テレワークグッズ・ミニレビュー【特別編】

10GbE対応のNASはどれだけ速い? RAID 5と6と10でどれが速い? M.2 SSDはどこまで速い? いろいろ実験してみた!!

UGREEN NASync DXP4800 Plusで「10GbE化」「M.2 SSD増設」「バックアップ環境構築」「UPS連携」を検証

UGREEN NASync DXP4800 Plusをいろいろ拡張してそのポテンシャルを検証する

 さて、今回は以前にもレビューしたUGREENのNASの続編をお届けしたい。

 お気付きの方もいると思うが今回は「Sponsored」、いわゆる“案件”である。つまり我々無料のメディアの大事な収入源であるわけだが、同時に制作側からすると、案件ということは、すなわち「経費と時間を掛けられる」ということ。つまりいつものレビューだと「ここまではできないかなー」と思うことまでできてしまうワケ。なので今回は経費と時間をかけまくって突っ込んだ検証をやっていきたい。ビバ!案件!!

大容量だと2ベイより4ベイの方がお得?

 では前回の記事を読まれていない人のために、本稿のテーマを紹介しておくと、「これまで2ベイのNASしか使ってこなかった個人ユーザーが4ベイNASを使ったら幸せになれるのか?」だ。

 かくいう筆者は、これまで2ベイのNASを使ってきた。用途は主に写真と動画のバックアップで、仕事と趣味の両方で撮る写真は枚数も多いが、カメラを新機種に買い換える度に1枚あたりのデータ量も増えるので、容量が足りなくなってはより容量の大きいNASに買い換えてきて今は3台目。

 さらに最近は動画を扱うことも増えたので、次に狙うなら実容量で16TBぐらいがほしいところで、それぐらいの容量になると、いよいよ4ベイが視野に入ってくる。

 というのも、16TB以上の実容量を実現したい場合、4ベイの方がコスパが良くなるのだ。

 仮に2ベイNAS(RAID 1)だと、16TBの実容量のためには、16TBのHDDが2本必要となる。NAS向けHDDであるWD Redの場合、記事執筆時点でのAmazonでの販売価格は、16TBのRed Proが9万円弱なので2本で18万円近く必要になる。

 これが4ベイでRAID 5の場合、6TBを4本で実容量18TBほど確保できる上に、6TBのWD Red Plusは2万6000円ちょっとなので4本で10万5000円ほどで済む。厳密に言えばRed ProとRed Plusでは保証期間も違うので完全な比較ではないが、容量に余裕がありつつ7万円以上安く済む計算だ。

 そして今回紹介する4ベイのNAS「UGREEN NASync DXP4800 Plus」が、今なら(4月7日まで)クラファンの早割 最大25%オフで7万4910円で販売中だ。つまり2ベイのまま16TBに増設するのとさほど変わらない予算で最新の4ベイNASが手に入ってしまうわけだ。

UGREEN NASync DXP4800 Plusは、4ベイに加えてM.2 SSD2枚も追加でき、10GbEにも対応する高機能NAS。現在クラウドファンディングの早割25%オフで販売中

▼UGREEN NASync DXPシリーズのクラウドファンディングはこちら

これ1台で実家の親のiPhoneもバックアップできる!!

 そんなわけで前回UGREEN NASync DXP4800 Plusをレビューさせてもらったのだが、その後この続編が決まったので、継続して使わせてもらっている。そして長く使って一番感激しているのが、iPhoneの自動バックアップだ。

 筆者がこれまで使っていた国内メーカーのNASの場合、自宅のWi-Fi環境(NASと同じLAN内)にいないと写真の自動バックアップができなかった。

 しかしUGREEN NASyncの場合、外出先でもWi-Fiに繋がれば自動バックアップができてしまうのだ(設定を変えれば4Gや5G回線でも繋がる)。

 実は前回の記事執筆直後に家族旅行に出かけたのだが、宿泊先のホテルでUGREEN NASのアプリを立ち上げたところ、期せずしてバックアップが始まった。しかもバックグラウンドで動くので、バックアップが終わるのを待つ必要もなく、気がつけば旅先のホテルにいながらその日に撮った旅の写真のバックアップが終わっていた。

 ということは、つまり離れて暮らす家族、両親などのスマホのバックアップもこのNASでまかなえてしまうということだ。

 もちろん最初こそ大量の画像をバックアップするので、おなじLAN内でやったほうがいいが、日々のバックアップであれば、さほど量も多くないので、遠隔地からでも苦労はしないはず。クラウドサービスの置き換えをうたうUGREEN NASync DXPシリーズだが、離れて暮らす家族の分のクラウド代まで賄えるとなると、ますますコスパが良くなってくる。

スマホの設定画面。「Wi-Fiでのバックアップのみ」は自宅Wi-Fiの話かと思ったら外出先のWi-Fiからもバックアップできた。つまり実家のWi-Fiからもバックアップできるということ
しかもバックアップ作業はバックグラウンドで実行できる

写真の自動タグ付けは、学習させてカスタマイズも可能

 それと前回は時間が無くて検証できなかった写真アプリの自動タグ付けについて。

 前回の記事執筆時点では「最近」「人」「場所」までは検証できたものの、「ものを認識する」という項目が空欄のままでどのように使われるのかが不明だった。

 しかし前回記事掲載した直後に確認したところ「動物」「交通手段」「商品コード」という項目が追加されて画像の振り分けが行われていた。やはり最初に大量の写真を入れたことで、認識に時間がかかっていたようだ。

 なお、「動物」はそのまま犬や馬といった動物の写真が、「交通手段」には自転車やクルマなどの乗り物が、「商品コード」にはレシートやQRコードなどの写真が集約された。

「写真」アプリのアルバム。時系列による「最近」、顔認証による「人」、位置情報による「場所」、動画の「ビデオ」に加えて「ものを識別する」にも画像が選別された
AIの顔認証による「人」の分類。かなり小さく写っている人も認識して細かく分類される
ものを識別するの中を見ると、「動物」「交通手段」「商品コード」と、筆者が学習させた「WTCC2015#33」という分類がされている
動物には、犬や馬などが分類。小さく写っている犬もちゃんと選ばれている
交通手段にはクルマ、自転車、カヌー、そして道路標識などが分類される
商品コードはQRコードやバーコードが写った写真が選ばれているようだ

 それとは別に「カスタム勉強」というツールがあって、特定のものが写っている写真だけを選ぶように学習させることができる。必要なのは学習させたいものを別の角度から撮影した10枚の写真だ。そこで、昔のレースで撮影した写真を入れて、特定のマシンの画像を学習させたのだが、これもうまく行った。

 数あるレースの中から、そのカテゴリーのそのカラーリングのマシンの写真が集約された。ただし、カラーリングが同じチームメイトのマシンも含まれてはいた。まぁゼッケン以外のカラーリングは同じなので、致し方ないだろう。

筆者が独自に学習させたもの。前からの写真も後ろからの写真もちゃんと選ばれている
カスタム学習の様子。さまざまな角度から撮影した10枚の写真を登録し、写真の中から学習させたいものを選ぶ

 しかし今まではバックアップしてもなかなか写真を見返す機会がなかったが、こうしてタグ付けされることで、改めて昔の写真を見るきっかけになるし、そうしたときにもサクサク動いてくれるので、写真が趣味の方には本当にオススメできるNASだと思う。

10GbE化を検証!! RAID 5 vs RAID 6 vs RAID 10で速さはどれだけ違う?

 続いてRAID構成と速度の検証をやってみたい。前回はオススメのRAID 5で、最初はHDDを3本だけ入れて、そのあと4本に増設する、ということまでやってみた。検証で使っているのはSEAGATEのNAS用HDD「IronWolf ST8000VN002(8TB)」だ。

 今回は経費が掛けられるので、10GbE環境をそろえての検証をやってみた。UGREEN NASync DXP4800 Plusには、10GbE対応のLANポートが設けられているのだ。それを生かして最大のポテンシャルを引き出してみたい。

 10GbE化のために用意したのは、ノートPCを10GbEに対応させるためのアダプターと10GbE対応のスイッチングハブ。これでノートPCとUGREENのNASを10GbE接続し、その速度を検証する。

10GbE化のためQNAPのUSB4対応アダプター「QNA-UC10G1T」とTP-Linkのスイッチングハブ「TL-SX105」を用意
NASync DXP4800 Plusは2.5GbEに加え、10GbEにも対応している

まずはRAID 5を2.5GbEで検証

 まず前回の続きとして、2.5GbE環境でRAID 5(HDD4本)で計測した結果がこちら。計測にはCrystalDiskMarkを使っている。

RAID 5(HDD4本)×2.5GbEの場合
まずは基準としてRAID 5で2.5GbE環境で測定した結果

 実は前回の検証時にはリードが216MB/s程度で頭打ちしていたのだが、どうやらUSBアダプターに原因があったようでUSBアダプターを変えたところ、リード、ライトともに296MB/s程度出るようになった。296MB/sを8倍すると2368Mbpsなので、おそらくNAS本体の性能の上限というより、ネットワークの限界という印象。つまり10GbEにすればもっと速くなる可能性がある。

RAID 5を10GbE化すると爆速に!!

 そこで同じくRAID 5(HDD4本)のまま10GbE化してみると、なんといきなり4倍近い数字に跳ね上がった。リードで約1150MB/s、ライトも約1100MB/sという結果に。つまり10GbEのポテンシャルをほぼ引き出せていることになる。正直オールSSDにでもしないと10GbEは生かしきれないと思っていたので、この結果には驚かされた。

RAID 5(HDD4本)×10GbEの場合
RAID 5で10GbE環境にした結果。リード側はほぼ10GbEの上限、書き込み時はパリティデータを作るので遅くなるハズなのだが、それでも爆速だ

 RAID 5の場合、単にデータを転送だけでなく、パリティと呼ばれるデータを作って書き込むので、その分時間がかかるハズなのだが、搭載しているCPUやメモリの多さが効いているのか、とんだ爆速になっている。

 ただ、RAID 5はNASに詳しい人に言わせるとあまり評判がよくないのも事実。RAID 5は1本のHDDが壊れても復旧できるのだが、実際にはその復旧作業にかなりの時間がかかる。

 というのもRAID 1のミラーリングと違って、RAID 5はパリティというデータから復旧するので、その作業に時間がかかるのだ。そしてその復旧作業中に別のHDDでもエラーが出てしまうことが多いのだとか。RAID 5はHDDが2本壊れると復旧できなくなってしまう。

 その点、RAID 6は、HDD2本まで壊れても復旧できる。復旧用のパリティデータにHDD2本分の容量を必要とするので、使える実容量は4ベイの場合は残りの2本分、つまり半分になってしまう(RAID 5だとHDD4本なら3本分の容量が使える)のだが、その分冗長性は高くなるわけだ。

10GbEでRAID 6化、冗長性は高くなるが書き込み速度が低下

 そこで今度はRAID 6にしてみて、速度を検証してみたい。RAID 6はパリティデータをRAID 5の倍作るので、RAID 5より遅くなると言われているが、実際どれぐらい変わるのかは気になるところだ。

 ということでRAID 6(HDD4本)で10GbE環境で計測してみると、リードは約1165MB/sと10GbEを生かした結果が出たのに対して、ライトについては約400MB/sとRAID 5に比べて4割以下になってしてしまった。そうはいっても2.5GbEの限界よりも速いのだが、やはりパリティデータを2重に作るのに時間がかかるということだろうか。

RAID 6(HDD4本)×10GbEの場合
RAID 6で10GbE環境にした結果。リード側はRAID 5と同様に10GbEのほぼ上限だが、ライト側は半減以下に、それでも2.5GbEよりは速いが

