中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/4/20~5/8]

「令和」の時代がスタート! そのときネットワークでは? ほか

eHrach/Shutterstock.com

1.「令和」の時代がスタート! そのときネットワークでは?

 新元号「令和」の時代が始まった。かねて改元に合わせたコンピューターシステムの改修の問題が指摘されてきたが、大きな社会的問題は生じなかったようだ。改元される日がかなり前から分かっていたことや具体的な新元号が1カ月前には発表されていたこと、平成への改元のときの教訓が生かされてたことなど含め、各社とも準備に充てる期間があったことが奏功したか。

 ただ、これまでで最長ともいわれる10連休明けにはアクセスが集中したことにより銀行のシステムの利用が困難になるというトラブルも報じられている。こうした何年かに一度の事象を想定したネットワークやサーバーの容量設計とその判断は難しそうだ。そもそも10連休に対してはさまざまな観点からの賛否両論があったが、それに伴う弊害ともいえるだろう。一方、改元された日の午前0時からの1分間、「令和」ツイートの総量が「あけおめ」ツイートの2倍に達したとの報告もある。こちらはシステム障害も報告されてなく、なんなくさばいたようだ。

 ところで、この記事を書いている5月9日は東京オリンピックのチケット予約開始の日でもあり、ウェブページへのアクセスがしにくい状態が続いていることが多くの一般メディアでも報じている。こうした一連の流れを見ると、ひょっとするといまの日本の技術課題はアクセス集中にいかに対応するかということ?と思わせる。

ニュースソース

  • ゆうちょやみずほでネットバンキングつながりにくく、10連休明けでアクセス集中[日経XTECH
  • 楽天銀行の口座にログインできない不具合、10連休の影響か[IT Leaders
  • 令和元年5月1日現在の各OS、主要アプリの新元号対応まとめ[TechCrunch日本版
  • 改元IT対応に「支障なし」、令和初日に政府発表[日経XTECH
  • Unicode 12.1.0で「令和」の合字1文字が追加[Engadget日本版
  • 日本マイクロソフトが新元号「令和」対応のWindows更新プログラムを提供[ITmedia
  • Appleティム・クックCEO、新元号「令和」お祝いツイート[ITmedia
  • 「令和」ツイートが午前0時からの1分間の総量で「あけおめ」ツイートの2倍に――ソーシャルワイヤー調べ[ITmedia

2. フェイスブック、グーグル、マイクロソフトが開発者コンファレンスで語ったこと

 日本では改元に伴う10連休の前後を挟み、米国ではフェイスブック、グーグル、マイクロソフトの3社はそれぞれデベロッパーコンファレンスを開催し、技術製品・サービスや戦略のプレゼンテーションが行われた。少々、量がかさむのだが、下記にはさまざまな媒体が取り上げた記事から抜粋した見出しを紹介しておく。影響力の大きな3社の動向なので、連休中にニュースを見逃した方はぜひ一読をお薦めしたい。

 フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは「(Facebookの目指す)未来はプライベートだ」と語ったと伝えられている。この1年間、同社はプライバシー問題に悩まされてきた。その上で、「オープンな“町の広場”のようなサービスからプライベートな“リビングルーム”のようなサービス」へと移るということを表明したと思われる。これはまさにこれまでのSNSというカルチャーの転換点ともいえる段階だろう。

 そして、グーグルは「当社は今後、ChromeにおけるCookieのはたらきを変更していき、デフォルトでプライバシーとセキュリティをより高いものにする」(ChromeプロダクトマネジャーTal Oppenheimer氏)と述べた。Cookieはユーザーのウェブでの挙動を補足する上で重要な機能だが、自らが広告事業によって主たる収入を上げているグーグルが、Cookieを制限する機能を盛り込むという方向へかじを切ったことは、やはりウェブのプライバシー問題への対応が喫緊の課題であり、自らも新たなウェブの仕組みを模索する段階へと転換をし始めたといえる。

 また、グーグルが発表した5万円以下の低価格スマホ「Google Pixel 3a」も興味深い。5月17日には日本でも発売されるようだ。スマートフォンが登場して以来、モデルチェンジするごとに機能向上にともなって高価になってきたスマートフォンの市場へ一石を投じる製品といえそう。日本での「分離プラン」の開始と合わせて、動向が気になるところだ。

 一方、マイクロソフトはさまざまな開発環境等の発表をしたが、そのなかでもフルマネージドブロックチェーンサービスを開始したことに着目したい。もちろん、仮想通貨の話ではなく、「ブロックチェーンテクノロジーの上に、アプリケーションを構築するのを支援することを目的とした、エンタープライズサービス」である。マイクロソフトのプラットフォーム提供することで、より広い分野での利用が促進される可能性を感じる。

ニュースソース(イベント:F8)

  • Instagram、ストーリーのカメラの刷新、画像不要の「Create Mode」などの新機能[ITmedia
  • Facebook Messenger、高速化し、WindowsおよびmacOSアプリ登場へ[ITmedia
  • Facebookの「未来はプライベート」──ザッカーバーグCEOのF8基調講演[ITmedia
  • Facebook、違反コンテンツ検出AI強化でいじめ検出率85%向上[ITmedia

ニュースソース(イベント:Google I/O)

  • グーグル、5万円以下の低価格スマホ「Google Pixel 3a」を5月17日に日本発売へ[CNET Japan
  • 「Android Q」の折りたたみスマホ対応を進めるグーグル、「Google I/O」で期待示す[CNET Japan
  • グーグル、ウェブでレンタカー予約もこなす「Duplex on the web」発表[CNET Japan
  • グーグル、AIや機械学習モデルのバイアスへの対処目指す--「TCAV」技術など説明[CNET Japan
  • グーグル、「Chrome」でクッキー機能を制限へ--サイトによるユーザー追跡の抑制でプライバシー改善図る[CNET Japan
  • グーグル、検索にAR導入へ--「Googleレンズ」もさらに進化[CNET Japan
  • グーグル「Cloud TPU Pod」がパブリックベータに[ZDnet Japan
  • Google、ロケーション履歴や検索履歴などのデータを自動削除可能に[Engadget日本版
  • 速報:旅行用翻訳の定番に? 外国語看板を即座に翻訳、読み上げるGoogle Go発表[Engadget日本版
  • Googleの自動車アプリ「Android Auto」、「ダークテーマ」などのアップデート[ITmedia
  • YouTubeのオリジナル作品、非プレミアム会員でも広告付きで視聴可能に[ITmedia
  • 「Nest Hub Max」発表 「Nest Hub」(旧Home Hub)は日本でも発売[ITmedia
  • Google、「Flutter for Web」発表。FlutterからWebアプリを生成。Flutterはマルチプラットフォーム対応のフレームワークに。Google I/O 2019[Publickey

ニュースソース(イベント:Microsoft Build)

  • マイクロソフト、コンテンツの共同編集を容易にする「Fluid Framework」を発表[CNET Japan
  • 「Office 365」の生産性分析ツール「MyAnalytics」に複数の新機能[CNET Japan
  • マイクロソフト、.NET向け機械学習プラットフォーム「ML.NET 1.0」のリリース発表[ZDnet Japan
  • MS、オープンソースの取り組み強化--GitHub関連、レッドハットと共同開発の「KEDA」など[ZDnet Japan
  • マイクロソフトが発表したHoloLens 2 Development Editionは約39万円[TechCrunch日本版
  • マイクロソフトがフルマネージドブロックチェーンサービスを開始[TechCrunch日本版
  • マイクロソフトが「React Native for Windows」を公開[TechCrunch日本版
  • マイクロソフトがWord Onlineの文書作成支援にAIを導入[TechCrunch日本版
  • マイクロソフトが点字ディスプレイ付きXboxコントローラーを検討中か[TechCrunch日本版
  • Microsoft、クロスプラットフォーム開発をさらに進める".NET 5"[マイナビニュース
  • Microsoft、Buildで開発者向けの「HoloLens 2 Development Edition」発表 ~Azureには音声認識、応答、翻訳、意味づけに加え、"判断"の機能拡張[PC Watch
  • Microsoftの「Cortana」、「会話型AI」でより自然な会話が可能に[ITmedia
  • Windows 10搭載PCでもAmazon Alexaがハンズフリーで利用可能に[ITmedia
  • GitHubアカウントでAzureにサインイン可能に。GitHubとAzure Active Directoryとの同期サポートで企業ユーザーの管理が容易に。Microsoft Build 2019[Publickey
  • 次期Micrsoft Edgeに「Internet Explorer mode」搭載。企業向けにIE11のレンダリングも提供。Microsoft Build 2019[Publickey
  • マイクロソフト、Webブラウザで動作する「Visual Studio Online」発表。VSCodeベース、IntelliCode、Live Share、拡張機能にも対応。Microsoft Build 2019[Publickey
  • マイクロソフト、「Windows Terminal」発表。タブ機能、コマンドプロンプト、PowerShell、SSHなどを統合、オープンソースで開発中。Microsoft Build 2019[Publickey
  • WindowsにLinuxカーネルをバンドルへ、Windows Linux Subsystemに最適化。Microsoft Build 2019[Publickey
  • マインクラフトにスマホAR版が登場?マイクロソフトが予告動画を公開[Engadget日本版

3.“鉄道”という日本にとって重要なインフラの解決を目指した実証実験

 ここ数年、各社とも販売の見通しが立っている製品やサービスだけでなく、さまざまな実証実験、技術検証、中期的な開発方針を積極的に発表することが当たり前になってきていて、それにまつわる記事も増加している。かつては社外秘としてきたようなこうした開発過程を社外に発表をすることで、企業の技術的ポテンシャルをアピールする意味もあろう。また、そこから新たなオープンイノベーションのパートナーともマッチングができそうだ。今週は最近の発表のなかで興味深いものをいくつか紹介しておこう。

 まず、Osaka Metro(大阪メトロ、旧大阪市営地下鉄)が鉄道のチケットレス化をはじめ、駅ナカや地下街のキャッシュレス化を加速させるという。とりわけ、鉄道のチケットレス化では「事前に顔写真を登録している利用者がICカードや磁気券を使わずに改札機を通過できる」ようにするという。これまでもアイデアとしては浮上することはあったが、いよいよ始まるのかと感じる。もちろん、これは利便性は高そうなサービスなのだが、顔認証という技術の観点からは今後、プライバシーの問題などが指摘されることも考えられる。監視社会化と利便性のせめぎあいのきっかけとなりそう。

 一方、日本マイクロソフト、JR東日本、みずほ情報総研という3社によるブロックチェーンを使った交通基盤の実証実験も興味深い取り組みだ。記事によれば、「“旅行者がいつ、どの交通機関を利用したか”という個人データの改ざんと漏洩を防止するとともに、金融機関と接続して実施する支払いの透明性を担保する」としている。先のOsaka Metroの戦略とともに、北米の自動車社会とは異なり、鉄道というインフラが大きな意味を持つ日本固有の課題解決と価値創出をするものとして注目していきたい。

ニュースソース

  • JAL、訓練用VRシミュレーターを披露--汎用品を組み合わせて低コストに[ZDnet Japan
  • KDDI、最大100人で同時にVR体験ができる「VR同時視聴システム」を開発[ケータイWatch
  • LIXILのIoT宅配ボックス実証実験 再配達依頼のストレスも検証[ITmedia
  • MS、JR東日本、みずほ情報総研、スマート交通の基盤でブロックチェーン活用を検証[IT Leaders
  • Osaka Metro、鉄道のチケットレス化や駅ナカ・地下街のキャッシュレス化を加速_2024年度までに実現させる構え[ガジェット通信
  • ディープラーニングで少量の血液からがん発見 DeNAとPFNが専用ラボ開設[ITmedia
  • ネッツトヨタ、従業員向けに乗合通勤サービス--富士通のMaaS活用[ZDnet Japan
  • ブロックチェーンで管理・生産した国産有機ワイン、パリで「エシカル消費」実証実験 ~電通とシビラがDAppsを使い、SDGsの17ゴールに関連付け消費行動を可視化[仮想通貨Watch
  • 常駐警備員を等身大のバーチャルキャラクターが代行、セコムなどが2020年に実用化[IT Leaders

4. 成果は上げつつも、議論が進む顔認証技術と人権の関係

 日本でも顔認証の技術がだんだんと浸透しつつある。一方、米国では顔認証をめぐるプライバシー問題やその技術的精度の限界による誤認の可能性についての議論が活発である。

 米国土安全保障省は入出国ゲートの顔認証システムで不法長期滞在者発見に大きな成果があったとしている。記事によれば、これまでのところ、1万5000便でビザの切れた乗客7000人を確認したという。一方で、カリフォルニア州サンフランシスコ市ではAIによる顔認証技術を禁止する条例案が審議されているという。理由の1つとして、まだまだ顔認識の精度が十分ではなく、場合によっては誤認することもあるという点だ。とりわけ、女性や有色人種に対する認識率にはいまだ問題があるともされ、人権的な観点からの指摘もされている。

 また、顔認証技術を開発し、それを政府に提供しているAmazon.com社では「この技術が人権の実際および潜在的な侵害の恐れがないと判断しない限り、この顔認証技術の政府への販売を禁止することを要求する」という株主要請がされているという。そして、今後、同社の株主総会での採決が行われることになると伝えられている

 技術の進歩は素晴らしいことではあるが、人権などの基本的な部分との整合をいかにとるかということは人類にとっての今後の課題である。

ニュースソース

  • EUの巨大バイオメトリクスデータベース構築法案が議会を通過[ZDnet Japan
  • サンフランシスコでAI顔認証技術を禁止する条例案が審議。可決すれば米国初の都市に?[Engadget日本版
  • 入出国ゲートの顔認証システムで不法長期滞在者発見に成果──米国土安全保障省[ITmedia
  • Amazon株主「顔認証技術を政府に売るな」株主総会で採決へ[GIZMODO

5. 今週の注目商品:IoT電池「MaBeee みまもり電池」

 「みまもり電池」とは、テレビリモコンや電動歯ブラシなど、自宅にある単三電池を使用する機器に通常の電池と同じように装着して使用するものだ。この電池には電流や電圧の検出機能が備わっていて、それをBluetoothを使って送信できる。例えば、この電池を装着したリモコンなどの機器が使われたことは近くにあるスマートフォンで受信し、さらにはクラウドを通じて遠隔からでもアプリで確認できるという代物である。これまで、離れて暮らす家族の状態を検知するために、“監視”カメラや各種センサーを備えた機器が開発されてきたが、「監視されている感じがストレスに感じる」として反発する人も多かった。こうした問題を解決する上で、電池にセンサーを仕込んだというアイデアは汎用性もあり、画期的なアイデアではないだろうか。

ニュースソース

  • ビックカメラ、離れて暮らす家族をさりげなく見守れるIoT電池「MaBeee みまもり電池」を先行販売[家電Watch