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Wi-Fi 6ルーター3機種、新生活で使いたいのは? 1人暮らしからファミリーでも、高機能なゲーミング機能搭載モデルで選ぶ

ゲーム向けの機能を備えた「ゲーミングルーター」の存在感が最近増してきている。写真はASUSの「TUF-AX5400」
「通信をいかに安定させるか」がルーターではとても重要。ゲーム分野では、通常の利用よりもさらに重視されるポイントだ。関連する連載では、そうした検証も掲載している。

 今年もすっかり新生活シーズンだ。仕事にせよ学業にせよ、未だ続く新型コロナウイルスの影響を受け、大変な苦労をされている方も多いのではないかと思う。新生活を始めるにあたり、テレワークやリモート授業などが求められ、自宅のインターネット接続環境は今まで以上に重要性が増している。

 加えて、家でオンラインゲームをプレーしたいという人も多いはず。最近はPCだけでなく、家庭用ゲーム機やスマートフォンでも当たり前にオンラインゲームで遊ぶ時代。公私ともに快適なインターネット環境を構築しておく価値がある。

 そこで本稿では、以前からゲーミング機能を持つWi-Fiルーターを手掛けてきたASUSの製品の中から、最新規格であるWi-Fi 6に対応したお手ごろな3つのモデルを紹介したい。プレーするゲームがPCなのかスマートフォンなのか、ほかにWi-Fiを使用する家族がいるのかなど、使用環境や目的に応じた製品選びの参考にしていただければ幸いだ。

 ちなみに、同社のゲーミングルーターについては、連載形式の記事も別途掲載している。安定通信のポイントや電子レンジの影響など、気になるポイントも掲載しているので、あわせて参考ににしてほしい。

【記事目次】

Wi-Fiルーター選びのポイントは?
 Wi-Fiの通信規格
 Wi-Fiの通信速度
 有線LANポートの重要性
 IPv6 IPoEの対応
 将来の拡張性(メッシュ、USBポートなどの機能)
 安定性や耐久性
シンプルイズベスト! 1人暮らしなら「RT-AX55」
ベーシックな中堅モデル「RT-AX3000 V2」 Wi-Fi 6で2402Mbps対応!
本格ゲーミングなら「TUF-AX5400」、v6プラス、有線ゲーミングポート、高い安定性・耐久性…


Wi-Fiルーター選びの基本的なポイントは?

 Wi-Fiルーターは規格や性能の違いで多数の製品が世に出ている。製品選びにおいて、今見ておきたい部分を順に紹介していく。

Wi-Fiの通信規格

 一口にWi-Fiと言っても、技術的な規格はいくつもある。現在最もメジャーかつ最新の規格は、Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax)。今から購入するのであれば、特段の理由がない限りはWi-Fi 6に対応したものを選ぶ方が、先々も無駄にならない。使用している子機にWi-Fi 5(IEEE 802.11ac)など旧規格の製品があっても問題ない。

 Wi-Fi 6では以前の規格に比べ、通信速度の向上に加え、遅延時間の低減も図られている。オンラインゲームで重要とされるPing値が改善される可能性もあるので、スマートフォンでリアルタイム性の高いゲームをプレーする場合は、特にWi-Fi 6であることを重視して欲しい。

Wi-Fiの通信速度

 Wi-Fiの規格が同じでも、通信速度には差がある。Wi-Fi 6では、安価なものでは1201Mbps。製品のグレードが上がるに従って、2402Mbps、4804Mbpsへと上がっていく。この通信速度は5GHz帯を用いた場合のもので、2.4GHz帯を用いる場合は、同じWi-Fi 6でも574Mbpsなど低速になる。

 実際の通信においては、子機の最大通信速度も影響を受ける。Wi-Fi 6対応のPCでは多くが2402Mbpsの通信に対応するが、スマートフォンでは1201Mbps止まりとなるものが多い。使用している、あるいは購入予定の子機の通信速度がどこまでなのかも調べておくといいだろう。

有線LANポートの重要性

 デスクトップPCや据え置き型のゲーム機は、有線LANで接続される場合が多い。Wi-Fi 6の5GHz帯を適切な設定と設置場所で利用すれば、ゲームプレーも何ら支障がない時代になっているが、究極の安定性を求めればやはり有線が勝る。

 ゲーミングルーターと呼ばれる製品の中には、特定の有線LANポートに接続された機器の通信を優先する「ゲーミングLANポート」などと呼ばれる機能を持つものがある。家族がインターネットを利用するなどで通信機器が多い環境でも、ゲームの通信を安定させる効果が期待できる。

IPv6 IPoEの対応

 NTT東西が提供している光ファイバーインターネット接続サービス「フレッツ 光」では、多数の利用者で通信網が混雑して速度が低下する状況がしばしば報告されている。この問題を解決するため、IPv6 IPoEという接続方法を用いて混雑を回避する新たなサービスが提供されている。

 ASUS製Wi-Fiルーターでは、一部の機種がIPv6 IPoE接続の1つである「v6プラス」に対応している。「v6プラス」が利用できるISPと組み合わせることで、通信速度の向上が期待できる。なお「フレッツ光」(光コラボを含む)以外のインターネット接続サービスを利用している場合は気にする必要はない。