冗長性と速度の両立、RAID 10を試してみる

 UGREENの4ベイのNASync DXP4800 Plusの場合、さらにRAID 10(1+0)も利用できる。RAID 10とはその名のとおり、RAID 1とRAID 0を掛け合わせたもの。1つのデータを2台のHDDに分散して書き込むことで速度を上げるのがRAID 0だが、RAID 0で組んだ2ベイNASを2つ用意して、その2つのNASに同じデータを書き込む(ミラーリング)ことで冗長性を持たせている、と思えばいいだろう。

 RAID 10の実容量は全体のHDDの数の半分になるので、今回のHDD4本の場合だと、2本分となってRAID 6と同じ。また、故障に耐えられる本数も全体の半分なので、こちらも本数では2本までとRAID 6と同じになる。

 ただし、その組み合わせによっては2本の故障でも復旧できなくなることがある。

 要はRAID 0の組み合わせのA+Bとそのミラーリングのa+bとした場合、Aとa、もしくはBとbの組み合わせで壊れると復旧できなくなるわけだ。なので4ベイ(HDD4本)の場合だと、RAID 6と比べると、速度は速いけど冗長性は落ちる、ということになる。ただ、パリティではなく単純にコピーなので、復旧の時間は短く済むはずで、復旧中に壊れる可能性はRAID 6より低くなりそうな気もする。

 ということでこちらも10GbE環境で計測すると、リードが約1165MB/s、ライトが約1084MB/sとRAID 5とほぼ同等の結果となった。つまりRAID 5と比べると、速度は同等ながら冗長性を上げられるということ。ただし使える容量はRAID 5の方が1.5倍だが。

RAID 10(HDD4本)×10GbEの場合
RAID 10で10GbE環境でのテスト結果。速度的にはRAID 5と同等で10GbEの性能を引き出せている

 つまり4ベイNAS(HDD4本)におけるRAID 5 vs RAID 6 vs RAID 10の相関図は以下の様になる。

リードライト冗長性容量効率
RAID 5
RAID 6
RAID 10

どこまで速くなる!? M.2 SSDを使ってみたい!!

 続いて、こちらも前回はできなかった検証、M.2 SSDを使った検証をやってみたい。

 UGREENのNASync DXPシリーズはこの価格帯でありながら、M.2スロットを持っており、ストレージまたはキャッシュとして利用できる。

 ただし、NASによってはM.2スロットのレーン数が少なくてせっかくのSSDの性能を引き出せないこともあるので確認してみたところ、DXP4800 PlusのM.2スロットはPCIe 4.0×4レーンに対応しているとのことだった。

 ただし、公式サイトの互換性リストの註釈を見ると、「互換性リストにあるPCIe 4.0 SSDはサポートされていますが、高速読み取り/書き込み操作中に高温と電力消費が発生するため、推奨されません」とある。つまりPCIe 4.0対応だけど熱と消費電力の問題であんまりオススメできないよ、ということだ。

 そしてこの互換性リストがやっかいで、どうやら海外のデータをそのまま日本語に訳しただけのようで、日本では売っていないモデルも多数並んでいる。とくにPCIe 3.0のモデルとなると、日本では手に入らないモデルが多い。

 さらに註釈には「SSDの寿命は書き込み回数に制限があるため、耐久性の高いSSDをお選びください。潜在的なリスクを防ぐために、必ず耐久性の高い SSD を使用してください」ともあって、もはやどれを選べばいいのか分からない。

 なので今回は、悩んだ結果、性能テスト用としてWesternDigitalのNAS向けのM.2 SSD「WD Red SN700 NVMe」の500GBを選んでみた。こちらはPCIe 3.0×4で、24時間365日の常時稼働に対応、耐久性は500GBモデルで1000TBWとかなり高く、UGREEN NASの要求にもあっている。

 今のところ製品互換性リストにないことから、長期で利用した場合の保証もないし、あくまで自己責任ではあるが、認識すれば性能検証用にはなるだろう。

というわけで注文して取り付けてみた。

WesternDigitalのNAS向けSSD「WD Red SN700」の500GBを2枚用意した
DXP4800 Plusの場合、底面にあるフタを開けると2つのM.2スロットがある。
付属の熱伝導シリコンパッドをM.2 SSDに貼り付ける。これがフタの裏側に張り付くことで熱を発散する仕組み
装着したところ、問題無く認識した。モデル名などもちゃんと表示されている

 UGREENのNASync DXPシリーズの場合、M.2SSDの使い方は2通りあって、それ自体をストレージとして使う方法と、HDDで組んだストレージのキャッシュとして使う方法がある。なおSSDを2つ搭載しないとストレージとしては使えないが、1つだけでも読み取り専用キャッシュとしては使うことができる(SSD2つで読み書きのキャッシュとして利用可能)。

M.2 SSDをストレージとして使ってみる。

 まずはM.2 SSDをストレージとして使ってみる。RAID 1にしたのでと実容量450GBのストレージプールが完成する。HDDのベイとは分けて扱われるので、6ベイでまとめて1つのストレージプールとすることはできない。なので、頻繁に使うデータや進行中のデータはSSD側のストレージに入れておき、終わったものをHDD側のストレージに移動する、といった使い方がオススメだろう。

SSDはストレージプールとして使うこともキャッシュとして使うこともできる
まずはストレージプールにしてみる。2枚のSSDでRAID 1を構成する
450GBの容量が作れる
HDDで構成したストレージプール1とは別にSSDのストレージプール2ができあがる

 ということで速度を計測してみる。まぁ速いのは予想していたが、リードで約1177MB/s、ライトで約1181MB/sとこれまでの計測で最速の結果となった。特にこれまで遅くなりがちだったライト側でも10GbEの上限に迫る速さで、さすがはSSDというところ。とはいえ、ここまでHDDでもかなり速かったので、SSDになってもそこまでの感動がないというのが本音ではある。

RAID 1(M.2 SSD2本)×10GbEの場合
M.2 SSDをストレージとして使った場合の速度結果。これまでのテストで最速の結果で、とくにライト側でも10GbEの上限に迫る速さを実現している

M.2 SSDをキャッシュとして使ってみる

 次にM.2 SSDをキャッシュとして使ってみたい。今回は2枚そろっているので読み書き両方のキャッシュとして設定する。

 注意点としては、キャッシュとして利用する場合、450GBをそのままキャッシュとして使えるわけではなく、全体の20%程度の容量を割り当てるのが推奨となる。そのため今回だと90GBを割り当て容量とした。

今度はSSDをHDDで構成されたストレージのキャッシュとして使ってみる
SSDが1枚だと読み取り専用として利用でき、2枚使うと読み書きキャッシュが選べるようになる
キャッシュのRAIDタイプを選択。といってもRAID 1しか選べない
キャッシュの容量の割り当ては20%程度が推奨とのことなので90GBとした

 ということで、RAID 5、RAID 6、RAID 10でそれぞれM.2 SSDのキャッシュを持たせた場合で速度を計測してみる。

 まずRAID 5+キャッシュの場合。RAID 5はもともと速かったがライト側が若干頭打ちしている印象だったところ、リードが約1168MB/s、ライトが約1129MB/sと、リードについては誤差の範囲だが、ライトについては若干だか確かに速くなっている印象。

RAID 5(HDD4本)+キャッシュ×10GbEの場合
RAID 5+キャッシュの場合。RAID 5はキャッシュがなくても速かったが、頭打ち感のあったライト側がさらに速くなった

 次にRAID 6+キャッシュの場合。RAID 6はもともとライト側が400MB/s程度と、ほかと比べると遅さが目立っていた(十分速いけど……)。そこがキャッシュが加わると、リードが約1167MB/s、ライトが約1128MB/sとライト側が一気に速くなって10GbEの上限に張り付いた印象。RAID 6だとキャッシュの恩恵がかなり大きそうだ。

RAID 6(HDD4本)+キャッシュ×10GbEの場合
RAID 6+キャッシュの場合。RAID 6はライト側が他と比べて遅かったが、それが完全に解消された感じで、キャッシュの恩恵が大きい

 最後にRAID 10の場合。こちらはもともとRAID 5と同じ傾向だったが、キャッシュを足した場合も似たような結果で、リード1082MB/s、ライト1167MB/s程度といままで頭打ち感のあったライト側が伸びた。逆にリード側が少し遅くなっているが、おそらく誤差の問題だと思う。

RAID 10(HDD4本)+キャッシュ×10GbEの場合
RAID 10+キャッシュの場合。RAID 5と同様、もともと速かったが、ライト側がさらに速くなった。リード側は少し遅くなったがたぶん誤差だと思う

 というわけで、4ベイNAS(HDD4本)にキャッシュを組み合わせた場合のRAID 5 vs RAID 6 vs RAID 10の相関図は以下の様になる。冗長性が高いRAID 6に速度も加わって、RAID 6+キャッシュという組み合わせがオススメできそうだ。

リードライト冗長性容量効率
RAID 5+キャッシュ
RAID 6+キャッシュ
RAID 10+キャッシュ

 ちなみにここまでCrystalDiskMarkでの測定結果で評価したが、実際に動画ファイルをコピーしてみたところ、実測で700MB/sを超えるような速さで46GB分のファイルが1分ほどでコピーできてしまった。これまでのNASだと80MB/s程度で9分ほどかかっていたので、かなり爆速になっている。特に最近動画を扱うことが増えた筆者には、この速さはとんでもなくありがたい。

実際に動画ファイル46GB分をコピーしてみたが、実測で700MB/sを超えてあっという間にコピーが終わってしまった。スゴ過ぎる!!

UGREEN NASync DXP4800 Plusをバックアップする方法

 ではもうひとつのアプローチとして、冗長性は低いが速度が速く容量の効率もいいRAID 5を活用する方法だ。要は冗長性の問題なので、別にバックアップをとればいい。

 実のところ筆者がこれまで使っていた2ベイNASは、RAID 0で組んでいる。これだと冗長性はないが、バックアップ用HDDを繋いであって、1日1回バックアップしている。バックアップ用のHDDはバックアップの時間だけ起動するようにしてあるので、NASのHDDよりは負荷は低く、NASと同時に壊れる可能性も低いはず。

 NASが壊れた場合は最大で過去24時間分のデータが飛ぶが、それぐらいであれば、SDカードをリカバリーするとか、iPhoneのゴミ箱を探すとかでサルベージできるはず。

 同じように速度と容量を稼げるRAID 5にしつつ、別にバックアップが取れれば、それはそれでありな気がする。

 UGREEN NASync DXPシリーズの場合、バックアップに使えるのはrsyncに対応したNAS、もしくはPC、あとはWebDAVだ。そこで今回は、もう1台2ベイモデルとなるUGREEN NASync DXP2800を用意して、そこへバックアップするように設定してみた。

バックアップ用として2ベイモデルのDXP2800を用意してみた

 2ベイモデルではあるが、あくまでバックアップ用なので、RAIDではなくBASIC、あるいはJBODで組んでしまうのがいいと思う。

 BASICとは、HDD1本につき1つのストレージになる。なので今回の場合だと1ベイのNASが2つあるようなイメージで、写真のバックアップはこっちのストレージに、動画データのバックアップはもうひとつのストレージに、といった使い方ができる。2本のHDDのサイズをそろえる必要はないので、余っている容量違いのHDDを組み合わせることもできるし、将来的にどちらかのHDDが壊れるとか、容量不足になったら、それだけ交換することも可能だ。

