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Rippleらが「SWIFT」代替を狙う、共通送金規格「PayID」を発表
異なるサービス間の送金を手軽に
2020年6月23日 08:30
Rippleが新たな送金システム「PayID」を発表
国際送金ネットワークを提供するRippleは18日、Open Payments Coalitionと共同で開発した共通送金規格「PayID」を発表した。異なるサービス間でも手軽に送金が可能となる仕組みを提供していく。
Open Payments Coalitionは、世界中の暗号資産・ブロックチェーン関連企業および非営利団体が参画する組織だ。創設メンバーには、BraveやBitGo、Huobiといった企業をはじめ計40以上もの団体が名を連ねている。
「PayID」は送金時の規格を統一し、情報移動のような送金システムを可能にするものだ。
例えばメールの送受信では、SMTPやPOPといった共通の規格があり、環境が違っても円滑にコミュニケーションが取れるが、送金の場面では統一された規格が存在せず、SWIFT(国際銀行間通信協定)を代表に、非常に多くのネットワークが乱立している。そのため、異なる規格を採用しているサービス間の送金では、非常に複雑な手順を踏まなければならない。
PayIDはこの問題を解決すべく、統一された共通規格の開発を実現しようとしている。具体的には、銀行口座や支店、口座番号などから生成される一意の送金IDを使用。利用者は、このIDのみで送金ができるようになるという。
PayIDは、Rippleのグローバル決済ネットワーク「RippleNet」にも統合されており、相互互換性を持っている。RippleNetの利用企業は、すぐにでもPayIDを使用することができるようになるだろう。
Rippleは、情報の移動と同じぐらい簡単にお金が移動する世界の実現を目指している。今回のPayIDの取り組みにより、また一歩目標の達成に近づいたといえるのではないか。
参照ソース
Ripple社が主導となりOpen Payment連合を立ち上げ、グローバルな支払いを簡素化するPayIDのローンチを発表
[CryptoTimes]
Ripple backs simplified SWIFT rival PayID
[Decrypt]
Ripple, Brave and Huobi Join Instant Global Payments Network PayID
[Cointelegraph]
世界経済フォーラムでブロックチェーン企業が選出
世界経済フォーラム(WEF)2020が選出する、新技術の開発による社会貢献が期待される企業「Technology Pioneers」に、今年はブロックチェーン関連企業が6社選ばれた。
同部門の選出は2000年より始まり、過去にはGoogleやTwitter、Airbnbといった企業が名を連ねている。またブロックチェーン関連企業としては、2015年にRippleが、2019年にBitfuryが選出されている。今年は全体で100社の選出となった。
選出された企業はWEFコミュニティに参画し、2年間カンファレンスに参加する権利を得る。ディスカッションの場では、各分野の最先端事例や知見を共有することも求められるという。
選出された6社のブロックチェーン関連企業は以下の通り。
MakerDAO:DeFi
Lightning Labs:Lightning Network
Elliptic:データ・トランザクション分析
Chainlink:分散オラクル
Ripio:ペイメント
Veridium Labs:SDGs
今週の「なぜ」「PayID」はなぜ重要なのか?
今週はPayIDのローンチに関するトピックを取り上げた。ここからは、「なぜ重要なのか」解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
PayIDはビットコインやLibraとは直接競合しない
インターネットと同様、ブロックチェーンの発展にはプロトコルが必要
プロトコルが整備されるとそこに経済圏が生まれる
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
前回のまとめの中で、「ブロックチェーンには種類があり、用途によった使い分け方が重要」というポイントを述べた。Rippleは、送金分野でのブロックチェーン活用に取り組むプロジェクトだ。
ビットコインやFacebook主導のLibraと類似する取り組み……と言える面もあるが、さらに上のレイヤーでまとめるのがポイントだ。
PayIDは、暗号資産やクレジットカード、キャッシュレスアプリなど全てのサービス間における送金を共通IDに統一しようとしている。Ripple単体ではビットコインやLibraと競合するが、PayIDはさらにそれらをまとめる共通規格(プロトコル)としての役割を担うものだ。
この「プロトコル」という考え方は、インターネットやブロックチェーンのような基盤技術を開発する上で非常に重要だ。顕著なのがイーサリアムで、イーサリアムにはERC(Ethereum Request for Comments)と呼ばれるプロトコルが整備されている。
例えば、ERC-20というプロトコルを使うと、簡単に独自トークンを発行することができる。2016年から2017年にかけて発生した暗号資産バブルは、このERC-20を使って開発された独自トークンによるICOの乱立が背景にある。プロトコルが整備されると、そこに一定の経済圏が生まれるのだ。
結局のところ、基盤技術は使われないと意味がない。当然のことだが、使われるためには使いやすいようにしていく必要があるのだ。イーサリアムがNo.1ブロックチェーンとして君臨しているのは、この要素が大きい。
今回のPayIDに関しても、送金シーンにおけるプロトコルを目指すのであれば、実際にどれだけ使われるかが重要になる。そのため、IDというシンプルな要素だけで送金できるように設計した点は、今後に期待できるのではないだろうか。
編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください