5分でわかるブロックチェーン講座

Facebook内の暗号資産の広告、制限が緩和される

世界経済フォーラムがPlay-to-Earnの解説レポートを公開

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

世界経済フォーラムがPlay-to-Earnの解説レポートを公開

 ダボス会議などを運営する世界経済フォーラム(World Economic Forum)が、Play-to-Earnの実態を分析したレポートを公開した。eスポーツで得た報酬で大学を卒業したという若者によって執筆されている。

 Play-to-Earnとは、ブロックチェーンゲームのような文字通り「稼ぐためにゲームをプレイする」ことを意味する概念だ。eスポーツはゲームを軸に賞金が得られるものである一方、ブロックチェーンゲームはDeFiにゲーム要素を取り込んだものと言える。

 世界経済フォーラムは、Play-to-Earnについて「自己主権型の金融システム」「オープンなクリエイターエコノミー」「デジタル表現と所有権の概念を明確化した」などと表現。ゲームだけでなく、金融システムにさえも影響を与える可能性があると評価している。

 Play-to-Earnとしてブロックチェーン業界で注目を集めているのがGameFiの領域だ。ゲームとDeFiを組み合わせた概念であり、Axie Infinityなどが特に新興国で脚光を浴びている。

参照ソース

Metaが暗号資産関連広告の制限を緩和

 Meta(旧:Facebook)が、FacebookやInstagram上での暗号資産関連広告の規制を緩和することを発表した。市場が成熟してきたことで緩和する方針に至ったという。

 FacebookやInstagramでは、2017年ごろよりICO詐欺などが横行したことから、暗号資産関連の広告を規制してきた。広告を掲載するには、上場企業であるかどうかや3種類に限られたライセンスを取得する必要があったようだ。

 今回の緩和に伴い、ライセンスは27種類に増加し、許可が必要ないサービスも明確にされた。主に、暗号資産には触れないブロックチェーンに関する内容であれば問題ないという。これにはNFTなどが含まれている。

 日本では、暗号資産サービスプロバイダーつまり現時点では暗号資産取引所として認可されている場合は、暗号資産に関する広告を掲載することができるようだ。Meta自身もメタバースに注力する中で暗号資産に触れることがあると思われる。今後さらに市場の成熟化が進んだ場合には、より多くの広告を取り扱う可能性があると説明した。

参照ソース


    Expanding Eligibility to Run Ads About Cryptocurrency
    Meta

今週の「なぜ」Play-to-Earnはなぜ重要か

 今週は世界経済フォーラムのPlay-to-EarnレポートやMetaの暗号資産関連広告の規制緩和に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

海外では稼ぐためにゲームをプレイするのが当たり前になっている
ゲーム内でユーザー間の仕事の受発注が成立している
普通に働くよりもGameFiをプレイする方が稼げる事実

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

「Earn」に対する認識の違い

 暗号資産やブロックチェーンが登場したことで、Webサービスの主権が事業者からユーザーに移り始めている。これは、全てのWebサービスにおけるユーザー行動に対して、何かしらのインセンティブが発生する可能性があることを意味するのではないだろうか。

 日本人にとっては違和感があるかもしれないが、海外では「Earn」という言葉に対する反応が非常に強いことを実感している。Play-to-Earnもその1つで、ゲームは楽しむよりも稼ぐために行うという認識が定着しているようだ。

 もちろんこれはブロックチェーンゲームに限った話であり、全てのゲームに当てはまるわけではない。しかし、稼ぐという要素を取り込むことで、レッドオーシャンであるゲーム市場で明確な差別化になっていることも事実だろう。

ゲーム内で仕事の受発注が成立

 Play-to-Earnが盛り上がっている市場はGameFiだ。DeFiにゲーム要素を取り入れることで誕生したこの市場は、ブロックチェーンならではのものとなっている。

 GameFiでは、ユーザー間で仕事が受発注されるサイクルが形成されている。例えば、資金に余裕のあるユーザーが新規ユーザーに対してキャラクターを育てる仕事を依頼するなどだ。

 キャラクターはNFTとして発行されているため、マーケットプレイスで売却することができる。こうして得た収益を分配することも可能だ。従来のゲームであれば、ほかのユーザーに仕事を依頼することもキャラクターを販売することもできなかったが、ブロックチェーン上で稼働していることで、これらが実現されている。

一般的な労働よりも稼げるGameFi市場

 Play-to-Earnとして最も注目を集めているタイトル「Axie Infinity」は、特にフィリピンの人々に愛されているようだ。フィリピンでは、一般的な労働から得る報酬よりもAxie Infinityをプレイすることで得る報酬の方が高いという。

 こういった状況に対しては、フィリピンの財務省が納税対象になるとして言及するなど、現実世界にまで影響を与えるようになっている。

 今回の世界経済フォーラムのレポートによると、ビデオゲームの市場規模は3360億ドルに及ぶという。しかし、開発者やパブリッシャーがゲーム内で起こる全てのことに対して権利を有しており、エコシステムは閉じられたものになっているようだ。

 ブロックチェーンによるオープンなエコシステムがゲーム市場に組み込まれたことで、今後さらなる市場の拡大が予想される。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami