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Facebookが社名を「Meta」に変更。NFTとの関係性は? ~NFT市場から見るメタバース~

AdobeがNFT市場への参入を発表、PhotoshopでNFTを発行可能に

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

Facebookが社名変更、NFT含むメタバースへ注力

 Facebookが社名を「Meta」に変更した。文字通りメタバースへの注力を示したものとなったが、これに関連してNFTへの取り組みも明確にしている。

 Metaはメタバース空間におけるNFTについて、既存サービスの枠組みを超えた新たなタイプの交流をもたらすと説明。同社のプラットフォームでも、NFTを簡単に販売したり、デジタルスペースに展示したり、安全に二次流通させたりできるようになると言及した。

 Metaは以前より、NFT以外にもブロックチェーンを活用した事業に参入している。最も知られているのは、2019年に構想が発表されたステーブルコイン「Diem(旧:Libra)」だ。Dimeプロジェクトでは、専用のブロックチェーンやウォレットを開発するなどしているが、ここまで目立ったアウトプットは出てきていない。

 NFTもブロックチェーン上で発行されることを考えると、Diemとの関係性が今後どのように変化していくか見ものだ。今週は、メタバースにおけるNFTの重要性について考察する。

参照ソース


    Meta: ソーシャルテクノロジー企業
    [Meta]

AdobeがNFT市場への参入を表明

 クリエイター向けソフトウェア大手のAdobeが、NFT市場への参入を発表した。NFTマーケットプレイス大手4社との提携を発表し、併せてPhotoshopへの機能追加を明らかにしている。

 Adobeは、2019年にクリエイターの権利を守るためのデジタル認証機能「Content Authenticity Initiative(CAI)」を立ち上げていた。今回、CAIでの取り組み発展させ、NFTにも適用範囲を広げた「Content Credentials」をリリースしている。

 Adobeの狙いは、デジタルコンテンツに来歴と帰属を記載することで、権利の透明性を高めたり著作権を保護するといった点だ。結果的にクリエイターの活動を保護することに繋がる。これを実現するために、OpenSea、Rarible、SuperRare、KnownOriginの4つのNFTマーケットプレイスと提携した。

 また、今回の発表に併せて、自社ソフトPhotoshopでNFTを発行できる機能が導入されるという。Photoshopで発行されたNFTには、クリエイターのSNSプロフィールと暗号資産ウォレットのアドレスが付与されるようだ。

参照ソース


    Adobe MAX 2021:アドビが推進するコンテンツ認証機能をAdobe Photoshopなどに搭載
    [Adobe]

今週の「なぜ」メタバースにおいてNFTはなぜ重要か

 今週はFacebookの社名変更やAdobeのNFT市場参入に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

ブロックチェーン業界におけるメタバースの先がけは「Decentraland」
メタバース上のアイテムは全てNFTとして発行できる
NFTの作るメタバースは現実世界の焼き増しではない

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

Decentralandに見るメタバースとNFT

 メタバースという言葉はまだまだバズワードに過ぎないが、ブロックチェーンやNFTとの相性は良いと言って間違いないだろう。ブロックチェーン業界では、数年前よりメタバースという言葉が登場し始め、昨今のトレンドよりも前に関連サービスが登場していた。

 その筆頭が「Decentraland」だ。Decentralandは、バーチャル空間に別世界を作り出すサービスであり、セカンドライフに近いものとなっている。2017年にICOを実施し約24億円を調達し話題となっていた。

 Decentralandでは、3D空間に「LAND」と呼ばれる土地が用意されており、一つ一つに所有者が存在する。所有者は、所有する土地の上で自由に建物を構築したり、土地自体を他人に売却することも可能だ。この土地が全て、NFTとして発行されている。

メタバース上でのアイテムをNFTで発行

 米国におけるニューヨークや日本における東京のように、Decentralandにも人々が集まるエリアが存在する。人気エリアに位置する土地は、数億円から数十億円で売買されており、NFTとして発行されていることから所有者が次々と移転していく。

 これと同じことが、あらゆるメタバース空間で起こりうるだろう。土地に限らず、ファッションアイテムや家具などをNFTとして発行することもできる。

 NFTは現在の所有者が明確になるだけでなく、過去に誰が所有していたかを明らかにすることも可能だ。現実世界では、二次流通時に過去の所有者を明確にすることはできない(もちろん言うのは自由だ)。

 人気アバターが過去に所有していたファッションアイテムとなれば、ファンにとっては高額売買の対象になるだろう。

NFTの作るメタバース空間

 ここからわかることは、NFTが取り入れられたメタバース空間は、単に現実世界をバーチャル空間に移行させるだけではないことがわかる。現実世界でできなかったことが、メタバース空間では可能になるのだ。そのための重要な要素の一つが、NFTでありブロックチェーンということになる。

 今回、FacebookがMetaへの社名変更でメタバースへの注力を示したが、NFTについても間違いなく積極参入してくることが予想できる。先行してステーブルコインの開発を行ってきたことも好材料となりそうだ。

 現状のNFT市場では、支払い手段がイーサリアム(ETH)となっていることが多く、価格変動の影響を受けやすい。ここにステーブルコインを導入することで、決済手段としても機能することが期待できる。

 既存事業では長期的な勝ち筋が見つかっていないだけに、Metaがメタバース事業でどのように挽回するのか見ものだ。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami