の2つのチェックボックスをオンにしていると、既定のブラウザーが「アバストセキュアブラウザ」に切り替わる。使い慣れたブラウザーがある場合は、よく読んでオン/オフするとよい
一応「カスタマイズ」を選択すれば、インストール先フォルダーや細かな機能の指定ができる
インストール実行中

 念のため説明しておくと、ソフトウェアのダウンロード・利用は無料。無料版をそのまま使おうという場合でも、メールアドレスやクレジットカード番号を登録する必要はない。

「アンチウイルス」だけじゃない、「古くなったアプリのチェック・更新」も無料で使える

 そうこうしているうちに「アバスト無料アンチウイルス」のインストールはほぼ完了。そして最初に1回だけ「初回スキャン」を促される。とはいうものの、実際にはインストール後であればいつでも手動実行できる「スマートスキャン」と中身はほぼ同じだ。

この画面まで行けば、インストールはほぼ完了
続いて、データ共有についての同意が求められる。拒否してもアプリの利用は可能
そして、初回スキャンを実行しよう

 さて、このスキャン工程の1つ「古くなったアプリのチェック」には、PCに慣れた人でもかなり驚かされると思う。インストールされているソフトウェアの更新状況をチェックし、最新アップデートが適用されていない場合に警告してくれる。加えて「すべて更新」をクリックすれば、対象ソフトのダウンロードや更新をほぼ全自動でやってくれてしまう。

スキャンが順に実行されていく
ここで「古くなったアプリのチェック」のアラートが。どうやら、気付かないまま残っていたらしい。ここで「解決」を押せば、アップデートが自動で行われる

 メジャーではない国産のオンラインソフトなどについては警告は出ないようだが、Chromeなどの超有名ソフト(必然的に悪意ある第三者に狙われやすい)は当然ながら対象となっている。古くなったアプリは、それ自体がウイルスに感染している訳ではないが、外部から攻撃・侵入する上で格好のターゲット。余計な問題を増やさない意味でも、かなり有用な機能だと言える。この機能は、無料版で利用可能だ。

ちょっと驚くような警告がでる場合も……。とはいえ、これらはある意味当然のこと。「今はスキップ」をクリックしておこう
有料版アップグレードのメッセージも、現段階では「バツ」ボタンを押して消してしまってOK
インストール完了直後の画面。ちなみに、下のメッセージ部分には「あなたの現在の位置情報○○JP(プロバイダーの拠点から割り出した地名)は誰でも見ることができます」など、PC初心者からするとちょっと怖いメッセージも定期的に表示される。また、無料版で気になる広告表示だが、文字・アイコンを主体とする“アバスト製品紹介”が画面右下隅などにたまに出る程度(クリックせずにいると時間経過によって消える)だ

ウェブサイトでの“追跡”まで阻止してくれるブラウザー拡張機能で安心

 筆者が個人的に気に入っているのが、ウェブブラウザー用の拡張機能「Avast Online Security」である。

 文字通り、ウェブブラウザーと一緒に使う拡張機能で、ウェブブラウザーが持つ安全性検証機能を強化するという位置付けだ。具体的には、アクセスしたウェブサイトの安全性などを検証し、ツールバー上のアイコンや、Googleの検索結果一覧のリンク先が安全かどうかの結果をアイコンなどで表示してくれる。また、トラッキング(追跡)の状態についても一覧で確認することができる。これらの機能も無料で使える。

拡張機能「Avast Online Security」を追加すると、ウェブブラウザー右上に(赤地に白抜き数字が表示されている部分)アイコンが表示される

 この手の機能は、それこそ2000年代前半にはあったかと記憶している。ただ当時はまだそれほど洗練されておらず、「余計なお節介」とされがちな機能だった。

 しかし、それからかなりの時間が経ち、一方でフィッシングやウェブブラウザーの脆弱性は少なからず存在する。またウェブブラウザー側のサポートが改善したため、意図せず拡張機能がインストールされるケースは減ったし、仮に誤ってインストールしてもごく簡単に削除できるようになった。

アバストのインストール直後にChromeを起動すると「Avast Online Security」についての確認メッセージが出るはず。明示的に「有効」を押さなければインストールされないし、また一度保留しておいて最有効化することもできる
アイコンをクリックすれば、サイトの安全性、トラッカーの有無などを確認できる

 結果として、Avast Online Securityは大変便利なのだが、加えて興味深いのがトラッキングへの対応だ。

 最近のウェブは、広告ビジネス絡みであったり、あるいは有望なユーザーを見つけてターゲティング広告を出したいといった意図から、cookieベースでのユーザー追跡がとにかく高度化してしまった。もはやプライバシー侵害に繋がりかねないとの指摘も出ている。

 多くの場合、そのトラッキングは、各ウェブページのHTMLソースにタグとして埋め込まれているのだが、Avast Online Securityはその種類や数を、アイコン上に分かりやすく表示してくれるのだ。

 これが実に面白い。iOSのプライバシー確保を推進しているAppleの場合、ウェブサイトに埋め込んだトラッカーの数はゼロ。これが個人サイトだと1~2個になり、ECサイトだと10個前後だったりする。

 Avast Online Securityは、こうしたトラッカーの可視化に加え、任意のトラッカーだけをピンポイントでブロックすることもできる。

家のWi-Fiに繋がる機器の脆弱性もまとめてチェック&保護

 また「Wi-Fiの検査」機能も、なかなか興味深い機能だ。

 これは自宅などで構築しているローカルの無線/有線ネットワークをチェックし、接続されている機器にどこか穴がないかを調べてくれるというもうのだ。これも「アバスト無料アンチウイルス」の標準機能である。

メイン画面の「プロテクション」から「Wi-Fiの検査」をクリックして実行

 実行すると、ネットワークに接続されている機器が簡易マップ的に表示される。最近はPCやスマホ以外に、どの家庭でもテレビ、オーディオ機器、ゲーム機などとにかく多くの機器が接続されていて、「もはや自宅ネットワークに何台くらい機器が接続されているか分からない」といった方も少なくないはず。それを一目で把握できるという意味においても、かなり便利だ。

このようにネットワーク接続機器がマップとして一覧表示される

 また、機器1台1台のIPアドレスやMACアドレスも、マップから確認できる。

 今後IoTがさらに普及していけば、自宅ネットワークに接続される機器は2倍、3倍にも増えていくだろう。今の段階から「どんな機器を何台使っているのか」を考えておくことは、意義あることと言えよう。

機器別に詳細をチェックすることも可能

低スペックPCでも快適動作、「Windows Defenderよりも高速」というテスト結果も

 このようにアバスト製品は、ウイルスチェック以外の周辺機能が充実しているのが大きな特徴だ。

 最近では、Windows 10に標準搭載されているセキュリティ機能「Windows Defender」に頼り切りという方も多いだろうが、「古くなったアプリのチェック」「Wi-Fiの検査」のような機能はアバストの独壇場といえそうだ。もちろん、直接のウイルス対策機能にも抜かりはない。

 加えて、ウイルス対策製品の比較テスト結果を数多く公表している「AV comparatives」によれば、2019年4月期のパフォーマンステストにおいて「アバスト無料アンチウイルス」はシステム動作テストで高評価だった。

 このテストは、ウイルス対策製品を低スペックPCにインストールした際の、システム動作速度を評価しているのが特徴。高性能PCでソフトの動作速度は上がるのはある意味当然だが、低スペックPCで果たしてどうなるかに着目している。

「AV comparatives」でのアバスト無料アンチウイルスのテスト結果(画像は同サイトより引用)
「Windows Defender」のテスト結果(画像は同サイトより引用)

 全8項目のテスト中、「アバスト無料アンチウイルス」はおおむね高水準を維持しており、Windows Defenderとの比較ではファイルコピー速度およびアプリインストール速度では明らかな優位が出ている。つまりWindows Defenderのみ使い続けるよりも、「アバスト無料アンチウイルス」をインストールしたほうが、PCは高パフォーマンスを発揮できるというテスト結果が出た訳だ。

