レビュー
2.5GbEが2ポート、でも2万円で買えるゲーミングWi-Fi-ルーター「TUF-AX6000」を試す
2023年6月23日 06:55
ASUSからゲーミングWi-Fiルーターの新機種「TUF-AX6000」が投入された。2021年に発売された「TUF-AX5400」のモデルチェンジにあたる製品で、外見はほぼ同じだが、中身は進化。例えば2.5GBASE-Tの有線ポートが2ポートつくなど改良されている。
同社の「TUF」シリーズはゲーミング向けの多機能さに加えて耐久性の高さもウリ。それでいて価格も抑えられており、実売価格が2万円を切っていることもあり、なかなかお買い得感がある。
では本機のどこがアップグレードされて、実際の使用感がどうなったのか、実機のレビューと合わせてお伝えする。
WAN/LANが2.5Gbpsに強化
まずはスペックの確認から。旧モデルとなる「TUF-AX5400」のスペックも併記する。
TUF-AX6000 | TUF-AX5400 | |
CPU | MediaTek MT7986A(クアッドコア、2GHz) | Broadcom BCM6750(トリプルコア、1.5GHz) |
メモリ | 512MB | ← |
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 6 | ← |
最大速度(2.4GHz帯) | 1148Mbps | 574Mbps |
最大速度(5GHz帯) | 4804Mbps | ← |
Wi-Fiストリーム数 | 4×4(5GHz帯)、4×4(2.4GHz帯) | 4×4(5GHz帯)、2×2(2.4GHz帯) |
WAN | 2.5GBASE-T×1 | 1000BASE-T×1 |
LAN | 2.5GBASE-T×1、1000BASE-T×4 | 1000BASE-T×4 |
USB | USB 3.0×1 | ← |
本機と「TUF-AX5400」を比較すると、最も大きな違いは有線ポートがWAN/LANともに2.5Gbps対応に高速化されたことだろう。
「TUF-AX5400」はこれまで「TUF」シリーズにおいては最上位機種だったが、有線ポートは1Gbps止まりだったのが物足りなかった。本機はきっちりアップグレードしており、昨今の1Gbps超の回線にも対応できるようになった。
Wi-Fiについては、2.4GHz帯のストリーム数が4×4になり、最大速度が1148Mbpsに倍増した。ただ5GHz帯は従来どおり(といっても4804Mbpsは依然として現行機種では最速である)なので、あまり使用上の変化は感じないだろう。
CPUはBroadcomからMediaTekへチップメーカーから変わっている。最近発売された同社のWi-FiルーターはMediaTek製のCPUを搭載しているが、こちらも使用上の変化は感じない。
このほか細かいところでは、5GHz帯で使用できるチャンネルに、「TUF-AX5400」では使えなかった144chが増えている。
LAN側の端子は都合5本。ゲーミング向けポートも搭載
平置き筐体に6本の長いアンテナを搭載した外見は特徴的だ。
壁掛け用の穴のようなものもなく、平置きで使う前提と考えていいだろう。天面にある「TUF」シリーズのロゴは、LEDが仕込まれており動作中は発光する。ゲーミング向けモデルならではの装飾だが、インジケーター類を除けば光るのはここだけで、派手というほどでもない。
アンテナの高さは、最も高い後部中央の2本が直立時に216mm。筐体部分は幅301mm、奥行き174mmと比較的大型なので、設置場所はあらかじめ確認しておくといいだろう。アンテナの向きは外側に向けては自由に変えられるので、高さもある程度は調整できる。
LAN端子は背面に横一列で並んでいる。LAN側は4ポートの1000BASE-Tと1ポートの2.5GBASE-Tが分けてて配置されているのだが、反対側にはWAN側の2.5GBASE-Tもあるので間違えないよう注意。WAN側は端子の内部が青、LAN側は黒で色分けされている。結果的にLAN側が5ポートと一般的な製品より1ポート多いのが助かる人もいそうだ。
LAN側に2.5GBASE-Tを1ポート用意したことにより、悩ましい問題が1つある。4ポートある1000BASE-Tのうちの1ポートが、本機のゲーミング向け機能の1つである「ゲーミングポート」に設定されている。ここに接続した機器のゲームの通信を優先させるという機能を持つのだが、これを使うには2.5GBASE-Tでの接続を諦めねばならない。
もっとも、接続するのが家庭用ゲーム機であれば2.5GBASE-Tの製品がないため、現状では問題ないし、PCであっても、オンラインゲームの通信に限って言えば、1Gbps超の通信を必要とすることはなく、むしろ低速でも安定した通信が求められる。
とはいえ、大容量のゲームをダウンロードする際には2.5GBASE-Tを使いたくもあり、ちょっと悩ましい。個人的には「ゲーミングポート」はあまり気にせず、通信速度に合わせた接続をするのがいいと思う。
ほかにはUSB 3.0端子を1基搭載。USBストレージを接続して簡易NASにしたり、プリンタを接続してネットワークプリンタにしたりといった使い道がある。
「ゲームの通信」を優先する機能を複数搭載
次は本機の機能面をチェックしていく。ゲーミング向けの製品なので、ゲーミング向けの機能から確認しよう。
設定はスマートフォンアプリ「ASUS Router」を用いるのが基本。初期設定はアプリの指示に従うだけで簡単に進められるほか、その後の各種設定も概ねアプリで済ませられる。アプリでは対応していない機能については、Webインターフェイスから設定可能。アプリとWebインターフェイスは併用しても構わない。
