清水理史の「イニシャルB」【特別編】

2.5GbEがちょうどいい? それならコレがお買い得!! 2.5GbEが2ポートの高コスパWi-Fi 7ルーター TP-Link「Archer BE400」

TP-Link Archer BE400

 TP-Linkから登場したArcher BE400は、デュアルバンドに対応したWi-Fi 7ルーターだ。688Mbpsの2.4GHz帯+5765Mbpsの5GHz帯という組み合わせで、有線LANも2.5GbpsポートをWANとLANのそれぞれに1ポートずつ搭載する。「Wi-Fi 7や2.5Gbps環境を使ってみたいが、少しでも安い方がいい」という人に適した製品だ。

脱ギガビットの第一歩に

 10Gbps回線の対応エリア拡大や2.5Gbps対応のNASの増加によって、1Gbps以上の通信環境を家庭内に整えたいというニーズが高まっている。

 もちろん、回線も、NASも、PCも、全て10Gbps対応にするのが理想だが、現状、10Gbps対応のWi-Fi 7対応ルーターやスイッチ、LANアダプターの価格は高く、選択肢も限られる。そこで注目されているのが、リーズナブルに構築できる2.5Gbps環境だ。近年では、ゲーミング対応のノートPCや購入しやすい価格帯の2ベイNASなどにも標準的に採用されているうえ、対応Wi-Fiルーターも買いやすい価格になってきた。

 TP-Linkから発売されたArcher BE400は、そんな「脱ギガビット」の第一歩として最適な通信機器のひとつだ。

 2.5Gbps対応のWANポートとLANポートを1つずつ搭載しているうえ、最大5765Mbps(5GHz、4ストリーム対応)のWi-Fi 7を活用することで、PCやスマートフォンを最大2882Mbps(5GHz、2ストリーム時)で接続することができる。

 また、2台の機器をメッシュで組み合わせることで、離れた場所にあるNASなどの有線対応機器を1Gbps越えの速度でつなぐこともできる。

 ワンランク上のネットワーク環境を1.6万円から始めることができるお得な製品と言えそうだ。

流行のデュアルバンドWi-Fi 7

 それでは、実機を見ていこう。

 本製品は、近年のTP-Linkのデザインテーマを踏襲したアンテナ内蔵のスッキリとした印象の製品だ。サイズは200×176×59mmで、決して小さくはないが、縦置きで設置面積が狭くて済むうえ、両端が絞り込まれるようなデザインとなっていることで、コンパクトな印象の製品となっている。

正面
側面
背面

 また、同梱の台座を背面に取り付けることで、壁掛けで利用することも可能となっている。といっても、壁に取り付けるためのアンカーやネジは同梱されないので、自分で用意する必要がある。

 各種インターフェースは側面にあり、有線LANは2.5Gbps対応がWANとLANで各1ポート、さらに1Gbps対応ポートが3ポート搭載されている。LEDは前面側に7個と多めだが、通常時はホワイトに点灯したままで点滅はしない。もちろんアプリからの設定でオフにすることも可能だ。

有線ポートとして、2.5Gbps対応をWANとLANに1つずつ搭載する

 無線のスペックは、前述したように2.4GHz帯が688Mbpsで、5GHz帯が5765Mbpsとなる。本製品は、6GHz帯が省略されたデュアルバンド対応となっており、Wi-Fi 7の特徴の1つとなる6GHz帯の320MHz幅通信は利用できない。

 その代わり、5GHz帯は4ストリーム対応と、帯域の容量が多いのが特徴となっている。近年のミドルレンジのWi-Fi 7ルーターは、2.4+5+6GHzのトライバンドだが、全てを2ストリームにするパターンと、2.4+5GHzのデュアルバンドだが、そのいずれかまたは両方を4ストリーム対応にするという2つのパターンに分かれている。

 どちらが優れているかは意見の分かれるところだが、6GHz帯は長距離通信に弱いので、長距離での利用が想定される場合は、本製品のように2.4+5GHzのデュアルバンド構成で、その代わりに5GHz帯に多くの機器を接続可能で、メッシュ構成のバックホールでも高速な通信を実現できる4ストリーム対応を選ぶメリットがあるだろう。

TP-Link Archer BE400
項目内容
価格1万6800円
CPU-
メモリ-
無線LANチップ(5GHz)-
対応規格IEEE 802.11be/ax/ac/n/a/g/b
バンド数2
320MHz対応×
最大速度(2.4GHz)688Mbps
最大速度(5GHz-1)5765Mbps
最大速度(5GHz-2)-
最大速度(6GHz)-
チャネル(2.4GHz)1-13ch
チャネル(5GHz-1)W52/W53/W56
チャネル(5GHz-2)-
チャネル(6GHz)-
ストリーム数(2.4GHz)2
ストリーム数(5GHz-1)4
ストリーム数(5GHz-2)-
ストリーム数(6GHz)-
アンテナ内蔵4本
WPA3
メッシュ
IPv6
IPv6 over IPv4(DS-Lite)
IPv6 over IPv4(MAP-E)
有線(LAN)2.5Gbps×1+1Gbps×3
有線(WAN)2.5Gbps×1
有線(LAG)-
引っ越し機能-
高度なセキュリティHomeShield
USB-
USBディスク共有-
VPNサーバーOpenVPN/PPTP/L2TP/WireGuard
DDNS
リモート管理機能
再起動スケジュール
動作モードRT/AP
ファーム自動更新
LEDコントロール
ゲーミング機能×
サイズ(mm)200×176×59

同じデザインのArcher BE450とはなにが違う?

