ベトナム最新インターネット事情 2011年

~人口8000万人、生産拠点としても市場としても注目を浴びるベトナム

ベトナムのインターネットカフェ。入口のドアが無い店も多く、外からでも中の様子が見て取れる

 ビジネス視点からは、チャイナ・プラスワンの生産拠点候補地として、また近年経済力をつけてきたことから人口8000万人の市場としても注目されるベトナム社会主義共和国(以下ベトナム)。直近では、タイの洪水で日本企業がベトナムへの生産移管を急いでいるとの報道も目にする。

 観光では、おびただしい数のバイクが道路を滑走していく写真などをイメージされるのではないだろうか。多くの人が移動でバイクを利用するということは、移動中は携帯電話を利用できないということを意味する。このため、スマートフォンでサイトを閲覧するベトナム人の姿を街角で見る機会は、携帯電話が急速に普及する中国やインドやタイなどと比べてずっと少なかった。むしろ、公衆無線LANが無料で利用できるカフェやレストランでノートPCを使う姿を見かける機会の方が、スマートフォンユーザーを見かける機会よりもずっと多い。

 近い将来、ベトナム最大の商都であり消費の街であるホーチミンシティで地下鉄が続々と開通する予定となっている。地下鉄を利用する習慣が根付けば、スマートフォン利用率をはじめ、生活習慣の中のネットの利用方法も変わるとは思うが、この記事では、地下鉄開通以前の現状でのインターネット事情について紹介したい。

中国よりも高いインターネット普及率は36.6%、人口を超える携帯電話契約数

 ベトナムのインターネット統計に関しては、ベトナム統計局(General Statistics Office of Vietnam)から最新状況が発表されているほか、ベトナム政府の「INFORMATION AND COMMUNICATIONS PUBLISHING HOUSE」から情報通信白書(White Book)が年に1度発表されている。その他最近では新興の民間調査会社が登場し、インターネット絡みの調査報告書を発表している。

 ベトナム統計局によれば2011年8月の段階で、インターネット利用者数は3130万人でブロードバンド加入数は410万。(ちなみに2010年におけるベトナムで稼働するパソコン台数は532万台)。ベトナムの人口は約8500万人なので、普及率は36.6%と実は中国よりも高い。また今年7月に出たばかりの情報通信白書昨年末の段階では、ネット利用者は2678万人、ブロードバンド加入数は367万となっている。

 民間の調査会社「Cimigo」によれば、インターネット利用時に使うデバイスは「デスクトップPC(84%)」「ノートPC(38%)」「携帯電話(27%)」となっている。携帯電話利用者はここ数年急速に増加しており、携帯電話契約者数は1億1530万で、統計上は1人に1台以上普及している。3Gの契約者数は2010年末の段階で767万。

 つまり主に都市部ではインターネットカフェでの利用のほか、「デスクトップPC+自宅ADSL」ないし「ノートPC+自宅ADSL+外出先の公衆無線LAN」ないし「スマートフォン/タブレットPCによる2G・3Gないしは無線LAN」という形式で利用されているようだ。


アジア各国の過去10年のネット利用者増加率インターネット利用者の推移
パソコン絡みの標語系(?)看板も地方都市でもカフェにはいればノートPCユーザーをよくみかける

何に使われているか~北でビジネス、南でエンターテイメントが多め

 ところで街歩きからは、ネットカフェではゲームで遊ぶベトナム人ばかりなのに反して、カフェでノートPCを広げるベトナム人は、個人ではウェブブラウザを利用する人が多く、カップルだと動画を見る人が多いように感じたが、調査統計ではどうなのだろうか。

 前述の調査会社「cimigo」によれば、「ニュース(94%)」「検索(92%)」「音楽視聴(78%)」「仕事や学校での調査(72%)」「チャット(70%)」「メール(66%)」「音楽ダウンロード(61%)」「動画視聴(47%)」「掲示板(46%)」「オンラインショッピング/オークション(42%)」「WEBゲーム(38%)」「SNS(36%)」「ブログ閲覧(31%)」「オンラインゲーム(30%)」「動画のダウンロード(23%)」「ブログ執筆(20%)」「掲示板への書き込み(18%)」「オンラインバンキング(10%)」となっている。

 また携帯電話によるインターネットの利用用途は「ニュース(76%)」「検索(66%)」「チャット(43%)」「SNS(34%)」「アプリケーションのダウンロード(32%)」「メール(27%)」「音楽視聴(26%)」「画像のアップロード/ダウンロード(26%)」「オンラインショッピングサイト訪問(12%)」「動画視聴(9%)」「オンラインゲーム(8%)」となっている。

 全体で見れば以上のような利用実態ではあるが、若い方が各サービスの利用率が高いなど、年齢別、男女別、さらにはハノイとホーチミンでも利用実態が若干異なる。具体的にはハノイを含む北部のほうがビジネス系用途の利用が若干強い傾向に、ホーチミンシティを含む南部のほうがエンターテイメント系用途の利用が若干強い傾向となっている。

過去4週間の間にネットユーザーが利用したサイトベトナムの人気サイト「ZING me」
年齢別インターネット利用用途北部南部別インターネット利用用途

人口8000万人の市場としても魅力的だが、ネット規制も

 領土問題をはじめとしてベトナム人の対中国のイメージは良くはないが、中国に追随したのか中国のインターネットと共通する点はいくつかある。スマートフォンが大都市で流行り出しているというのもそのひとつだ。

 ベトナムのインターネットカフェは多数あり、特に学校周辺にありがちで、現地の若者の間でオンラインゲームなど娯楽用途ばかり利用されており、ゲームセンター化しているのも中国のそれとよく似ている。オンラインゲームで人気のジャンルのひとつがカウンターストライクなどのFPS、それに中国の「武侠」と呼ばれる中国中世ファンタジーモノだ。あまりの人気にハノイでは学校周辺200m以内に位置するインターネットカフェを閉鎖させたのだが、中国でも同様の処置を先んじて行っている。

 また、中国の金盾システムに比べてあまり知られていないが、ベトナムも中国同様にアクセスを規制している。その代表がFacebookだ。英語で「Vietnam Facebook」と検索するか、日本語で「ベトナム Facebook」と検索してみると、現地でFacebookへのアクセスに苦労する話を読むことができるだろう。

 もっとも完全にアクセスが遮断されているわけでなく、筆者のベトナム滞在中もときどきつながる状態だった。ベトナムではもともとFacebookが利用されていたが後に規制され、まだまだFacebookの利用者が多いところは中国と異なるところだ。反政府運動のプロパガンダに利用されていたために規制されたという説があるようだが、事実かどうか筆者は把握していない。Facebookが利用できない代わりに「Zing me」というベトナム人向けのSNSサイトがあるあたりは、検索の百度や動画の優酷(YOUKU)やミニブログの新浪微博がある中国とよく似ている。

 インターネットの利用において、似ている点が多い中国とベトナムだが、異なる面もある。どの国もそうであるように、ベトナムでもネットの利用率は若者よりも中高年のほうが低い。しかし、中国が政治的歴史的背景から未だに中高年の利用率が極端に低いのに対し、ベトナムはそうした過去がないため中国よりは中高年へのネットは早く普及すると見られている。

 ベトナムの人口は8000万人。アジアの中でも人口は多い部類で、インターネットの普及とともにオンラインショッピングやクーポンサイトが人気となってきており、市場として魅力はあるものの、中国に似たネット検閲のスタンスがあることはビジネスマンなら覚えておいて損はないだろう。

日系企業進出著しい商都ホーチミンシティホーチミンシティよりこじんまりとした首都ハノイ


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(山谷 剛史)

2011/10/31 09:30