5分でわかるブロックチェーン講座
サムスンが暗号資産取引所と提携、海外のGalaxyは標準アプリで仮想通貨が取引可能に
激化する暗号資産カストディ市場
2020年6月2日 15:18
サムスンが暗号資産取引所とタッグを組む
韓国の大手電子機器メーカーのSamsung(サムスン)が、暗号資産取引所Gemini(ジェミニ)との提携を発表した。これにより、サムスンが製造するスマートフォンに標準搭載(一部市場向け)されるブロックチェーンウォレットから、暗号資産の取引が直接できるようになる。
Geminiは、映画「ソーシャル・ネットワーク」でお馴染みのウィンクルボス兄弟が設立した暗号資産取引所(カストデイ事業者)だ。今回のサムスンとの提携では、Geminiの取引所機能をサムスンのウォレットに提供していくという。Geminiは公式声明を通して、「400万人を超えるサムスンの顧客へ暗号資産の取引機会を提供できることを大変喜ばしく思う」とコメントした。
一方のサムスンは、以前より自社で製造するスマートフォンに暗号資産のウォレット機能を標準搭載してきた(米国など一部市場向け)。このウォレットは、ユーザーが自身で暗号資産を管理するノンカストディ方式のものとなっている。
これまでにGalaxy S10やS20シリーズが搭載対象となっていたが、今後はGalaxy Z Flip、Galaxyノート10シリーズ、Galaxy Foldにも搭載される予定だ。銘柄は、BTCやETHなどの主要銘柄を中心に、BATやMKRといったトークンにも対応している。
なお、日本国内向けのアナウンスは特になく、当面、国内向けGalaxyシリーズへの標準搭載はないとみられる。
参照ソース
Gemini Integrates With Samsung Blockchain Wallet
[Gemini]
取引所GeminiがSamsung Blockchain Walletと連携
[CryptoTimes]
サムスンが仮想通貨取引所ジェミニと提携、Galaxyにはウォレットアプリが搭載予定
[CoinChoice]
暗号資産ブローカー事業が活性化、1億ドルの買収額も
米国最大手取引所Coinbaseが、暗号資産ブローカー事業を手がけるTagomiの買収を発表した。米国メディアTheBlockによると、買収額は7000万ドルから1億ドルに及ぶという。なお、今回の買収はCoinbaseによる過去最高額の案件だ。
TagomiはGoldman Sachs出身のGreg Tusar氏によって2018年に設立され、これまでに大口トレーダーやヘッジファンド、富裕層のファミリーオフィスを中心にサービスを提供してきた。設立後、わずか2年での巨額買収であることからも、暗号資産ブローカー事業の盛り上がりが伺える。
Coinbaseは、過去1年で自社事業に対する機関投資家からの需要が高まったことを受け、今後のさらなる事業強化を強調している。今回の買収により、TagomiはCoinaseの持つ豊富な資産を、CoinbaseはTagomiの持つマーケット知識と優良顧客を、それぞれ獲得することになる。双方にとって非常に良い買収案件だったといえるだろう。
時を同じくして、米国大手カストディ事業者のBitGoも、暗号資産ブローカー事業への参入を発表している。BitGoは、ビットコイン取引全体の20%を占めているといわれる大手ウォレット事業者だ。
27日にBitGo Primeと呼ばれる新サービスを公開し、機関投資家向けの事業にも注力していく方針を打ち出した。既存システムと統合することで、より高度なトレーディングプラットフォームの構築を目指すとしている。
暗号資産市場が盛り上がりをみせる中で、徐々に機関投資家の参入が目立つようになってきた。そのため、CoinbaseやBitGoの他にも、GenesisがVo1tを買収するなどブローカー事業の競争が激化しつつある。
今週の「なぜ」ウォレット事業者はなぜ重要?
今週はウォレット事業者に関するトピックを取り上げた。ここからは、「なぜ重要なのか」解説と筆者の考察を述べていく。
【ポイント】
暗号資産・ブロックチェーンを扱うには必ずウォレット(秘密鍵)が必要
ブロックチェーン関連の資金調達、買収はウォレット事業者に集中
ウォレットは昨今注目の「DeFi」とも密接に関わっている
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
暗号資産の管理にはウォレットと呼ばれる専用のシステムが必要だ。ウォレットは、厳密には秘密鍵のことを意味し、この秘密鍵を使いやすくしたのがウォレットアプリである。
秘密鍵は64桁の乱数から構成されるため、とても人間が覚えられる文字列ではない。そのため、初心者による秘密鍵の紛失が相次いでいるのだ。昨今のトレンドとして、ウォレットにおける秘密鍵の紛失問題に対する取り組みが活発になってきた。
サムスンのブロックチェーンウォレットでは、デバイスに標準搭載することで、誤ってアプリを削除するといった操作を防いでいる。BitGoでは、スマートコントラクトによって制御することで、万が一紛失してしまった場合でも予め決めておいた条件を満たすことにより、秘密鍵を復元させることができるよう設計された。
BitGoは、2018年にGoldman SachsやGalaxy DigitalのCEOを務めるMichael Novogratz氏などから総額5850万ドルを調達している。Tagomiを買収したCoinbaseは、Multisというウォレット事業者への出資と並行して、自社製品であるCoinbase Walletを提供中だ。また、今週のトピックでは登場しなかったものの、同じくウォレットサービスとして人気を集めるArgentは、2020年3月に1200万ドルの資金調達を完了している。
このように、昨今の暗号資産・ブロックチェーン業界における資金の流れは、ウォレット事業者に集中しているのだ。
暗号資産が誕生して以降、その根幹を支えるブロックチェーンの開発が進み、近年ではプロトコルやネットワークといった下位レイヤーではなく、アプリケーションなどの上位レイヤーの開発が進んでいる。
暗号資産・ブロックチェーンに関わる全行動のインターフェースとなるのがウォレットである。例えば、金融×ブロックチェーンを意味するDeFi(分散型金融)では、ウォレットアプリ1つで様々なDeFiサービスに接続することが可能だ。ブロックチェーン上に構築される複数のサービスを、ユーザーとの接点であるウォレットが束ねているイメージだ。今後もこの流れは加速していくだろう。
編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください