中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2019/11/7~1/14]

東京都が5Gインフラ設置に施設開放~「TOKYO Data Highwayサミット」を開催 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 東京都が5Gインフラ設置に施設開放~「TOKYO Data Highwayサミット」を開催

 11月8日、東京都は「TOKYO Data Highwayサミット」を開催した(東京都)。この会合は「5G」推進について、小池東京都知事と携帯電話通信事業者4社の経営トップとが集まり意見を交換することを趣旨とし、これはその第1回という位置付けた。すでに報じられているように、東京都は5Gのインフラを推進するため、基地局の設置場所として、都が所有する施設(信号機や街灯などのおよそ1万カ所)を開放するとともに、携帯電話通信事業者各社の現地調査などの調整窓口も設置した。今後は実務者での協議を月1回程度、実施し、各社トップが集まるサミットを年1回開く計画だという(日本経済新聞)。

 また、東京都はICTアドバイザーとして元総務大臣補佐官の太田直樹氏、元ヤフー執行役員で日本IT団体連盟理事の別所直哉氏、ジャパン・デジタル・デザインCTO(最高技術責任者)の楠正憲氏ら11人へ委嘱したことを発表した(日本経済新聞)。

 こうした一連の情報通信政策への積極的な取り組みは、去る9月に東京都副知事に就任した宮坂学氏(ヤフーの元会長)によるところが大きい。東京都によるインフラ整備がモデルケースとなり、さまざまなサービスが各地へ実装されていくことが期待されるところだ。

ニュースソース

  • 「TOKYO Data Highwayサミット」を開催[東京都
  • 東京都、ICTアドバイザーに太田直樹氏ら11人[日本経済新聞
  • 東京都と携帯各社、5Gで初会合 基地局へ都施設開放[日本経済新聞

2. ヤフーとLINEが経営統合を協議中

 ヤフーとLINEが経営統合について協議しているというニュースは業界内だけでなく、一般ニュースでも大きな話題として扱われた(INTERNET Watch)。

 いずれも認知度の高いブランドと、巨大な顧客数を持ち、いまや人々の生活インフラとしても機能していることから、その動向には注目が集まるのは当たり前だろう。

 もちろん、正式な発表があったわけではないので推測の域を出ないが、国際的にはGAFA(G:グーグル、A:アマゾン、F:フェイスブック、A:アップル)が圧倒的に強いプラットフォーマーとして君臨していて、さらにお隣の中国ではBATJ(B:百度(バイドゥ)、A:阿里巴巴(アリババ)、T:騰訊(テンセント)、J:京東(ジンドン))などとも呼ばれる巨大IT企業も隆盛を誇っている。そのようななかで影響力を行使できる第三極を目指したグループがないと、日本のリーダシップが完全に失われるということになりかねない。また、QRコード決済などの新サービスのローンチにおいて、顧客獲得のための多額なマーケティング費用の負担など、ユーザーから見ても消耗線の様相を呈していたことは明らかだ。

 経営効率を高め、さらに企業価値を上げ、事業規模の拡大によって増す影響力により、業界のリーダシップをとれる構造を作れるかどうかという意味において、いままさに時代の分かれ目にあるともいえそうだ。

ニュースソース

  • 「LINEとソフトバンクが提携」報道にソフトバンク、ヤフー、LINEがコメント[ケータイWatch
  • ヤフーとLINEが経営統合?日経新聞などが報じる[INTERNET Watch
  • ヤフーとLINEが経営統合と報道。「決定した事実はない」[Impress Watch

3. NTTが蓄電池を設置

 一部のメディアが報じたところによると、NTTグループは全国にある電話局舎などの自社ビルに蓄電池を設置することで、災害時の停電に際し、近隣にある病院などの重要施設へ電力を供給するという(NHK)。NTTは古くより全国津々浦々に電話局舎を建設し、アナログ電話時代には交換機を設置していた。しかし、通信施設のデジタル化にともない、必要とされる機器を設置するのに必要となるスペースは少なくて済むようになり、局舎内部では空きスペースが多かったという。そして、電話局舎は堅牢であるという特性もある。

 こうした余剰施設を活用して蓄電池を配置し、非常時の供給を行おうという計画だ。局舎をこうした用途に転用し、増加する激甚災害に備えるというのはある意味で、間接的とはいえデジタル化が大きく進展したことによるものともいえそう。

ニュースソース

  • NTT 電話局などに蓄電池設置へ 災害時に近隣病院などに供給[NHK

4. 「フェイスブックペイ」サービス開始

 米国では「フェイスブックペイ(Facebook Pay)」のサービスが開始されたと報じられている(仮想通貨Watch)。

 しかし、これはいま話題の「リブラ」のことではなく、クレジットカード、デビットカードなどを使って、個人間での支払いに利用ができるというサービスだ。今後はインスタグラムなどのアプリや米国外へもサービス範囲を広げていくとしている。

 このサービスはリブラと無関係と言いつつも、こうした個人間でのお金のやり取りはリブラが想定するユースケースの1つでもあるだろう。もちろん、法定通貨では、国をまたぐやり取りでは為替の問題などが生じることから、実際には扱いにくくなる。これが国とか通貨を意識しないでインターネットという1つの文明のなかでは誰もが受け渡しできるようになるというのは目標の1つでもあろう。

ニュースソース

  • Facebook Payが米国で提供開始。決済や個人間送金が可能 ~InstagramやWhatsApp連携も計画。仮想通貨リブラとは無関係[仮想通貨Watch

5. 議論が進む「ゼロレーティングサービス」に関するルール

 総務省の「ネットワーク中立性に関する研究会」では、いわゆる「ゼロレーティングサービス」に関するルール策定を進めている(ITmedia)。

 ここで言う「ゼロレーティング」とは、電気通信事業者が特定のサービス(SNSや動画配信など)について、それを料金算出の根拠となるデータ通信量としてカウントしないというものだ。例えば、「格安SIM」のような通信サービスには、自社が運営しているSNSや人気のある特定のSNSサービスがパケット利用量としてカウントされず、利用し放題とすることで、顧客の獲得へつなげていこうという狙いだ。

 しかし、一般に電気通信サービスは中立的にサービスを提供しなければならない公共性が求められることから、こうした手法に対し一定のルールを設けることが必要だとされている。

 この研究会では、そもそも問題となる行為、そして事業者がとるべき対策などが例示されたようだが、それが義務なのか、努力目標なのかという基本的な部分で紛糾をしているようだ。

 ネットワーク中立性はあまり大きく報じられることのない話題ではあるのだが、今後の電気通信サービスの骨格とも関連することからも注目しておくべき話題といえよう。

ニュースソース

  • 総務省、“動画見放題”をうたう通信サービスの提供ルール策定へ 専門家から修正相次ぐ[ITmedia

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。