地図と位置情報

かぐらスキー場で遭難事故削減IoT提供開始、バックカントリー向けに「TREK TRACK」レンタル

3Dマップ上に位置情報を可視化

 株式会社博報堂アイ・スタジオは、山岳エリアで専用IoTデバイスを持った人の位置情報を可視化できるサービス「TREK TRACK」において、かぐらスキー場(新潟県)におけるバックカントリーエリア(スキー場管理区域外)向けのサービスを開始した。

 IoTデバイスと、長距離無線技術であるLPWA(Low Power Wide Area)を組み合わせることにより、携帯電話が圏外になりやすい山岳地帯における人の位置情報を可視化・集中管理しできるサービスで、有事の際の早期救助など、テクノロジーによる山岳事故の減少を目指している。

 専用のIoTデバイスを持ったユーザーの行動データを収集し、山中を移動した軌跡をウェブサイトや専用アプリで確認することが可能。家族や友人がリアルタイムに登山者の位置情報を把握できる。

専用のIoTデバイス
アプリ画面

 このTREK TRACKは、2017年8月に瑞牆山(山梨県)の登山道においてサービスを開始した(現在は一時終了している)が、今冬シーズンは、山岳地帯だけでなくスキー場をターゲットにサービスを拡大し、バックカントリースキー/スノーボードを楽しむ人向けにサービスを提供する。

 瑞牆山でのサービスと同様に、山中におけるスキーヤーやスノーボーダーの位置情報を、家族やスキー場管理者などがリアルタイムに3Dマップ上確認することが可能。対象エリアのどこに、どれだけのユーザーがいるのかを集中管理することが可能で、スキー場内のパトロールや業務の効率化にも繋がる。

 また、デバイスに搭載された「HELPボタン」から、TREK TRACK運営事務局へHELPコールを送信可能だ。24時間365日データを監視することで、有事の際に救助活動に活用できる。

 なお、瑞牆山のサービスでは、事前にウェブサイトからデバイスのレンタルを予約すると、郵送にて届くという流れになっていたが、今回のサービスでは、かぐらスキー場内にある「かぐらパウダーステーション」にて申し込むことが可能。手続き完了次第、その場でデバイスを受け取ることが可能となっている。

 返却も同じ受付場所で、レンタル価格は1日につき700円から。電源は単四形乾電池2本が付属し、連続使用可能時間は3~4日となっている。デバイスのサイズは100×55×15mm(縦×横×厚さ)、重量は約100g(電池除く)。

 このほか、同社は東京海上日動火災保険が提供する国内旅行傷害保険(短期契約)と連動し、ウェブまたはスキー場現地にて、TREK TRACKが窓口となって国内旅行傷害保険(短期契約)「The Day」の提供を行う。

 登山道だけでなくバックカントリーでのサービスも開始したTREK TRACK。同サービスが今後、保険サービスとあわせてどのように広がっていくのか楽しみだ。

本連載「地図と位置情報」では、INTERNET Watchの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」からの派生シリーズとして、暮らしやビジネスあるいは災害対策をはじめとした公共サービスなどにおけるGISや位置情報技術の利活用事例、それらを支えるGPS/GNSSやビーコン、Wi-Fi、音波や地磁気による測位技術の最新動向など、「地図と位置情報」をテーマにした記事を不定期掲載でお届けしています。

片岡 義明

フリーランスライター。ITの中でも特に地図や位置情報に関することを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから測位システム、ナビゲーションデバイス、法人向け地図ソリューション、紙地図、オープンデータなど幅広い地図・位置情報関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「こんなにスゴイ!地図作りの現場」、共著書「位置情報ビッグデータ」「アイデアソンとハッカソンで未来をつくろう」が発売。