レビュー
ゲーマー向け機能が多すぎ! な最高級Wi-Fiルーター「ROG Rapture GT-AX6000」
2.5GbE、ゲーミングLANポート、モバイルゲームモード、v6プラス対応……
2022年9月2日 10:00
ASUSのWi-Fi 6対応ルーター「ROG Rapture GT-AX6000」が9月2日に発売された。ASUS製品の中でも特に高性能を売りにするゲーミングブランド「ROG(Republic of Gamers)」シリーズの製品となる。
Wi-Fiルーターで注目されるのは、通信規格や速度の違いがほとんど。本機はそれらの点で最高性能であるのは確かだが、それ以外にもさまざまなゲーマー向けの機能や設計を取り入れている。単純なWi-Fiルーターとしての評価に加え、どんなゲーマー向けの機能があるのかも合わせて見ていこう。
高性能なCPUと大容量メモリを搭載。デュアルバンド機の最高峰
まずはスペックを確認しよう。
Wi-Fi 6対応で、ストリーム数は5GHz帯と2.4GHz帯でそれぞれ4×4となり、現状では最速の4804+1148Mbpsの通信速度となる。また、有線はWAN側が2.5GBASE-T、LAN側も2.5GBASE-Tを1ポート搭載しており、有線・無線ともに1Gbps超のインターネット回線に対応できる。もし、2.5GBASE-Tで接続したい機器が複数ある場合は、2.5GBASE-Tに対応したスイッチングハブが別途必要になる。
本機に限らず、ASUS製Wi-Fiルーターは詳細なスペックを公開している。CPUはクアッドコアで2GHzのBroadcom BCM4912、メモリは1GB搭載しており、Wi-Fiルーターとしてはかなり贅沢な構成になっている。Wi-Fiルーターもコンピューターであり、多彩なゲーミング機能を利用すればするほどメモリを食いつぶしていくので、メモリが1GB搭載されているのは安心感がある。
USBポートは2ポート搭載している。USB 3.2 Gen1の方は簡易NAS機能など速度が求められるもの、USB 2.0の方はプリンターを接続するなど、便利に使い分けられる。
市場想定価格 | 5万7618円 |
CPU | Broadcom BCM4912(クアッドコア、2GHz) |
メモリ | 1GB |
Wi-Fi規格 | Wi-Fi 6 |
最大速度(2.4GHz帯) | 1148Mbps |
最大速度(5GHz帯) | 4804Mbps |
Wi-Fiストリーム数 | 4×4(5GHz帯)、4×4(2.4GHz帯) |
WAN | 2.5GBASE-T×1 |
LAN | 2.5GBASE-T×1、1000BASE-T×4 |
USB | USB 3.2 Gen1×1、USB 2.0×1 |
ROGシリーズのWi-Fiルーターとしては、先に「ROG Rapture GT-AX11000」が発売されている。こちらは5GHz帯が2つあるトライバンド、GT-AX6000は5GHz帯が1つのデュアルバンドとなる。ただし、GT-AX11000は3年前に発売された製品で、GT-AX6000の方が搭載CPUが高性能になるなど、最新の設計となっている。
大型筐体に4本のアンテナを搭載
続いて外見を見ていこう。本体はほぼフラットな横置きタイプで、幅約350mm、奥行き約200mmとかなり大柄だ。高さは本体部分だけなら約60mmだが、アンテナを直立させると約230mになる。
アンテナは、大きめのものが4本装着されている。向きはある程度調整できるが、直立させるか外側に倒すかだけで、本体上方に畳むようには動かせない(アンテナの取り外しは可能)。ROGのイメージカラーである赤のクリアパーツを配しているのも特徴だが、ここにLEDは仕込まれておらず、光ったりはしない。
端子類は背面にまとめられている。2つの2.5GBASE-Tポートは独立した配置で、4つの1000BASE-Tが別にまとめられているので、どのポートかを見た目で判別しやすい。有線LANの端子まわりには全て金属プレートが貼られており、耐久性にも配慮されている。ほかに、USBポートや電源端子も背面にある。
正面には、各種インジケーターがあり、その左側にWPSボタン、右側にLEDボタンがある。LEDボタンは押すたびに天面にあるROGロゴの光り方が変わり、消灯も可能だ。
ACアダプターは45W出力。電源プラグと一体化はしておらず、やや太めのケーブルの先がACアダプター部分となっている。サイズはそれほど大きくはないものの、本体を高めの場所に置きたい場合などには、ACアダプターの設置位置も考慮した方がいいだろう。
Wi-Fi 6で約1500Mbps。有線なら2Gbpsのインターネット回線にもフルに対応
次にiperf3を使ってWi-Fi接続の通信速度をテストする。子機となるPCは160MHz幅の2402Mbpsに対応したもの。通信相手は2.5Gbpsで有線接続されたPC。同室内での近距離通信のほか、筆者宅である3LDKのマンションで、通路側の部屋に本機、ベランダ側の部屋の端にPCを置き、間にある3枚の木製扉を閉じた状態で通信した。
上り | 下り | |
近距離 | 980.9 | 1493.0 |
遠距離 | 3.74 | 24.6 |
※単位はMbps。iPerf3はパラメーター「-i1 -t10 -P10」で10回実施し、平均値を掲載
近距離では下りで約1500Mbps、上りでも約980Mbpsと、1000BASE-Tの有線LANを超える速度だ。1Gbps超のインターネット回線を利用しているなら、Wi-Fi接続でも1Gbps超えの速度が期待できる。
一方の遠距離だが、この製品は、通信範囲を広げる同社の独自機能「RangeBoost」を強化した「RangeBoost Plus」の搭載がウリ。利用感は、「RangeBoost」搭載製品と大きな差はなく、数値としては下り約25Mbps、上り4Mbps弱という結果。かなり遠距離だったこともあり、上りの通信は、測定中に途切れることもあった。全体でみると、「遠距離を得意とする製品」というよりは、「近~中距離でしっかり性能を出す製品」と考えた方がいいだろう。
続いて、WAN側の通信速度も調べてみた。筆者宅はNURO for マンションの2Gbps回線があるので、WAN側を2.5GBASE-Tで回線へ、LAN側も2.5GBASE-TでPCと接続し、「speedtest.net」でインターネット回線の速度をテストしてみた。ルーターの動作モードは「ワイヤレスルーターモード」とし、NUROのONU内蔵ルーターと合わせ、あえて二重ルーターの状態としている。
結果は、測定するサービスによって差はあるものの、上り2Gbps、下り1Gbpsの限界に近いデータが測定できることもあった。少なくとも本機がボトルネックになって2Gbpsのインターネット回線速度が落ちるということはなさそうだ。
実用面でもう1つテストしてみたい。本機のUSB 3.2 Gen1ポートに、筆者所有のUSB SSD(2.5インチSSDをUSB HDDケースに入れたもの)を接続して簡易NASを構築し、2.5GBASE-T、1000BASE-T、Wi-Fi 6でそれぞれ接続した際のアクセス速度を「CrystalDiskMark」で測定した。
1000BASE-Tでは最大約118MB/sとなったのに対し、2.5GBASE-Tでは約130MB/sに速度が向上した。ネットワークの速度とUSB SSDの性能からすれば、もっと高速でもいいとは思うが、USB接続でボトルネックが発生している可能性もある。それでも、1000Mbpsの限界は超えているので、2.5GBASE-Tを使う意義はある。Wi-Fiでも100MB/sを超えており、NASへのアクセスは十分快適だ。
なお、簡易NASの設定については、別のモデルにはなるが、こちらの記事で解説しているので参考にして欲しい。
多すぎるほど豊富なゲーミング機能
ASUS製ルーターはソフトウェア面の機能が充実しているのが特徴だが、ROGブランドを冠した本製品は、さらに独自機能が加えられ、極めて多機能となっている。その全て紹介していると凄まじい分量になるので、主なものをピックアップしていこう。
設定に関しては、ウェブブラウザーでのアクセスのほか、スマートフォンアプリ「ASUS Router」が利用できる。筆者はさまざまなルーターを触ってきていてウェブブラウザーでの設定にも慣れているが、「ASUS Router」アプリでの設定は本当に楽で分かりやすいので、初期セットアップからその後の機能設定までを、可能な限りこのアプリで済ませている。
まずはゲーミング関連の機能から見ていこう。本製品には、ゲームの通信を優先させる機能がいくつか搭載されている。最も分かりやすいのが有線LANに搭載された「ゲーミングLANポート」。1000BASE-Tのポートのうち1つに設定されており、ここに接続した機器の通信がほかよりも優先される。
家族がインターネットを使ったり、使用していないPCやゲーム機がバックグラウンドでアップデートをかけたりと、自分の意図しないところで通信が使われることは当然ある。そんなときにも、「ゲーミングLANポート」に接続された機器では安定した通信が確保され、オンラインゲームでの通信ラグの発生などを極力抑えるという仕組みだ。
次は「Adaptive QoS」。インターネット通信には、ウェブブラウジングやストリーミングビデオなどさまざまな種類があるが、本製品が通信種別を見分けて、特定の通信を優先して通すようにする。
ゲームを最優先にするよう設定しておけば、家族の誰かが大容量のダウンロードをしてインターネット回線を食い潰しても、オンラインゲームの通信はダウンロードより優先して通されるので、影響を受けにくくなる。優先する通信は自由に選べるので、テレワーク時のビデオ会議を優先するなど、使い方の幅も広い。
スマートフォンでオンラインゲームをプレイしているときには、「モバイルゲームモード」が使える。Wi-Fi接続されたゲームの通信を優先する仕組みで、「ASUS Router」アプリから簡単にオン/オフできる。
Wi-Fiは電波の混雑や親機との距離、遮蔽物など、通信が不安定になる要因がいくつもある。スマートフォンのゲームをプレイする限りは仕方ない部分はあるにせよ、そこにLAN内の通信混雑が加わるのはいただけない。「モバイルゲームモード」を使うことで、LAN内の混雑問題は軽減できるだろう。
通信の最適化とは別に、ゲームに合わせたポート開放を簡単にする「Open NAT」も搭載する。遊びたいオンラインゲームを一覧から選ぶだけで、適切なポートを開放する。PCゲームだけでなく、プレーステーションやNintendo Switchといった家庭用ゲーム機でも利用できる。
最近のオンラインゲームは、ポート開放を必要としないものも多いが、設定しないとボイスチャットができないといった問題は発生し得る。国内外問わず非常に多くのゲームが登録されており、ゲームごとに調べて対応する手間が省けるので、熱心なオンラインゲーマーには重宝する機能だ。
このほか、ROGブランドのマザーボードやゲーミングPCに搭載されたアプリ「GameFirst V」に対応し、通信帯域幅を最適化する「ROG First」にも対応する。利用できる環境は限られるが、ROGブランド製品を持っている人は頭に入れておくといいだろう。
セキュリティ機能やUSBによるバックアップ回線など、一般向け機能も多彩
これらゲーム関連以外の機能も充実している。特に強力なのがセキュリティまわりで、悪質サイトへの通信や、感染デバイスによる通信をブロックする「AiProtection」では、子どもの年齢に応じた設定が可能なペアレンタルコントロール機能なども利用できる。
先に使用したUSBストレージの機能も、簡易NASのほかにFTPサーバーや、インターネット経由でファイル共有できる「AiDisk」、MacOSのバックアップストレージになる「Time Machine」といった機能も備えている。
さらに、USBモデムやスマートフォンを接続してUSB経由で通信する機能も搭載。メインのインターネット回線が切断した時、自動的にUSB回線へと切り替えるフェールオーバーモードと、両方の回線を併用する負荷分散モードに切り替えて使える。昨今は5Gのデータ量無制限プランや、MVNOによる安価なプランもあるので、トラブル時のバックアップ回線として活用できる。
ほかにも、ASUS製Wi-Fiルーターを複数使って簡単にメッシュネットワークを構築できる「AiMesh」、ゲスト用のWi-Fiネットワークをすぐに作れる「WiFiシェアリング」、インターネット回線のトラブル時の原因究明に本機がセルフチェックする「ネットワーク診断」など、一般家庭で使用するには多すぎるほどの機能を有している。
さらに、フレッツ光のIPv6 IPoEサービスの1つ「v6プラス」にも対応。PPPoE接続での混雑を回避して快適にインターネット環境を使える。
市場想定価格が5万7618円と、一般家庭向けWi-Fiルーターとしては、かなり高価な部類ではある。「もっと安い製品でも通信速度はいっしょでしょ?」と思うかもしれないが、高性能なCPUや大容量メモリ、大きめの筐体など、安定性にも期待が持てる部分も多い。
ゲーマーなら「使用するハードウェアの性能差でゲームに負けるのは許せない」と思うもの。有線・無線の接続方式を問わず、本製品より優れたゲーミングWi-Fiルーターを見つけるのは難しく、導入すればもう負けた責任をWi-Fiルーターには押し付けられない。
本機は、そのブランドである「ROG」の名にふさわしく、「ゲーマーのための機能や設計」に注力した製品。価格はそれなりにしてしまうので決して万人向けとは言えないが、Wi-Fiルーターに究極の性能を求めるのであれば、検討する価値のある製品と言えるだろう。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)