ランサムウェア対策のデータ保護機能も用意「アバスト プレミアム セキュリティ」へのアップグレードで利用可能に

 ここまで見てきたように、アバスト製品は主要機能を無料で利用できる。ただ、PCのセキュリティ事情は年々変わってきているだけに、より多様、かつ先進的な対策を行いたい場合には、有料版の利用を検討したい。「アバスト プレミアム セキュリティ」がそれだ。PC1台用の価格は年額5400円。キャンペーン価格での販売も適宜行われている。

「アバスト プレミアム セキュリティ」へアップグレードした状態のメイン画面。左上の呼称表示などが多少変わっている
一方、メニュー画面の各項目からは「南京錠」マークが消え、新たに使えるようになったことが分かる

 まず前提として、無料版版でも有料版でも、基本となるウイルス対策機能の性能は変わらない。その状況に対して有料版は「セキュリティ機能の数が増える」と考えると分かりやすい。

 最も象徴的なのが、ランサムウェア対策だ。PC内の個人ファイルなどを第三者が勝手に暗号化するなどして、「これを解除して欲しければ金銭を支払え」と要求する手口である。

 無料版から「アバスト プレミアム セキュリティ」にアップグレードすると、その対策となる「ランサムウェア シールド」機能が使えるようになる。これは、あらかじめ指定したフォルダー(Windows標準の個人フォルダーなどは最初から指定済み)内のファイルを書き換えたり削除するにあたって、その操作権限を持つアプリを一部に制限することで、被害を防ぐという仕組みである。

「ランサムウェア シールド」の設定画面

 ランサムウェアは、被害を受けた場合のダメージは深刻だが、ファイルのバックアップを別途用意しておけば、一応は自衛できる。とはいっても、PC初心者に年がら年中バックアップを意識させるのは酷な話。であれば、セキュリティソフトのプレミアム機能で対策してはどうか……という発想だ。

 「アバスト プレミアム セキュリティ」の適用は簡単。インストールしてある「アバスト無料アンチウイルス」のメニュー画面などから、「アップグレード」を選択。ECサイトのようなかたちでライセンスを購入するか、あるいは外部サイトで購入したアクティベーションコードを入力することで、「アバスト プレミアム セキュリティ」の各機能が利用できるようになる。

アップグレードは、アプリ内から行える
また外部サイトでアクティベーションコードを購入・入手した場合は、それを入力してもいい

外部への意図しない送受信を防ぐ「ファイアウォール機能」も有料版で利用可能に

 有料版の機能でもう1つ代表的なのが「ファイアウォール」だ。外部からPCへのアクセスを許可されたものだけに制限し、またPCのアプリについても同様に、通信が発生する場合に許可制とすることで、意図しない送受信を防ぐ。

 とはいえ、実際にはこのあたりの制御はほぼ自動化されている。一般的なアプリケーションを使うにあたって、毎回、通信確認のダイアログが出るというような煩わしさはない。

ファイアウォールも、有料版ならではの機能だ
細かな設定も可能

「まずは使ってみる、必要に応じて追加機能を」が有効なソフト 実家向けにも便利かも?

 以上、アバストのインストール方法を皮切りに、その使い方、オススメ機能を紹介してみた。

 見ての通り、無料版でも十分な機能が提供されており、「まずはダウンロードして使ってみる」やり方がとても有効なソフトと言える。

 そのまま無料で使い続けてもいいし、例えば「ランサムウェアが怖いので万全を期したい」「専用VPNを使いたい」となった時のアップグレードパスとして有料版や有償オプションが用意されている、と考えるのもアリだろう。

 これらはもちろん統合管理されるので、複数のソフトをいれるよりも管理が簡単。たとえば、「遠く離れた実家のPCにたくさんのソフトをいれておくのは、ちょっと面倒」という考え方もアリだろう。

 ちなみに、同社のビジネスモデルについては別途インタビューしているが、簡単にいうと「“無料で提供する”ことで非常に多くの利用者を獲得、それらユーザーから得た検出情報を使ってさらに高い検出・保護機能を提供する」「有償版を導入することで、さらに高い機能や使い勝手も提供する」というもの。ビジネスモデルとして、無償ユーザーを必要とする戦略になっている、というのも安心できる要素と言えるだろう。

[協力:アバストソフトウェアジャパン]