レビュー
Wi-Fiルーターで子どものネット利用を安全に! ASUS「RT-AX3000 V2」の「AiProtection」でアプリやウェブサイトを適切にブロック
2022年9月8日 10:00
子どものインターネット環境を安全なものに
ここ最近、子どもがいる家庭でのインターネットの使われ方が激変している。GIGAスクール構想で小学生にタブレット端末が配布されたり、新型コロナウイルス対応でオンライン授業が導入されたりして、家庭でも充実したインターネット環境が求められるようになってきたのだ。
加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で外出しづらく、ちょっとした風邪症状でも登校しないよう指示されたりもして、子どもが家の中で過ごす時間が増えている。
そんな中では、直接会いにくい友達と連絡を取るのに、LINEなどのメッセンジャーアプリは重宝する。今の子どもにはインターネットにアクセスできる環境が当たり前で、インターネット接続がほぼ必須のゲーム機は、YouTubeなどの動画配信サービスを見るのにも便利だ。
オンラインゲームやメッセンジャーアプリを延々やられるのも困るが、それ以上に公序良俗に反するウェブサイトの閲覧や、フィッシングなどによる詐欺被害、SNSから犯罪に巻き込まれるなど、インターネットに関するあらゆる問題に晒されている。
「うちの子はそんな難しいことはできない」とか、「普段からよく教育しているから大丈夫」とか言う親もいるだろう。しかし実際のところ、全ての子ども達がインターネット端末を持つ現状では、クラスの1人が面白い(親としては困る)使い方を知れば、瞬く間に友達の間へ情報が広がっていく。それは、親に隠れて使う方法も含めてだ。
そんな中で、現状を野放しにしておけば、インターネットに渦巻く悪意から子どもを守れない。運よく何事も起きずに過ごせることを祈るより、親としてできることをしておくべきだろう。
AiProtectionは、強力なセキュリティおよびペアレンタルコントロール機能を持っており、各家庭に合わせた細かい設定が可能だ。具体的に何ができ、どんなサービスを遮断できるのかを実際に試していこう。
大人も助かるセキュリティ対策「AiProtection」
最初にAiProtectionについて説明しておこう。「ウイルスバスター」シリーズなどのセキュリティ製品を手掛けるトレンドマイクロの技術を採用しており、通信を監視して高いセキュリティ機能を追加料金なしで提供する。
具体的には、外部からの攻撃による侵入防止、悪意のあるウェブサイトへのアクセス遮断、ネットワーク内にウイルス感染デバイスが接続された際に外部のサーバーとの接続の検出と通信の遮断といった機能を持っている。これらは、Wi-Fiルーターの設定で「AiProtection」の機能をオンにするだけで動作する。
同様の機能は、PC用のセキュリティソフトも備えているが、AiProtectionは家庭内通信の根本であるWi-Fiルーターで動作するので、スマートフォンやゲーム機、IoT機器など、あらゆる通信デバイスが保護対象になるのがメリット。デバイスごとに個別に設定するのと違い、導入の作業量やコストの面でも優れている。
ウェブサイトを閲覧していて怪しい広告をクリックしてしまったり、言葉巧みな詐欺メールのリンクを開いてしまったりと、誰しもうっかりとすることはある。「これがあればどんな危険な行為からも保護される」とまで過信してはいけないが、転ばぬ先の杖として、大きな安心を得られるだろう。
セキュリティ関連の細かい設定は、本機のウェブ設定画面、およびスマートフォン向けの「ASUS Router」アプリで変更できる。項目の中には、ポートフォワーディングやWPSといった機能もあり、セキュリティ的に無効化を推奨される。使用する場合はリスクを理解した上で、適切に設定しておきたい。
子どものインターネット使用時間を決められる「ペアレンタルコントロール」
AiProtectionのもう1つ重要な機能が、今回の本題であるペアレンタルコントロール。“親が子どもを管理する”という意味で、子どものインターネットの利用に対し、親が制限をかける機能だ。
ASUS Routerアプリでは、AiProtectionとは別に「ペアレンタルコントロール」という設定項目が設けられているのと、画面下の「セキュリティ」タブの2つで設定する。「ASUS Router」アプリでの設定がUIを含めてとてもよくできているので、今回はこちらを利用して説明する。
本機でできるペアレンタルコントロールは、特定の端末の通信を、指定した時間帯でのみ制限できる。制限は通信を完全に遮断するか、ジャンルを指定して遮断する形になる。複数の端末をまとめて設定もできるので、子ども用の設定をグループ化して管理できる。
具体的な設定方法を見ていこう。「ペアレンタルコントロール」の項目では、特定の端末に対して、指定した曜日と時間に通信を遮断できる。例えば「平日のインターネットは夜9時まで」といった時間制限をかけるのに使える。ただし通信が切れるだけなので、オフラインで使用できるアプリには影響しない。
ペアレンタルコントロールの設定画面では、任意のタイミングで全ての通信を遮断することもできる。この場合は親も子どもも関係なく、全てのインターネット通信が切られることになる。
ペアレンタルコントロールとしては、最終手段となる非常停止ボタンみたいなものだが、影響範囲も大きいので、使うとどの機器にどんな影響が出るかはあらかじめ確認しておく方がいい。
子どもの年齢に応じてコンテンツブロック
続いて「セキュリティ」タブを見てみる。こちらはジャンル別の通信遮断ができるので、設定方法を順に見ていこう。
まず最初に、アクセスを制限するルールを年齢区分から選ぶ。0~6歳、6~13歳、13~18歳、18歳以上の4つがあり、年齢が上がるごとに制限が緩くなっていく。具体的な制限は後から個別に設定できるので、ひとまず実年齢に合わせるなどして選択しておく。
次にメンバーの名前をセット。名前は管理上のプロフィール名にあたる。制限をかけたい子どもが2人いる場合、別々の名前を設定し、それぞれ個別に制限内容を変えられるわけだ。
続いて、対象となるデバイスを選択する。接続中のものと、過去に接続されたものがリストアップされる。名前で判断できないものもあるので、各デバイスのMACアドレスで最終確認するといい。複数の端末を一括選択でき、子ども用のスマートフォンとゲーム機をまとめて設定するといったことも可能だ。
次はタイムスケジュールを設定する。ここは先述のペアレンタルコントロールの機能と同じで、通信を遮断する曜日と時間を設定できる。ここで指定する時間は、後述するコンテンツブロックを適用する時間ではなく、通信遮断する時間を指定する独立した機能となる。
そして、いよいよ具体的なコンテンツブロックの項目選択となる。繰り返すが、先述の時間設定とは別の機能で、ここで指定したコンテンツは対象とした端末で常時ブロックされる。執筆時点での「RT-AX3000 V2」で設定できるのは下記の13項目だ。
【ブロックできるコンテンツのジャンル】
- ポルノ
- 違法行為/暴力
- ギャンブル
- インターネット電話
- インスタントメッセージ
- バーチャルコミュニティ
- ブログ
- モバイル
- ファイル転送
- P2P
- ゲーム
- メディアストリーミング
- インターネットラジオ/TV
0~6歳のルールでは、「メディアストリーミング」と「インターネットラジオ/TV」のみ許可されている。6~13歳では「インターネット電話」「モバイル」「ファイル転送」も許可され、年齢区分ごとに許可される項目が多くなる。いずれにしても個別にオン/オフできるので、必要に応じて設定していく。
以上の設定が終われば、設定通りにフィルタリングが動作する。以降は「セキュリティ」タブに名前(プロフィール)のメニューが追加され、設定内容の確認や変更ができる。
ここにある「ブロック」のマークをタップすると、登録された端末の通信を全て遮断できる。先述の「ペアレンタルコントロール」では全ての端末の通信を遮断するかたちだったが、こちらは設定した名前(プロフィール)ごとに遮断できる。
また、一連の設定手順には含まれていないが、設定後のメニューの中にある「安全なブラウジング」の項目も重要だ。機能の説明を見ると、DNSによってフィルターを行うものらしく、設定に応じて悪質なコンテンツやアダルト、広告をブロックするとしている。AiProtection側で持っているブラックリストで、接続を遮断する機能だろう。
「RT-AX3000 V2」でどのウェブサイトやサービスをブロックできる?
