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v6プラスでネットを「安定・高速・低遅延」に! Wi-Fi 6の「ゲーミングルーター」で使う、その威力とは?

ASUS「TUF-AX5400」がファームウェア更新でついにv6プラス対応に

 最近は、「ネットが遅い」「不安定」といった不満を感じている読者も多いと思うが、そうした不安に対応できる有力技術の一つが「v6プラス」だ。

 v6プラスは、NTTの「フレッツ 光」回線で利用できるIPoE IPv6インターネット接続サービスだが、これを利用するには対応するWi-Fiルーターが必要となる。

 また、一方の速度改善手段として有力なのがWi-Fi 6などの最新技術を使うことや、速度向上に力を入れたWi-Fiルーターに交換すること。

 そうした中、ASUSの最新ゲーミングルーター「TUF Gaming AX5400 (TUF-AX5400)」が、ついに最新ファームウェアでv6プラスに正式対応した。

 今回、実際にTUF-AX5400でv6プラスを利用してみたので、接続手順や速度などをチェックしたい。

 v6プラスのメリットなども含めて解説したので、ネットの速度に不満を持っている方に参考にしていただければ幸いだ。

ASUSのWi-Fi 6対応ルーター「TUF-AX5400」。ゲーマーをターゲットとしており、直線的で精かんなデザイン

「v6プラス」で混雑を回避し、通信遅延も短縮

 自宅から光回線などを利用してインターネットに接続する場合、通常は契約したISPに「PPPoE」と呼ばれる認証方式で接続することで、データ通信が行えるようになる。

 ただ、PPPoE接続には大きな欠点がある。それは、混雑時に通信速度が低下したり、大きな遅延が発生してしまうことがある、というものだ。

 フレッツ 光を利用してPPPoE接続でインターネットに接続する場合、フレッツ光網であるNTT東西の「次世代ネットワーク(NGN)」内に用意されている「網終端装置」に接続するとともに、網終端装置を経由してISPに接続し、ユーザー認証を経てインターネットにアクセスできるようになる。

 この場合、ユーザー数や通信量や増加すると、網終端装置の負荷が高まり、通信速度の低下や大きな遅延が発生してしまう場合がある。

 このようなPPPoEの欠点を解消するために用意されたのが、「v6プラス」などのIPv6 IPoEをベースとした接続方式だ。v6プラスは、冒頭でも紹介しているように日本ネットワークイネイブラー株式会社(JPNE)が提供するNTT東西の「フレッツ光」向けのインターネット接続サービスのことだ。

v6プラスは、JPNEが提供するNTT東西の「フレッツ光」向けIPv4/IPv6インターネット接続サービスで、PPPoE接続の欠点を解消した接続方式(JPNEのサイトより抜粋)

 v6プラスでは、まずNTT東西のNGNにIPv6で接続する。ただIPv4とIPv6は互換性がなく、そのままではIPv4ネットワークにアクセスできない。そこでv6プラスでは、「IPv4 over IPv6」と呼ばれる手法によって、IPv4の情報をIPv6ネットワーク内を通してやり取りできるようにすることで、IPv4ネットワークへのアクセスも通常通り行えるようになっている。このため、v6プラスを利用すれば、IPv6ネットワーク、IPv4ネットワークの双方へ同時にアクセス可能となる。

 また、v6プラスではIPoE方式でIPv6ネットワークに接続する。IPoE接続はイーサネットと同等の接続方式で、接続機器にIPv6グローバルアドレスが割り当てられ、直接IPv6ネットワークとの通信が可能となる。合わせて、そのIPv6グローバルアドレスも自動的に割り当てられるため、PPPoEのような接続用のIDやパスワードを設定する必要もない。

 さらに、直接ネットワークに接続できることから、PPPoEのような網終端装置を経由する必要もないため、ボトルネックがなく常に安定して高速かつ低遅延の通信が行える。こういった点が、v6プラスの大きなメリットとなる。

PPPoEでは接続用のIDやパスワードを設定する必要があるが、v6プラスは設定不要でインターネットにアクセス可能(JPNEのサイトより抜粋

 v6プラスに対応するISPは、NIFTY、So-net、GMOインターネットをはじめ、全国に多く存在している。また、v6プラス接続を行う場合でもオプションの接続料がかからないISPがほとんどのため、追加の料金負担なく利用できる点も嬉しい。

v6プラスを使うには、「対応ルーター」が必要

 v6プラスでインターネットアクセスを行うには、条件がある。それは、v6プラスに対応するルーターが必要、という点だ。ただ、v6プラスなどの接続方式は日本独自の方式ということもあって、海外メーカーのルーターではなかなかサポートされない状況が続いていた。

 そのため、海外製の高性能ルーターを利用しているが、v6プラスに対応しないため仕方なくPPPoEでISPに接続しているという人も多かった。

 そういった中でASUSは、2021年8月上旬に、v6プラスに対応したベータ版ファームウェアを一部機種に提供開始。そしてその後、TUF-AX5400を加えた全4機種(2021年10月現在)で、v6プラス対応の正式版ファームウェアの提供を行っている。

 ASUSによると、今後もv6プラス対応モデルを順次増やしていくという。同社のWi-Fiルーターは、ハイエンドの強力な製品やゲーミングルーターなど、独特の製品が多いだけに、こうした「ファームウェア更新で機能を強化・チューニングしていく」方針は大歓迎。そうした技術力やサポート力の高さにも期待したい。

今回取り上げる「TUF-AX5400」はじめ、ASUS製ルーター5モデルでv6プラスが利用可能になった

v6プラスは高速だが、注意点も

 速度や遅延という点では大きなメリットがあるv6プラスだが、実際に利用する上で気を付けておきたい点もある。

 まず、v6プラスのデメリットとしてよく聞かれるのが、オンラインゲームがプレーできなくなる、というもの。これには、正しい部分と間違っている部分がある。

 通常通りオンラインゲームプレイするだけであれば、基本的にv6プラスでも全く問題ない。ほとんどのオンラインゲームはIPv4でのアクセスとなるが、v6プラスは先に説明した通り、IPv4の通信も問題なく行えるため、オンラインゲームがプレイできなくなるということは基本的にはない。これはPCゲームについてはもちろん、家庭用ゲーム機についても同様だ。

 なお、「自宅サーバー」を構築して外から接続してもらうような、ごく一部のオンラインゲームでは、プレイできないものもある。v6プラスはIPv4 over IPv6という手法でIPv4アクセスを実現しており、IPv4で利用できるポートに制限がある。通常のPPPoE接続のように任意のポートが利用できるわけではないため、オンラインゲームが必要とするポートが利用できずに正常に通信が行えなくなる……というわけだ。

 とはいえ、一般のプレーヤーは関係がない。結論としては、一般的なゲームであれば「v6プラスを導入したからといってゲームがプレイできなくなる」ということは、ほぼないと考えていい。

 なお、この「利用できるポートが限られる」という部分は、ゲーム以外でも同様で、例えば、VPNサーバーの設定によっては「VPNに接続できなくなる」ということも起きてしまう。VPNを利用する場合は、特定ポートを利用する必要があるが、v6プラスではIPv4で任意のポートが利用できないため、VPNを利用できなくなることがあるのだ。

 ただし、VPNサーバー側がIPv6でVPN接続できる場合など、v6プラスでもVPN接続できる場合もあるし、「VPN接続を使いたいときだけPPPoE接続に戻す」というやり方もあるので、これは運用次第。あとで測定結果を紹介するが、速度面でのメリットは大きいだけに、できるだけ「可能なやり方」を検討してみるのがいいだろう。

 もちろん、「自宅からVPNで会社に接続することはない」ということであれば、問題とはならないだろう。そういった意味で、一般的な利用シーンであれば、この点もデメリットとはならない可能性が高いと言える。

v6プラスに対応した「TUF-AX5400」はどんなルーター?

 では、簡単にTUF-AX5400がどういった製品なのか紹介しよう。

 TUF-AX5400は、ゲーマーをターゲットとした高性能Wi-Fi 6ルーターだ。ボディは横置き型で、ゲーマーをターゲットとしているだけあって、直線を多用した精かんな印象のボディを採用。また上部にはLEDイルミネーションを備えるTUFシリーズのロゴが配置されており、任意の色で光らせることが可能。

 無線はWi-Fi 6ことIEEE 802.11axに対応していて、最大通信速度は5GHz帯が4804Mbps、2.4GHz帯が574Mbps。外部アンテナを6本備えていて、安定した通信が行える。

後部と左右側面に外部アンテナを6本備え、安定した無線LAN通信が可能

 有線LANはWAN×1、LAN×4の5ポート用意され、いずれも1000BASE-T対応。有線LANのリンクアグリゲーションもサポートしており、構成次第では、WAN/LANとも最大2Gbpsでの通信が可能となる。

 このほか、ルーターで接続したVPNに対して指定したクライアントのみ通信を割り当てる「VPNフュージョン」、ゲームの通信を最優先で処理することで快適なゲームプレイを実現する「ゲームブースト」、メジャーオンラインゲームのポート設定を自動で行う「Open NAT」などの高度な機能が用意されている点も大きな特徴だ。

ボディ上部にはフルカラーLEDイルミネーションを備えるTUFシリーズのロゴを用意
背面には、WAN×1、LAN×4の有線LANポートを備える。全て1000BASE-T対応で、リンクアグリゲーションもサポート

 なお、TUF-AX5400の詳細は、『最大4804MbpsのゲーミングWi-Fi 6ルーター「TUF-AX5400」、非対応端末もVPN接続できる「VPNフュージョン」も魅力』でも詳しく紹介しているので、参考にしてもらいたい。

設定は、WAN接続タイプを「v6プラス」に変更するだけ

 では、TUF-AX5400を利用したv6プラスへの接続手順を見て行こう。とはいえ、その手順は非常に簡単なものだ。

 まずはじめに、ファームウェアがv6プラス接続に対応する最新版となっているか確認しよう。設定メニューの「ファームウェア更新」からファームウェアの確認や更新が行える。まだ最新ファームウェアへのアップデートが行われていない場合には、まずはファームウェアのアップデートを行おう。

 最新ファームウェアの導入が確認できたら、「詳細設定」内の「WAN」を選択する。そして、WANメニュー内にある「WAN接続タイプ」を「v6プラス」に変更し、下部の「適用」ボタンをクリックする。以上でv6プラスへの接続設定は終了だ。設定終了後、念のためTUF-AX5400の再起動をお勧めする。

 以上の手順を実際に試してみたが、接続方式をv6プラスに変更し、数分待つとv6プラスでの接続が行われ、正常に通信が行えた。PPPoEのようにIDやパスワードの設定不要でインターネットに接続しアクセスできるようになるという点は、非常に簡単かつ便利と感じる。

ウェブブラウザーからTUF-AX5400の管理画面にアクセス
最新のファームウェアにアップデートされているか確認し、まだならアップデートを行う
WANメニューを開く
「WAN接続タイプ」を「v6プラス」に変更し、下部の「適用」ボタンをクリックすれば設定完了。あとは自動的に接続される

v6プラスなら「安定・高速・低遅延」!

 ここからは、TUF-AX5400を利用してPPPoE接続とv6プラス接続とで通信速度や遅延にどれだけ違いがあるかをチェックしていこう。

 今回の検証は、筆者の自宅で利用しているフレッツ光回線を利用して行っている。フレッツ光回線の契約は「フレッツ 光ネクスト ファミリー・ギガラインタイプ」で、契約ISPはSo-net。この環境で、PPPoE接続時とv6プラス接続時での通信速度を、速度計測サイト「speedtest.net」と「fast.com」を利用してチェックするとともに、PINGコマンドを利用して人気オンラインゲーム「フォートナイト」のアジアサーバーへのレスポンスタイムを計測した。

 計測に利用したPCはCore i5-11400とSSDを利用したWindows 10 Proマシン。これをTUF-AX5400と有線LANで接続し計測を行った。また、掲載した結果は、3回計測した中で下り速度が中間の結果を採用している。計測した時間帯は、平日の午後8時から午後9時にかけてだ。

