レビュー
念願の内蔵アンテナ・縦置き型、さらに壁掛けにも対応! ASUSの新型Wi-Fi 6ルーター「RT-AX59U」
2023年8月22日 06:55
ASUSのWi-Fi 6対応ルーターのラインナップに、「RT-AX59U」が加わった。本機の注目点は、何といっても外見にある。
ASUS製のWi-Fiルーターは伝統的に、「平置き筐体に外付けアンテナ」という製品が中心で、縦置きや内蔵アンテナはメッシュ向けのZenWiFiシリーズなど、一部があるのみだ。デザイン的にも、同社の強みであるゲーミング機能を連想させる鋭角さが特徴で、外付けアンテナもいかにも電波がよく飛びそう、という印象がある。
その魅力は大きいが、日本では設置場所を意識した「内蔵アンテナで縦置き」というWi-Fiルーターが多く、「Wi-Fiルーターを新しいものに買い替えたい」となった場合も、買い替え前と同じ場所に設置できる縦型製品が有利だ。
そんな中でついに登場したのが本機。
高性能が売りのASUS製Wi-Fiルーターが、内蔵アンテナの縦置き型を採用したことで、「これなら欲しい」と思う人も多いはず。そうなると電波の飛びが不安だったりもするのだが、そこは実機で確かめていこう。
最大3603Mbpsのミドルスペック機
まずはスペックの確認から。
CPU | MediaTek MT7986A(クアッドコア、2GHz) |
メモリ | 512MB |
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 6 |
最大速度(2.4GHz帯) | 574Mbps |
最大速度(5GHz帯) | 3603Mbps |
Wi-Fiストリーム数 | 3×3(5GHz帯)、2×2(2.4GHz帯) |
WAN | 1000BASE-T×1 |
LAN | 1000BASE-T×3 |
USB | USB 3.0×1、USB 2.0×1 |
Wi-Fi 6の5GHz帯は最大3603Mbps。ハイエンド機が4804Mbpsなのでそれより少し落ちるものの、クライアント側が最速2402Mbpsである現状を考えると、余裕のあるスペックと言える。搭載メモリは512MBで、ASUSの製品群の中ではミドルクラスとなりそうだ。
有線はWAN/LANとも1Gbpsとなるため、インターネット接続が1Gbps以下の環境に適した製品となる。またLAN側は3ポートと少なめなのも要確認。USBポートは2ポートあるので、簡易NASとプリンタサーバーを用意するといった使い方も可能だ。
ちなみに同社のWi-Fiルーターの中で比較すると、スペックで近いのは「RT-AX3000 V2」。5GHz帯のストリーム数が増えて最大速度が1.5倍になったが、有線はLANが1つ減っている。ただ「RT-AX3000 V2」は平置き型の外付けアンテナの筐体なので、実際に比較検討する人は少ないかもしれない。
壁付けにも対応したシンプルなデザイン
では注目の筐体を見ていこう。縦置き型の筐体はプラスチック製で、色はブラック単色。表面が波状の加工がなされているほかは、上から下までストレートな楕円柱形になっている。
同社のWi-Fiルーターと言えば、ポリゴンチックなカクカクした外見が特徴的だが、本機は見ての通りの「丸み」が特徴。デザイン的な主張としては、電源を入れた時に前面下部のLEDが線状に光るのだが、それも装飾というよりはインジケーターに近い印象だ。
土台部分は楕円形を一回り大きくしただけのシンプルな形状。底面には滑り止めが貼り付けられており、設置後も動くことなく安定する。
左側面には、よく見るとゴムで塞がれた場所が2つある。ゴムを取ると穴が出てきて、ここを使って壁付けできる仕組み。据え置きで使う場合にも外見への影響を最小限に抑えている。側面の穴を空けたままにしておく手もあったと思うが、見た目に妥協したくないのだろう。
壁付けに使う部品は、土台部分を外して流用する。土台部分はネジ止めされているわけではなく、引っ張ると外れるようになっている。説明書には「最初は固い場合がある」と書かれているとおり、かなり強い力で引っ張らないと外れなかった。うっかり折らないように、力を入れつつも丁寧に作業したい。外した土台部分には、空いている穴に引っかかるフックが付いている。
天面はよく見るとぴったり閉じてはおらず、蓋の部分と隙間があるように作られている。底面と土台の間にも穴が開けられており、これは内部に熱がこもらないような設計と思われる。本機の天面を何かでふさがないようにすると同時に、ホコリが詰まったり内部に侵入したりしないよう、適度な清掃を心がけたい。
背面端子は上から順に、LAN側端子×3、WAN側端子、USB 3.0、USB 2.0、電源ボタン、電源端子、WPSボタンおよびリセットボタンという並び。縦置き型ではよくある配置だ。LAN端子はWAN側が青、LAN側は黒に色分けされているので間違えることもない。
サイズは実測で、筐体部分が130×40mm、土台部分が152×61mmで、高さは土台を含めて203mm。特別にコンパクトというわけではないが、ミドルスペックのWi-Fiルーターとしては、設置スペースは小さい方だろう。
内蔵アンテナでも安定した通信が可能
次は気になるWi-Fiの速度を見ていこう。
計測にはiperf3を使い、子機となるPCは160MHz幅の2402Mbpsに対応したもの。通信相手は有線接続されたPC。同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。5GHz帯の制御チャンネルは120に設定。
上り | 下り | |
近距離 | 945.4 | 924.8 |
遠距離 | 16.1 | 77.95 |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
テスト結果は、近距離では上り下りとも900Mbpsを大きく超えている。有線接続の限界となる1Gbpsに迫っており、有線の方がボトルネックになっているようだ。
