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テレワークで電気代が増えた!? ――自宅の節電を考える(その1)

~実験!! フリーランスの筆者が冬のエアコンの電気代を実際に計測してみた~

 新型コロナウイルスの影響でテレワークをしているサラリーマンが急増している。これまで1人暮らしや夫婦共働きの人は、平日の昼間に誰もいなかった自宅で長時間仕事をするようになり電気代が急増する。起業してフリーランスになった人も同様で、筆者の回りに編集者からライターになって電気代が増えたと言う人は少なくない。

 冬のこの時期、家庭の電気代で大きなウエイトを占めるのはエアコンによる暖房だ。今回はエアコン暖房と電気代について、実証実験をしながら考えてみたい。テレワークやフリーランスで自宅で仕事をする人はもちろん、外出を控えて自宅で過ごす時間が増えた人も参考にしていただきたい。次回以降はINTERNET Watch読者が気にしているかもしれないPC、NASなども含めさまざまな電気製品の検証を予定している。

寒冷地以外ではエアコン暖房を使う人が多い。気になる電気代は?

 過日、インプレスの人から「テレワークになって8月の電気代が2万円を超えた」と聞いた。細かな明細を知るよしもないが、エアコンによる冷房が電気代を急増させたのだろう。エアコンの冷暖房は電気代が掛かるというイメージを持っている人は多いと思う。

 実際にはエアコンの電気代は多くても1時間に20~30円。そこそこの温度設定にすれば1時間に10円ほどだ。「たった10円」と思うだろう。そう、たった10円だ。たった10円のエアコンを15時間稼働させると150円。夫婦2人が別々の部屋でテレワークをしたり、リビングなど他の部屋のエアコンも稼働させると2倍、3倍になるケースもある。2倍なら1日に300円。1か月で9000円の電気代の増加は痛い。ちりも積もれば高い電気代だ。まずはエアコンの電気代について知ることから始めよう。

エアコン暖房、温度設定で電気代はどれくらい違うの?

 エアコン(ヒートポンプ)の仕組み、電気料金の複雑な算出方法など小難しい話しは後にして、まずはエアコンの温度設定で消費電力量=電気代だどれくらい違うのかを見ていただこう。外気温約11℃(=昼間)、暖房前の室温が16℃、エアコンの温度設定を20℃にして稼働させてみた。

この日の予報は昼間11℃で推移
上の数字が室内の温度。下が外気温。温度センサーをサッシの窓から屋外に出して常時計測している

温度設定20℃(外気温 約11℃)

 エアコンをオン。しばらくすると消費電力はググッと上昇して790Wほどになる①。室温が16℃から18℃まで7分ほどかけて上昇したあたりから消費電力は320Wくらに下がり②、スタートから13分で室温は20℃となった③。

外気温11℃、エアコンの温度設定20℃で消費電力と室温の変化をグラフ化した

 その後10分ほど消費電力は320Wほどの状態が続き、室温が21℃まで上昇したところでエアコンは送風状態となり消費電力は10Wくらいに④。室温が下がり始めると⑤エアコンの消費電力は260Wくらいに上昇し2~3分で300Wまで上昇⑥、一旦20℃くらいに下がった室温が21℃になるとエアコンは再び送風となり⑦、その後はほぼ同じ動作を繰り返した。

 エアコンが三度目の送風モードになったところでエアコンをオフ。エアコンを稼働し続けたら、300W→送風→300Wの動作を繰り返したと想像される。

温度設定24℃(外気温 約11℃)

 20℃設定の計測後しばらく室温が自然に下がる様子を確認し、その後換気をして室温、壁・床・天井の温度が同じくらいになるのを待った。20℃設定の計測終了(エアコンオフ)から1時間10分後にエアコンの温度設定を24℃に変更し計測を開始した。

 こちらもスタートして数分で消費電力は780Wほどになり室温も上昇①。室温が20℃を超えると消費電力は350Wまで一瞬下がり②すぐに650Wまで上昇③。エアコンをオンにしてから27分で室温が24℃に到達した④。

外気温11℃、エアコンの温度設定24℃で消費電力と室温の変化をグラフ化した

 その後、消費電力は340W⑤→490W⑥→340W→470Wと上下。室温は24℃付近で横ばいが続き一瞬送風になった⑦。この後は室温が下がると瞬間的に660Wに上昇し⑧すぐに470Wくらいで横ばい⑨。室温が24℃を超えると一瞬送風という動作を繰り返した。計測から2時間20分でエアコンオフ。室温は30分で4℃下降し20℃、1時間後は19℃まで下がった。

20℃と24℃、温度設定の変更で昼間の電気代の差は?

