5分でわかるブロックチェーン講座

「中国に負けてはならない」米国でブロックチェーンの国家戦略化が加速か

金融包括ではCeloがLibraを一歩リード

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報にわかりやすく解説を加えてお届けします。

1. ブロックチェーンが米国の国家戦略に?

 米国共和党の下院議員Brett Guthrie氏は19日、ブロックチェーンの普及に関する調査要請の法案を連邦取引委員会(FTC:Federal Trade Commission)に提出した。本法案では、ブロックチェーンに限らずネット上での悪質な行為を検知する人工知能(AI)にも言及されている。

注目すべきは、Guthrie氏が中国の国家プロジェクトを引き合いに出し、「中国に負けてはならない」と明確に述べた点があげられる。法案では、米国でもブロックチェーンを国家戦略として位置付けるよう求められたという。また、民間における利用促進や活用時のメリット・デメリットを洗い出す必要性も訴えられた。

新型コロナウイルスによって一時的に沈静化した米中経済戦争。あらゆるWebサービスの基盤システムになり得るブロックチェーンが、Afterコロナにおける米中経済戦争にも大きな影響を与えることになりそうだ。

参照ソース


    米議員、ブロックチェーン国家戦略の検討で法案提出──「中国に負けるわけにはいかない」
    [CoinDesk Japan]
    「ブロックチェーンを国家戦略へ」 米議員が法案提出
    [CoinPost]
    Congressman pushes blockchain bill that seeks to provide more regulatory clarity
    [TheBlock]

2. Binanceが日本の高齢者施設へマスクを支援

 海外大手取引所Binanceを中心に設立されたBinance Charity Foundation(BCF)は19日、日本のマスク不足を解消するための支援を行なったと発表した。

 BCFは、以下のミッションを掲げ設立された慈善団体だ。

1.ブロックチェーンを使うことで寄付の透明性を向上させる
2.暗号資産のユースケースを拡大させる
3.グローバルに持続可能な開発を加速させる

 今回の支援先は、介護・福祉の現場である高齢者施設が対象となっている。

 なお、BCFは2018年に西日本で発生した「平成30年7月豪雨」の際にも、被災地への募金活動を行い、数千万円規模の寄付金を集め話題となった。

参照ソース


    バイナンスチャリティ、日本の高齢者施設に新型コロナ対策のマスクを寄付
    [CoinPost]
    Masks have been delivered to the Japan Federation of care Business Providers
    [Binance Charity Foundation Twitter]

3. Libra対抗馬「Celo」がメインネットを公開

 金融包括をプロジェクトミッションとするシリコンバレー発のCeloが19日、メインネットへのローンチを発表した。これにより、金(ゴールド)と価格が連動するステーブルコイン「Celo Gold」を、ブロックチェーン上で正式に流通させることになる。

 Celoは、2019年4月にa16zやPolychain Capitalから総額3000万ドルを調達した注目のプロジェクトだ。昨今話題となっているFacebook主導のLibraと同様、既存の金融システムを享受できていない世界中の人々に、新たな金融システムを届けることを目指している。

 5月には、先述したCelo Goldの先行販売を実施し、計1000万ドル分を発行している。今後は、米ドルと価格が連動する「Celo Dollars」も発行される予定だ。

 Libraと比較すると、Celoは非常に順調なプロジェクト進捗をみせている。専用のウォレットも開発が進んでおり、電話番号を使って暗号資産の送金ができるようになるという。これにより、従来の複雑なアドレス送金の課題を解消することが期待できるだろう。

 3月に発表された「Alliance for Prosperity(A4P)」と呼ばれるCelo同盟には、既に計75の企業および団体が加盟している。

参照ソース


    セロ(Celo)がメインネットのローンチを発表
    [あたらしい経済]
    Libraのライバル「Celo(セロ)」独自ブロックチェーンのメインネット公開
    [BITTIMES]

4. ビットコイン半減期後初のディフィカルティはマイナス調整、マイニングの活性化を促す

 5月12日に3回目の半減期を迎えたビットコインは、20日に半減期後初のディフィカルティ調整を実施した。新たな値は15,138,043,247,082となり、これは前回比マイナス6%にあたる。

 ディフィカルティは、1ブロックの生成時間が平均10分になるように調整するための仕組みだ。2016ブロックごとに実施され、当該期間におけるハッシュレート(採掘速度)の値を参考にして難易度が決まる。

今回のマイナス6%は、前回期間におけるハッシュレートの下落を意味する。具体的には、次の通りだ。

1.半減期によりマイナーの報酬が半減
2.マイニングの損益分岐点が上昇
3.赤字マイナーの休業および撤退
4.ハッシュレートが低下

 ハッシュレートの低下はマイナー数の減少を表すため、ディフィカルティを調整する(下げる)ことでマイニングの活性化を促す必要があるのだ。マイニングが活性化されない場合、ネットワークの集権性が高まりデータの改ざん可能性が浮上してしまう。

 ビットコインはこれまでに、313回のディフィカルティ調整を行なってきた。そのうち、マイナスの調整は今回を含め49回のみとなっている。今回のマイナス調整は、半減期の影響を強く受けた結果だといえるだろう。

 ディフィカルティが6%下げられたことで、今後のハッシュレートがどのように推移するか引き続き注目したい。

参照ソース


    ビットコイン:半減期後初の難易度調整「マイナス6%」で完了
    [BITTIMES]
    ビットコインマイニングの難易度が6%低下──雨季を待つ中国のマイナー
    [CoinDesk Japan]
    Bitcoin’s latest difficulty adjustment could have been worse
    [Decrypt]

4. 「11年前のビットコイン」に動き、サトシナカモトに近い人物が取引か?

 2009年2月に新規発行されて以降、11年間にわたり使用されていなかった50BTC分のビットコインが20日、送金に使用されたことが明らかとなった。

 暗号資産はその基盤となるブロックチェーンの性質上、過去の取引を全て追跡することができる。そのため、今回話題となった50BTCが2009年2月9日に発行されたマイニング報酬であることもわかるのだ。

 ビットコインは、2009年1月に稼働を開始しているため、この50BTCはサトシナカモトに近い人物が保有していたものとみて間違いないだろう。しかしながら、サトシ本人ではないと推測されている。

 サトシの保有するBTCおよびウォレットアドレスは、マイニングの際に格納されるノンス(nonce)のパターンから高確率で特定されており、今回のものとは異なるという。

 なお、今回この50BTCが話題となった理由としては、初期のBTC保有者による投げ売りが懸念されてのこと。実際、この50BTCが送金された直後、ビットコイン価格の下落が発生している。

参照ソース


    2009年採掘のビットコイン(BTC)が突如送金!送り主は最初期マイナーか関係者説
    [CoinChoice]
    2009年2月発行のビットコインが移動 11年越しの送金者は「サトシ・ナカモトか」と話題に
    [CoinPost]
    50 bitcoins mined in February 2009 just moved
    [Messari]

編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。暗号資産・ブロックチェーン業界で活躍するライターの育成サービス「PoLライターコース」を運営中。世界中の著名プロジェクトとパートナーシップを締結し、海外動向のリサーチ事業も展開している。Twitter:@tomohiro_tagami / @PoL_techtec