ここからは「セキュリティ」の具体例として、設定のコンテンツブロックの項目のオン/オフにより、何が遮断されるのかを見ていきたい。
【今回テストしたサービスとウェブサイト】
- INTERNET Watch
- Apex Legends Mobile(ゲーム)
- クラッシュ・ロワイヤル(ゲーム)
- 少年ジャンプ+(コミック)
- Zoom(ビデオ会議)
- Radiko(インターネットラジオ)
- NHKプラス(インターネットTV)
- YouTube(ストリーミングビデオ)
- TikTok(ストリーミングビデオ)
- Twitter(SNS、短文投稿)
- LINE(インスタントメッセージ)
- Skype(インターネット電話)
- とらのあな(同人誌通販サイト、アダルト商品もあり)
- FANZA(アダルトサイト)
実際にチェックするのは、上記14のサービスとウェブサイトだ。
- INTERNET Watch
まず弊誌INTERNET Watchは、コンテンツブロックを全てかけた状態でも支障なく表示できた。ゲーム情報を扱うGAME Watchや、ホビーを扱うHOBBY Watchの表示にも影響はなかった。
なお「安全なブラウジング」で広告ブロックを指定すると、記事中の広告が表示されなくなる。
- Apex Legends Mobile(ゲーム)
ゲームの項目をオンにした状態でアプリを起動すると、起動後のアカウント入力画面が読み込めず、プレーできない。
ただ、一度アカウント認証が済んでいる状態だと次回からは自動でログインされ、ゲームも普通にプレーできてしまう。プレーした後に都度ログオフするようにすれば、ブロックを有効に機能させられる。
- クラッシュ・ロワイヤル(ゲーム)
ゲームの項目をオンにした状態でアプリを起動すると、ゲームの読み込みが途中で止まり、プレー画面に移行しない。ゲームが一切プレーできない状態だ。
- 少年ジャンプ+(コミックアプリ)
全ての項目をコンテンツブロックしたが、コミックを読むのに支障はなかった。
- Zoom(ビデオ会議アプリ)
全ての項目をコンテンツブロックしたが、ミーティングの呼び掛けやビデオ会議は問題なくできた。「安全なブラウジング」の項目の設定でも影響はない。
- Radiko(インターネットラジオ)
インターネットラジオ/TVの項目をオンにすると、起動時の地域判定が進まなくなり、利用できない。
- NHKプラス(インターネットTV)
全ての項目をコンテンツブロックしたが、リアルタイム放送、録画放送ともに問題なく視聴できた。
- YouTube(ストリーミングビデオ)
全ての項目をコンテンツブロックしたが、特に支障なく動画を再生できた。これについては、「現在、ファームウェアを調整しているため、一時的にブロックできない状態だが、今後のファームウェア更新で改善される予定」(ASUS)とのことだ。
- TikTok(ストリーミングビデオ)
メディアストリーミングの項目をオンにすると、動画が読み込まれない。ただし、タイトルやテキストメッセージは表示されるほか、キャッシュに読み込み済みの動画は再生されるようだ。
- Twitter(SNS、短文投稿アプリ)
インターネット電話の項目をオンにすると、ツイートの表示や投稿ができず、ダイレクトメッセージの受信や投稿もできなくなる。
- LINE(インスタントメッセージ)
インスタントメッセージの項目をオンにすると、メッセージの送受信、音声通話、ビデオ通話の全てが使用できなくなる。
ただし、外部からメッセージが届いた際のスマートフォンへの通知はされる。通知をタップしてアプリを開いてもメッセージを受信できず、内容は確認できないし、返信もできない。
- Skype(インターネット電話)
「LINE」と同じく、インスタントメッセージの項目をオンにすると、メッセージの送受信、音声通話、ビデオ通話の全てが使用できなくなる。
- とらのあな(同人誌通販サイト、アダルト商品もあり)
ポルノの項目をオンにすると、読み込みが進まずアクセスできない。ポルノの項目をオフにし、「安全なブラウジング」の設定でセキュリティ(アダルト含む)を選ぶと、トップページのみならず成人向け商品のページにもアクセスできる。
つまり、AiProtectionとしては、DNSではブロックしないウェブサイトだが、コンテンツ内容の面からブロックをしているようだ。
- FANZA(アダルトサイト)
ポルノの項目をオンにすると、読み込みが進まずアクセスできない。また、ポルノの項目をオフにし、「安全なブラウジング」の設定でセキュリティ(アダルト含む)を選ぶと、アクセス拒否という表示で接続できない。
こちらはDNSの側面からも、コンテンツ内容からもブロックされるというわけだ。ちなみに、「DMM.com」には問題なくアクセス可能だ。
ここまでの検証結果を見ると、アダルトコンテンツのブロックはかなり強力に機能しているし、メッセージアプリのコントロールも十分にできる。アダルトコンテンツや犯罪絡みに対し、一定の安全を確保できるのは確かだ。
とはいえ、コンテンツブロックはある程度は機能しているが、完全にコントロールできているとは言い切れない。
考え方の違いなのか、現時点でYouTubeのブロック手段がないのは惜しいし、Twitterがなぜかインターネット電話の項目でブロックできるなど、どの項目がどんなサービスに作用するのか分かりにくい部分はある。このあたりは、アップデートでの改善を期待したい。
子どもを守るペアレンタルコントロール機能の1つとして活用を
最後に1点注意を。Wi-Fiルーターでできるペアレンタルロックは、そのWi-Fiルーターを通る通信にのみ適用されることだ。
つまり、スマートフォンのWi-Fiをオフにして5Gや4Gのモバイルネットワークに切り替えてしまえば、Wi-Fiルーターのペアレンタルロックは一切機能しない。その場合はスマートフォン側でのペアレンタルロックが必要になる。
モバイルネットワークを使用しないPCやゲーム機、タブレット端末などであれば、Wi-Fiルーターのペアレンタルロックは有効に働く。ただ、この場合も、家の外に持ち出して、友達の家や公衆Wi-Fiなどに接続した場合は機能しない。
以上の点を理解した上で、子どもに合ったペアレンタルコントロール機能の1つとして、Wi-Fiルーターを有効に活用していただきたい。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)