将来の拡張性(メッシュ、USBポートなどの機能)

 Wi-FiルーターはWi-Fiでインターネット接続するための機器ではあるが、追加機能が搭載されている製品もある。よく見かけるのがUSBポートで、HDDなどのストレージを接続することで簡易なNASやメディアサーバーとして活用できるものがある。

 また複数のWi-Fi親機をWi-Fiで接続し、通信範囲を広げるメッシュWi-Fi機能も注目されている。以前は特定のメッシュWi-Fi対応機種をそろえて購入するのが一般的だったが、最近はメッシュWi-Fi親機としてWi-Fiルーターを転用できるものも増えてきた。そしてASUSの製品は「AiMesh」という独自機能をいち早く搭載し、異なる機種間でメッシュWi-Fiを構築できる。

安定性や耐久性

 ゲーミングと名の付く製品は、高性能さが売りと思われがち。実際にはそれに加え、安定性や耐久性に配慮されたものが多い。ゲームは長時間の利用が多かったり、機器への負荷が大きかったりするので、一般的な機器より安定性や耐久性が高いものが求められるためだ。

 これらの要素は性能一覧を眺めてもほぼ書かれていないが、製品の特徴として語られていることが多い。ゲームの通信の安定性を求めるなら、Wi-Fiルーターにも安定性や耐久性への配慮がなされているか注目して欲しい。

 以上の点を踏まえて、今回ご紹介する製品は以下の3つだ。

  • RT-AX55(実売価格1万円弱)
  • RT-AX3000 V2(実売価格1万7千円前後)
  • TUF-AX5400(実売価格2万円前後)


シンプルイズベスト! 安価で1人暮らし向けの「RT-AX55」

 ASUS製のWi-Fi 6対応ルーターで最も安価な製品。5GHz帯は80MHz幅までの対応で、最大通信速度は1201Mbps。2.4GHz帯は574Mbps。有線LANポートはWAN側×1、LAN側×4と標準的だ。

「RT-AX55」
【RT-AX55】
Wi-Fi速度1201Mbps(5GHz帯)、574Mbps(2.4GHz帯)
有線LAN1000BASE-T×1(WAN)、1000BASE-T×4(LAN)
USBポートなし
CPUBroadcom 6755(1.5GHz/4コア)
RAM256MB
実売価格1万円弱

 USBポートは非搭載。Wi-FiルーターのUSBポートを使う予定がないのであれば、無駄な機能はなくコンパクトな方がいい、というニーズもあるだろう。機能的にも外見的にもシンプルにまとまっており、本体重量は374gと軽量で、最大消費電力が12Wとエコなのも魅力だ。

 Wi-Fi速度が最大1201Mbpsとなるため、1人暮らしなど使用者が少ない環境で、新たにWi-Fi環境を整えたい人におすすめ。またWi-Fi 6対応のスマートフォンでゲームをするのに、高速化や低遅延といったWi-Fi 6のメリットを安価に享受できる。

 ゲームなど特定の通信を優先するAdaptive QoS機能も搭載。さらにAiMeshにも対応しているため、先々より高性能な機種を購入した際にメッシュWi-Fi親機へ転用したり、安価なメッシュWi-Fiの親機として導入も可能。「とりあえずWi-Fi 6を使ってみたい」という人にはうってつけだ。


ベーシックな中堅モデル「RT-AX3000 V2」 Wi-Fi 6で2402Mbps対応!

 5GHz帯が160MHz幅までに対応し、最大通信速度が2402Mbpsとなる中堅モデル。2.4GHz帯は574Mbps。有線LANポートはWAN側×1、LAN側×4。

「RT-AX3000 V2」
【RT-AX3000 V2】
Wi-Fi速度2402Mbps(5GHz帯)、574Mbps(2.4GHz帯)
有線LAN1000BASE-T×1(WAN)、1000BASE-T×4(LAN)
USBポート1ポート(USB 3.2 Gen 1)
CPUBroadcom 6756(1.7GHz/4コア)
RAM512MB
実売価格1万7千円前後

 ノートPCなど最大2402Mbpsの通信速度に対応したWi-Fi 6子機でも最高速度が出せる。テレワークで大容量のファイルをやり取りするなど、Wi-Fi環境の通信速度を上げたい人は、このくらいのグレードを選んでおきたい。家族などがWi-Fiを同時利用することが多い場合も同様だ。

 「WAN側が最大1Gbps(1000Mbps)なのに、Wi-Fiだけ2402Mbpsになっても意味がないのでは?」と思われるかもしれないが、実際のWi-Fiの通信速度は規格上の数字から、よくて3割程度は落ちてしまう。距離が離れたり遮へい物があったりすると、速度はさらに低下するので、その分を考えると1201Mbpsでの接続よりも実効速度が上がる可能性は高い。

 USBポートを搭載しており、USBストレージを接続して簡易NASとしても使用可能。AiMeshやAdaptive QoSにも対応しており、機能面でも「RT-AX55」に劣らない。また搭載されているRAMが512MBと「RT-AX55」から倍増しており、より安定した動作が期待できる。


