5分でわかるブロックチェーン講座
人気ブロックチェーンゲームAxie InfinityのRoninブリッジから750億円相当が流出
日銀がCBDCの概念実証をフェーズ2へ移行
2022年4月5日 11:00
日銀がCBDCの概念実証を次のフェーズへ移行
日本銀行がCBDC(Central Bank Digital Currency:中央銀行デジタル通貨)の概念実証をフェーズ2へと移行することを発表した。当初より2022年春の移行を公表していたため、現時点では予定通りの進行となっている。
日銀は、2021年4月よりCBDCに関する本格的な概念実証を開始してきた。現時点ではCBDCを発行する計画はないとしつつも、先行する中国や調査を進める米国などに遅れを取らない姿勢を見せている。
フェーズ2では、「決済の利便性向上」「仲介機関間・外部システムとの連携」「経済的な設計(金融システムの安定確保など)」の3つを検証項目としてあげた。また、これらをテストするために、実験用のウォレットアプリを開発するという。
フェーズ1ではCBDCの発行や移転といった基本的な機能が確認されたのに対して、フェーズ2では発行や移転のために必要な周辺機能を重点的に確認する予定だ。フェーズ2をもって、CBDCの実現可能性や課題が整理されるという。
参照ソース
- 中央銀行デジタル通貨に関する実証実験(概念実証フェーズ2)の開始について(PDF)
[日本銀行]
Roninブリッジから750億円相当が流出
人気ブロックチェーンゲームAxie Infinity独自のサイドチェーンであるRoninへトークンを転送するためのRoninブリッジから、750億円相当の巨額資産が流出した。過去最大規模のハッキング事件となっている。
Play to Earnの火付け役として知られるAxie Infinityは、需要増に伴うトランザクション数の増加から、イーサリアムなどのパブリックブロックチェーンではなく独自のサイドチェーンを提供している。サイドチェーンにトークンを転送するには、ブリッジと呼ばれる仕組みが必要であり、Axie InfinityはRoninブリッジという専用の仕組みを開発していた。
今回のハッキングはこのRoninブリッジが標的となり、17万3600ETH(約720億円)と2550万USDC(約30億円)が流出し、被害総額は約6億2500万ドル(約750億円)におよんだ。
Axie Infinityの運営元であるSky Mavisは、サービスの規模に比べて運営体制が追いついていなかったことを認め、被害総額を全額補填することを発表している。
参照ソース
Community Alert: Ronin Validators Compromised
[Ronin’s Newsletter]
今週の「なぜ」トークンブリッジはなぜ重要か
今週は日銀のCBDC概念実証とAxie Infinityのハッキング事件に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。
ブリッジはマルチチェーン化の加速に伴い台頭した
ブリッジはトークンの移動、インターオペラビリティはDAppsの移動
ブリッジはハッキング被害に遭いやすい
それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。
マルチチェーンとブリッジ
2021年は複数のブロックチェーンがシェアを伸ばすマルチチェーンの時代だった。今後もこの傾向が続くことが予想され、異なるブロックチェーン間をトークンが移動し続けることになるだろう。
しかし、ブロックチェーンは相互に互換性がないため、例えばビットコイン(BTC)をイーサリアムのブロックチェーン上で直接扱うことはできない。そこで必要になるのがブリッジだ。
ブリッジは、異なるブロックチェーン同士を繋ぐことでトークンの移動を可能にする仕組みだ。詳細な仕組みはさまざまだが、特定のブロックチェーンでしか扱えないトークンが存在するため、ユーザーにとっては欠かせない仕組みだと言える。
インターオペラビリティとブリッジ
ブリッジに類似する仕組みとしてインターオペラビリティ系のプロトコルがあげられる。具体的には、PolkadotやCosmosといったプロジェクトだ。これらはブリッジと違い、トークンだけでなくDAppsそのものを別のブロックチェーン上で動かすために存在する。
インターオペラビリティ系のプロトコルが出てきた当初は、それらがハブとなって全てのブロックチェーンを繋ぐことを目指していたものの、現状はイーサリアムがハブとなってEVM(Ethereum Virtual Machine)互換のチェーンが乱立する様相となっている。
プロトコルレベルで異なるブロックチェーン同士を繋ぐインターオペラビリティは難度が高く、現状はユーザーの需要に耐えうるだけのブリッジがシェアを伸ばしている状況だ。ユーザーからすると、特定のDAppsを複数のブロックチェーンで動かしたいとは思わず、トークンの転送ができれば十分といったところだろう。
相次ぐブリッジのハッキング被害
ブリッジはトークンの転送を担う機能であるため、資産が一箇所に集まることからハッキング被害に遭いやすいと言える。ここ数カ月だけでも、PolyNetworkやWormhole、そして今回のRoninでいずれも300億円を超える巨額資産が流出した。
こういった状況には、イーサリアムの共同創業者であるVitalik氏も警鐘を鳴らしている。異なるブロックチェーンは本来繋ぐべきではなく、独立した経済圏として存在すべきであるとの見解だ。
ブリッジは性質上、異なるスマートコントラクトに対応しなければならないため、実装難度が非常に高いと言える。そのため、潜在的なバグも生まれやすいのだ。Wormholeのハッキング事件の際にも言及したが、ブリッジはチェーン間からレイヤー間を繋ぐものへと変化していくことが予想される。
2022年はイーサリアムのセカンドレイヤー(レイヤー2)の1年になるため、レイヤー1とレイヤー2を繋ぐブリッジの重要性が増していくだろう。