5分でわかるブロックチェーン講座
Libra(リブラ)がいよいよローンチへ、構想時と現在の違いは?
2020年最大のトピック「イーサリアム2.0」がついに始動
2020年12月1日 19:42
Libra(リブラ)がついにローンチ
2019年にその全貌が明らかとなり、大きく話題となったFacebook主導のLibra(リブラ)が、最短で2021年1月にローンチする予定であることがわかった。
Libraは、構想の発表直後に各国の規制当局から度重なる指摘を受け、大幅な方針転換を余儀なくされていた。具体的には、複数の法定通貨を担保とした他通貨バスケット型ステーブルコインを諦め、単一通貨ごとに発行することになる。
まずは米ドルを担保に発行するという。運営は引き続きLibra協会が行い、スイスのジュネーブに本拠を構えている。ステーブルコインを発行するには、スイス金融市場監督局(FinMA)よりライセンスを取得する必要があったが、これに目処が立った可能性が高い。
後半パートで、Libra構想時と現在の違いについて整理したいと思う。
ビットコイン懐疑派の人物が米財務長官に
続々と明らかになるバイデン政権の人事だが、今週は暗号資産業界にとって最も関連性の深い財務長官のポストが埋まった。米連邦準備理事会(FRB)で史上初の女性議長を務めたイエレン氏が起用される見込みだ。財務長官としても女性初となる。
イエレン氏は、暗号資産に懐疑的な姿勢を持つ人物として知られている。2017年にはビットコインを極めて投機的な資産であると発言し、決済システムにおける役割は非常に小さいとの見解を示した。その他にもFRBで議長を務めた5年間、毎年のように次のような発言を繰り返している。
2014年:「FRBはビットコインを監督および規制することはできない。」
2015年:「いかなるイノベーションも基本的には抑え込むべきではない。」
2016年:「ブロックチェーンは既存決済システムに大きな影響を及ぼす可能性を秘めている。」
2017年:「FRBはビットコインに対していかなら規制も行わない。一方で、ビットコインに関する事業者に対する規制を適切に整備していくべきだ。」
2018年:「私はビットコインのファンでは決してない。ビットコインによる決済は非常に少なく、にも関わらずその多くが違法なものである。」
ブロックチェーンのようなテクノロジーによるイノベーションは推奨しつつも、ビットコインに対してはやはり懐疑的な姿勢が受け取れる。これには、日本銀行と同じ役割を担うFRBで議長を務めていた立場も関係してくるだろう。
FRBの管轄には、暗号資産業界との関連性の深い規制当局が複数存在する。例えば、金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)や通貨監督庁(OCC)、米内国歳入庁(IRS)などがあげられる。
今回の大統領選挙の影響から、議会はいわゆるねじれの状態に陥ることが予想される。暗号資産業界に限らず、予算編成などの重要局面で財務長官の調整力が試されるだろう。
参照ソース
米新財務長官に指名される仮想通貨に厳しかった元FRB議長イエレン氏とは?
[CoinChoice]
In Her Own Words: Here’s What Janet Yellen Has Said About Bitcoin
[CoinDesk]
イーサリアム2.0への第一歩
2020年最大のトピックといっても過言ではないビッグなニュースを紹介したい。
Web3.0時代における全ての基盤システムとなるイーサリアムが、「イーサリアム2.0」に向けた第一歩を踏み出す。今回、イーサリアム2.0のフェーズ0にあたる「Beacon Chain」を稼働させるために必要な524,288ETH(300億円以上)が無事に供給され、最初のブロックである「ジェネシスブロック」が12月1日より形成されることになった。
イーサリアムは、処理性能の低さを意味する「スケーラビリティ問題」に悩まされており、現状のままでは多くのアプリケーションを処理することができない。そこで進められていたのが、「イーサリアム2.0」を称する大型アップデートだ。
大きく4つのフェーズに分類され、約5年間もの期間をかけてローンチ前の開発が進められてきた。今週、ようやくその第一歩となるフェーズ0がスタートする。
フェーズ0をスタートさせるには、セキュリティの観点から先述の52万ETH以上が市場からイーサリアムネットワークに供給される必要があった。この条件を無事クリアしたことで、フェーズ0が開始される。
なお、提供された52万以上のETHは、フェーズ1.5が実装されるまで引き出すことができない。ここまでに約5年間かかったことを加味すると、この52万以上のETHを引き出すのに3~5年間は要するのではないか。
これはつまり、約300億円以上ものETHの売り圧力が一気に減ったことを意味する。ここ数日のETHの値上がりは、この影響を踏まえてのものだったといえるだろう。
参照ソース
eth2 quick update no. 21
[Ethereum Blog]
今週の「なぜ」Libraは、なぜ、どのように変わったのか
今週はFacebook主導のLibraやイーサリアム2.0に関するトピックを取り上げた。ここからは、Libraの変化について解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
担保資産を複数通貨から単一通貨へ変更
運営を担うLibra協会の面々が様変わり
Libraに残された課題
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
バスケット型から単一型へ
昨今のCBDC論争の火種となったLibraだが、2020年はすっかり影を潜めていた。規制当局からの指摘を受け、構想時のものから設計を大きく変更する必要に迫られてしまっていたのだ。Libra構想時と現在の違いについて整理していきたい。
まずは担保資産についてだ。Libraはステーブルコインであるため、何かしらの資産を担保にして発行される。構想時はバスケット型ステーブルコインと言われ、複数の国の通貨(USD/EUR/GBP/JPY)を担保にする予定だった。
これに対して、現在は各通貨に対してLibraを個別に発行する単一型ステーブルコインとなっている。予定されている担保資産は「米ドル(USD)」「ユーロ(EUR)」「英ポンド(GBP)」「シンガポールドル(SGD)」だ。構想時から日本円(JPY)が外され、シンガポールドル(SGD)が追加された形となっている。
担保資産の方針転換は、バスケット型の場合にどのLibraがどの資産を担保に発行されたか不透明となり、マネーロンダリングの温床となってしまう可能性を指摘されてのことだ。
様変わりしたLibra協会
Libraがここまで大きく話題となった理由は、Libraを運営するLibra協会の面々が凄まじかったからだ。発表時点では計28の企業・団体が加盟を表明しており、2020年までに100団体を目指す方針を打ち出していた。
当時は、PayPalやMasterCard、VISA、Airbnb、Uber、Spotify、ebay、a16zといった錚々たる顔ぶれに衝撃を受けたことを覚えている。
現在は、上記の中だけでもPayPal、MasterCard、VISA、Airbnb、Uber、ebayが脱退し、発表当時ほどのインパクトはなくなってしまった。また、2020年が終わりを迎えようとしている現在も、加盟企業・団体は計27にとどまっている。
脱退が相次いだ理由としては、Libra協会に加盟しているという理由だけで自社や本業サービスにも悪影響を及ぼしかねないとの懸念を示した企業が多かったことに起因する。それだけ、当時Libraが受けた規制当局からの指摘は激しいものだったのだ。
Libraがクリアしなければならない課題
最短で2021年のローンチが予定されているLibraだが、まだまだクリアしなければならない課題も多く残っている。中でも、Libraを管理するためのウォレット(Novi(ノビ)という、旧Calibra(カリブラ))を提供するための取り組みが重要だ。
ウォレットの開発自体は既に終えているとしているが、米国でサービスを提供するには州ごとに計50ものライセンスを取得しなければならない。
またLibraが規制対応に追われていた2年間、DeFi市場の盛り上がりによって多くのステーブルコインが誕生したこともハードルになりそうだ。Libraだけがこれほどまでに規制対応に追われているのは、その影響力の高さゆえのことであり、今後も続くことが予想される。