清水理史の「イニシャルB」【特別編】

コレが3万円とかウソだろ? UGREENの「新時代」NASが初心者にもマニアにもオススメな理由

実用性重視のギミック、ワンランク上のスペック、エスコート上手なガイド………

スマートフォンやPCのデータ保存先として手軽に利用できる

 UGREENが、今度はNASを再発明しようとしている。

 従来のファイルサーバーの延長線上だけでないパーソナルなストレージ環境を、ワンランク上のハードウェアに詰め込みながら、PC市場を席捲したミニPCのような低価格を実現し、しかも、はじめてでもアプリの画面をタップしていくだけでRAIDもリモートアクセスも同期までも設定可能な使いやすいNASを登場させてきた。

 まだ粗削りな部分もあるが、進化が落ち着きつつあったNAS市場で、「まだやれることは残っている」と再認識させてくれた期待の一台を実際に使ってみた。

UGREEN NASは驚きの「新時代」NAS!低価格なのに、新しい進化と高性能でマニアでも気になる存在

 ファイルサーバーから、個人向けのホームサーバーやNASの登場、海外ブランドの隆盛と、長年、NAS業界を見てきたが、今回、UGREENから登場したNASync DXP2800には、あらためていくつもの驚きを与えられた。

 中でも最大の驚きは、「このスペックなら定価の5万円台でも割安だが、2月14日から始まるクラウドファンディングの早割で最大40%オフの3万円台? 何かの間違いでしょ?」という印象だ。

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UGREEN NAS 公式サイト

 詳細は後述するが、ほかにも「まだトレイに進化する余地があったのか……」とか「M.2あんのかよ!」とか「もうSMBの時代じゃないのか……」とか「もしかしてアドミンレスを狙っているのか?」とか「DS-Lite環境でもリモートアクセス問題なしか……」とか、挙げればキリがないが、まあ使うほどに驚かされる製品に仕上がっている。

 もちろん、同社にとってNASは新しい挑戦となるカテゴリーの製品となるため、今後に期待する部分もいくつかあるが、それにしても、この製品の登場は、競合他社にとっては大きな脅威となる。それほど、市場に強いインパクトを与える製品と言える。

PCやスマートフォンの容量不足解消に

 現状、PCやスマートフォンの容量不足に悩んでいる人は少なくないだろう。

 日々増えていく写真、容量が大きくなる動画、送る段階になってサイズの大きさに驚くプレゼン資料……、とデータは、その種類も、数も、容量も増え続ける一方の状況だ。

 中には、データはクラウドを活用して保管している人もいるかもしれないが、その一方で、つもりに積もったサブスク費用を何とか見直せないか? と考えることもあるはずだ。

 今回、UGREENから登場したNASync DXP2800は、そんな身近な容量不足の悩みを解決できる製品だ。

UGREENの新型2ベイNAS「NASync DXP2800」
UGREEN NASync DXP2800
価格5万5880円
ベイ2
M.22
最大容量64TB(24TB×2+8TB×2)
CPUN100(4C4T)
メモリDDR5 8GB(最大16GB、ODECC)
RAIDJBOD/Basic/0/1
内蔵ストレージeMMC 32GB
LAN2.5GbE×1
Wi-Fi×
PCIe×
Thunderbolt 4×
前面USB10Gbps×2(Type-C/Type-A)
背面USB5Gbps×1+480Mbps×2
SD Card×
HDMI4K

 そもそも「NAS」は、ネットワークに接続するストレージだ。データの保存先として身近なUSBメモリーやUSBハードディスク(SSD)は、デバイスに直接接続する周辺機器だが、NASはLANケーブルを使って家庭用のWi-Fiルーターやスイッチングハブなどに接続する機器となる。

 ネットワークに接続することで、家庭内の複数の機器から利用できるのがメリットで、PCやスマートフォンから写真をNASに保存したり、NASに保存された写真や動画をテレビで再生したりと、同じネットワークにつながる複数台の機器から利用できる。

スマートフォンやPCからNASにデータを保存したり、参照したりできる

 例えば、スマートフォンの写真をNASにアップロードし、端末から同じデータを削除すれば、端末の容量不足を解消できることになる。もちろん、削除した写真はNAS上に保管されているので、アプリを使って家でも外出先でもいつでも閲覧、ダウンロード可能だ。

 これにより、自分はもちろん家族もクラウドストレージの月々の費用負担が軽減されるうえ、構成にもよるが数~数十TBクラスの大容量を利用できるようになる。

 今回紹介するDXP2800であれば、2つのベイに2つのM.2スロットも加えて、最大64テラもの容量が実現可能。RAID1(ミラーリング)で使ったとしても、1枚3MBの写真が約1100万枚、1本1.5GBの動画が約2万1500本、1MBのファイルなら約3350万ファイルが保存できる計算だ。

