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国土地理院、「地理院地図」がスマホ対応、「触地図」特設サイトや西之島のGIFアニメも登場

 年末から年始にかけて、国土地理院がさまざまな地図関連の情報提供や新サービスの提供、既存サービスのリニューアルなどを行っている。今回はこれらの中から3つの取り組みを紹介しよう。

「地理院地図」がリニューアル

 国土地理院はウェブ地図サービス「地理院地図」をリニューアルし、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末からも利用しやすい画面デザインに変更した。従来の地理院地図はPC向けのUIで、スマートフォンからアクセスすると各種機能を十分に利用できなかった。新しい地理院地図では、さまざまな機能をワンボタンに整理することにより、スマートフォンの小さな画面でも快適に操作できるようになった。

新しい地理院地図(Safariで表示)
これまでの地理院地図(Safariで表示)
新しい地理院地図(PCブラウザー)

 新しい地理院地図では左上に「情報」、右上に「機能」というボタンを配置した。「情報」ボタンをタップすると、「表示中の情報」「表示できる情報」を選ぶメニューが表示され、これらを選択するとそれぞれウィンドウが表示される。このウィンドウは画面の好きな位置に配置することが可能だ。

 この選択メニューを使って、地図や空中写真をはじめ、土地条件図や火山基本図、明治前期の低湿地、植生指標データのほか、電子基準点の位置、被災地の「斜め写真」に至るまでさまざまな情報を選んで表示できる。表示する際は「表示範囲に絞込み」という項目にチェックを入れることで、表示範囲を限定することもできる。また、レイヤーごとに透過率を変えることも可能だ。

「表示できる情報」のメニュー
「地図・空中写真」のメニュー
色別標高図
レイヤーごとに透過率を変えられる
火山土地条件図

 さらに、左下のスケールバーの上の小窓をタップすることで標準地図や単色地図、白地図などに表示スタイルを切り替えることも可能で、透過率の変更やグレースケール表示も行える。上部の検索窓では、住所や緯度・経度、山名や地名などで検索することも可能だ。

 このほか、多くのスマートフォン向け地図サービスと同様、GPSで測位した現在地を地図上で確認することも可能となった。右上の「機能」から「ツール」を選択し、その中から「現在位置」を選ぶと、自分の現在地が地図上に表示される。また、画面下部をタップすると、現在位置の緯度・経度や住所(丁目まで)、標高などを確認することもできる。

表示スタイルの切り替え
地図上で現在地を確認できる

 リニューアルした地理院地図にスマートフォンでアクセスすれば、アプリのインストール不要で地形図データにアクセスすることが可能。現在地も確認できる。ナビゲーション機能やGPSのログを記録する機能などは使えないものの、モバイル環境で地理院地図をフル活用できるようになったのは大きな進化だ。なお、現在地表示のほかにも、磁北線を表示する機能や作図機能など、アウトドアで役立つさまざまな機能も搭載している。

磁北線や緯度・経度情報を表示
表示メニュー

「触地図」に関する特設サイトを公開

 3Dプリンターによる触地図作成についての技術開発情報を紹介するページが公開された。サンプルとして高田馬場駅周辺およびつくば市のSTLファイルがダウンロード可能となっているほか、画像から3Dプリンター用ファイルを作成するプログラム(ファイル名:blind_map.exe)を公開している。

「触地図」に関する特設サイト

 同プログラムはWindows 8.1/8/7で動作が確認されており、実行するには.NET Framework 3.5が必要。同プログラムに地図の画像を入力することにより、画像内の特定の色を指定した高さに盛り上げた模型を出力するためのSTLファイルを作成できる。画像ファイルはbmp/jpg/png/tif/gif形式に対応しており、背景を白色で作成した地図画像が必要となる。

地図画像からSTLファイルを作成するプログラム

 画像のうち、台座(盛り上げないで平たく出力する部分)の厚みや模型の長辺を指定することも可能。盛り上げる部分はグレー、青、赤の3色について厚みを設定できる。また、高さにマイナス値を指定することにより、その部分だけ掘り下がった模型を作ることもできる。この機能を使うことにより、例えば建物の部分は盛り上げて、道路の部分は掘り下げたりと、さまざまな表現が可能となる。

作成したSTLファイル

西之島の空中写真の最新版が公開、変遷が分かるGIFアニメも登場

 2014年12月4日・10日に撮影した西之島の空中写真の映像が公開された。今回の撮影は防衛省の協力を得て行われたもので、7月4日にUAV(無人航空機)による撮影を行って以来の撮影となった。この空中写真を解析したところ、面積は12月4日の時点で2.27平方km、12月10日の時点では2.29平方kmで、7月4日の時点(1.08平方km)に比べて約2倍の大きさだという。また、最も高い地点の標高は12月4日の時点で約110mで、7月4日の最高標高だった約74mに比べて36m高くなった。

西之島周辺の噴火活動関連情報

 これらの空中写真は地理院地図で公開するほか、西之島周辺の立体図や地形判読図、標高データについても公開している。また、アジア航測の千葉達郎氏の協力によって作成された、2013年12月17日から2014年12月4日までの6時期を比較した赤色立体地図や、「カシミール3D」による噴火活動の変遷が分かるGIFアニメも公開された。これら2つを見ることで、西之島の近くに誕生した新島が次第に広がり、西之島につながって広がっていくまでのプロセスがよく分かる。

赤色立体地図による6時期比較(左)と、変遷が分かるGIFアニメ(右)

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。