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山谷剛史のマンスリー・チャイナネット事件簿
2009年1月

 本連載では、中国のネット関連ニュース(+α)からいくつかピックアップして、中国在住の筆者が“中国に行ったことのない方にもわかりやすく”をモットーに、中国のインターネットにまつわる政府が絡む堅いニュースから三面ニュースまで、それに中国インターネットのトレンドなどをレポートしていきます。


個人情報を暴く「人肉捜索」禁止条例を制定

 江蘇省徐州市で、複数のインターネット利用者がターゲットとなる個人の個人情報を暴く「人肉捜索(元々はナレッジコミュニティの意)」を禁止する条例が制定された。

 こうした、ある種の「ネットの祭り」を禁止する条例の制定は中国全土で初となる。条例によれば、許可なく他人のプライバシーや個人情報を公開するのを禁止し、公開した個人には最大で5000元(約7万円)の罰金に、また企業の場合は企業登録の取り消しとなる。2009年6月1日より施行する。

 利用者の側でも、インターネット利用者による自主的な人肉捜索の自主規制「人肉捜索公約1.0Beta版」が話題になった。これは識者数人により作られたもので、「他人のプライバシーの調査にはできるだけ参与しない」「他人の情報の公開は公でない場所で」「ただし汚職・腐敗には前述のルールを適合する必要はない」といった内容となっている。


金融危機で盛り上がるオンラインショップ。日本企業も続々上陸

 1月には楽天市場やニッセンが中国でオンラインショップを開くことが日本でもニュースになった(ニュース記事参照)。その後ニッセンは1月31日に、百度のサイト内で「日本の窓」というコンテンツを開設。日本向けの同社製品を中国でも販売し、日本円で5000円以上の買い物なら送料無料という武器で中国市場にアピールしている。

 さて、そんな中国でのオンラインショッピング市場は、金融危機を引き金に、沿岸部の大都市の消費者がよりオンラインショッピングを多用する傾向が顕著になっている。中でも最大のショッピングサイトでC2C(個人対個人)サイトの「TAOBAO(淘宝網)」の好調ぶりは連日のように、中国メディアが報じている。

 トップシェアのTAOBAO(淘宝網)は、2008年での取引額が約1000億元(999.6億元。約1兆4000億円)、対前年(433億元)比で2倍以上の伸びとなったことを年明けに発表した。TAOBAO(淘宝網)内で人気ショップを運営する人は、「金融危機下でも前年比20%の売上増が見込める」と強気だ。

 また、中国では旧正月前の春節(2009年は1月最終週)には、中国版お歳暮こと「年貨」を送る習慣がある。年貨の季節が近づくと、毎日件数にして100万件、値段にして5000万元(約7億円)の年貨の取引があったという。件数としては増えているが、1件あたりの年貨の価格は下がっており、金融危機の影響がこのあたりに伺える。

 TAOBAO(淘宝網)の成功が報じられる一方、現在TAOBAO(淘宝網)の唯一のライバルといっても過言でない百度のC2Cサイト「有〓(〓は口へんに阿)」も顧客獲得のためにさまざまな新サービスを投入、話題作りをしている。例を挙げると、複数のバイヤーの商品をB2C(企業対個人)サイトのようにショッピングカートで購入するシステムや、自らの体型を登録し服を画面上で試着するシステムなどを新たに提供開始した。

 2009年も、オンラインショッピングは前年以上に話題豊富な1年になりそうだ。


インターネット人口が2008年末に3億人弱に

 中国ネットワークインフォメーションセンター(CNNIC)が、2008年末における中国におけるインターネットの利用状況をまとめた「第23次中国互換網発展状況統計報告」を発表。2008年末でのインターネット人口は2億9800万人、ブロードバンド人口は2億7000万人となった。詳しくは1月15日のニュース記事を参照していただきたい。


「低俗なサイト・コンテンツ」を注意・粛正

 「インターネット低俗の風」取り締まりキャンペーンが、1カ月間に渡って4回に分けて実施された。73サイトの著名サイトが注意されたほか、数百のサイトが閉鎖に追い込まれた。低俗と指摘されたのは多くがポルノ画像であるが、それ以外にも理由が明記されていない画像が多数ある。

 特にメジャーなサイトを例に出すと、「検索結果にポルノ的内容が多く含まれる」と指摘されたgoogle中国、「ブログスペース内に低俗な画像が多数あり、中にはわいせつな画像もある」と指摘された百度、「アルバムやブログに低俗な内容がある」と指摘されたナンバー1ポータルサイトのSina(新浪網)、「映画チャンネルに低俗な画像が大量にある」と指摘されたMSN中国といった具合だ。

 注意を受けて、多くのサイトが指導を厳粛に受け止める意のコメントを表明。ポータルサイトのSOHU(捜狐)や中華網は、わいせつな内容が含まれる300ものブログを削除したことをアピール、チャットソフト「QQ」で有名なTencent(騰訊)は同社の運営するサイト「QQ」のチャットルームサービスを、低俗だという理由で一時閉鎖し、その対応をアピールした。


オンラインゲームの実名制を検討

 中国政府新聞出版総署の張毅君氏は14日、オンラインゲームを実名認証制にする計画があることを語った。

 同氏によれば、大手ベンダーの提供するオンラインゲーム59タイトルを対象に、長時間プレイし続けることを妨げる「防沈迷系統」というシステムのテストが行われ、2008年までにほとんどのゲームで「防沈迷系統」の機能を搭載した。機能を搭載しなかった4社のオンラインゲームは運営を終了したと発表した。2009年は「さらに健康なオンラインゲーム環境」を築くべく、中国政府新聞出版総署が主体となって、オンラインゲーム実名制を推進していくという。

 こうした発表に対して、中国のオンラインゲーム事情通は「多くのインターネット利用者は匿名制に慣れている。実名制にすれば利用者は減るだろうし、また1利用者が複数IDを持って遊ぶことがよくあるので、登録ID数も減るだろう」と分析している。


SNSにチャットで知られる大手インターネットベンダーが参入

 2008年下半期より、SNSサイトの数が急増中だ(本連載の2008年11月分もご参照いただきたい)。

 中国のリサーチ企業CNZZの最新の調査によれば、中国のSNSサイトは約480あり、うち数サイトにSNS利用者の82.5%が集中しているという。そのSNS市場に、チャットソフト「QQ」で知られる大手インターネットサービスベンダー「Tencent(騰訊)」が参入した。SNSの名前は「SNS校友」。中国のインターネット利用者の多くを占める学生をターゲットとしたサービスだ。

 若い中国人インターネット利用者なら誰もが持っているといっても過言ではない、チャットソフト「QQ」のアカウントで利用できる点が売りだ。既存のSNSサービスに比べて新たなユーザー登録が不要ですぐ使えることから参入障壁が低く、また同社はすでにチャットアカウントを利用したアバターやオンラインゲームで成功していることから、多くのインターネット利用者に利用されるサービスに化ける可能性がある。中国SNS市場にも注目するソフトバンクやミクシィの強力なライバルとなるかもしれない。


中国版Google Earth(似のサービス)制作開始

 中国版「Google Earth(中国語名:谷歌地球)」と「Google Map」のようなサービスを中国政府国家測絵局が提供開始することが発表された。中国メディアは「社会的な地図サービスのニーズを受け、各地方政府と企業が協力し、中国全土的な尺度でさまざまな角度から調べられるオンライン地図サービスを提供する」として、「伝統的な地理情報サービスを根本的に覆すものとなる」と報じている。


中国最大の動画共有サイトを著作権侵害で集団提訴

 「激動網」「北京保利博納」をはじめとした80超の動画コンテンツホルダーが一同に集結、「反盗版(海賊版)聯盟」を設立した。まずは、中国最大の動画共有サイトで「YOUKU(優酷網)」と双璧をなす人気の「TUDOU(土豆網)」に対して、著作権侵害で提訴していくという。

 聯盟の1メンバーである「激動網」は、2007年よりTUDOUが許可なく海賊版コンテンツを公開しているとして提訴、翌2008年11月に裁判所の最終判決が出る前に、TUDOUは和解案を受け入れた。しかし激動網の担当者は「これはあくまで1つの事例であり、まだ大量の著作権侵害が行われている」と引き続きTUDOUをはじめとした動画共有サイトと戦っていく構えだ。

 名指しされたTUDOUの副総裁の黄氏は「80超のコンテンツホルダーなどわたしは知らない。各企業が削除要求をすればいいだけだ。しかも、現在までこの聯盟から何の連絡も来ていない」と遺憾を表明している。


2008年の検索サイトシェアは百度が6割超を獲得

 中国のリサーチ会社「易観国際(Analysys International)」が2008年の検索広告収入でみる中国検索サイトシェアを発表した。

 同年の市場規模は51億5000万元(約720億円)で、四半期別では第1四半期から第4四半期まで一貫して対前期比で増加している。ベンダー別では、百度(62.2%)がトップとなった。

 本連載の2008年11月の回で、「百度の広告掲載で違法業者をトップ掲載し大パッシング」というタイトルで報じた通り、百度の評判は中国国内で随分と下がったように思えたが、数字的にはシェア6割強を維持という結果となった。百度に続いて、グーグル中国(27.8%)、ヤフー中国(5.8%)が利用されている。なお、百度以外にも中国産の検索サイトはあるのだが、いずれもシェアは1%にも達していない。


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(2009/02/06)


  山谷剛史(やまや・たけし)
海外専門のITライター。カバー範囲は中国・北欧・インド・東南アジア。さらなるエリア拡大を目指して日々精進中。現在中国滞在中。

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