特集
今年こそ「マイナンバーカードで確定申告」、Windowsパソコンで「e-Tax」を実践してみよう
確定申告は「青色申告ソフト」が便利! 活用手順をイチから解説[後編]
2022年2月22日 06:55
前編でも紹介した確定申告の作業の流れは次の図の通りだ。9つのステップのうち、①から③のステップを前編で説明した。「え~っ、まだ3分の1」と悲観することはない。確定申告で大変なのは経費や売上を記帳するまで(=④まで)。クラウドから取引履歴を取り込める比率によるが、③まで済めば半分、④まで進めば6割くらいと思われ、着実にゴールに近付いている。後編は、④の手入力から⑨のe-Taxで送信までを紹介しよう。
[目次]
- クラウドに取引データがない入出金を手入力で記帳しよう
- 現金支払いの取引を手入力で記帳する【概要】【実践】
- 預金の履歴を手入力で記帳する【概要】【実践】
- “売上”と“回収”を手入力で記帳する【概要】【実践】 - 固定資産・減価償却費を設定し、決算作業を開始しよう
- 固定資産の登録と減価償却費の計算【概要】【実践】
- 決算作業開始、固定資産・減価償却の確認【概要】【実践】 - 青色申告決算書・確定申告書を作成しよう
- 青色申告決算書の作成(基本情報・家事按分)【概要】【実践】
- 確定申告書の作成(源泉徴収・所得控除)【概要】【実践】 - e-Taxの準備を整えて、申告書をネットで送信しよう
- e-Taxの事前準備(国税庁編)【概要】【実践】
- e-Taxの事前準備(やよいの青色申告 オンライン編)【概要】【実践】
- e-Taxで申告書を送信【概要】【実践】
前編と同様、この記事は【概要】と【実践】の2段階で構成されている。初めて確定申告をする人や、これまで手書きやExcel、クラウドに対応していない青色申告ソフトを利用している人は【概要】だけ目を通していただきたい。概要の項の下段にある次の概要へジャンプするリンクをクリックすれば概要だけツマミ読みができる。
【実践】では、実際の操作を説明。「分かりにくい固定資産の登録」「家事按分の考え方」などの具体的な手順をキャプチャ画像を使って説明するので、確定申告の作業を始めてから必要な部分だけトリセツ的に読んでいただきたい。
前編に引き続き、【実践】のパートで使用する青色申告ソフトは、MM総研の「クラウド会計ソフトの利用状況調査」で事業者別シェアトップの弥生株式会社が提供する「やよいの青色申告 オンライン」。
「やよいの青色申告 オンライン」は初年度無償キャンペーンを実施中で、「セルフプラン」なら全ての機能が使えて1年間無料。この記事を読みながら実際の操作を無料で試すことができる。
クラウドに取引データがない入出金を手入力で記帳しよう
現金支払いの取引を手入力で記帳する【概要】
青色申告ソフトがクラウド対応になって7~8年が経過した。その間にiPhoneでモバイルSuicaが使えるようになったり、現金払いだった百均や郵便局でスマホ決済やクレジットカードが使えるようになったり、事業経費の取引履歴のデータ化がかなり進んだと筆者自身は思っている。「最近現金で払ったのは、クレカが使えないあそこのコインパーキング……」と思い出すのは極わずかだ。
初めて確定申告をされる人は1年前に支払いの履歴のデータ化など意識しなかったと思われ、現金で支払った経費がそこそこあると思う。これからも現金でしか支払えないケースはそれなりにあるだろう。データがない取引は手入力で記帳しよう。
青色申告には複式簿記の記帳が必用だ。「複式簿記って何?」と思う人もいるだろう。心配は無用、簿記の知識がない人も「やよいの青色申告 オンライン」の指示に従って入力すれば複式簿記によって記帳される。仕訳(=勘定科目の選択)も「文房具」と入力すれば「消耗品費」、「プロバイダ」と入力すれば「通信費」と判別(仕訳)してくれる。
レアな品目の仕訳もINTERNET Watchの読者なら検索すれば見つけられる。そもそも仕訳は多少違っていても納税額に間違いは発生しない。そんなゆる~い意気込みで作業を進めればいいだろう。15年前、簿記の知識など皆無だった筆者は青色申告ソフトを買って初めての確定申告を乗り越えた。複式簿記はもちろん、「出納帳」を「スイトウチョウ」と読むことも知らなかった筆者でさえ自力で青色申告ができた。時代は進化し、自動入力・自動仕訳ができる現在は、青色申告のハードルがかなり低くなったと感じている。
現金支払いの取引を手入力で記帳する【実践】
現金で文房具を買ったとしよう。手入力は、「やよいの青色申告 オンライン」の「かんたん取引入力」で記帳する。[取引例を探す]をクリックし、表示名の欄に「文房具」と記入すると、すぐ下に「文房具の購入」、右側の取引内容の科目に「消耗品費」と仕訳が表示される。
今後も頻繁に手入力する可能性があれば、下段の[よく使う取引に登録する]にチェックを付ける。[選択]をクリックすると科目に「消耗品費」、摘要に「文房具」と記入される。また、右上に[よく使う取引]のボタンが表示される。
取引日をカレンダーから選択、取引手段のプルダウンメニューから[現金(個人用)]を選択し、金額を入力する。文房具を買った領収書が何枚もあるときは左下の[同じ取引を続けて登録]にチェックを付けて[登録]をクリックしよう。
入力内容は下段の取引の一覧に表示される。(勘定)科目に「消耗品費」、取引手段に「現金(個人用)」と記帳された。左側メインメニューの仕訳の入力をクリックすると、複式簿記の記帳が確認できる。左側の借方勘定科目が「消耗品費」、右側の貸方勘定科目が「現金」、補助科目が「個人用」となった。
預金の履歴を手入力で記帳する【概要】
前編で紹介したPayPay銀行(旧:ジャパンネット銀行)のように過去数年分の入出金履歴を取り込める銀行もあれば、三菱UFJ銀行のように前月より古い履歴が取り込めない銀行もある。初年度で前年分の銀行の取引履歴が取得できなかった場合は手入力しなければならない。
銀行口座の設定が事業口座の場合は、勘定科目が「普通預金」、補助科目が銀行名となる。個人口座に設定した場合は勘定科目が「普通預金」、補助科目が「個人用」、または勘定科目が「事業主借」となる。屋号があれば法人口座を用意することになるが、個人名で仕事をされる人も、普段使いの口座とは別に事業用の口座を用意した方が記帳は楽になると思われる。
預金の履歴を手入力で記帳する【実践】
個人口座に設定した銀行口座から電気料金が引き落とされたとしよう。「かんたん取引入力」の[取引例を探す]で、表示名に「電気」と記入し、[電気料金の支払い]を選択しよう。取引内容の科目は「水道光熱費」となった。
科目が「水道光熱費」になっているので、プルダウンメニューから初期設定で補助科目に設定した[電気代]を選択する。取引手段はプルダウンメニューから[普通預金(個人用)]を選択しよう。摘要は「○月分」を記入するも削除するも自由。金額を入力して登録すると完了だ。
クレジットカードは過去1年間の取引履歴を取り込める可能性が高い。もし手入力する場合は取引手段のプルダウンメニューから[クレジットカード(個人用)]を選択すればよい。手入力のコツは、科目ごとに記帳していくことだ。電気料金を1月→2月→3月……と入力するときは[同じ取引を続けて登録]を利用すれば、2月分からは日付と金額だけ修正すれば完了する。日付順や、ランダムに水道光熱費→消耗品費→通信費……と記帳するのは効率が悪い。筆者は(昔は)手入力の記帳を科目ごとにまとめて行うため、領収書を科目ごとにまとめている。
“売上”と“回収”を手入力で記帳する【概要】
経費と売上、どちらを先に記帳してもよい。これまで経費の記帳を説明したので、次は売上の記帳だ。売上は、物販系はその場で現金受け取りもあるが、法人取引では「月末締め翌月末振り込み」といった“掛け売り”が一般的だ。また、フリーランスの場合は、入金時に源泉徴収されることが多い。出版社から原稿料を受け取る場合は必ず源泉徴収されるが、委託業務(制作物の納品やコンサル料など)では法人から個人事業主への報酬は、法人側の税理士の考え方によって源泉徴収されるケースとされないケースがある。加えて、入金時に振込手数料が差し引かれるケースもある。
ちなみに源泉徴収は、原稿料・講演料などで100万円以下の報酬はその10.21%、100万円を超える部分は報酬の20.42%が差し引かれて(源泉徴収されて)支払われる。10.21%、20.42%の税率は、消費税を含まず計算する場合と消費税を含めて計算する場合がある。
