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“国際的ネットカフェ”の条件とは?(後編)

ブックマークにはHotmailとYahoo! Mail、「まんが喫茶」の入口には……

 前編で紹介したタイの旅行者向けネットカフェに続き、後編では中国の留学生向けネットカフェを紹介。さらに、日本のネットカフェは現実としてどのように外国人にとらえられているか、どの程度利用されているのかをレポートする。

中国・雲南省昆明市の留学生向けネットカフェ

雲南省昆明市の留学生向けネットカフェ
 雲南省はベトナム、ラオス、ミャンマーと接している。省都である昆明市はバンコクから毎日フライトがあるほか、東南アジアの各国からフライトがあり、東南アジアとつながりが深い都市だ。市内のいくつかの大学では中国語を学ぶ学生を受け入れており、タイ人、ベトナム人、日本人、韓国人、アメリカ人が多く、中国人もやって来る。東南アジア人が多くを占める国籍構成は、外国人を多く受け入れている日本の大学とよく似ている。

 市内某大学の留学生よく使うネットカフェに行ってみた。料金は30分1元(15円程度)。端末は中国語簡体字のWindows 2000がメインで、入力ロケールは標準の中国語簡体字と英語のほか、日本語と韓国語が入っている。こちらはタイの端末と異なり、ネットゲームが入っているほか、音楽を聴いたりネットゲームを大音量で遊ぶためにヘッドホンも置いてある。ネットゲームをやる以上、回線もCPUやビデオ周りもそれなりに速くなくてはならない。実際、回線は学内LANでつながれているようだし、CPUもPentium 4クラスを搭載しているので、実際に触ってみても不満はなかった。

 とはいえ、一概にすべての留学生が問題ないと思っているとは限らない。そこで前回同様、いろんな国籍の人に「ネットカフェで何をしますか?」「ネットカフェのサービスについてどう思いますか?」という質問をぶつけてみた。

留学生はネットゲーム好き?

「私はYahoo! MessangerとHotmailを使用しています。あとは新聞を見たり、音楽を聴いたり。ベトナムの男子留学生はよくゲームをしてますね(筆者注:端末には「CounterStrike」しか入っていなかったので、それを遊んでいるのだろう)。満足かというと、不満ですね。私の好きな韓国のアイドルのサイトが見られないんです」(ベトナム人女性)

「利用するのは、まずHotmail、次にYahoo! Mail。タイのWebメールもありますが、人気はないですね。MSNがあるからかな? あとはWebを見て、ゲームは時間があれば暇つぶしにやりますね。ゲームをやるために来てるんじゃなくて、メールチェックした後に時間が余ってもったいないからやるんです。タイ人の友人も、支払ったお金でまずメール見て、あとは時間つぶしでゲームです。(不満なのは)ここはタイ語入力システムがインストールされてなくて。タイ語が入力できないとたいへんですよ。突然ページが見られなくなる時もあって、それも困りますね」(タイ人男性)

「メールですね、HotmailとYahoo! Mail。あとは音楽を聴きながらWebを見ます。車に興味あるので、そういう情報を英語やタイ語のサイトで探して見ています。ラオス人の友人はみんな、メールチェックで来ていますよ。ゲームは時間をつぶすためにしますね。スピーカーで音楽を聞くんですが、音質が悪いのは何とかして欲しいな」(ラオス人男性)

「メールです。Yahoo! MailとHotmailを使っていますが、どちらかというとYahoo! Mailのほうを使っています。Hotmailはスパムが多くて。あとは母国のニュースを見ます。不満なのは速度が遅いことや、ときどき停電になること。あとはここ、プライバシーがないですよね。時々他の留学生が覗くんですよ。ついたてとかあったほうがいいですね。あとは環境面。とにかくうるさい。音楽をいろんな人が聞いていて落ち着けません」(フィンランド人男性)

 やはり目的ではメールが1番目で、意外なことにゲームが2番目に来る。大きな理由としては、アジア人が多いということがあるだろう。アジアの国々では実際、どの国のどのネットカフェでも、ゲームの音が響いてゲームセンターのようだったという印象がある。中国人向けの中国産ネットゲームが人気上昇中で、中国人がそれで遊んでいるのを見たが、外国人には蚊帳の外らしく、誰もプレイしてない。ネットゲームの課金方法の説明や、チャット中の会話がすべて中国語なのが最大の壁か? 他の留学生にも聞いてみたが、どうやら欧米諸国ではネットカフェは公共の場なので、静かに使うところという認識があるらしい。このネットカフェに対する認識の差異が欧米人に不満を作らせる要因となっている。

 もうひとつ不満として出たのは、速度の遅さ以上に、時々特定のサイトにつながらなくなるという問題だ。中国では、中国国外のサイトを見るときにファイアウォールのようなフィルタを通す。NGのサイトを覗いたためなのか、NGの単語を検索条件に入力したためなのか、フィルタの不具合によるものかは定かではないが、サイトが見られなくなる状態が度々起こるのだ。こればかりはネットカフェ自身ではどうにも解決のしようがないのだが。

こちらの利用者もヘッドホンを付けている ネットカフェのPCのデスクトップ

日本のネットカフェは外国人に閉鎖的

 以上2回にわたり、タイの外国人旅行者向けネットカフェと中国の外国人留学生向けネットカフェを紹介した。速度が遅かったり、つながらないサイトがあれば不満に結びつくのは当然だ。アジア人はゲームができて音楽が聴ければさらに良しとするようだが、欧米人はメールとチャットとWebブラウジングができればそれで満足らしい。ホームページの設定やブックマークなどにより、HotmailとYahoo! Mailが簡単にアクセスできれば、外国人にはより快適だ。

 一方、私自身が日本全国を行脚して確認しているわけではないのだが、日本にはぱっと見て、外国人を満足させるネットカフェがまだまだ少ないような気がする。私が行ったネットカフェでは、日本語と英語のほかに追加言語がインストールされているところはどこもなく、Hotmailがブックマークされているところもまれであった。

 また、ネットカフェというと日本人はまんが喫茶を連想するだろうが、旅行で来ている外国人にはそうもいかない。「まんが喫茶」という表示だけでなく、せめて追加して「Internet」などと英語で書けば、「まんが喫茶=ネットカフェ」と認識されると思うのだ。現に英語のガイドブックでもっとも有名な「Lonely Planet」では、ネットカフェは多いと書いてあるものの、まんが喫茶の説明はない。他のガイドブックでも「Kinko'sならインターネットが利用できる」と書いてあったり、「ノートPCを持ってきて、公衆電話のモジュラージャックに電話線を差し込む」などまちまちだ。外国人にとって、ネットカフェを探すことがどれだけ茨の道なのかも想像できよう。

 そんな中、滞在者の多い韓国人や中国人の場合は、東京なら新大久保に韓国、池袋には中国の本国そのままのネットカフェがあり盛況を呈している。やはり、日本のネットカフェでは母国の入力ロケールが選べないのでサービスに不満なのが想像できる。

 残念ながら、他国と比べると日本は国際的な国にも関わらず、ネットカフェは外国人に閉鎖的だ。ネットカフェの経営者が見ているなら、ぜひ、入口に「Internet」と書いて、店内のPCのブックマークにはHotmailを追加していただきたい。国際的になるというだけではなく、英語版Webページを作ってアピールすれば、旅行者が大挙してやってきて業績アップ間違いなしだ。


( 山谷剛史 yamayaushi@ybb.ne.jp )
2004/4/20

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