レビュー
多機能で設定アプリも優秀。2402MbpsのミドルスペックWi-Fiルーター「RT-AX3000 V2」
2022年7月29日 10:00
ASUSのWi-Fi 6対応ルーター「RT-AX3000 V2」は、製品名に「V2」とあるとおり、「RT-AX3000」のマイナーチェンジとなる。
スペック上での違いは、ACアダプタの電圧と電流の値が変わった(19V/1.75A→12V/2A)ことだけ。消費電力が若干下がっている可能性はあるが、大きな違いはなさそうだ。
ともあれ本製品は、Wi-Fi 6で最大2402MbpsというミドルスペックのWi-Fiルーターとして、ASUSのラインアップ中ではコストと性能のバランスがいい機種と言える。こちらの実機をお借りしたので、使い勝手を含めて検証していこう。
2402Mbps対応のミドルスペック機
まずは基本的なスペックの確認から。
Wi-Fi 6の最大速度は、5GHz帯で2402Mbps、2.4GHz帯は574Mbps。PCや一部のスマートフォンなどの子機側は、現状の最大速度が2402Mbpsなので、規格の速度をフルに使い切りたい人にマッチする。
有線はWAN、LANともに1Gbpsで、LANは4ポートと標準的な構成。USBも1ポート搭載している。メモリは512MBと比較的余裕があるので、USBを含むさまざまなルーター機能を活用したい人にも向いている。
RT-AX3000 V2 | |
実売価格 | 1万7900円※ |
CPU | Broadcom BCM6756 |
メモリ | 512MB |
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 6(IEEE 802.11ax) |
最大速度(2.4GHz帯) | 574Mbps |
最大速度(5GHz帯) | 2402Mbps |
Wi-Fiストリーム数 | 2×2(5GHz帯)、2×2(2.4GHz帯) |
WAN | 1000BASE-T×1 |
LAN | 1000BASE-T×4 |
USB | USB 3.2 Gen1×1 |
※Amazon.co.jpでの販売価格
本体色はブラック、表面はシボ加工で光沢のないサラサラとした手触り。本体サイズ(幅×奥行き×高さ)は実測で230×130×50mmほどで、基本的には横置きで使う。
本体裏にはフックがかかる穴が2つあるので、壁掛けも可能だ。4本のアンテナは自由に向きを変えられ、直立させた場合の高さは約16㎝になる。
通信速度は極めて安定。遠距離でも切断しづらい
次に、iperf3を使ってWi-Fi接続の通信速度をテストした。子機となるPCは160MHz幅の2402Mbpsに対応したもので、1Gbpsの有線LANでルーターに接続したPCを通信相手のサーバーとしている。
同室内での近距離のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。
上り | 下り | |
遠距離 | 5.0 | 35.2 |
近距離 | 929.4 | 937.8 |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
近距離では極めて通信が安定しており、全ての試行で上り下りとも900Mbpsを超えた。通信のオーバーヘッドを考えると、ほぼベストな値が出ており、文句なしの結果だ。
遠距離では、下り約35Mbps、上り約5Mbpsと、相当落ち込んでいる。それでも接続が途切れることは一度もなく、なおかつ速度もある程度安定していた。「速度は落ちてもしぶとくつながる」という印象だ。
遠距離での測定環境は、Wi-Fiルーターによっては接続が途切れてしまうこともあるもの。通常の利用シーンであれば、もう少し家の中心に近い場所にWi-Fiルーターを置くし、全ての扉を閉めた状態で使うとも限らない。一般的なファミリー向けマンションであれば、本製品だけで家中をカバーできそうだ。
「ASUS Router」アプリでほとんどの設定が可能
本機をテストするにあたり、設定にはスマートフォンアプリ「ASUS Router」を使用した。以前からASUS製Wi-Fiルーターの設定ツールとして用意されているが、設定項目が少なく、詳細な設定が必要な際にはウェブブラウザーで管理画面を開く必要があった。
しかし、アプリが少しずつ改善されてきたのか、一般的に使われるであろう設定や機能は、アプリだけで一通り完了できた。実際にどんな項目を設定できたのかを紹介しよう。
まずは購入直後の初期設定。本機のWANポートにモデムなどからのLANケーブルを接続し、ACアダプターをつないで電源を投入。その後、「ASUS Router」アプリを起動する。
アプリでは最初に、設定を行うデバイスを選ぶ。今回は「RT-AX3000 V2」という型番の頭文字にあるとおり、RTシリーズのルーターなので一番上を選択した。
すると、近くにある未セットアップのWi-Fiルーターを自動検索する。もし、うまく見つからなければ、本体裏にあるQRコードを読み込むか、Wi-Fi設定を手動入力することでも認識可能だ。
見つかったWi-FiルーターのSSIDを選択すると、Wi-Fiルーターへ自動的に接続される。
続いてはWi-Fiルーターの接続設定。今回の接続環境では、モデム一体型のWi-Fiルーターへつなぐかたちとなる。本来はブリッジ接続を選ぶべきだが、今回はあえてDHCPを受ける2重ルーターの環境で進めていく。
最初にVLANタグやIPTVストリーミングに関する確認が出てくるが、特に設定を必要とする場合を除いて、そのまま次へ進む。
次はWi-Fiネットワークの作成だ。Wi-Fi接続に使用するSSIDとパスワードを決めよう。本製品は2.4GHz帯と5GHz帯のデュアルバンドに対応するので、それぞれにSSIDとパスワードを入力する。
もし、2.4GHz帯と5GHz帯を自動で切り替えるバンドステアリング機能を使いたい場合は、[2.4GHzと5GHzを個別に設定する]のチェックを外し、単一のSSIDとパスワードを入力する。どちらに接続するか明確にしたいならSSIDを個別設定し、利便性を優先するならバンドステアリングを使うのがいい。
続いて、ログインアカウントのセットアップ。本機の設定画面に入るためのユーザー名とパスワードを設定する。今回は購入直後なのでパスワードを求められなかったが、今後設定変更を行う際には、ここでユーザー名とパスワードの入力が必要になる。
以上で本機の設定は完了。セットアップが進むのでしばらく待つ。
次はスマートフォンのWi-Fi設定を行う。先ほどは初期状態のSSIDへ接続したが、途中でSSIDの設定を変更しているはずなので、それに合わせてスマートフォン側の設定を変更する必要がある。
無事に本機への接続が確立されると、ネットワークの最適化が行なわれる。何をしているのか詳しくは表示されないが、再びしばらく待つだけでいい。
ここまでが全て終わればと、設定しておいたSSIDとパスワード、ルーター管理者用のIDとパスワードが表示される。忘れないようにスクリーンショットなどを撮っておいてもいいが、漏らすと他人にWi-Fiを使われたり、本体設定を変えられたりする可能性があるので、容易に他人に見られないよう管理しておこう。
以上で初期設定は完了。「Router App」のホーム画面が表示される。
初期設定の後にも、アプリでさまざまな設定変更などの作業が可能だ。画面下のタブから設定を選ぶと、各種の設定項目がズラリと並んでいる。このうち主なものをピックアップしてみよう。
WANの設定では、接続タイプの設定として、今回利用した[DHCP]のほか、任意のIPアドレスを指定する[スタティックIP]、フレッツ光の接続で使われる[PPPoE]、IPv6 IPoE接続サービスの[v6プラス]が選べる。なお、v6プラスの選択肢が表示されない場合は、こちらのウェブページなどから、ファームウェアを最新版へとアップデートしてみて欲しい。
ASUS製Wi-Fiルーターの得意技と言えるのが、QoS機能だ。ゲームやストリーミングなどの種別に応じて通信の優先度を設定できる「Adaptive QoS」では、特定の端末を選んで帯域制限をかけるリミッター機能も利用できる。
DNSは、通常は上位ネットワークで設定されるため2重ルーターの環境では設定不要だが、あえて別のDNSサーバーを指定することもできる。インターネット環境によっては「特定のDNSサーバーを使う方が高速かつ安定する」という声もあるので、必要に応じて使い分けたい。
オンラインゲームやサービスで、ときどき求められることがあるポート転送の設定も可能だ。プロトコルとポート範囲、転送するローカルIPを指定する。ポート番号はコロン区切りで範囲を、コンマ区切りで複数まとめての指定も可能で、双方の組み合わせも使える。複数のポート開放に複数のルールを設定する必要がなく、便利で管理しやすい。
「AiProtection」はセキュリティベンダーであるトレンドマイクロの技術を採用したセキュリティ機能。悪質なサイトへの通信をブロックしたり、脆弱性に対する攻撃から保護したりといった機能を、Wi-Fiルーター側で利用できる。インターネットのセキュリティ管理に自信がないなら、とりあえずオンにしておくのがおすすめだ。
AiProtectionのペアレンタルロック機能も強力だ。接続デバイス単位で、年齢に応じたコンテンツへのアクセスを制限できる。制限は時間帯によってもできるので、昼間はポルノサイトなどへの接続をブロックし、夜はさらにゲームやストリーミングも切る、といった使い方ができる。
来客にWi-Fiへ接続してもらう際のゲスト用ネットワークを、自宅用のWi-Fiネットワークとは別に提供できる。SSIDとパスワードを個別に設定できるほか、アクセスできる時間の制限も可能。個人利用だけでなく、不特定多数の客を相手にした店舗でのサービスにも活用できる。
ネットワークの調子が悪いとき、Wi-Fiルーターにセルフチェックさせるネットワーク診断機能も用意されている。通信に問題が発生しているとき、その原因がWi-Fiルーターなのか、Wi-Fi子機なのか、インターネット回線なのかといった問題の切り分けができる。詳しい人なら自分でできる作業かもしれないが、自動でやってくれるのは便利だ。
ルーターのCPUやメモリの使用率、通信量のモニター機能も搭載。ネットワークが不安定なとき、これらのデータを見れば何が起こっているのか推察するのに役立つ。ちなみにWi-Fiルーターとはいえコンピューターの一種なので、普段問題がないときでも、せめて数カ月に1度くらいは再起動をかけると、安定動作につながる。
本体のファームウェアをアップデートする機能も用意されている。ファームウェアを新しくすることで、不具合が修正されたり、新しい機能が追加されたりする。特別な理由がない限り、最新のファームウェアに更新しておきたい。そう頻繁には更新されないが、たまには思い出して確認しておくといいだろう。
ほかにもさまざまな機能があるが、紹介はこのくらいにしておく。今回のようなレビューなどでマニアックな使い方をする筆者でさえ、現状の「ASUS Router」アプリがあれば特に困らないレベルに達しているが、ウェブブラウザーでアクセスする管理画面には、非常に細かい設定が用意されている。ネットワークに詳しいこだわり派の人は、そちらも覗いてみて欲しい。
後追いでメッシュ化も可能。スタンダードなハードでも十分に多機能
最後に本製品のポイントをもう1つだけ挙げておきたい。ASUSのメッシュ機能である「AiMesh」に対応しており、メッシュの親機・中継機のどちらにもなれるのだ。
筆者宅よりも広そうな家でも、とりあえず購入してみて、もし通信範囲が不足なら「AiMesh」対応Wi-Fiルーターを追加すれば、手軽に通信範囲を広げられるのだ。
メッシュの設定も「ASUS Router」アプリで行える。手順もとても簡単で、既にあるWi-Fi環境にすぐ追加可能だ。メッシュWi-Fiの機器を最初から購入することなく、後からでも追加できるのはとても安心感がある。AiMesh対応Wi-Fiルーターであれば機種は問わないので、好きな性能のものを選べるのも利点だ。
スタンダードで機能豊富、「v6プラス」にも対応通信の安定性も魅力の「RT-AX3000」
本製品はハードウェア的には特別な機能を有しているわけではなく、ASUS製品の中でもスタンダードな部類のものだ。それでも安定した通信や、セキュリティ・QoSといった機能の多彩さ、使いやすい「ASUS Router」アプリなど、ASUS製ルーターの持つ魅力は余すことなく搭載されている。
さらに、最新版のファームウェアでは、IPv6 IPoE接続サービスの1つである「v6プラス」に対応する点も魅力だ。利用するには、フレッツ光回線向けのサービスとなるv6プラスの提供ISP(インターネットサービスプロバイダー)と契約し、本製品のようなIPv6 IPoE接続対応のWi-Fiルーターを使えばいい。
こちらの記事では、「TUF-AX5400」とv6プラスの組み合わせにより、通信速度は10倍以上、Ping値も1/10程度まで改善したという実証結果が出ている。ゲームの通信で重要なPing値が改善するのはゲーマーにとって大きなメリットだ。
設置は横置きタイプで、巨大なアンテナを有している外見は、置き場所の都合や好みによってNGが出ることもあるだろうが、逆に縦置き型はNGという人もいるはず。その点も考慮した上で本機を選べば、想定以上の満足感が得られる製品には違いない。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)