 消費電力量と電気代を計算してみよう。電気料金は電力会社ごとの契約プランで異なるし、毎月単価が変動するのでここでは25円/kWhで計算している。温度設定の20℃に達するまでに掛かった時間、電力量、電気代は13分、111wh、2.8円。温度設定を24℃にすると27分、272Wh、6.8円となった。

 「エアコンは使い始めに電気を食う」と言われる。この電源オンにして設定した温度に室温が上がるまでの時間がこの部分だ。室温を16℃から20℃にする電気代は2.8円、16℃から24℃にする電気代は6.8円と倍以上となった。

外気温 約11℃の場合暖房設定20℃暖房設定24℃
温度設定に達するまで時間13分27分
電力量111Wh272Wh
電気代2.8円6.8円
最初の1時間時間60分60分
電力量306Wh491Wh
電気代7.7円12.3円
温度安定後時間47分114分
電力量196Wh745Wh
電気代4.9円18.6円
1時間換算の電気代6.2円9.8円

 表には最初の1時間の電力量と電気代を記載しているので参考程度に見ていただきたい。室温が安定した後の電力量と電気代を見てみよう。20℃設定は47分間計測して196Wh、4.9円。24℃設定は114分計測して745Wh、18.6円。1時間に換算すると20℃設定は6.2円、24℃設定は9.8円と1.6倍ほどとなった。冒頭に書いた「そこそこの温度設定にすれば1時間に10円ほど」より安めとなった。

夜間、外気温が下がると電気代はどれくらい増える?

 詳しい話は次回以降で説明するがエアコン暖房は外気温が低いと電気代が増える(全ての暖房費に共通するがエアコンは特に)。先ほどの外気温が約11℃、昼間に行った計測を、外気温が約0℃の深夜にエアコンの温度設定を20℃と24℃にしてそれぞれ計測をしてみた。計測前の室温は14℃チョット、外気温がほぼ0℃になった深夜24時過ぎに計測を開始した。

天気サイトにより若干差はあるが気温はほぼ0℃。神奈川県としては寒い。ちなみにこのとき関越道では2000台のクルマが立ち往生(16日夜~18日夜)していた

温度設定20℃(外気温 約0℃)

 エアコンをオン。しばらくすると消費電力はググッと上昇して940Wほどになる①。室温が14℃から17℃まで8分ほどかけて上昇したあたりで消費電力は一瞬430Wくらいに下がり②、すぐに560W付近でもみ合い状態へ③。スタートから20分で室温が20℃になり消費電力は430W→380Wと短時間で下降し送風状態となった④。

外気温0℃、エアコンの温度設定20℃で消費電力と室温の変化をグラフ化した

 室温が下がり始めると消費電力は580Wまで上昇⑤、室温はすぐに20℃に上がり消費電力は400W付近で44分ほど安定した⑥。室温がジワジワと21℃まで上昇⑦したところでエアコンは送風状態となり⑦、室温が下がり始めるとエアコンの消費電力は360Wくらいで28分ほど安定状態を維持⑧。またジワジワと21℃まで上昇したところでエアコンは送風状態となった⑨。すぐに消費電力が360Wになったところで開始から1時間経ったので計測を終了した。

温度設定24℃(外気温 約0℃)

 20℃設定の計測後、室温が下がった1時間20分後にエアコンの温度設定を24℃にして計測を開始した。時刻は深夜4時頃だ。

 スタートして数分で消費電力は940Wほどになり①、15分ほどで14℃の室温が20℃を超え消費電力は580Wまで一瞬下がり②すぐに900Wまで上昇。エアコンをオンにしてから29分、室温23℃弱で消費電力は720W付近でもみ合い状態となり③開始から57分で24℃となった④。

 その後、消費電力は560W→710W→560Wと上下⑤し、室温は24℃→23℃→24℃→23℃と推移⑥。同じ動作の繰り返しになったので2時間ほどでエアコンをオフにした。

深夜、外気温0℃の電気代は?

 外気温が0℃のときの電気代を確認してみよう。14℃の室温が温度設定の20℃に達するまでに掛かった時間、電力量、電気代は20分、206wh、5.2円。温度設定を24℃にすると57分、711Wh、17.8円となった。昼間の計測よりも環境温(室温・外気温)と温度設定の差が広がったためか、20℃と24℃の電気代の差は3倍以上に広がった。

 同じ温度設定で比べると、昼間に室温を16℃から20℃にする電気代が2.8円、16℃から24℃にする電気代が6.8円なので、外気温が下がった深夜は20℃設定で1.9倍、24℃設定で2.6倍となった。

外気温 約0℃の場合暖房設定20℃暖房設定24℃
温度設定に達するまで時間20分57分
電力量206Wh711Wh
電気代5.2円17.8円
最初の1時間時間60分60分
電力量470Wh739Wh
電気代11.8円18.5円
温度安定後時間100分64分
電力量593Wh641Wh
電気代14.8円16円
1時間換算の電気代8.9円15円

 室温が安定した後の電力量と電気代を見てみよう。20℃設定は100分間計測して593Wh、14.8円。24℃設定は64分計測して641Wh、16円。1時間に換算すると20℃設定は8.9円、24℃設定は15円と1時間10円を超え、4℃の違いで1.7倍ほどとなった。昼間の外気温11℃と比べると20℃設定は6.2円→8.9円と約1.4倍、24℃設定は9.8円→15円と約1.5倍だ。当たり前だがエアコン暖房は温度設定を上げると電気代が増える。寒い日(外気温が低い日)も電気代が増えることが確認できた。

温度設定を18℃→20℃→22℃→24℃と変えてみたら

 エアコン暖房はスタート時に大きな電力を消費し、温度が設定値になると安定状態に移行する。テレワークで長時間エアコン暖房をする場合、安定状態時の消費電力が累積して月の電気代に影響する。

 次は温度設定を18℃→20℃→22℃→24℃と変更してみた。消費電力をチェックしながら、安定状態になったところで温度変更を行った。計測は昼間、外気温は11℃くらいだった。

 温度設定が18℃では260~280Wで推移①。室温が19℃を超えると一瞬送風になる動作を繰り返した。この間の平均消費電力は195W、1時間に換算した電気代は4.9円となった。

 温度設定が20℃では260~300Wで推移②。室温が21℃を超えると一瞬送風となる動作を繰り返した。この間の平均消費電力は227W、1時間に換算した電気代は5.7円となった。

 温度設定が22℃では370~450Wで推移③。室温が22.9℃を超えたくらいで一瞬送風となる動作を繰り返した。この間の平均消費電力は276W、1時間に換算した電気代は6.9円となった。

 最後は温度設定が24℃。400~600Wで推移④。室温が24.7℃を超えたくらいで一瞬送風となる動作を繰り返した。この間の平均消費電力は340W、1時間に換算した電気代は8.5円となった。

温度設定を2℃ごとに変化させた安定状態の電気代

温度設定1時間の電気代2℃ごとの増加率
18℃4.9円
20℃5.7円1.16
22℃6.9円1.21
24℃8.5円1.23

 温度設定を18℃→20℃で1.16倍、20℃→22℃で1.21倍、22℃→24℃で1.23倍となった。やはり環境温(室温・外気温)から温度設定が離れるほど2℃上げたときの電気代の増える割合が大きくなる印象だ。

別の部屋で機種の異なるエアコンを計測

 最後に別の部屋に設置された、異なるメーカーのエアコンを計測してみた。エアコンに限ったことではないが、メーカー・機種が違うと動作は異なる。エアコンは部屋の広さ、断熱性などでも消費電力量=電気代に差が出る。これまでの計測は筆者が2016年からオフィスとして借りている物件の仕事部屋。次の計測は打ち合わせスペース兼ダイニングのエアコンを温度設定を20℃にして3時間稼働させてみた。外気温は11℃くらいだ。ちなみに筆者が税務調査を受けたときは税務署の人はここで作業をされた。

筆者の川崎で借りているオフィス兼住居の1階間取り図。黄色がが仕事部屋、ピンクが打ち合わせスペース兼ダイニング
仕事部屋。突き当たりの壁の右上にエアコンが設置されている
ミーティングスペース兼食卓。エアコンは反対側の壁に設置されている

 エアコンをオンにすると数分後に消費電力は1000Wを超えた。室温が19℃あたりで260Wに急降下。その後はときどき140Wまで下がり260Wくらに戻る動作を繰り返し、送風状態になることはなかった。

ダイニングのエアコンを20℃に設定して計測してみた

 安定状態になってから停止までの平均消費電力は227W。1時間に換算した電気代は5.7円となった。この計測は仕事部屋のエアコンを18℃→20℃→22℃→24℃と変えながら計測しているときに同時進行で行ったが、ピッタリ同じ消費電力量=電気代となり少々驚いた。

 室温は設定した20℃よりジワジワと高めに推移した。機種の違いか部屋の違いか温度ロガーの設置位置による違いかは不明だ。なお室温は室内の高い位置で計測はしているが、エアコン自体が本体内部計測している温度とは全ての測定で差があるので参考程度に見ていただきたい。

 エアコンのメーカーおよび機種が異なると動作も異なり、仕事部屋のエアコンはオンオフを繰り返す方式、ダイニングのエアコンは微妙なアクセルワークでコントロールする方式のようだ。

仕事部屋のエアコンに貼られたラベル。リフォームした2016年に設置されと思われる
ダイニングのエアコンに貼られたラベル。2011年製でリフォーム前から設置されていたと思われる
名古屋の自宅マンションのエアコンに貼られたラベル。2018年製。機会があれば計測してみたい

エアコンの電気代を減らすには

 今回はエアコンの消費電力と電気代について検証してみた。エアコンの温度設定や環境温で電気代がどう変化するか、雰囲気はつかめただろうか。実際の電気代は温度設定や環境温だけでなく、エアコンのメーカーや機種、家の構造(断熱性)などさまざまな条件で異なるが、エアコン暖房が温度設定と環境温で変化する傾向は同じと思っていただきたい。

 エアコンの温度設定を下げれば電気代が減る。でも室温が下がると寒い。さて、どうする。

 暑いとき、寒いとき、ファミレスや喫茶店で仕事をするフリーランスもいるが、昼間のエアコンの電気代が10円(1時間)程度であれば、お店に支払うコーヒー代より自宅のエアコンの電気代の方が安いと思われる。新型コロナウイルスの感染を避ける意味でもお店より自宅にとどまりたい。小型の電気ヒーターで足元を暖める……これもエアコン以外の電気暖房は電気代を押し上げる可能性が高いのでお勧めできない。

 無難な方法は少しエアコンの温度設定を下げて、寒く感じたら厚着をすることだ。自宅限定と割り切って、着なくなったフリースやダウンジャケットなどがあればコストをかけずにすむ。膝掛けや毛布、ネタと割り切って自宅でマフラーもありだろう。

冬、筆者はスリッパと家用の分厚い靴下、小型暖房マットを10年以上利用している

 エアコンが外気温の影響を受けやすいことを考えると、気温の下がる深夜から早朝はエアコンの使用を避けたい。時間の制約が少ないフリーランスで、深夜に仕事をする人は多い(筆者もその1人)。可能であれば活動時間を気温の高い昼間にシフトできれば(筆者はできないけど)エアコンの電気代はかなり減らせるだろう。

 新型コロナウイルスの終息は見えず、テレワークが長期化する可能性は高い。エアコンは暖房器具として極めて優れていて暖房効率は高い。エアコンの特性を理解して、上手く付き合っていただきたい。

今回の電力量の計測に使用したBluetoothワットチェッカー
室温の計測は温度データロガー(右、中央)、壁、床、天井の温度は赤外線温度計(左)を使用

【お詫びと訂正 1月13日 19:35】
 記事初出時、単位に一部誤りがありました。お詫びして訂正します。