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ステーブルコインUSDCの裏付け資産の内訳が公開、運営のCircleはSPACでの上場を間近に控える

中国CBDCのホワイトペーパーが初公開

USDCの裏付け資産の内訳が公開

 米ドル担保のステーブルコインUSD Coin(USDC)が、裏付け資産の内訳を公開した。運営のCircleがニューヨーク証券取引所へのSPACでの上場を間近に控えていることから、投資家への透明性確保を狙う目的だと考えられる。

 USDCは、1USDC=1ドルとなるよう米ドルを担保に発行され、理論上はUSDCの発行総額と同等の裏付け資産をCircleが管理していることになる。今回公開された資料は、5月28日時点のものであり、当時のUSDC発行総額は約220億ドルであることから、Circleは220億ドル相当の資産を有しているはずということだ。実際の内訳は以下の通りである。

  • 現金および現金同等物:61%、134億ドル
  • 国外の銀行が発行するCD(Certificates of Deposit):13%、29億ドル
  • 米国債:12%、27億ドル
  • コマーシャルペーパー:9%、20億ドル
  • 社債:5%、11億ドル
  • 地方債と米エージェンシー債:0.2%、1億ドル

 裏付け資産の総額は約222億ドルとなっており、USDCの発行総額を上回っていることがわかる。暗号資産・ブロックチェーンが既存金融との関わりを拡大し、次のフェーズへと移行するには、ステーブルコインの存在がポイントになるといえる。そのためには、価値の裏付けとなる資産の内訳が重要になるのだ。

参照ソース


    Greater Transparency for USDC Reserves
    [Circle]

中国CBDCのホワイトペーパーが初公開

 中国の中央銀行にあたる中国人民銀行が、中央銀行デジタル通貨(CBDC)のホワイトペーパーを公開した。正式ローンチのスケジュールなどは明らかになっていないものの、新たにスマートコントラクト機能が実装されることが記載されており、ブロックチェーンをベースにした通貨インフラとなることが確実視される。

 世界のCBDC領域を牽引する中国は、これまでにもブロックチェーンに関するアップデートを行ってきた。CBDCは必ずしもブロックチェーンを使う必要はないものの、ブロックチェーンを活用することで主にインターオペラビリティ(相互互換性)を実現することができる。

 スマートコントラクト機能が実装されることで、CBDCを使ったアプリケーションを開発することが可能となる。中国では暗号資産取引を明確に禁止しているため、DeFiやNFTなどで使用されているイーサリアムを活かすことができていない。しかしその代わりに、CBDCを使えるようにするのが狙いだろう。

 公開されたホワイトペーパーによると、6月末時点で既に約53億ドルものCBDCが流通しており、7000万件以上のトランザクションが実行されたという。CBDCを扱うことができるウォレットは、個人用で2,100万個、商用で350万個を超えている。

参照ソース

今週の「なぜ」ステーブルコインの裏付け資産の内訳はなぜ重要か

 今週はステーブルコインUSDCの裏付け資産の内訳と中国CBDCのホワイトペーパーに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

ステーブルコインの裏付け資産はリスクの低いもので構成されるのが基本
ステーブルコインの需要は決済シーン以外でも出てきている
USDCはマスターカードやVisaに組み込まれる

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

ステーブルコインの裏付け資産のリスク

 ステーブルコインは、暗号資産に実需を持たせたソリューションだと言っていい。ボラティリティを抑えることで通貨として使用できるようにし、実際にDeFiなどのシーンで頻繁に利用されている。

 ステーブルコインの中でも特にシェアを伸ばしてきているのが、USDCとUSDTだ。USDTもUSDCと同様に裏付け資産の内訳を公開しているが、リスクの高い資産の割合が多くなっている。

  • 現金及び現金同等物、その他短期預金、コマーシャルペーパー:75.85%
  • 有担保貸付(関連会社への貸付はなし):12.55%
  • 社債、ファンド、貴金属:9.96%
  • その他の投資(デジタルトークンを含む):1.64%

 ステーブルコインの価格を安定させるには、その裏付け資産がリスクの低いアセットで構成されている必要があるため、USDTはUSDCに比べてリスクが高いと言える。

決済以外にも使用されるステーブルコイン

 ステーブルコインの価格安定にリスクが存在していることは、ステーブルコインにとって致命的になると言えるだろう。実際、USDTに比べてUSDCの方がDeFiなどで多く利用されている。

 現状、暗号資産と法定通貨を交換するには、原則として取引所を経由する必要がある。しかし、本人確認が煩雑だったり、未成年は口座を開設できなかったりといった状況となっている。

 そこで近年さらにステーブルコインの需要が増加するようになったのだ。ステーブルコインは取引所を介さずに直接米ドルなどで購入することが可能であるため、DeFiへのアクセス時に取引所を介す必要がない。

 USDCは、USDTに比べて透明性に長けていることから、より多くのユーザーが利用するようになったと考えられる。

USDCの活用例

 今週は、マスターカードがUSDCを活用した暗号資産決済サービスの導入へ本腰を入れるとの発表が出されていた。マスターカードの顧客は、暗号資産から法定通貨へのUSDCを介した換金が可能となり、その処理が簡素化されるという。

 暗号資産と法定通貨を直接換金するのは、規制の面でも価格変動の面でもリスクが大きいため、一度ステーブルコインを介すことで負を回収することができるのだ。

 マスターカード以外にも、Visaが既にUSDCを使った暗号資産決済の導入を進めている。米銀行Signature Bankとの取り組みでは、USDCを活用することで24時間のリアルタイム送金を実現しており、手数料を安価に抑える役割も期待されている。

 ステーブルコインは、暗号資産エコシステムを既存金融へ組み込む重要な橋渡しの役割を担っており、その本命が透明性に長けたUSDCとなっているのが現状だ。暗号資産・ブロックチェーンを考察する上で、ステーブルコインの活用シーンなどを中心に見てみると、重要なインサイトが見つかるかもしれない。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami