趣味のインターネット地図ウォッチ

第89回:海関連のGISデータを網羅した「海洋情報クリアリングハウス」 ほか


海関連のGISデータを網羅した「海洋情報クリアリングハウス」

 7月に入り、そろそろ海開きが待ち遠しくなってきた人も多いと思うが、海に関するさまざまな調査データを検索できるサイトをご存じだろうか? 内閣官房と海上保安庁が今年の春に公開した「海洋情報クリアリングハウス」だ。このサイトは政府機関や大学、地方公共団体などの海洋情報を一元検索できるデータベースで、一般市民もインターネット上で自由に使える。

 “クリアリングハウス”とは、さまざまな形式のデータを一元的に検索するためのシステムのことで、今回公開されたのは海洋情報の所在情報を集めたものだ。海洋関連ということで地理情報が含まれたデータも多く、GIS(地理情報システム)の素材として使えるデータも数多く含まれている。また、オンラインで提供されている情報だけでなく、オフラインで提供されている情報も対象にしており、水温や海流などの自然情報から防災・法制度などの社会情報まで幅広くカバーしている。

 この「海洋情報クリアリングハウス」は、「マリンページ(Marine Page)」という通称が付けられており、トップページ左上の「マリンページ(検索登録開始)」というGIFアニメをクリックすると検索ページが開く。「一般利用者メニュー」の中の「海洋データ検索」をクリックすると、「所在情報簡易検索」「所在情報詳細検索」「海洋調査計画検索」と3つのタブが用意された検索画面が表示される。

 まずはもっともシンプルでわかりやすい「所在情報簡易検索」を使ってみよう。「よく使われる検索語句」をクリックすると、ほかの人が使ったキーワードの一覧を見られる。この中の「東京湾」というキーワードで検索したところ、検索結果の一番上に表示されたのは国土交通省港湾局が提供する「海域環境情報提供システム」だった。このサイトは、港湾区域の埋め立てや海岸線の現況、水質データを調べられるデータベースだ。

 詳細表示の表を見ると「メタデータについて」「データベースについて」「掲載データについて」などさまざまな項目別に情報が記載されている。左欄の「問い合わせ先(詳細表示)」や「データ提供情報(詳細表示)」をクリックするとさらに詳しい情報が表示される。


海洋情報クリアリングハウス検索画面

キーワード「東京湾」での検索結果詳細表示

 ちなみに「掲載データについて」の項目を見ると「海域コード番号」という欄があるが、これは日本近海の海域を区分してコード番号を付けた上で、どの海域をカバーしているのかを説明したものだ。この「海域環境情報提供システム」の場合は「130/131/132/166/167/168/94/95/96」となっており、これがどのエリアを示しているかはページ上部の「地図表示」をクリックすると表示される。また、「KMLデータ出力」というボタンも用意されており、これを使うとGoogle Earth上でも閲覧できる。


データがカバーする範囲を地図上で表示KMLファイルを出力してGoogle Earthで表示

 なお、このデータベースはあくまでも情報の提供形式や所在情報を調べられるだけで、データそのものが掲載されているわけではない。ここで検索して探したい情報を見つけたら、リンク先のサイトに飛んで改めてそこのサイト上でデータの場所を探す必要がある。公開されたばかりということもあるが、このあたりの使い勝手は、まだ十分に洗練されてはいない。できればデータの保管場所のリンクが直接示してあるとかなり便利だと思うのだが、それはこれからの進化に期待しよう。

 ちなみに検索ページの上部には「アンケート入力」というボタンがあり、これをクリックすると満足度やコメントなどを投稿できるようになっているので、意見がある人はここに書き込んでみるといいだろう。政府や公共団体のデータはフォーマットが統一されておらず、所在場所も散らばっていて特定が困難なケースも多いので、このようなサイトが登場したことは大いに歓迎したいが、まだまだ課題が多いのも確かだ。

URL
 海洋情報クリアリングハウス
 http://www.mich.go.jp/

Android端末で地図上に音声を記録できる「twireco」

 株式会社EVERRISEは、位置情報と音声をWeb上に保存して、ほかのユーザーと共有できるサービス「twireco」の提供を開始した。GPSを内蔵したAndroid端末から専用アプリを使って位置情報と30秒の音声を記録したり、ほかのユーザーが記録した音声をAndroidアプリおよびPC用のWebサイトから再生することができる。

PC用サイト

 使用にあたってはアカウント登録が必要だが、アカウント名およびパスワード、メールアドレスを入力すればすぐに取得できる。ログインすると現在地を測位し、最寄りのエリアにあるほかのユーザーの投稿の一覧が表示される。投稿は地図上で確認することも可能で、Google Mapsの地図上に並んだ音声の目印をタッチすると、その音声が再生される。

 PC用のサイトでもGoogle Maps上で目印を確認できる。地図の下には投稿された音声の一覧が並び、Android上で見るよりも視認性は高い。PC用サイトではマイページを確認することが可能で、アイコンの画像を設定したり、自己紹介のコメントを記述することができる。Twitterに連動させることも可能で、Twitterに音声投稿することも可能だ。

 なお、音声を投稿する際には、どこにいても再生できる「global」と、記録された場所でしか再生できない「spot」の2種類から選べる。「spot」で投稿された音声はPCからは再生できず、GPSを備えたAndroid端末を持ってその場に行かなければ再生できない。

 EVERRISEによると、この「spot」投稿機能は、著名人、家族や友人、恋人などが世界中に残した音声を、ユーザーが聴くために旅に出るといった使い方を想定しているようだ。その場に実際に行ってみないと聞けないというアイデアは従来にはないおもしろさがあり、ゲームなどにも活用できるかもしれない。


Android端末上での地図表示Android端末からの投稿画面

 今後の展開としては、PCサイトからの音声録音機能や、写真・動画の投稿機能の追加、iPhone/iPad版アプリの提供や英語圏向けサービスの展開も考えているという。音声と位置情報を組み合わせた新しいサービスということで要注目だ。

URL
 twireco
 http://www.twireco.com/

日本語表記の韓国地図サイト「コネスト韓国地図」

 株式会社コネストコリア(本社:ソウル)は、韓国旅行情報サイト「コネスト」において、日本語表記の韓国地図サイト「コネスト韓国地図」を公開した。「コネスト韓国地図」は韓国の全エリアをカバーする地図サービスで、地名や施設名などがすべて日本語化されている。

コネスト韓国地図

 既存の地図サイトでは、例えばGoogle Mapsを見ると韓国のエリアは韓国語で表記されている。マイクロソフトの「Bing」でも韓国は英語で表記されており、「コネスト韓国地図」のように日本語化された地図は珍しい。日本語化する際には、「住民センター」を「役場」と訳したりと、日本人が読んでわかりやすい翻訳にこだわったという。

 また、収録する情報は空港リムジンバスのバス停や日本人が見つけやすい看板の店、観光スポットなどを優先的に収録しており、観光客に配慮した内容となっている。さらに重要スポットについては日韓両方の言語で表記している。バリアフリーにも気を配っており、ソウル市内の地下鉄全駅のエレベーターの位置も記載している。

 「コネスト韓国地図」のトップページにアクセスすると、白地図に観光スポットを記しただけのシンプルな地図が表示される。Google Mapsのような地図を見たい場合は上部のメニューから「詳細地図」をクリックすると、縮尺が12段階の詳細地図が表示される。この詳細地図はマウスのドラッグによるスクロールとホイールによる縮尺の切り替えが可能で、Google Mapsと同じような使い勝手を実現している。


詳細地図ソウル地下鉄路線図

 地図上に収録しているスポットは、「コネスト」に掲載されている記事コンテンツに連動しており、ユーザーが投稿した店情報なども地図上で表示できる。また、キーワード検索や住所検索、ルート検索なども可能だ。住所検索や地下鉄路線図検索などは日・韓・英の3カ国語をカバーしているので、旅行ガイドで得た情報をもとに検索する際も便利だ。


ルート検索店情報を豊富に収録

 Google Mapsなどでは一部の海外スポットが日本語表記になっている場合もあるが、「コネスト韓国地図」のように、日本人向けにすべてを日本語化した海外地図で、Google Mapsに匹敵するような情報量と使い勝手を実現した地図の例はほかには見当たらない。地図表示のレスポンスが少し重いのが気になるが、このサイトをきっかけに、ほかの国でも完全日本語化した地図が登場するのを期待したいものである。

URL
 コネスト韓国地図
 http://map.konest.com/
 コネスト
 http://www.konest.com/

2010/7/1 06:00


片岡 義明
地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅-デジタル地図に残す自分だけの鉄道記-」がインプレスジャパンから発売中。