ゲーミング向けの機能としては、通信の種類に応じて自動で優先度を設定する「アダプティブQoS」がある。
ゲーミング、メディアストリーミング、テレワーク、ファイル転送といったカテゴリで、通信を優先したい順に並べ変えられる。ゲーミングを最上位にしておけば、大容量のファイル転送をかけてもゲームの通信は優先され、通信負荷が大きい時にもゲームへの影響を最小限にできる、というわけだ。
さらにスマートフォンなどのモバイル端末からのゲームの通信を優先させる「モバイルゲームモード」も使用できる。
「アダプティブQoS」とは別枠で用意されているが、機能的には「アダプティブQoS」のモバイルゲーム特化版と考えてよさそうだ。スマートフォンなどでリアルタイム性の高いゲームをプレイしている時や、大会の参加などシビアなシーンで使えば通信の安心感が増す。
そして先に紹介した有線LANの「ゲーミングポート」。こちらは接続した端末のゲームの通信を優先してくれるもので、特に設定することもなく接続すればいいだけでわかりやすい。
有線・無線の接続方法を問わず、ゲームの通信を可能な限り優先させるための機能が搭載されているのがおわかりいただけるだろう。
特に「モバイルゲームモード」や「ゲーミングポート」は、同社のWi-Fiルーターの中でも、主にゲーミング向けのモデルに絞って搭載されている特別なものだ。
他のゲーミング向け機能としては、ゲームに応じたポート開放を簡単にできる「OpenNAT」がある。
ポートを開放したいゲームタイトルを一覧から選ぶことで、そのゲームに対応するポート開放が行われるという仕組み。ゲームのリストは膨大で、PCだけでなく家庭用ゲーム機のものも含まれている。
Wi-Fiルーター側でVPN接続を確立し、VPN接続機能を持たない機器もVPN経由で通信できるようにする「VPNフュージョン」も搭載。
これはエントリーモデルを除く同社製品の多くに搭載されている機能で、家庭用ゲーム機をVPN経由で接続することもできる。もちろん端末種別は限定されておらず、インターネット接続できるものならIoT機器等でも使用できる。
本機はゲーミング向けとされているが、ゲーミング以外の機能が省かれたわけではない。
セキュリティ機能の「AiProtection」や、ペアレンタルコントロール機能、来客用のゲストネットワーク機能など、一般向けの機能も同社ならではの充実度を保っている。
持っている機能をひたすら羅列したような形になってしまったが、これでも全機能におけるごく一部を見せたに過ぎない。とにかく機能があり過ぎるし、ネットワークの知識があれば細かい設定を詰めていくことも可能だ。表向きはアプリで設定が済むなど簡単さを出しつつ、裏には追いきれないほど多彩な機能を持っているというのが本機の魅力の1つだ。
なお、本体天面にあるロゴの光り方もアプリで調整できる。色を自由に変更できるほか、光り方のエフェクトも3パターンから選択可能。好みに応じてLEDの消灯も可能だ。
Wi-Fiでも軽く1Gbps超え。遠距離でも安定した通信が可能
次にiperf3を使ってWi-Fi接続の通信速度をテストする。
子機となるPCは160MHz幅の2402Mbpsに対応したもの。通信相手は2.5Gbpsで有線接続されたPC。同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。5GHz帯の制御チャンネルは120に設定。アンテナは全て直立で使用した。
上り | 下り | |
近距離 | 1444 | 1552 |
遠距離 | 13.5 | 51.7 |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
テスト結果は、近距離では上り下りとも1.5Gbps前後と十分に高速で安定している。WAN側が1Gbps超の環境があったり、LAN側に2.5Gbpsで接続するストレージがあったりするなら、Wi-Fiでも十分に恩恵を得られるだろう。
遠距離でも通信が不安定になることはなく、低速ながら安定したデータが取れている。実際の利用時には、本機の置き場所をもっと家の中心に近い場所にするのが望ましいのだが、家の端の方に置いても反対まで電波が届くというのは安心感がある。
時代に合った高性能化で一般用途にもお買い得な製品に
本機は「TUF」ブランドのWi-Fiルーターの中では上位モデルとなり、性能的にはデュアルバンドの製品ではトップクラスのものであることは間違いなく、機能面においてもゲーミングのみならず多彩な機能を有している。
旧モデルとなる「TUF-AX5400」からの変化としては、やはりWAN/LANともに2.5GBASE-Tを搭載したのが大きい。インターネット回線は1Gbps超のものが増えてきていると同時に、PCも最近は2.5GBASE-Tを採用したものが多くなっている。またWi-Fiもリンク速度が2402Mbpsまで上がっていることを思うと、2.5GBASE-Tは今の時代にとてもバランスがいい。通信速度もWi-Fiで1500Mbps前後と、2.5GBASE-Tを採用した甲斐のある数字が出ている。
そして価格は発売されて間もない現在で、早くも2万円台を切ってきている。ゲーミング向けで付加価値の高い製品でありながら、5GHz帯で4804Mbps対応のものでは同社で最安。ゲーミング向けの製品としてのみならず、WAN/LANに2.5GBASE-Tを搭載した一般向けの高機能機としても、なかなか競争力のある製品になっている。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)