5分でわかるブロックチェーン講座
ブロックチェーンでAirbnb株をトークン化、相次ぐ大手企業のビットコイン大量購入
「アセットのトークン化」について考察
2020年12月15日 06:55
上場株をブロックチェーンで管理
「上場株のトークン化」という取り組みが活発だ。
暗号資産デリバティブ取引所大手のFTXが、10兆円を超える評価額でIPOしたAirbnb株をトークン化した「ABNB」の提供を開始した。トークンの価格は、Airbnb株の価格に連動する設計となっている。
仕組みとしては、FTXの提携先であるドイツのCM-Equityが、実際にAirbnb株を購入し、保有分を上限としてトークン化し顧客に販売するというものだ。これによりFTXの利用者は、FTX内でAirbnb株に対して間接的に投資することができるようになった。
この上場株のトークン化は、他にも暗号資産取引所BittrexがApple株やAmazon株、Tesla株をトークン化して取り扱っており、デリバティブ商品として投資家に販売している。
今週の後半パートでは、「トークナイズ」と呼ばれるアセットのトークン化という行為について考察していきたいと思う。
大企業によるビットコイン購入
大企業によるビットコインの大量購入および事業参入が相次いでいる。今週だけでも、4社による動きが報じられた。
米金融大手のFidelity(フィディリティ)は、暗号資産のレンディングサービスを運営するBlockFiと提携し、暗号資産担保ローンの提供を開始した。これにより、ビットコインを担保にして、法定通貨を借り入れることができるようになる。
借り入れ上限は、担保資産に対して最大60%に設定され、ビットコインを売却することなく法定通貨を入手することが可能だ。暗号資産と法定通貨を交換するには、基本的に取引所を経由する必要があったが、Fidelityのような大手金融機関が参入することで流動性が一層高まることが期待できる。
英スタンダードチャータードも、同じタイミングで暗号資産のカストディ事業(顧客の資産管理)を開始している。2021年中のサービス提供開始が予定されている本事業も、Fidelityと同様に顧客の暗号資産への需要が高まってきたことの裏付けだといえるだろう。
3つ目の動きとして、米マイクロストラテジによる資金調達を紹介したい。同社は、ビットコインを追加購入するためにコンバーティブルノートによる約4億ドルの資金調達計画を明らかにした。
マイクロストラテジは、2020年8月に2億5000万ドル、9月に1億7500万ドル、さらに今月5日に5000万ドルものビットコインを購入している。今回調達する4億ドルは全て、ビットコインの追加購入に充当するという。
最後は、米大手生命保険MassMutualによる1億ドルのビットコイン購入を紹介する。160年以上の歴史を持つ同社は、5600億ドル以上の資産を運用する老舗保険企業だ。既存顧客に対して、金融商品としてビットコインの選択肢を提供するという。
昨今のビットコイン価格の高騰は、こういった大手企業および機関投資家の参入による影響が非常に大きいと考えられる。ビットコインのパフォーマンスは毎年安定して高い水準を維持しており、ビットコインを投資事業の一つとして捉えている企業が増え続けているのだ。
これらはいずれも、長期的な米ドル価格の崩壊に対するリスクヘッジを背景に見据えている。これまで金(ゴールド)市場へ流れていた資金が、昨今急激に暗号資産市場へ流入しているのだろう。
参照ソース
Fidelity Digital Assets℠ Adds Collateral Agent Capabilities, Will Custody Bitcoin Pledged on Loans Financed by BlockFi
[Fidelity Press Release]
マイクロストラテジー(MicroStrategy)がビットコインに約52億円を追加投資
[あたらしい経済]
今週の「なぜ」トークナイズはなぜ重要か
今週は上場株のトークン化と大企業のビットコイン大量購入に関するトピックを取り上げた。ここからは、トークナイズがなぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
【まとめ】
アセットのトークン化の意義は「資本効率性」と「流動性」
トークナイズにより暗号資産を使って株式市場に少額投資が可能になる
そもそもアセットを発行する時点でトークン化したものがセキュリティトークン
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
「アセットのトークン化」の意義
ブロックチェーンの特徴の一つとして「アセットのトークン化」があげられる。これをトークナイズと呼んでいるが、要は何かのアセットをブロックチェーン上に持ってくることを意味する。
今週のトピックとして取り上げたFTXの例がまさに該当する。この例では、Airbnbの株をブロックチェーンで管理するためにABNBとしてトークナイズしている、といった具合だ。
トークナイズの意義は、主に「資本効率性」と「流動性」である。上場株のトークナイズを例に解説していきたい。
暗号資産を使って株式市場に少額投資が可能
一つ目の「資本効率性」とは、暗号資産市場の資金を暗号資産のまま株式市場に投資できることを意味する。暗号資産市場にある資金を株式市場に持ち込むには、一度暗号資産取引所で法定通貨に換金し、その上で証券取引所に入金しなければならない。
これには異なる取引所のアカウントが必要になるだけでなく、入出金の度に手数料が発生したりと、資本効率性が非常に悪いと言えるだろう。
二つ目の「流動性」とは、資本効率性に近い意味合いも持っているが、主に投資単位の細分化ができることを意味する。株式市場では最低購入単位が定められているため、少額投資ができないケースが多い。
例えば、日本の株式市場を牽引するトヨタ自動車の株を購入する場合、最低購入単価が100株となっているため、ここに現在の株価(約8000円)を掛け合わせると、最低でも約80万円が必要になるのだ。
これをFTXのようにトークナイズし暗号資産デリバティブ市場に流通させることで、100株未満の単位でトークン化された株式を購入することができるようになる。つまり、80万円以下の元本でもってトヨタ自動車株に投資することができるようになるのだ。
このように、株式をトークナイズさせることで株式市場への少額投資が可能となり、資金の流動性を高めることが可能となる。
セキュリティトークンによるアプローチ
今回は、株式をトークナイズさせてデリバティブ商品として販売するという仕組みについて紹介したが、昨今はそもそも株式を発行する時点でトークン化させてしまう方法が確立されつつある。
これが今話題のセキュリティトークンだ。過去に、セキュリティトークンやそこから派生した資金調達手法であるSTO(Security Token Offering)については紹介しているため、詳細はそちらをご覧いただきたい。
証券をトークン化したものがセキュリティトークンであるため、本質的にはトークナイズの一種だともいえるだろう。どちらのアプローチも、資本効率性と流動性を高めるための仕組みであり、そこに優劣は存在しない。
あえて違いをあげるならば、セキュリティトークンは既存の市場の枠組みで、トークナイズは新興市場の枠組みで取り扱われる。つまり前者の方が規制が厳しく、日本国内でセキュリティトークンを扱うことのできる事業者は限られている。