5分でわかるブロックチェーン講座

コインベースウォレットがSolana(ソラナ)に対応、打倒メタマスクへ対応するパブリックブロックチェーンを拡大

DAO特化の会計ソフトが資金調達、分散型組織の会計業務を効率化

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

DAO特化の会計ソフトが資金調達

 DAO(Decentralized Autonomous Organization)に特化した会計ソフトCoinbooksが、シードラウンドで320万ドルの資金調達を実施した。複雑化するDAOの会計業務を効率化することが狙いだ。

 Coinbooksは、DAOの資金管理を効率化することを目指すプロジェクトだ。国境の存在しないDAOでは、流通する通貨が暗号資産(トークン)になっており、報酬の支払いやガバナンス管理なども全てトークンで行われる。そのため、既存の会計ソフトを使うことが難しく、会計管理が複雑化しているのが現状だ。多くのDAOがエクセルなどでの管理を強いられている。

 Coinbooksでは、既存の会計ソフトの機能に加えて暗号資産ウォレットを統合する仕組みを開発。DAOで発生するトランザクションの管理と一般的な商取引を一括管理できるようにするようだ。トランザクション管理は、パブリックブロックチェーンを参照することで自動的に取り込むことが可能となる。

 今回の資金調達は、創業後わずか3カ月という短期間で実施されている。DAOの急速な普及によりさまざまな領域で課題が生じており、会計ソフトの整備も急務であることが伺える。

参照ソース

  • Coinbooks raises $3.2 million to build accounting software for DAOs
    The Block

Coinbase WalletがSolanaに対応

 米暗号資産取引所Coinbaseが提供する暗号資産ウォレットCoinbase Walletが、パブリックブロックチェーンSolana(ソラナ)への対応を開始した。Solana上で発行されるトークンをCoinbase Walletで扱えるようになる。

 Coinbase Walletは、秘密鍵をユーザー自身が管理するセルフカストディ型ウォレットだ。取引所などが秘密鍵を管理しないため、自己の責任が伴う一方でカウンターパーティリスクが払拭される。また、事業者側も規制の影響を受けづらい点が特徴だ。

 Coinbase Walletでは、これまでにイーサリアムを中心にイーサリアム(EVM)と互換性のあるさまざまなパブリックブロックチェーンに対応してきた。具体的には、PolygonやAvalanche、BNBチェーンなどがあげられる。

 今回、EVMとの互換性がないパブリックブロックチェーンとして初めてSolanaに対応した。Solanaは、イーサリアムと比べてガス代が安く、初心者が扱いやすいエコシステムになっているとCoinbaseは評価している。

参照ソース

  • Coinbase Wallet introduces support for the Solana ecosystem
    Coinbase

今週の「なぜ」セルフカストディ型ウォレットはなぜ重要か

 今週はDAO特化の会計ソフトやセルフカストディ型ウォレットに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

DAOとセルフカストディ型ウォレットはお互いにとって欠かせない要素
規制の影響からカストディ型ウォレットは提供が困難
セルフカストディ型ウォレットはWeb3.0におけるスーパーアプリに

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

DAOとセルフカストディ型ウォレット

 今週はDAOとセルフカストディ型ウォレットに関するニュースが重なったが、両者は密接に関係している。ブロックチェーン上に開発される分散型アプリケーション(DApps)は、基本的にDAOによって運営される。

 DAppsを管理する特定の企業は存在せず、代わりにDAOによって分散的に運営される。そんなDAppsを使用するユーザーは、必ずウォレットを用意しておく必要がある。このウォレットが、基本的に全てセルフカストディ型ウォレットになるのだ。

 DAppsを使用するためのウォレットがセルフカストディ型ではない場合、ウォレットはDApps側が管理しなければならない。しかし、DApps側はDAOによって運営され特定の企業が関与することはないため、ウォレットを管理することができないのだ。

セルフカストディ型ウォレットと規制

 ウォレットがセルフカストディ型であるのにはほかにも理由がある。それが、トラベルルールをはじめとする規制だ。セルフカストディ型ではないウォレットの場合、ユーザーのウォレットをウォレット事業者が管理することになるが、これには多くの国でカストディ企業としてのライセンス登録が必要になる。

 日本でも、カストディ企業として登録するには暗号資産取引所のライセンスが必要だ。暗号資産取引所のライセンスを取得するのに莫大な時間と資金が必要になるため、これを取ろうとする動きはほとんどない。

 そのため、DAppsを使用するにはセルフカストディ型ウォレットが欠かせないことになる。現状は、Coinbase Walletを抑えてMetaMaskのほとんど一強状態にある。ウォレットはネットワーク効果が働きやすく、早い段階でサービスを提供していたMetaMaskが現在もシェアを独占している状態だ。

Coinbase Walletの新戦略

 Coinbaseは、2022年はCoinbase Walletに最も注力する意向を示している。2021年7月末に公表した新戦略の中で、より多くのDAppsにアクセスできるようにする計画を明らかにしていた。

 MetaMaskは、基本的にイーサリアムかEVM互換のブロックチェーンにしか対応していない。今回Coinbase WalletがSolanaに対応したことからは、打倒MetaMaskの気概が感じられる。

 Coinbase Walletは、Web3.0におけるスーパーアプリになることを目指している。ウォレットがDAppsにアクセスするための唯一の手段であることを考慮すると、その可能性は十分にあると言えるだろう。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami