特別企画

まだ間に合う、スモールビジネスにおける“年末調整”の事務処理

「クラウド給与計算ソフト freee」を使って目標3日間で一気に片付ける

やっかいな年末調整の事務処理を支援する「クラウド給与計算ソフト freee」の新機能とは?

 年の瀬が迫るこの時期は、何かと忙しくなりがち。年末年始休暇のおかげで営業日が少なく、四半期の区切りでもあり、さらに“年末調整”というイベントもあって、事務処理は普段よりずっと煩雑だ。

 経理担当者にとって年末調整は、還付金の計算はもちろん、紙書類の配布、とりまとめ、従業員からの質問への対応などに時間が割かれ、しかも期限通りに提出されないことも多々あるやっかいなもの。しかし、そんな状況を解決できそうな助っ人が現れた。2014年10月に登場した給与計算に特化したサービス「クラウド給与計算ソフト freee」が、最近になって年末調整の事務処理をサポートする機能を追加したのだ。

 中小企業や自営業者に最適なクラウド会計ソフトとして知られる「freee」の提供するこの新サービス、なんとウェブ画面上だけで年末調整の記入作業が完結、還付金の計算も自動で行われ、数日間という短い期間で年末調整絡みの事務処理が完了してしまうという。本記事掲載時点ですでに12月に入っているが、その気になれば、年内の給与支払いに今年(2014年)の年末調整を反映させることもできそうだ。

 とはいえ、年末調整の処理をするのはもうギリギリのタイミング。実質的に残り数日しかない中で、いきなりfreeeを使い始めて年末調整まで行えるのだろうか? 従業員数名~10名程度の小規模事業者を念頭に、freeeの利用開始から年末調整の処理まで、具体的な手順を見てみよう。

「クラウド給与計算ソフト freee」による年末調整作業の手順

全体の流れ

1)アカウント作成と給与規定の設定【所要時間の目安:10分】
2)従業員を“招待”して個人情報登録【所要時間の目安:数十分~1日】
3)年末調整のための必要事項の記入【所要時間の目安:数時間~数日】
4)給与と税金の“総額”を入力【所要時間:1時間以内】

1)アカウント作成と給与規定の設定【所要時間の目安:10分】

 まず初めにすべきことは「クラウド給与計算ソフト freee」のアカウント作成だ。すでに「クラウド会計ソフト freee」を利用しているなら、そのアカウントでログインするだけでOK。まだアカウントを持っていない場合は新規に登録しよう。といっても、最初に登録する項目はメールアドレスとパスワード、会社名といった簡単な内容のみだ。

 「クラウド給与計算ソフト freee」は有料サービスだが、無料でアカウントを作成して、最初の1カ月間、無料で試用できる。試用期間といっても年末調整機能がフルに利用できてしまうため、まずは今回、年末調整のために使ってみるといいだろう。無事その作業が終了し、気に入ったなら有料サービスの支払い登録をして、来年からでも本格的に給与計算に活用すればよい(なお、試用期間中に支払い登録をすると、さらに1カ月間無料になるので、最大2カ月無料で利用できる)。

「クラウド給与計算ソフト freee」のアカウント作成画面
とりあえず今回は「試してみる」ボタンをクリック。試用期間でも年末調整機能を利用できる

 利用を開始するとトップ画面が表示されるわけだが、実際に年末調整の作業に入る前に、少しだけ準備が必要だ。少なくとも自分の会社の給与規定がどうなっていて、従業員にどんな人がいて、その従業員にどれくらい給料を支払ったのか――といったデータがなければ年末調整は行えない。というわけで、ひとまず自分の会社の「給与規定」の設定を行う。

トップ画面。最初にやること、次にやることがはっきり分かるようになっている

 ここでは、給与計算の締め日、給与の支給日、休日、加入している保険団体、住民税の徴収方法など、基本的な会社の規定を指定していく。まず迷うことはないと思うが、万が一、分からないところがあったら、要所にある「?」アイコンをクリックしてヘルプを読むといいだろう。

給与計算の締め日と支給日を指定
休日の設定
加入している健康保険団体を選ぶ
住民税の扱いや残業代の計算方法も指定する

2)従業員を“招待”して個人情報登録【所要時間の目安:数十分~1日】

続いて従業員の追加だ

 次に、会社で働いている従業員の情報を登録していく。従業員の情報登録には2通りの手順があり、1つはfreeeの運用を担当する管理者(経営者や経理担当者)が従業員の情報を入力していく方法、もう1つは従業員を“招待”して従業員自身に情報入力してもらう方法だ。

このように管理者が入力していくこともできれば……
従業員を“招待”して個人情報の入力をしてもらうこともできる

 従業員を雇用している会社側としては、従業員ごとの基本的な個人情報は把握しているだろうから、管理者に時間があるなら、全従業員の情報をまとめて登録してしまう方が効率的かもしれない。しかし、ここではできるだけ招待する方法をおすすめしたい。というのも、後々、年末調整の必要事項を従業員自身に記入してもらう時には、その従業員は招待されたユーザーでなければならないからだ。また、従業員自身に入力してもらう方が正確を期すためにも好都合なはずだ。

 もしくは、とりあえず管理者の分かる範囲で各従業員の情報を記入しておき、後で招待して従業員に確認と補足的な入力を依頼するのでもよい。社内事情に合わせてフレキシブルに対応できるのがfreeeの利点でもある。ただ、いずれにしても後々のことを考えて招待だけはしておこう。

登録した従業員は一覧できる。それぞれ招待したのか、していないのかも把握可能
後付けで招待するのもOKだ

 なお、招待された従業員は、初めに名前や生年月日、入社年月日、住所、電話番号、メールアドレスなどを入力する(招待された従業員がいつまでも入力しないといった場合を除いて、1人あたり5~10分程度で終わるはずだ)。従業員の年末調整前の作業としてはひとまず、これだけでOK。次は管理者側の操作が終了するまで“待ち”の状態となる。

招待された従業員が入力する内容はこれだけ

 その後、管理者は、従業員からの情報登録(確認)が完了したのを見て、社会保険の加入・未加入や、扶養者数を指定する。従業員の通勤手当などもここで設定しておくとよい。扶養者数と通勤手当は従業員自身に設定してもらうこともできるので、変更があった場合でも速やかに対応可能だ。

管理者が従業員の健康保険、厚生年金保険の加入状況を選択
所得税に影響する扶養者数も指定しておこう
通勤手当などの設定。扶養者数と通勤手当は従業員自身が設定することも可能だ

 管理者は、従業員ごとに月給の額や1日あたりの所定労働時間を設定することもできる。が、これも年末調整にあたっては必須ではない。一方、従業員は通勤手当や給与の振込先口座情報を自分で入力することもできるが、ここまでの手順では必須ではない。必要に応じて管理者側からそれら登録情報の再編集も可能なので安心だ。

従業員の月給、1日の所定労働時間を管理者が入力することもできるが、今の時点では必須ではない
給与の振込先口座も必須ではない

3)年末調整のための必要事項の記入【所要時間の目安:数時間~数日】

 全従業員のひと通りの情報登録が終わったら、右端にある「年末調整」タブを選んで、いよいよ年末調整の処理をしていこう。

 まず管理者側で年末調整に必要な基本的な設定をしておく。年末調整の結果、1年間に支払った税額に過不足があった場合、その調整を給与に反映させるか、年末賞与などに反映させるか、あるいは他の方法で行うかといった点や、それを反映させる月、管轄の税務署、自社の住所・電話番号の情報を入力する。

年末調整の処理を行う画面
まずは基本的な設定を。反映月は12月もしくは翌1月を選べる

 それが終わったら、従業員ごとの年末調整に必要な情報を入力する。つまり、通常なら従業員に年末調整用の書類を配布して記入してもらう作業だ。freeeではこの書類の配布も、手で記入してもらうことも、一切不要。すべてウェブ上で行えるのがポイントの1つとなっている。

 年末調整の画面では、「入力依頼メール」により各従業員にメールで通知して、従業員に年末調整の情報を記入してもらうよう依頼できる。ここでは前述の通り、招待した従業員にのみ依頼できるので、招待がまだであれば後付けでも「従業員」タブから招待の処理をしておこう。

「入力依頼メール」ボタンをクリックすると、従業員に年末調整のための記入をメールで依頼できる
従業員に届いた依頼メール

 依頼されてログインした従業員は、現住所、結婚しているかどうか、扶養控除の対象となる配偶者がいるかどうか、扶養親族の情報と所得、各種保険など、紙の書類に記入するのとほぼ同内容の項目を記入していくことになる。

従業員が記入する項目。通常の年末調整の紙書類に記入する内容とほとんど変わらない

 年末調整にかかわる全体の作業の中で、この“従業員に入力してもらう”ための時間が、最も読みにくいところではある。従業員が少なく、扶養親族や保険の加入もなく、依頼したタイミングがよければ、数時間内にすべての入力が完了するかもしれないし、10名前後の従業員がいれば、場合によっては数日かかってしまうというところもあるだろう。いかにスムーズに記入してもらえるかは、管理者側の腕にかかっていると言えなくもない。

 とはいえ、この点は従来の紙の書類による年末調整でも同様。むしろ、紙で何度も書類のやり取りが発生してしまうことも考えるとなおさらだ。クラウド上で書類を共有しながらの作業の方が時間短縮になるだろう。

4)給与と税金の“総額”を入力【所要時間:1時間以内】

 従業員に記入を依頼している間に、管理者側としてもやっておきたいことがある。それは、この1年間、従業員に支払った給与・賞与などの入力だ。本来なら1カ月ごとの各従業員の給与・賞与を入力していく必要があるが、取り急ぎ年末調整の処理に絞って進めるのであれば、1年間の最終的な給与と税額の“総額”だけ把握していれば大丈夫だ。

 「年末調整」タブで各従業員の一覧から設定したい人をクリックし、「1年間の給与・賞与」にある「未入力金額」のらんに、支払った給与、控除、所得税、賞与などの額を入力していこう。前述の通り、年末調整だけを行うのであれば月ごとの給与の入力は必要ないけれど、少なくとも給与と税金の総額は入力しなければならない。この部分を入力することで、画面右側には還付(または追加徴収)すべき金額が自動計算されて表示されるようになっている。

毎月の給与などを随時入力していくのが通常だが、年末調整だけを行うなら従業員の1年間の給与や税額を直接記入してもOK

 ついでにその下にある「扶養控除の申告」で、管理者側で把握している従業員の現住所を入力しておいてもいいだろう。変更があれば従業員自身が修正するはずだ。

 管理者側が以上の入力を終え、従業員自身による必要事項の入力も終われば、年末調整の作業としては一段落。従業員が入力したか、していないかといったステータスも一覧上で把握できるようになっているので、遅れている従業員には声をかけたり、メールで記入を催促するような対応も取りやすい。

各従業員の入力状況をひと目で把握できる

作業時間は最速で数時間、平均で1日、余裕をとって3~7日

 12月上旬の時点で「クラウド給与計算ソフト freee」の年末調整機能でできることは、ここまで。すべてが完了したら、あとは自動的に計算されて画面に表示された従業員ごとの還付金の額に従って、給与などに反映させることになる。

 なお、各手順で示した所要時間はあくまでも目安的なものだ。従業員がスムーズに入力作業を完了しさえすれば、数名~10名程度の小規模事業所なら作業に要する実質的な時間は最速で数時間、平均して1日程度ではないだろうか。

 これに、前述したような管理者にとってコントロールしにくい従業員の入力作業分の余裕をみて、3日間から1週間というのが現実的な所要期間だろう。いずれにせよ、スムーズに進められれば、年内12月の給与支払いにも十分に間合わせることができるはずだ。

 さらに「クラウド給与計算ソフト freee」では近日中に、実際にこの年末調整の結果を受けた「源泉徴収票」と「給与支払報告書」の出力機能も実装する予定とのこと[追記]。別途、源泉徴収票を作ったり、手書きしたりする必要がなくなり、市区町村に提出すべき給与支払報告書も一気に用意できる。一連の事務作業がさらに楽になるのは間違いない。

 これらの処理を税理士に任せている会社でも、「クラウド給与計算ソフト freee」のアカウントを税理士に渡しておけば、年末調整の結果を参照して必要書類を印刷し、手続きを円滑に進めてもらえるだろう。

給与計算まわりの各種書類の出力にも対応へ、経理がますます楽に

 今回は年末調整に絞って解説したが、「クラウド給与計算ソフト freee」は、年末調整のためだけのソフトではもちろんない。勤怠管理のための勤務時間の入力を簡単に行える「勤務カレンダー」機能や、毎月の給与明細をチェックできる機能があり、従業員が便利に活用できる仕組みも用意されている。

サクサク入力していける勤務カレンダー機能
給与明細の確認も可能

 また、管理者向けには、全従業員の給与の一括支払いを簡便にする金融機関提出用の「総合振込依頼ファイル」を出力する機能、税務署に提出する「所得税徴収高計算書」の出力機能を備え、さらに今後は年金事務所に提出する「被保険者資格取得届」「報酬月額算定基礎届」「報酬月額変更届」「賞与支払届」などを出力する機能も追加される予定だ。

「総合振込依頼ファイル」や「所得税徴収高計算書」などの出力を行える

 「クラウド給与計算ソフト freee」で管理しているデータは、当然ながら「クラウド会計ソフト freee」の方にも連動できるようになっているので、経理関連の作業負担は軽くなり、経営者にとっては損益の見通しも容易になる。年末調整を片付けたついでに他の機能も試してみて、「freee」の使いやすさと効率の良さを実感してみてはいかがだろうか。

「クラウド会計ソフト freee」とも連動。給与設定のみなので支出しか表示されていないが、きちんと活用すれば売上の見通しも立てやすくなる


【追記 2014/12/22 20:15】
 freeeは22日、「クラウド給与計算ソフト freee」が源泉徴収票の出力に対応したと発表した。各従業員の源泉徴収票と扶養控除等申告書・保険料控除申告書をPDFで出力できる。

◇源泉徴収票の出力についてのヘルプページ
https://support.freee.co.jp/hc/ja/articles/203623604

日沼 諭史