2本入っているHDDを1つずつ選びBasic、つまり1ベイのNASのようにする
こうすることで2つのストレージプールができる。こうしておけば仮にどちらかのHDDが飛んでももう一方には影響がない

 バックアップを分散するのが難しければ、JBODがいい。JBODは複数のHDDを束ねて1つのHDDのように扱うもので、こちらもHDDの大きさをそろえる必要はない。また、最初はHDD1本で運用して、容量が足りなくなったらもう1本追加して容量を増やすことも可能だ。

 そしてUGREEN NASync DXPシリーズは電源のスケジュール管理もできるので、バックアップの時間だけ起動するようにすれば、HDDの負荷も軽くできはずだ。

 バックアップの設定は、Webブラウザー上で「同期とバックアップ」というアプリを使って行う。

 アプリの中の「バックアップと復元」から「バックアップタスクの作成」を選び、バックアップ先サーバに「rsync」を選んで、バックアップ先となるNASのアドレスやユーザー名などを入力。バックアップ元のどのフォルダをどこにバックアップするのか、あとはバックアップのスケジュールなどを設定すればよい。

「同期とバックアップ」のアプリでバックアップジョブを作成
バックアップ先はrsyncを選び、DXP2800のIPアドレスなどを入れる
元になるフォルダとバックアップ先を指定。
DXP2800のストレージ1に作ったバックアップ1フォルダと、ストレージ2に作ったバックアップ2フォルダにそれぞれPhotoフォルダとMusicフォルダをバックアップする
バックアップは毎日夜中の2時にスケジュールした
バックアップ先のDXP2800は、バックアップの時間帯だけ起動するようにスケジュール

 なお、USB接続したHDDなどをバックアップ先にできないかいろいろと試してみたが、やり方がみつけられなかった。rsyncで自分自身、つまりDXP4800 Plusのアドレスを指定して、保存先をUSB接続した外部ディスクにできればと思ったものの、「ローカルNASへの接続は現在サポートされていません」と出てしまった。もしかしたら今後ファームウェアのアップデートで対応するのかもしれない。

NASの停電対策を検証!! オムロンはダメだけどAPCは行ける

 データ保全のためには、RAIDやバックアップも重要だが、もうひとつ重要なのが停電対策だ。

 ノートPCなら停電も怖くないが、NASの作動中に停電になれば、HDDの破損や、RAID構成の破損などが起こる可能性もある。そこで役に立つのが、非常用電源、つまりUPSだ。

 停電したときに代わりの電力源として作動するUPSだが、そのまま停電状態が続けばいずれはバッテリーが切れてしまう。

 そこで専用のUPSの場合、停電した時にNASを自動でシャットダウンさせる機能を持っている。もし仮にデータを書き込んでいる途中に停電した場合も、UPS内の電力で書き込み作業を続けつつ、電力を使い切る前に安全にシャットダウンすることができるわけだ。

 UGREENのNASync DXPシリーズもこのUPS連携に対応している。のだが、実は手持ちのオムロン製のUPSを繋いだところ認識してくれなかった。

手持ちのオムロン製UPS「BW55T」を繋いでみたが認識してくれなかった

 そこで同社の互換製品リストを確認してみるが、4機種しか掲載されておらず、しかもいずれも日本では販売されていない。

 それでは困るので人柱として試してみた。経費を掛けられるって素敵!

 試してみたのは、日本におけるUPSの人気モデル、シュナイダーエレクトリックのAPC「RS550S」だ。というのも互換製品リストの中の1つはAPCのものだったので、同じメーカーなら大丈夫だろうと踏んだのだ。

 結果としてはまったく問題無く認識してくれた。もちろんメーカーの互換性リストにはないモデルなので、あくまで「筆者が検証した限り」ということにはなるが。

 ちなみに互換製品にはサイバーパワーのものもあったので、日本で売られているサイバーパワーのUPSでもいけそうではあるが、こちらは検証していない。というかそのうちファームウェアのアップデートでオムロンにも対応するんじゃないかと思う。いや、ぜひ対応してください。

 なお、UPSの設定は、「コントロールパネル」の「ハードウェアと電源」から「無停電電源システム」を選ぶことで行える。

 そこから「UPSに接続」を選びUPSタイプで「USB UPS」を選べば、USB接続したUPSが自動で認識される。

 今回の場合だと商品型番には「APC RS 550S」と表示され、さらに現在のバッテリーの充電状態や、電源がどこから供給されているかといった情報もNASの画面で確認できる。ちゃんと連携できているようだ。

 停電になった場合の動作としては、すぐにはシャットダウンせず、バッテリーの残量が少なくなったらシャットダウンするということもできるし、予めシャットダウンまでの時間を設定しておくこともできる。停電といってもすぐに復帰することも多く、そうした場合にスタンバイモードになることもなく通常運用が続けられるというわけだ。

シュナイダーエレクトリックのAPC「RS550S」を買ってみた
UPSのインターフェイスポートからNASのUSBに繋ぎ、NASの電源をUPSのバックアップコンセントに繋ぐ
「コントロールパネル」のハードウェアと電源から無停電電源システムを選択しUPSに接続する
UPSタイプで「USB UPS」を選ぶと自動でAPCのUPSが認識された。スタンバイモードに入るまでの時間を仮に1分と設定してみる

 試しに1分でシャットダウンする設定にして、擬似的に停電状態を作ってみたところ、ちゃんと1分後に自動でシャットダウンが始まった。

 ただし完全に電源が切れるわけではなくて、スタンバイモードになるようだ。PCなどからは接続できなくなるが、電源ランプだけはついていて、再び電源を復帰させると、NASは自動で起動する。

擬似的に停電状態にしてみたところ。残り48秒でスタンバイモードにはいるが、UPSのバッテリー自体はあと42分32秒持つらしいことが分かる
1分経過するとスタンバイモードに入った

 ちなみに停電がずっと続いて、UPSの電力がなくなりそうになると、スタンバイモードから完全に電源を落とすらしい。ただ、その場合も、電源の設定の「停電から復帰後に、自動的に電源が入る」にチェックを入れておけば、電源が復活したら自動で再起動するはずだ。

 しかし、現時点では足りていない機能もある。というのもUPSと直接接続できるのは1台のNASだけなので、今回のバックアップ用のように2台のNASを繋いだ場合も1台しかシャットダウンさせられない。他社製品だとNAS同士を連携させることで、まとめてシャットダウンできるのだが。

 それほど難しい機能ではないと思うので、今後のファームウェアのアップデートで改善されることを期待したいところだ。

 なお、本稿を通じて、何度となく「今後ファームウェアのアップデートで改善されるんじゃないか」といったことを書いているが、決して楽観的に書いているわけではない。

 実のところ、まだ日本では正式発売前にもかかわらず、すでに頻繁にアップデートが行われていて、確実に日々改善されているし、これからもどんどんよくなるんだろうなという印象だ。

検証している間にもどんどんアップデートが行なわれて、機能も追加されるし不具合も解消されている

 これが法人利用となれば見方が変わると思うが、個人利用であれば、日々改善し、機能が増えていくNASを触っているのは、聡明期のPCのようでなかなか楽しいものだ。

 特に筆者のようにこれまで国内メーカーの2ベイNASを使ってきたような人には、UGREENのNASync DXP4800 Plusは、そのスペックにくわえて、10GbE化やSSDキャッシュの組み合わせなど、自分の使い方にあわせたカスタマイズもできて、なかなか楽しめるんじゃないかと思う。

▼UGREEN NASync DXPシリーズのクラウドファンディングはこちら

INTERNET Watch編集部員やライター陣が、実際に使ってオススメできると思ったテレワークグッズをリレー形式で紹介していく「テレワークグッズ・ミニレビュー」。もし今テレワークに困りごとを抱えているなら、解決するグッズが見つかるかも!? バックナンバーもぜひお楽しみください。