レビュー
9年前のPC「VAIO P」をWindows 10にアップグレードしたらどうなる?
メモリは2GB、CPUはAtom…
2019年12月10日 06:40
Windows 7のサポート終了日が2020年1月14日に迫った。この日以降はWindows 7への新たなセキュリティ更新プログラムが提供されなくなるため、時間が経つほどPCが危険な状態に晒されることになる。
セキュリティと聞くと、「別に盗られて困るデータはない」と思う人もいるかもしれないが、そうはいかない。自身のデータに不正アクセスされるだけでなく、他人への不正アクセスの踏み台にされ、知らないうちに犯罪の片棒を担いでしまう可能性もある。他人に迷惑をかけないよう、現行のOSであるWindows 10へのアップグレードは必須と考えるべきだ。
筆者もまだWindows 7のPCを所有しており、粛々とWindows 10への移行を進めているが、その中にアップグレードで困らされているPCがある。それは「VAIO P」だ。
9年モノの名機「VAIO P」をWindows 10にしたら……
「VAIO P」は8インチディスプレイを搭載するコンパクトPC。小型ながらキーが打ちやすく、机がないような場所での取材時にも使えるメモ端末として優秀なので、未だに現役で使用している。購入したのは2010年11月なので、丸9年。VAIOオーナーメードモデルで、CPUは最上位のAtom Z560、SSDも128GBを選んでいる。
Windows 10が登場した際、Windows 7/8.1のPCに向けて無償アップグレードが提供されていたのだが、本機は自動アップグレードの際に「アップグレードできない」と言われてしまった。Windows 10に対応できないデバイスやドライバがある、といった説明だったように記憶している。
ただ別のツールを使って手動でアップグレードはできたので、いったんアップグレードした後、すぐにWindows 7に戻してあった。1度でもWindows 10にアップグレードしてあれば、再びWindows 10にアップグレードするのにライセンス認証は要らないと聞いたからだ。
そして先日、ついにWindows 10へアップグレードしたのだが、想像以上に問題だらけ。起動後にいつまでも高負荷が続き、本体がやたら熱く、何をするにもとにかく重い。Windows Updateをかけると、1回のアップデートごとに酷い時には数時間かかることもある。
1コア2スレッドのAtom CPUに2GBのメモリでは仕方ない。インストールしたWindows 10も32bit版だ(まだ32bit版があることにちょっと驚いた)。
このままでは使用に支障をきたすので、一度Windows 10をクリーンインストール……と言いたいが、本機の独自機能を担うドライバ類が自動でインストールされるとは思えない。そこで購入時のWindows 7をリカバリしてから、再びWindows 10にアップグレードすることにした。
Windows 10へのアップグレード作業はとても簡単
Windows 10のアップグレードには、マイクロソフトが提供するツールを使用する。執筆時点では「MediaCreationTool1909.exe」というファイルがダウンロードされる。
ファイルを実行すると、「このPCを今すぐアップグレードする」と、「別のPCのインストールメディアを作成する」という2つの項目が表示される。実行したPCをすぐさまアップグレードできる便利なツールだが、今回はリカバリ直後のWindows 7であることも考慮し、USBメモリにインストールメディアを作成してオフライン環境で実行した。
Windows 10へのアップグレードは、USBメモリに入っている「setup.exe」を実行するだけ。アプリやファイルを残すかどうか等の設定を決めたら、後はしばらく待つだけでいい。今回の作業でもアップグレード作業には何の問題もなかった。
ただしアップグレード作業に含まれている更新プログラムの適用にかなりの時間がかかった。「Windows 10 バージョン1909(November 2019 Update)」までの更新を全て適用しているはずなので、ある程度時間がかかるのはやむを得ない。開始から1時間半ほどかかって、ようやくWindows 10が起動した。
アップグレード後に問題が多発
見た目上、何の問題もなくWindows 10が動作しているようなのだが、触っているとあれこれ気になる部分が出てくる。
まずはやはり動作が重い。Windows Updateをかけてみると3つの更新プログラムが見つかったのだが、1つ目のアップデートが全然進まない。CPU負荷は常に100%で、Windows Updateのみでも手に余る状態になっている。
機能面でも問題があった。本機はキーボード中央部にスティックポインターがあり、これにタッチするとクリック操作になる「プレスセレクト」機能が用意されている。
一見便利そうなのだが、ちょっと触れただけでクリックになる誤操作が多発するため、マウスのプロパティでこの機能をオフにしていた。ところがWindows 10にすると、この機能をオフにする項目がプロパティから消えており、オフにできない。
またディスプレイの明るさを調整しようとプロパティを操作するものの、上げても下げても画面の明るさが変化しない。また本機に搭載されている照度センサーも機能していない。明るさ調整機能自体が死んでいるようだ。
本機の独自機能やソフトをアップデートしてくれるツール「VAIO Update」を試してみると、1件の更新データも提示してこない。本機はWindows 10が登場するはるか前に発売された製品だけに、Windows 10の使用はメーカーのサポート対象外ということなのだろう。
マウスに関しては、ドライバをOS標準のPS/2マウスとして認識させ、「プレスセレクト」機能を含む独自機能を失わせることで、一応使えるようにはできる。しかしWindows 7であれば必要なかった作業であり、アップグレードによって機能が減ってしまうのは残念だ。
まずはアップグレードを試し検討、判断はお早めに
アップグレードの作業は特に難しいこともなく、本機も間違いなくWindows 10がインストールできている。しかしWindows 10時代のPCとしては明らかにマシンパワーが不足している上、動作しない独自機能が出てきてしまうと、製品の価値を損ねてしまう。
あらゆる古いPCがダメと言うわけではない。「VAIO P」と似た時期に購入した大型のノートPCは、マシンパワーが十分にあり、Windows 10でもそれなりに快適に動いている。「VAIO P」は当時流行していたネットブックに似た性能なので、そのくらいのスペックでは荷が重いということだ。
筆者にとって「VAIO P」は唯一無二の取材テキスト入力マシンなので、Windows 10環境でしばらくは使い続けるつもりでいる。とは言え、Windows 7環境でも動作が重くなりつつあり、そろそろ限界かなと思っていたのは事実。これだけの手間をかけて、Windows 7の時より機能が落ちてしまうのであれば、いよいよ買い替えに踏み切る時期なのだろうと思う。
スペック的には十分なマシンでも、Windows 10に対するメーカーサポートがなく、必要な機能が使えなかったり、動作に不具合が出てしまう可能性も十分あり得る。古いデバイスやソフトは新しいOSで徐々に非対応になっていくのが常なので、そうなったら諦めるしかない。
まだWindows 7のPCをお持ちの方は、まずはアップグレードを試してみるのがいいだろう。アップグレードして問題があれば元のWindows 7環境にロールバックすることも可能だ。
その結果を見て、アップグレードして使い続けるか、新しいPCに買い替えるのかを検討してみていただきたい。
その判断がWindows 7のサポート終了日である2020年1月14日を過ぎないよう、お早めに。
(12/13 11:00更新)記事掲載当初、Windows 10のライセンスに
関する表記に誤りがありました。お詫びして訂正させていただきます。
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