遠距離では速度は大幅に落ちるものの、接続自体が切れることはなく安定していた。過去に同条件でテストしたWi-Fiルーターと比べても安定性は高く、特に下り速度はかなり速い部類。筆者宅でのワーストケースを想定したテストなので、設置場所を改善すれば1台で家全体を十分にまかなえる。
本機のWi-Fiの飛びは、同社の外付けアンテナを採用した他製品と比べて、特に悪いとは感じない。これはかなり安心できるデータと言えるだろう。
ASUSならではの多機能さも継承
次は本機の機能面をチェックしていく。設定は同社のWi-Fiルーター専用のスマートフォンアプリ「ASUS Router」を利用できる。
初期設定をする際は、アプリから本機を検索して見つけた後、本機にあらかじめ設定されているSSIDとパスワードを入力する。SSIDとパスワードは本体裏面のシールに記載があるほか、説明書等と一緒に入っているセットアップカードにも書かれている。
それ以降の本体設定はアプリの指示に従うだけ。SSIDやパスワードは、セットアップカードにも書かれている初期値をそのまま使ってもいいし、指示される手順の中で好きなものに変更することもできる。ちなみに同社のWi-Fiルーターは、これまで「初期設定作業で接続するためのSSID」はあったが、初期設定時に任意のSSIDとパスワードを入力する必要があった。今回の製品では、「パスワードを製品個別にしているため、初期値をそのまま使ってもらっても問題ない」(ASUS)とのこと。
インターネット接続に関しては、本機がネットワーク接続状況を自動認識して適切な設定を済ませてくれる。通信環境によっては、ISPが提供するIDやパスワードの入力も必要になろうかと思うが、いずれにしても初期設定で困ることはほぼないだろう。
機能面では、ASUS製品の特徴である多機能が本機にも受け継がれている。主だった機能をいくつか確認してみよう。
本機に搭載されているUSBポートは、接続したUSB接続のHDDやSSDをSambaによるファイル共有やFTPサーバーにできる。単体のNASを購入するより安価で、余り物の流用も可能なので重宝する機能だ。またUSB接続したスマートフォンやモデムをバックアップ回線として使用できる「自動USBバックアップWAN」機能も用意されている。
Wi-FiルーターがVPN接続を行う「VPNフュージョン」機能も搭載している。VPN経由の通信を使う機器を選択でき、通常のインターネット接続とも併用できる。これにより、ゲーム機やIoT端末といったVPNに非対応の機器もVPN経由での通信が可能になる。
ほかにもウイルス対策や悪質サイトへの接続ブロックなどを行えるセキュリティ機能「AiProtection」、ASUS製Wi-Fiルーター同士でメッシュネットワークを構築できる「AiMesh」、ゲームやストリーミングなど使用する通信の種別を見分けて優先的に通信させる「Adaptive QoS」、年齢に合わせて通信制限を行えるペアレンタルコントロール機能など、同社のWi-Fiルーターではおなじみの機能もしっかり搭載。
もちろんポートフォワーディングやゲストネットワーク設定といった、一般的なWi-Fiルーターに搭載されている機能も使えるし、指定した日時に毎週自動で再起動をかける「リブートスケジューラー」も用意されている。またフレッツ光のIPv6 IPoEサービス「v6プラス」にも対応しているほか、検証機にはまだ実装されていなかったが、8月14日付けのファームウェア更新でOCNバーチャルコネクトにも対応したとのこと。
そしてこれらの設定は、全てアプリで行えるのも利点だ。設定はアプリのほか、Webインターフェイスも利用可能で、設定可能な項目はさらに増える。ただアプリ側で設定できることもかなり多く、よほどマニアックな使い方をしない限りはほぼアプリだけで完結できる。
「ASUS製品に興味がある、でも置き場所が……」という人は是非!
本機を使うにあたり最も心配していた電波の飛びも問題はなく、機能面も同社ならではの多機能さを継承している。ASUSが提唱するルーター拡張機能「Extendable Router」にも対応しており、本機単体としてだけでなく将来的な活用も考えられる。ちなみに、「Extendable Router」については、10月22日までの間、RT-AX59Uなどの対象製品を買うと、もう一台、Extendable Router対応製品が抽選であたるという「Extendable Router購入キャンペーン」も開催されており、ASUSの力の入れようがうかがえる。
最初に述べたことの繰り返しになってしまうが、「ASUS製のWi-Fiルーターは性能的には良さそうだけれど、平置き形や外部アンテナで設置場所に困る」という人にとっては、安心して使える待望の1台になってくれる。単純なことではあるが、買うか買わないかの境目が超えられるかどうかなのだから、極めて重要なことだ。
性能より形状の話ばかりになってしまったが、日本市場ではやはり「縦置き型で内蔵アンテナ」の製品が圧倒的に人気なのは事実。それに沿った製品をついにASUSが出してくれたというのは、立派なニュースだと思う。
筆者は過去にASUS製のWi-Fiルーターを多数テストしてきたが、性能はもちろん、設定アプリのUIなどの使用感の面でも、極めてレベルが高いと感じている。それだけに日本のユーザーの多くが「平置き型で外部アンテナ」という製品形状で検討対象から外さざるを得なかった点が、とても残念に思っていた。
本機によって同社のWi-Fiルーターの良さが、1人でも多くの日本のユーザーに伝わって欲しいと、お世辞抜きで願っている。と同時に、ASUSには今後もこの形状の製品バリエーションを増やしてくれればと願う(そう簡単には行かないのだろうな、とも思っているが……)。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)