よって売上・回収の記帳方法は、「源泉徴収の有無」「源泉徴収が税込計算か税別計算か」「振込手数料の有無」「源泉徴収を前処理(売上時)か後処理(入金時)か」と、いくつかのパターンがある。筆者に限って言及すると、昔は振込手数料が差し引かれることがあったが、最近は引かれた記憶がない。源泉徴収がなければ売上・回収の記帳方法は簡単だが、ここでは「源泉徴収が税込計算か税別計算か」の2つのパターンでやや面倒な売上・回収の記帳をしてみよう。
“売上”と“回収”を手入力で記帳する【実践】
パターン1:
源泉徴収あり、消費税を含めて計算、入金時に源泉徴収、振込手数料なし
パターン1は、3月末に税別1万円の請求をして、4月末に入金。売上は1万円、消費税は1000円、源泉徴収は1123円(1万1000円×10.21%)、入金額は9877円のケース。
「かんたん取引入力」で[収入]タブの[取引例を探す]をクリック。表示名の[商品の販売・売上]を選択。科目が「売上」になっていることを確認して、取引手段のプルダウンメニューから[売掛金]を選択する。回収予定日は4月末、摘要はここでは「原稿料」、取引先は[取引先の設定]で登録済みの取引先名(この例では[インプレス])をプルダウンメニューから選択する。
パターン1は、源泉徴収は消費税を含めた計算なので、金額に1万1000円と入力し、[うち源泉徴収税額]にチェックを付けると、源泉徴収される額が表示されるので、[登録]をクリックすると完了となる。
仕訳の入力で複式簿記による記帳を確認すると、右側:貸方の勘定科目が「売上」で1万1000円、左側:借方の勘定科目が「売掛金」で、補助科目が「インプレス」、金額は源泉徴収を差し引いた9877円となった。
入金の取引履歴がデータで取り込めたら、売掛金の9877円が普通預金の口座に入金されたことが自動的に記帳されるので、入金時の作業は不要。これで売上・回収の記帳が完了となる。
銀行口座の取引履歴がない場合は、入金時も手入力で記帳する。下段の取引の一覧に売上時の記帳が表示されるので、[回収取引を入力]をクリックすると、取引日は回収予定日となり、振替元は「売掛金(インプレス)」、金額は源泉徴収を差し引いた9877円となる。
振替先のプルダウンメニューから振り込まれた銀行口座を選択する。売上の記帳の際に源泉徴収の処理をしてあるので、[手数料負担]と[うち源泉徴収税額]はスルー、[登録]をクリックすると、回収時の記帳が完了する。
念のために確認してみよう。メインメニューの[レポート・帳票]の[売掛帳]を見ると、3月末に源泉徴収分を差し引いた9877円の売上があり、4月末に普通預金に9877円が回収され、売掛金の残高が0円(回収が完了)になっていることが分かる。
パターン2:
源泉徴収あり、消費税を含めず計算、売上時に源泉徴収、振込手数料なし
パターン2は、5月末に税別1万円の請求をして、6月末に入金。売上は1万円、消費税は1000円、源泉徴収は1021円(1万円×10.21%)、入金額は9979円のケース。
「かんたん取引入力」で[収入]タブの[取引例を探す]をクリックし、表示名の[商品の販売・売上]を選択するところまでは同じ。科目が「売上」になっていることを確認して、取引手段のプルダウンメニューから[売掛金]を選択。回収予定日は6月末、摘要はここでも「原稿料」、取引先は[取引先の設定]で登録済みの取引先名(この例では[IP出版])をプルダウンメニューから選択する。
今回は源泉徴収を消費税を含めないで計算するので、金額に1万円と入力し、[うち源泉徴収税額]にチェックを付けると、源泉徴収される額が1021円と表示される。源泉徴収の計算ができたので金額を消費税込みの1万1000円に訂正して[登録]をクリックすると完了となる。回収の記帳は同じ。入金金額が消費税を含めないで計算されているので9979円と合っていれば完了だ。
これで前編および冒頭で紹介した確定申告の“9つのステップ”のうち①~④が完了した。このあとは決算作業に移ろう。
固定資産・減価償却費を設定し、決算作業を開始しよう
固定資産の登録と減価償却費の計算【概要】
膨大な量の経費と売上の記帳が終わったらゴールは間近だ。残る作業は「固定資産の登録と減価償却費の計算」「青色申告決算書の作成」「確定申告書の作成」「e-Taxで送信」となる。
まずは初めて確定申告する人が苦労する「固定資産の登録と減価償却費の計算」から説明しよう。10万円未満の備品は「消耗品費」として記帳する。消耗品費は10万円未満または使用可能期間が1年未満の少額減価償却資産のことで、百均で買った文具も9万円のスマホも消耗品費となる。「消しゴムは消耗するけどボールペンはさして消耗しなくね」とか「スマホは何年か使うぞ」と悩むことはない。10万円未満は消耗品費というルールだ。
これに対し、10万円以上のものは「固定資産」となる。クルマやお高めのパソコン、高額なカメラなどは固定資産だ。固定資産はジャンルごとに耐用年数が定められていて、クルマは6年、パソコンは4年、カメラは5年などとなっている。長期に使用するから価格=価値を分割して経費にしていくことを減価償却という。
例えば仕事用に45万円のカメラを5月に購入したとしよう。購入した時点では固定資産を入手して45万円を支払ったことを記帳する。この段階では経費にはなっていない。決算時に減価償却の方法を毎月定額で5年=60カ月に分割して経費にする処理をすれば、1カ月分は7500円で5~12月の8カ月分の6万円がその年の経費として減価償却費に計上される。翌年からは12カ月分の9万円が経費となり60カ月継続される。
このように10万円以上のものは固定資産を購入したことの記帳と、減価償却費として分割して経費算入する2段階の処理が必要となる。
固定資産の登録と減価償却費の計算【実践】
実際に「やよいの青色申告 オンライン」で記帳してみよう。1段階目は購入時の記帳。「スマート取引取込」において、10万円を超える備品購入の履歴の勘定科目が「工具器具備品」になっていればそれで完了だ。手入力で記帳する場合は、「かんたん取引入力」の支出タブで科目のプルダウンメニューから[固定資産]-[工具器具備品]を選択する。取引手段はここでは[クレジットカード(個人用)]を選択。摘要は資産内容が分かるように記入、金額を記入して登録すると、1段階目の購入時の記帳が完了する。
登録すると「今すぐ[固定資産の新規登録]画面を開いて、固定資産情報を登録しますか?」とポップアップが表示される。すぐに登録する場合は[はい]をクリックしよう。
ここから2段階目。資産の種類は[固定資産]を選択。基本情報の画面では、資産の名称に製品名などを記入。数量は1台、取得日は1段階目の購入日がそのまま反映されている。償却方法の画面では、通常は[定額法]を選択する。ただし、購入価格が10万円以上20万円以下なら[一括償却]を選択すると3年に渡って3分の1ずつ経費とすることができる。青色申告をしている人は[即時償却]を選択すると30万円未満の資産を全額経費として計上できる。
償却情報では耐用年数を入力する。耐用年数は、右側の[耐用年数表へ]をクリックすると耐用年数表が表示される。該当する資産の耐用年数を入力しよう。年数を入力すると普通償却費が自動計算される。最終確認の画面で詳細を確認し登録したら完了となる。
「今すぐ[固定資産の新規登録]画面を開いて、固定資産情報を登録しますか?」とポップアップが表示された際に[いいえ]を選択した場合は、後述する確定申告の手順のStep 1の[開始]をクリックして、該当する固定資産を選択すると、先ほどと同じ資産の種類の画面が表示されるので、同様な手順で入力をしよう。
決算作業開始、固定資産・減価償却の確認【概要】
確定申告の作業もいよいよ後半戦。ステップとしては半分終了だが、労力的にはすでに半分を超え終盤戦に入ったと思う。メインメニューの[確定申告]をクリックすると「確定申告の手順」が表示される。Step 1~4となっていて、「減価償却の計算」「青色申告決算書の作成」「確定申告書の作成」「電子申告(e-Tax)」という流れだ。
最初の「減価償却の計算」は前述したように固定資産を記帳し、減価償却の方法を登録していれば、このStep 1の作業はほとんどない。開業前に購入していて、これからの仕事で使用する固定資産(クルマ、カメラ、パソコン、専用機器など)があればStep 1で追加しよう。
決算作業開始、固定資産・減価償却の確認【実践】
念のため確定申告が2021(令和3年)年分になっていることを確認。申告方法の選択は電子申告(e-Tax)か、書面提出かを選ぶ。すでに固定資産・減価償却の登録は済んでいても、必ずStep 1の[開始]をクリックしよう。
Step 1「減価償却費の計算」を開こう。固定資産を購入して“買ったこと”を記帳した際に、減価償却の登録まで済ませた人は確認するだけだ。「しっかり登録したから確認はいらない」はNG。ここで完了作業をすることで、固定資産の令和3年の減価償却分が経費として計上される。もし未登録の固定資産があれば、ここで追加しよう。
登録済みの固定資産の内容が表示されるので、確認して間違いがなければ[完了]をクリックしよう。戻るとStep 1の右側のチェックマークが緑色に変わり、完了を知らせてくれる。
青色申告決算書・確定申告書を作成しよう
青色申告決算書の作成(基本情報・家事按分)【概要】
Step 2は「青色申告決算書の作成」。作業としては、申告者の氏名・生年月日・住所などの基本情報と、配偶者、扶養家族などの情報を登録する。記帳済みの経費の中で、家事按分が必要なものは比率の登録などを行う。例えば電気代のうち、7割が事業使用で3割が個人使用であれば、電気代の3割分が経費から差し引かれる。これらの作業により、損益計算書、固定資産と減価償却、貸借対照表などの青色申告決算書一式を完成させることができる。
青色申告決算書の作成(基本情報・家事按分)【実践】
Step 2の[開始]をクリックすると基本情報の入力画面が開く。氏名や住所など基本情報を記入しよう。同時に配偶者、扶養親族、業種名、屋号なども記入する。その次は売上、仕入の確認。月ごとの売上、仕入が金額が表示されるので、間違いがないか確認しよう。
いよいよStep 2の最重要ポイント「家事按分」だ。初期設定で補助科目を設定した水道光熱費の右側に[補助科目ごとに事業割合を設定する]と表示されている。ここにチェックマークを付けると「科目の設定」で補助科目とした電気代、ガス代、上下水道代が表示される。
補助科目の設定をしていないと、全ての水道光熱費の合計しか表示されないが、初期設定をしておいたので、電気代、ガス代などが個別に1年分の合計額が集計されている。ここでは事業割合を電気代は70%、ガス代、上下水道代は10%とした。このように最初に補助科目を設定していないと、データを取り込むときに補助科目ごとに分けることもできないし、異なる事業割合で按分することができない。
水道光熱費と通信費(通話代)以外に按分する経費がある人は[水道光熱費や通信費以外の科目についても家事按分をしますか?]を[はい]にすると、その下のほかの勘定科目が表示されるので、按分する必要がある科目を探して事業割合を記入しよう。ここでは車両費を70%とした。
水道光熱費以外にもプライベート使用と事業使用が混ざる科目は、最初の科目設定で分けておくと最後の最後に幸せになれる。もしこの段階で按分する必要のある科目に気付いたときは、残念だが科目の設定に戻ろう。補助科目を作成して、手作業で「東京電力は電気代、東京ガスは……」と1つ1つの補助科目に分けてからここへ戻ろう。
参考までに、プライベートでも買い物や旅行にも使用するクルマに関する経費は、車両費と旅費交通費に分けられる。仕事で支払った高速代、駐車料金は100%事業の経費なので「旅費交通費」で仕訳する。仕事の電車移動やホテル代も同じく旅費交通費だ。ガソリン代や月極駐車場、車検、車両購入費、保険、税金などは「車両費」に仕訳して按分しよう。車両費は基本の勘定科目ではなく、自分で勘定科目を設定する申告ソフトもあるが、「やよいの青色申告 オンライン」ではデフォルトで科目設定されているので、うまく使い分けて欲しい。
余談だが、筆者自身の「やよいの青色申告」には、使用していない(16年前に設定した)科目がいくつもある。租税公課(自動車税)の補助科目に設定した車両費、損害保険料(自動車保険)の補助科目に設定した車両費は何年も使用していない。自動車税も自動車保険も車両費にまとめて仕訳すれば楽になることに気付いたのは起業から数年後だった。起業直後に判断するのは難しいが、よく検討していただきたい。
次は「その他の経費」で、賃貸物件に住んでいる人は地代家賃の情報を記入する。個人事業主で専用オフィスを借りている人は按分の必要はないが、自宅で仕事をする人は家事按分とは別にここで按分しよう。
このあとは従業員や消費税の情報なので、従業員なし、免税事業者はスルーだ。最後に決算の内容を確認して完了となる。完了すると青色申告決算書のPDFがダウンロードできる。書面提出の人は印刷して郵送または税務署に持参しよう。
確定申告書の作成(源泉徴収・所得控除)【概要】
Step 3は確定申告書の作成。Step 2の青色申告決算書は事業内容の申告、この確定申告書は個人の納税の申告となる。配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、生命保険料控除など個人の部分を記入する。サラリーマン経験のある人は年末調整に近いイメージを持ってもらいたい。
作業は大きく分けて2つ。1つは、出版社などの取引先から源泉徴収された報酬を受け取っている人はここで源泉徴収された金額を記入する。もう1つは、各種控除。扶養する家族がいる人は配偶者控除や扶養親族、国民年金、国民健康保険などの社会保険料控除、生命保険に加入している人は生命保険料控除、小規模企業共済、iDeCo(確定拠出年金)に加入している人は小規模企業共済等掛金控除も記入しよう。
確定申告書の作成(源泉徴収・所得控除)【実践】
Step 3「確定申告書の作成」の[開始]をクリックして、まずは提出先の税務署を記入しよう。次は源泉徴収税額の確認。月々の売上の記帳で源泉徴収の処理をした額が、取引先ごとに集計されている。正しく記帳できていれば、取引先から送付された支払調書と合致するはずだ。
源泉徴収して報酬を支払う取引先の多くは「支払調書」を送付してくると思う。支払調書と集計された源泉徴収の額が合っているか確認したい。
事業以外の所得がある人はそれも記入。なければ所得控除へ進もう。まずは所得控除の選択。納税額に影響するので漏れがないように進めたい。多くの個人事業主に該当するのは、国民年金、国民健康保険などの社会保険料控除、小規模企業共済等掛金控除、生命保険料控除、家族がいる人は配偶者控除、扶養控除などだ。
次は選択した控除の具体的な記入をしていく。社会保険料控除や生命保険料控除は控除証明書が届いているはずなので、それを見ながら記入しよう。生命保険も控除証明書を見ながら種類と支払額を記入する。生命保険料控除の複雑な計算は、支払った生命保険料と種類などを記入すれば「やよいの青色申告 オンライン」が自動的に控除額を算出してくれる。配偶者控除、扶養控除は、Step 2「青色申告決算書の作成」で記入した配偶者の所得や扶養親族の誕生日が反映され、控除額は自動的に計算されるので年末調整よりは簡単だ。
記入が完了すると納税額などの確認画面が表示される。問題がなければ完了して確定申告書のPDFをダウンロードしよう。
e-Taxの準備を整えて、申告書をネットで送信しよう
ここからはいよいよ最後、マイナンバーカードを使って、申告書を「e-Taxで送信」するためのステップだ。本稿では、Windowsパソコンでの具体的な手順を紹介していく。
※Macでのe-Taxの手順については別記事で詳しく解説している。
e-Taxの事前準備(国税庁編)【概要】
Step 3の「確定申告書の作成」が終わったら、いよいよ最後“e-Taxで送信”だ。一昔前、e-Taxにチャレンジした先人のブログを読むと地獄絵図の様相で、筆者はある意味“微笑ましく”、ある意味“冷ややかに”見ていた。最近は手順も簡素化され楽になったと思うが、この項で説明する国税庁のe-Taxシステムにつなぐための事前準備は少々面倒な印象だ。これは初年度だけで、2年目以降はシステム変更がなければ不要、翌年からはグッと楽になる。
国税庁のe-Taxシステムの事前準備は以下の4ステップだ。
- 「利用者識別番号」の取得
- ブラウザに拡張機能「e-Tax AP」を追加
- e-Taxの「事前準備セットアップ」のインストール
- マイナンバーカードをe-Taxで利用するための開始手続き
e-Taxの事前準備(国税庁編)【実践】
1.「利用者識別番号」を取得
まずは利用者識別番号の取得。「e-Taxの開始(変更等)届出書作成・提出コーナー」で利用者識別番号を取得をしよう。
[開始届出書(個人の方用)新規]をクリック。サイトが開いたら次へ。入力画面が開くので氏名等を入力。住所と管轄の税務署を記入する。最後は暗証番号や納税用確認番号、メールアドレスなどを記入する。確認が完了すると利用者識別番号が発行される。すでに利用者識別番号を持っている人が再発行をすると、過去のメッセージボックスなどが見えなくなるので注意しよう。
2. ブラウザに拡張機能「e-Tax AP」を追加
次はブラウザに拡張機能「e-Tax AP」を追加しよう。拡張機能「e-Tax AP」の追加が必要なのはMicrosoft EdgeとGoogle Chromeで、Internet Explorer 11は不要だ。読者のPC環境はそれぞれなので、ここでは筆者がe-Tax確認用に用意したほぼ真っさらなPC(起動ドライブ)を使って検証した結果をお伝えする。
EdgeとChromeの環境チェック結果は同じなので、今回はEdgeを使用する。まず、ご自身のPCの環境がe-Taxに接続できるかを確認する。「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」にアクセスし、[マイナンバーカードの読み取りへ]をクリックしよう。環境が整っていれば先に進むことができるが、整っていないと「推奨環境チェック結果」がポップアップ表示される。
下段の設定状況で「Chrome拡張機能」が「×」、その下の「事前準備セットアップ」はChrome拡張機能が設定されていないと確認がとれない、と表示される。この表示はChrome使用時もEdge使用時と同じだ。ちなみにFirefoxでアクセスすると上段の「ブラウザ」が「△」となる。詳細は「利用環境の確認」を見ていただきたい。
[拡張機能のインストールへ]をクリックしよう。Chromeウェブストアの拡張機能の「e-Tax AP」につながり、上段に「ChromeウェブストアからMicrosoft Edgeに拡張機能を追加できるようになりました。」と表示された人は[他のストアからの拡張機能を許可する]をクリックし、[拡張機能の追加]をクリックしよう。
3. e-Taxの「事前準備セットアップ」のインストール
再び「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」にアクセスすると、次は「事前準備セットアップ」が「×」となる。[次へ]をクリックするとe-Taxの事前準備セットアップのサイトが表示されるので、[事前準備セットアップ(Windows用)]をクリック、ダウンロードされた「eTaxUketsuke_Winsetup.exe」を実行しよう。
インストーラーが立ち上がると「すべてのブラウザを終了させる必要があります。」と表示される。以前、「終了……と書かれていても大丈夫でしょ」とそのままインストールがを続けたら、かなり進んだあとにエラーが表示され終了となった。ということで最初からやり直しになるので、ブラウザを終了させてからインストールを実行しよう。
インストールの途中で「JPKI利用者ソフトのインストールを行いますか?」と確認される。これは必須ソフトなので必ずインストールしよう。[次へ]と進めば「事前準備セットアップ」は完了だ。
これで環境が整ったので[マイナンバーカードの読み取りへ]をクリックするとログイン方法の選択画面が表示される。ICカードリーダライタにマイナンバーカードをセットして[ICカードリーダライタで読み取り]をクリックすると、利用者証明用パスワードの入力画面がポップアップする。“4桁”のパスワードを入力すると受付システムのメインメニューが表示される。
4. マイナンバーカードをe-Taxで利用するための開始手続き
次はマイナンバーカードと利用者識別番号・パスワードを紐付ける作業だ。「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」の受付システムにログインしている人はそのまま、ログアウトした人はサイトにアクセスし、マイナンバーカードでログインしよう。
この先の手続きは残念ながら実際に操作して紹介することができない。筆者はすでに開始手続きが済んでいるので手続きの画面が表示されない。国税庁のサイトにある利用開始方法のPDFを参照していただきたい。
e-Taxの事前準備(やよいの青色申告 オンライン編)【概要】
国税庁の事前準備が完了したら「やよいの青色申告 オンライン」を起動してこちらも事前準備をしよう。Step 4「電子申告(e-Tax)」の[インストール]をクリックし、画面の指示に従って「確定申告e-Taxモジュール」をインストールをする。「確定申告e-Taxモジュール」以外に必要なものがあれば、「やよいの青色申告 オンライン」が判別して同時にインストールされる。
e-Taxの事前準備(やよいの青色申告 オンライン編)【実践】
Step 4「電子申告(e-Tax)」の[インストール]をクリックする。弥生のウェブサイトが開き、[確定申告e-Taxモジュールをダウンロード]のボタンをクリックし、ダウンロード・保存したファイルを実行する。国税庁の事前準備で「JPKI利用者ソフト」はインストール済みとなっているので、ここでは「Visual Studio 2019……」と「確定申告e-Taxモジュール」をインストールしよう。
e-Taxで申告書を送信【概要】
いよいよ最後、e-Taxで申告書を送信する。作業はあっと言う間に終わるが、途中でマイナンバー、パスワードの入力がある。マイナンバーのパスワードは3~5回間違えると市役所・区役所などに出向いてリセットする必要があるので、操作を始める前に再確認しておきたい。
e-Taxで申告書を送信【実践】
「やよいの青色申告 オンライン」に戻ると、Step 4の下のボタンが[開始]になっているので、これをクリック。マイナンバーの入力画面がポップアップしたらマイナンバーを入力しよう。続いて「確定申告e-Taxモジュール」がポップアップするので、弥生IDのパスワードを入力して[ログインする]をクリック。
続いてe-Taxにログインする画面が表示されるので、ICカードリーダライタにマイナンバーカードがセットされていることを確認して[ログインする]をクリック。4桁の利用者証明用パスワードを入力すると作成済みの申告書が表示される。[申告データに署名してe-Taxに送信する]をクリックし、6桁~の署名用パスワードを入力すると送信される。
国税庁の事前準備が入力項目が多く、やや手間がかかる印象はあるが、2年目以降は作業は不要となる。これまで「郵送でいいじゃん」と思っていた人も、2年目以降はe-Taxで送信するとあっという間に完了するので「宛名書きして郵便ポストに行くより楽チン」となるはずだ。加えて毎年数万円の節税となる。e-Taxスルーをしている人は、この機会に再検討をしてみることをお勧めしたい。
[前編 目次]
今年こそ e-Taxで「青色申告特別控除65万円」を獲得しよう
- e-Taxで確定申告すると「控除額10万円アップ」
- e-Taxで確定申告すると「毎年2万5000円~4万円お得」
- e-Taxの方法は「マイナンバーカード方式」と「ID・パスワード方式」
- 確定申告の「9つのステップ」
- 無料で始められる「青色申告ソフト」を使ってみよう
- 初期設定のポイント【概要】【実践】
- 勘定科目設定のポイント【概要】【実践】 - 記帳の手間を大幅削減、「アグリゲーション機能」で取引履歴を取り込もう
- 銀行の個人口座の取引履歴を自動で取り込む【概要】【実践】
- 銀行の法人口座の取引履歴を自動で取り込む【概要】【実践】
- クレジットカードの履歴を取り込む【概要】【実践】
- モバイルSuica・スマホ決済などの取引履歴を取り込む【概要】【実践】
- 家計簿アプリなどの外部サービスと連携する【概要】【実践】
- 事業専用口座以外は個人口座とする【概要】【実践】
- 「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」に経費を記帳する【概要】【実践】
- 「スマート取引取込」から「やよいの青色申告 オンライン」に入金を記帳する【概要】【実践】
(協力:弥生株式会社)