ミドルレンジのスペックをエントリーモデルの価格で

 現状、NASは、さまざまなメーカーから販売されているが、今回登場したUGREEN NASの最大の特徴は、圧倒的なコストパフォーマンスの高さだ。

 今回取り上げた2台のHDDを搭載可能な2ベイモデル「DXP2800」は、CPUにミニPCなどでもおなじみのIntel N100を採用し、DDR5 8GB、2.5Gbpsの有線LANポート、さらには2機のM.2スロットまで搭載しながら、標準価格は5万5880円。そして2月14日から始まるクラウドファンディングでの早割40%OFFを適用すると、なんと3万3528円という驚異的な安さで手に入るNASとなっている。

2月14日からのクラウドファンディングで早割40%OFFのキャンペーンが実施される。最新情報はUGREEN NAS 公式サイトにて

 この価格が、どれくらい驚異的かというと、現在、市場で販売されているエントリーモデルの価格が約3万円となる。エントリーモデルなので、CPUは低消費電力のARMが採用され、メモリーは1~2GB程度、ネットワークも1GBまで、当然、M.2スロットは省略された製品となる。

 その一方で、DXP2800と同様に、Intel系のCPUを搭載し、2.5GbpsのネットワークやM.2スロットを搭載した製品は、現在、市場ではミドルハイレンジとして位置づけられており、製品によって若干の差はあるが、6~10万円の価格で販売されている。

 しかも、このクラスのNASのメモリーは多くても4GBまでなので、DXP2800の8GBは2倍も搭載していることになる。NASとしては十分すぎる容量だが、仮想マシンやDockerを活用してサーバーを稼働させるといった遊びに使える余裕を持たせているところが、うれしい。

仮想マシンのWindows 11にメモリー4GBを割り当てても余裕

 ちなみに、メモリーはDDR5なので、既存のNASで多く採用されているDDR4に比べて利用できる帯域が広い。写真の顔認識などAI処理などで効果を発揮することが期待できる。また、ODECC(On-Die ECC)に対応している。いわゆるECCメモリーのようにCPUに転送される際のエラー訂正はできず、チップ内の反転ビットを修正できるだけだが、それでも信頼性の向上に寄与している。

 要するに、価格や後述する使いやすさなどは、完全に初心者をターゲットにした製品なのだが、その中身となるハードウェアはモリモリのハイスペックという、従来の常識では考えられない組み合わせとなっているのだ。

デザインもいいが内部のトレイの再発明は秀逸

 筐体の作りこみも凝っている。

 UGREENは、製品の種類を問わず、統一されたデザインテーマを持っているが、本製品もその作法が守られており、シンプルなのに、UGREEN製品だとすぐに認識できる。

正面
側面
背面
内部にはM.2スロットを搭載

 しかも、低価格の2ベイNASと言えば樹脂製の筐体が定番なのに、本製品は高級感のある金属製の筐体を採用している。

 これにより、本体を使った放熱が可能になり安定稼働に役立つ。もちろん、背面のマグネット式のフィルターの背後にファンも搭載されているが、そのファンも最低限の回転数で抑えられるので、非常に静かで、正直、近くに耳を近づけても回っていることが分からない。

 さすがにデータ保存時などは、「カリカリ」というHDDのアクセス音が聞こえるが、夜間などのアイドル時は、ほぼ無音といってもいい静かさだ。

 また、金属筐体のおかげで全体の剛性が高く、重さもあるため、いやな騒音や振動がまったく伝わってこない。さらに、細かな点だが、底面のメモリースロットもスプリング付きのピストンでフタがネジとは逆方向に押される工夫がなされている。開けやすくするためかもしれないが、振動を防止する効果もありそうだ。このような見えないところにコストをかけているあたりが素晴らしい。

 搭載するHDD次第ではあるが、常時稼働するNASが生活シーンに存在することを想定した、騒音、振動対策がなされている。

底面にメモリースロットを用意。フタを開けやすくするためか、防振のためか、ピストンまで取り付けられている。コストのかけ方がヤバイ

 こうした、ユーザー視点のモノづくりの巧みさは、HDD搭載用のトレイにも表れている。

 本製品のトレイは、NAS用トレイの新しい発明と言っていい。

HDD搭載用のトレイ。これは発明と言っていい

 現状のNASも、HDD用トレイはネジ止め不要のケースが多いが、その方式はトレイにHDDを載せてから、両側から固定用のパネルで挟み込んで固定するような方式となっている(エントリーモデルは本体を開けて内部にネジ固定する製品も存在するが……)。

 しかし、UGREEN NASのトレイは、可動式となっており、片側のラッチを押すと、カシャッとトレイの幅が広がり、HDDを載せてから広がったサイドパネルを押し込むことで簡単に固定できる。

ラッチを押すと幅が広がる
HDDを載せてサイドから押し込めばHDDを固定できる

 個人的に感心したのは、わざわざこのトレイを進化させたことだ。ユーザーによっては初回のみ、やってもせいぜい故障の際のHDD交換時のみしか使わないトレイを新設計するあたりに、開発者の並々ならぬ情熱を感じる。

 いや、進化させたくなる気持ちも分かる。従来の両側からはめ込むパネルは、搭載するHDDの本数が増えてくると、パチパチ取り外すのが意外に面倒だし、微妙にズレて固定されることがあり、スロットと干渉したりするケースがあった。

 しかも、HDDのネジ穴に当たる部分には防振用のゴムが取り付けられており、コストも削減されていない。思わず「分かってるねぇ」とうなってしまった。

きちんとゴムで防振対策済み。細かい工夫が光る

「NASってこんなに簡単だっけ?」スマホアプリでリモートアクセスまで完結する手軽さ

 ついつい細かい点に目が行ってしまうほどハードウェア的な魅力にあふれた本製品だが、実はソフトウェアもよくできている。

 UGREEN NASのOSは、UGOS ProというLinuxベースのオリジナルの製品となる。リリースされたばかりの発展途上のOSだが、デスクトップライクな使いやすいUIを備えており、海外製品ながら日本語にもきちんと対応している。

UGOS ProというオリジナルOSを搭載

 ストレージや、ユーザー/グループ、ファイル(個人や共有)、同期とバックアップ、クラウドサービスとの接続などを管理できるツールがアプリとして配置されるほか、「仮想マシン」アプリを使ってNAS上でLinuxやWindowsを稼働させたり、「Docker」アプリを使って各種サーバーアプリケーションを稼働させたりできる。

 上級者がNASを活用するための機能も充実しているが、どちらかというと初心者でも簡単にNASを管理できるように工夫されている印象だ。

 その傾向が特に表れているのが、セットアップ用のスマートフォン向けアプリ「UGREEN NAS」だ。

 このアプリを使うと、「NASってこんなに簡単だったっけ?」と驚かされる。

 従来のNASでもアプリを使った設定は可能だったが、ユーザーが進むべき道筋を示すガイドが秀逸で、画面を進めるだけ、表示されたチェックリストをクリアしていくだけで、NASの設定を進めることができる。

ユーザーがやるべきことがガイドされるため、初心者でも迷わない

 多機能な製品ほど、次に何をすればいいのかに迷ってしまうことがあるが、本製品は、このガイドのおかげで設定ルートを迷わない。

 中でも、よくできているのがリモートアクセスの設定だ。筆者の記憶だと、従来のNASをリモートアクセス可能にするには、一通り初期設定をした後に、さらにいくつかの手順を踏む製品が多かった。例えば、リモートアクセス用のアカウントやアクセス用の名前の設定する、HTTPS接続のために証明書を取得するといった具合だ。

 初心者でなくても、慣れていないユーザーにとって、こうした作業はハードルが高い。しかし、本製品では、前述したアプリからの初期設定の序盤のプロセスで、「デバイスのリモートアクセス機能をオンにします」という画面が表示され、リモートアクセスに必要な「UGREEN Cloudアカウント」の取得が実行される(もちろんスキップも可能)。

設定の初期段階でリモートアクセスの設定が案内される。メールアドレスを登録するだけで、クラウドサーバー経由での接続、接続用の名前の自動設定、HTTPS接続時の証明書の取得などが裏側で自動的に実行される

 この設定プロセスは、一見、リモートアクセス用のアカウントの取得手順のみに見えるが、実際には前述したリモートアクセス用の名前(DXP2800-xxxxのようなUGREENlinkID)が自動的に取得され、さらにこの名前を使ったサブドメイン(DXP2800-FE52.direct-aar.ug.link)の証明書も自動的に取得される。

 このため、ユーザーは何も心配せずにリモートアクセス可能な状態にできる。

 もちろん、速度重視なら、同社のクラウドサービスを中間サーバーとして利用せず、独自のDynamicDNSを利用したり、自分でポートを解放したりしてリモートアクセス環境を整えることもできる。ただし、ほとんどのユーザーは、この自動設定であっという間にリモートアクセス設定が完了する。

DynamicDNSの設定やルーターのポートマッピングによる自分での設定もできる。速度重視ならこちらを選ぶのも手

 試しに、auひかり、およびv6コネクト(DS-lite)環境の2つの回線で本製品をセットアップしてみたが、どちらの回線でも問題なくリモートアクセスができることを確認できた。同社のクラウドサービス経由の接続であれば、多くの環境でリモートアクセスを構成することができるはずだ。

 また、ストレージスペースの作成も、きちんとガイドされる。海外製NASのあるあると言ってもいいかもしれないが、初期設定が終わっても、ストレージ設定を済ませていないと共有フォルダーが見当たらないということがあるが、本製品はきちんとガイドされ、同じくスマホアプリを使って簡単に設定できる。

 今回の検証で使ったDXP2800は、2ベイのNASのため、ガイドでも「おすすめ」と表示される2台のHDDに同じデータを書き込むことで片方が故障してもデータを保護できるRAID1を選択するといいだろう。

 なお、ファイルシステムはext4とbtrfsを選択できるが、通常はext4でいいだろう。現状は、NATとしての機能にext4とbtrfsで明確な違いがあるわけではない。

ストレージプールの作成が必要。2ベイモデルなので今回はRAID1を選択
ファイルシステムはbtrfsも選択できるが、標準のext4で問題ない

時代が変わった! SMBは「オプション」

 筆者が、本製品を使って、もっとも驚いたのは、SMB、つまりWindows向けのファイル共有プロトコルはオプション扱いになっており、利用するにはオンにしなければならないことだ。

SMBは標準オフなので利用する場合はオンにする

 筆者のような古い人間にとってNASはファイルサーバーの延長線上にあるという認識だったので、Windowsから「\IPアドレス共有名」でアクセスするクセが付いているのだが、もうそんな時代ではないのだろう。

 本製品は、基本的にブラウザー、またはPCやスマートフォンにインストールした「UGREEN NAS」アプリを使って「ファイル」アプリから、ファイルをアップロード/ダウンロードしたり、同じく「UGREEN NAS」アプリを使ってNAS上のデータとPCローカルのデータを同期したりする使い方がメインとなっている。

ブラウザーやUGREEN NASアプリからファイルをアップロードしたり、ダウンロードしたりするスタイル

 一般的なユーザーは、むしろクラウドストレージの使い方に慣れているので、本製品ではあえてこうした使い方を推奨しているのだろう。この考え方はパーソナルクラウド的な発想に近い。

 実際、管理ツールを使ってユーザーを追加すると、個人フォルダーが標準で有効になる。よくよく考えてみれば、家族で共有するデータは過去の写真など一部で、メインはそれぞれのPCやスマートフォンのデータのバックアップ先という使い方になる。家族それぞれが個人のデータを安全に保存する場所としてUGREEN NASを簡単に活用できるのはありがたい。

ユーザーを追加すると、標準で個人フォルダーが有効化される。パーソナルなストレージとして使うことが前提の発想

「UGREEN NAS←→OneDrive←→PC」同期も可能

 試しに、iPhone 16 Proを使って写真をバックアップする方法を見てみよう。

 NASの初期設定や必須アプリのインストール後(同期とバックアップ、写真、シアター、ネットディスクツールをガイドからワンタッチでインストール可能)、初期設定に利用したのと同じ「UGREEN NAS」アプリを開き、[同期とバックアップ]アプリから[アルバムのバックアップ]をオンにする。

スマートフォンでアルバムのバックアップをオンにすると写真がNASにアップロードされる

 これで、iPhone 16 Proで撮影した写真がNASの個人フォルダーにある「Photos/MobileBackup/iPhone 16 Pro」に自動的にアップロードされる。アップロードが完了したら、iPhone 16 Pro本体から写真を削除すれば、ストレージ容量を節約できるというわけだ。

 もちろん、NASに保存した写真は、同じくUGREEN NASアプリの[写真]からいつでも参照できる。初期設定でリモートアクセスが設定済みなので、家庭のWi-Fi接続時だけでなく、外出先などのモバイル環境でも参照可能だ。

バックアップした写真はアプリから参照可能
AIによる人物の自動判別や位置情報による整理も可能

 続いて、PCのデータを同期してみよう。PCのデータ同期にも、UGREEN NASアプリを利用する。同社のサイトからWindows用のアプリをダウンロードしてインストール後、[同期とバックアップ]アプリで同期タスクを設定する。

 コンピューターとの同期を選択し、PC上のフォルダー、NAS上のフォルダー、それぞれ同期するフォルダーを選択し、同期方向を選択するだけでいい。

UGREEN NASアプリでPCとNASのフォルダーを同期できる

 今回は、同期方向として双方向を選択した。これにより、PC上でも、NAS上でも、いずれかで変更があれば、その情報がお互いに同期される。たとえば、PCの空き容量を増やしたいのであれば、[コンピューターからNASへのデータ変更の同期のみ]、および[コンピューターファイルを削除すると、NASファイルは同期されません]を選択しておくといいだろう。

 このほか、同期ではなく、バックアップタスクとしてPCのCドライブ全体をNASにバックアップすることもできる。さらに、「バージョンマネージャー」をインストールすると個人フォルダーや同期タスクの対象フォルダーについてバージョン履歴を記録することもできる。ファイルを間違って編集してしまった場合でも、以前のバージョンに戻すことが可能だ。いろいろなアプリを使い分けることなくひとつのアプリでアクセスや同期設定、バックアップなどが完結するのもうれしい。

バックアップも可能
バージョンマネージャーでバージョン履歴も取得可能

 興味深いのは、「ネットディスクツール」との組み合わせだ。例えば、筆者はPCのデータをOneDriveを利用してMicrosoft 365と同期している。このため、PCのデータをNASにも同期させようとすると、PC上で同期ツールを二重に動作させなければならなくなってしまう場合があった。

 しかし、本製品では、OneDrive(個人、法人どちらにも対応)であれば、「ネットディスクツール」を利用して、NASとクラウドストレージとの同期が可能となっている。

ネットディスクツールでNAS上のフォルダーとクラウドストレージ(2025年1月時点ではOneDriveのみ)の同期も可能

 つまり、PC側は今まで通りOneDriveとのみ同期し、NASをOneDriveと同期させることで、「NAS←→OneDrive←→PC」という同期ができることになる。OneDriveのバックアップとしてNASを使うこともできるだろう。

 なお、こうした設定は、すべてユーザーが個別に設定可能となっている。これもパーソナルクラウド的な発想だが、そのおかげで管理者は初期設定やユーザー追加、ログのチェックなど以外の手間がかからない。パーソナルなだけでなく、「アドミレス(admin-less)」な製品とも言えそうだ。

新時代のNASと言っていい

 以上、UGREENのNASync DXP2800を使ってみたが、新しい時代に合ったNASという印象を受けた。

 もちろん、トラディショナルなNASとして使うこともできるし、パワフルな性能を生かしてWindows仮想マシンやLinuxのコンテナを動かすこともできるが、パーソナルなストレージとして家庭で誰がどう使うと便利なのか、どこにつまずきそうだからどうフォローすべきかが、非常に考え抜かれた製品と言える。

 海外のクラウドファンディングで高い評価を得たことは聞いていたが、それはハードウェア性能に対してのコスパの高さからだけでなく、こうした細かな使い勝手の良さが評価されているのではないかと想像できる。

 まだまだ進化する余地は残っており、個人的にも惜しいと感じるポイントはいくつかあるが、以下のように2.5Gbps環境でのパフォーマンスも優秀で、パーソナルストレージと割り切った使い方をする分には、かなりおすすめできる製品と言える。

290MB/sなので、2.5Gbpsの帯域の上限のスピードを実現できている

 なお、今回のクラウドファンディングでは、4ベイのDXP4800 Plus、6ベイのDXP6800 Proもリリースされる。4ベイでIntel 8505搭載、10Gbps対応のDXP4800 Plusでも40%オフで5万9928円、6ベイでCore i5 1235U搭載、10Gbps×2、PCIeとThunderbolt4対応のDXP6800 Proでも10万1928円なので、この価格は衝撃的すぎる。

 コスパの高さならDXP2800は買って損はないが、個人的には仮想マシンや各種サーバーとしても使えそうなDXP6800 Proを狙いたい気もする。しばらく、サイトを前に迷う日々が続きそうだ。

UGREEN NASync DXPシリーズのラインアップ。DXP6800 Proも気になる

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UGREEN NAS 公式サイト

清水理史の「イニシャルB」チャンネル――細かすぎて伝わらない!? UGREEN NASync「DXP2800」のコダワリがスゴ過ぎる!!

安い! カンタン! だけじゃない!! 長年NASを見てきた清水理史氏が驚いたUGREEN NASの細かすぎるコダワリのポイントを動画で紹介する。

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清水 理史

製品レビューなど幅広く執筆しているが、実際に大手企業でネットワーク管理者をしていたこともあり、Windowsのネットワーク全般が得意ジャンル。「できるWindows 11」ほか多数の著書がある。YouTube「清水理史の『イニシャルB』チャンネル」で動画も配信中