 なお、同じサイズで、同じデザインの製品として、Archer BE450という製品が存在するが、今回のArcher BE400との違いは無線と有線、USBになる。

 Archer BE450は2.4GHz帯が1376Mbps対応(4ストリーム)で有線LANも10Gbps×1+2.5Gbps×1+1Gbps×3という構成なのに対して、今回のArcher BE400は2.4GHz帯が688Mbps(2ストリーム)対応で有線LANは2.5Gbps WAN×1+2.5Gbps LAN×1+1Gbps LAN×3となる。また、今回のArcher BE400には、USBポートは搭載されず、簡易ファイル共有機能などは利用できない。

 無線と有線、USBのスペックを若干落とす代わりに、価格を実売1.6万円前後まで下げることで、より買いやすくしたのが本製品ということになる。

Tetherアプリで簡単設定&遠隔管理

 ソフトウェア面も、同社製品共通の使いやすさを実現できている。

 初期設定はPCからも可能だが、付属のWi-Fi情報カードに記載のQRコードを読み取って標準のSSIDに接続し、スマートフォン向けのTetherアプリで簡単に設定できる。もちろん、IPoE方式のIPv6、DS-LiteやMAP-EなどのIPv4 over IPv6接続サービスにも対応しており、初期設定で自動的に回線を判定して接続することができる。

 また、クラウドサービスと連携するTP-Link IDを登録することで、リモートからの管理も可能となっており、遠隔操作で機器を再起動することなどもできる。

Tetherアプリで簡単に設定可能
リモートからの管理や再起動が可能

 このほか、セキュリティ機能としてHomeShieldにも対応しており、無料のベーシックプランでもルーターに脆弱な設定がないかを判断するセキュリティチェック、コンテンツフィルターと時間制限が可能なペアレンタルコントロール機能、特定の端末の通信を優先させるQoS機能が利用できる。有料プランに加入すれば、さらにIoTプロテクション、侵入防止システム、悪意のあるコンテンツのフィルタ、DDoSプロテクションなども利用可能だ。

 エントリークラスのWi-Fi 7ルーターでは、こうした高度なセキュリティ機能を省略するメーカーもあるが、本製品では付加価値としてユーザーに提供されている。

無料のベーシックプランでも基本的な機能を利用可能

性能は十分。メッシュ構成で使うのがおすすめ

 肝心のパフォーマンスだが、2Gbpsクラスの無線と有線を堪能するのに十分な性能を持っている印象だ。

 以下は、木造3階建ての筆者宅でiPerf3のテストを実施した結果だ。単体利用時と2台をメッシュ構成にした場合の両方で速度を計測している。一部、上りが遅いケースがあるが、これは検証に利用したノートPCの省電力機能の影響(バッテリー駆動時に送信パワーが制限される)と考えられる。

ベンチマーク結果
単体/メッシュ方向1F2F3F入口3F窓際
単体上り1940583276113
下り17501200761449
メッシュ上り1870602664587
下り18101170608537

※単位:Mbps
※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 24H2
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
※1Fのみクライアントを電源接続

 結果を見ると、1階に関してはかなり速い。接続先のサーバーを2.5Gbpsの有線LANで接続していることもあり、無線でも1.7~1.9Gbpsという高い数値をマークしている。ピーク時の速度は有線並みといって差し支えない。

 長距離の性能も良好だ。単体でも、もっとも離れた3階窓際で下り400Mbpsと非常に速い。個人的には単体でも十分という印象だ。

 一方で、メッシュ構成にした場合、中継のボトルネックなどもあるため、全体的に速度が平均化されるイメージになる。筆者宅では、全体機に500~600Mbpsに平均化される印象で、2階以上では、家中、どこでも500Mbps前後で快適に通信できた。安定性を重視するならメッシュ構成が向いているだろう。

 また、「PC1---(2.5Gbps有線)---BE400#1---(無線)---BE400#2---(2.5Gbps有線)---PC2」という構成でも検証してみた。PC1を1階に、PC2を3階に設置した場合で、以下のように下り1.4Gbpsほどを達成できた。

 つまり、1階と3階を無線で1Gbpsオーバーで接続できることになる。家に有線の配線がない環境でも、本製品をメッシュで利用すれば高速なフロア間通信が実現できるだろう。

ベンチマーク結果
有線クライアント方向1F-3F
有線クライアント上り1160
下り1430

※単位:Mbps
※サーバー:Ryzen3900X/RAM32GB/1TB NVMeSSD/AQtion 10Gbps/Windows11 24H2
※クライアント:Core Ultra 5 226V/RAM16GB/512GB NVMeSSD/Intel BE201D2W/Windows11 24H2
※1Fのみクライアントを電源接続

2.5Gbpsで様子を見たい人におすすめ

 以上、TP-LinkのArcher BE400を実際に使ってみたが、1.6万円のミドルレンジ製品としては、かなり優秀な性能を持った製品と言える。2.5Gbpsの有線環境で使うのであれば、有力な選択肢になると言えそうだ。

 せっかくならLANポートが全て2.5Gbpsになってくれるとうれしいが、さすがにコストを考えると贅沢と言えるだろう。2.5Gbpsの有線環境を充実させたいのであれば、別途、TL-SG105-M2などの2.5Gbps対応スイッチとの併用を検討するといいだろう。

清水理史の「イニシャルB」チャンネル――LANもWANも2.5ギガがちょうどいい!! TP-Linkから価格と性能を両立させたWi-Fi 7ルーター「Archer BE400」が登場

本稿でも紹介しているArcher BE400のスペックや使い勝手はいかに? 実際にデモをしながら、本体やアプリについて動画でポイントを紹介します。

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清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中