 なお、通信速度は回線の収容局や時間帯によって大きく変わるため、この結果はあくまで参考として見てもらいたい。

 まずspeedtest.netの結果だ。なお、今回はPPPoE接続とv6プラス接続とで同じ計測サーバーを選択できなかったため、異なる計測サーバーの結果となっている点はご了承願いたい。

 こちらを見ると分かるように、PPPoE接続では下りが60.50Mbps、上りが99.13Mbpsといずれも100Mbpsを下回るとともに、レスポンスタイムも50msとかなり数字が大きくなっている。

 それに対しv6プラス接続時には、下りが166.54Mbps、上りが155.36Mbpsと、いずれも150Mbpsを上回るとともに、レスポンスタイムも4msと非常に小さな数字だった。実際にはもっと高速な速度が発揮されてもいいように思うが、ほかの時間帯でもほぼ安定してこの程度の速度が計測できており、速度自体の速さはもちろん、速度の安定度という意味でもv6プラスの方が優位と言える。

PPPoE接続時のspeedtest.netの結果
上り、下りともに100Mbpsを下回り、レスポンスタイムも50msとかなり遅くなっている
v6プラス接続時のspeedtest.netの結果
v6プラスとしてはやや遅めの速度ではあるが、上り、下りとも150Mbpsを超え、レスポンスタイムも4msと非常に短かった

 次にfast.comの結果だ。こちらもv6プラス接続の方がPPPoE接続よりも高速だった。それも、PPPoE接続では下りが27Mbps、上りが98Mbpsだったのに対し、v6プラス接続では下りが390Mbps、上りが370Mbpsと、速度は圧倒。同様にレイテンシもv6プラスが圧倒という結果が得られた。

PPPoE接続時のfast.comの結果
v6プラス接続時のfast.comの結果
上りこそ100Mbps近く出ているが、下りは27Mbpsとかなり低速で、レイテンシもかなり大きな数字となった
v6プラス接続時には、下りが390Mbps、上りが370Mbpsと非常に速く、レイテンシも4msとPPPoEを圧倒する結果だった

 最後に「Fortnite」のゲームサーバーへのレスポンスタイム計測の結果だ。今回は、コマンドプロンプトから「ping [アジアサーバーのアドレス] -n 50」と入力し、50回のレスポンスタイムの平均を計測している。

 結果は、PPPoE接続が平均54msだったのに対し、v6プラス接続は平均4msだった。レスポンスタイムにはかなり大きな開きがあり、このことからv6プラス接続ならPPPoE接続よりも圧倒的に低遅延でオンラインゲームをプレイできると考えていいだろう。特に、遅延が大きく影響する対戦格闘ゲームやFPSゲームなどではかなり有利にプレイできるはずだ。

PPPoE接続時のフォートナイトゲームサーバー(アジアサーバー)へのレスポンスタイム
v6プラス接続時のフォートナイトゲームサーバー(アジアサーバー)へのレスポンスタイム
PPPoE接続時には平均で54msとかなり大きな遅延が発生している
v6プラス接続時には平均4msとほぼ無視できるほどの低遅延で、快適にプレイできそうだ

ゲームで勝ちたいならv6プラス対応のASUSルーターで決まり!

 今回のTUF-AX5400を利用した検証の結果、速度や遅延でv6プラス接続がPPPoE接続を圧倒したが、実際には時間帯によってPPPoE接続の方が速度が速くなる場面もあった。

 とはいえ、PPPoEは時間帯による速度の上下が非常に大きく、遅延も大きいのに対し、v6プラス接続は時間帯を問わず安定して速度速く遅延も少なかった。そういった意味で、v6プラス接続の優位性が十分に確認できたと言える。

 それだけに、今回TUF-AX5400でv6プラスがサポートされたのは、大いに歓迎できる。冒頭で紹介した独自ゲーミング機能も含め、ターゲットであるゲームユーザーにとっても非常に恩恵が大きいもので、同社がアピールする「ゲーミングルーターNo.1ベンダー」という立場をより強固にするアップデートといえるだろう。

 高性能なWi-Fi 6ルーターを探している人はもちろん、「ゲームで勝てるルーター」を探している人にもお勧めしたい。

(協力:ASUS JAPAN株式会社)