本格ゲーミングなら「TUF-AX5400」、v6プラス、有線ゲーミングポート、高い安定性・耐久性……

 ゲーミング向け製品である「TUF」シリーズの製品。5GHz帯が160MHz幅対応、かつストリーム数が4×4となり、最大通信速度が4804Mbpsとなった。この数字は、現時点で発売されているWi-Fi 6対応ルーターでは最高速となる。

「TUF-AX5400」
【TUF-AX5400】
Wi-Fi速度4804Mbps(5GHz帯)、574Mbps(2.4GHz帯)
有線LAN1000BASE-T×1(WAN)、1000BASE-T×4(LAN)
USBポート1ポート(USB 3.2 Gen 1)
CPUBroadcom 6750(1.5GHz/3コア)
RAM512MB
実売価格2万円前後

 本機の最大の特徴は、有線LANにゲーミングポートを備えている点。このポートに接続された機器の通信は、他機器より優先されるため、家族が大容量のダウンロードを仕掛けるなどしても、ゲームの通信を安定した状態に保てる。決められたLANポートに接続するだけで特に設定も要らないので、とても分かりやすい機能だ。

 Wi-Fi通信でも、モバイルゲームの通信を優先させるモバイルゲームモード機能も搭載。通信速度が上がって同時使用でも混雑しにくくなったことと合わせ、スマートフォンでのゲームの通信を快適な状態に保つ。

 さらに、本体の放熱性能を高めた設計や、高負荷や高湿度環境での動作テストなど、安定性や耐久性に特に配慮がなされている。オンラインゲームでは何より重視される安定した通信を実現するため、一般的な機種より頑丈に作られているわけだ。この点はゲーマーに限らず、信頼できる製品を求めるあらゆる人にとってのメリットになる。

 ほかにも一般的な機種より高度なVPNを構築できる「VPN Fusion」や、ゲーム個別のポート開放を簡単にできる「OpenNAT」、高度なセキュリティ機能なども搭載。USBポートも搭載して、v6プラスにも対応と、今回紹介する3機種の中では全部入りの上位機種となっている。その高い機能と性能の割には、価格が2万円前後と抑えられているのも魅力だ。

 なお、ASUSではこのほかにも多くのWi-Fi 6対応ルーターを発売している。USBポートを2ポート備えたものや、2.5Gbpsや10Gbpsに対応する有線LANポートを備え、1Gbps超のインターネット回線に向くものなど、さまざまなニーズに合う製品がある。よく吟味して自分に合う製品を探していただきたい。

「RT-AX3000 V2」のWi-Fi速度を実証

 最後に今回紹介した3機種の中から、最大2402Mbpsの「RT-AX3000 V2」を使ってWi-Fiの速度を測定してみた。

 子機となるPCは160MHz幅の2402Mbpsに対応したもの。通信相手は1Gbpsで有線接続されたPC。同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。

上り下り
近距離924.4935.6
遠距離30.0250.4

※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載

 近距離通信では、上り・下りともに900Mbpsを安定して上回った。有線接続が最大1Gbpsであることを考えると、ほぼ上限いっぱいの速度が出ていると言っていいだろう。大容量のダウンロードが必要になった際、Wi-Fiでは遅いから有線接続に切り替えて……といったことをする必要はもうない。

 遠距離通信だと、下りで50Mbps程度とかなり遅くなる。ただ接続が切れるようなことはなく、ウェブブラウジングなどで違和感もなかった。今回はあえて3LDKのマンションの端から端まで電波を飛ばすワーストケースで試しているので、本機をなるべく家の中央付近に置くなどすれば、1台で家中を十分にカバーできると思われる。

 電波の飛びに関しては、扉の開閉状態や家のつくり、近隣のWi-Fi利用状況などで変化することも多い。もし本機を導入してもWi-Fiが不安定な場所があるなら、AiMeshに対応したASUS製Wi-Fiルーターを追加することで、通信範囲を広げられる。1台でカバーできるかどうか心配な広さの家でも、まずは1台で試してみることをおすすめしたい。

新生活にWi-Fiルーターをお忘れなく

 スマートフォン1人1台の時代、家にいるのに「ギガが足りない!」と言う必要はない。家に居る時間が長くなった今こそ、Wi-Fi環境をしっかりと整えておきたい。

 特に転居の予定がなくとも、Wi-Fiルーターを交換する意味はある。Wi-Fi 6以前の規格のWi-Fiルーターを使っているなら、速度向上だけでなく、電波の到達距離も改善する可能性が高い。また古い製品を使い続けて、大事な時に故障し、「インターネットが使えない!」と慌てる前に交換しておくのも大切だ。

 あとは製品ごとの性能やコンセプトの違いを見定めて、自分に合った製品を選ぼう。特にオンラインゲームをプレーするつもりであれば、ぜひゲーミングルーターに注目しておいていただきたい。

 なお、ASUSでは5月8日まで「ASUSのWiFi6無線ルーター購入&レビューキャンペーン」を実施している。抽選でQUOカードが当たるので、気になる人は確認してみるといいだろう。

(協力:ASUS JAPAN株式会社)