中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/1/16~1/23]

すでに始まっている「6G」の主導権争い ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. すでに始まっている「6G」の主導権争い

 いよいよ今春から5Gのサービスが開始される。それに向け、大容量・低遅延という特性を生かすさまざまな利用・活用のためのアイデアや実証実験が行われていることは多く報じられてきているところだ。そのようななか、6Gへの動きが具体化してきた。5Gでは出遅れたとも評されている日本市場だが、国際市場のなかでの主導権獲得を狙う。

 まず、総務省は6Gに関して「総合戦略を議論する有識者会議を月内に立ち上げる。6Gの実用化が見込まれる2030年ごろに向けて、目指すべき社会像や企業の支援策などを6月にもまとめる。高市早苗総務相が21日、閣議後会見で明らかにした」(朝日新聞デジタル)と報じられている。

 また、NTTドコモは6Gの技術コンセプトを公開した。「5G技術の各要素を発展させつつ、『高速かつ低遅延』のように複数の条件を同時に実現する技術を開発していくという。6Gのサービス提供は、2030年ごろを目指す」(ITmedia)としている。

 コンセプトの要素は「超高速・大容量通信」「超低遅延」「超多接続&センシング」といった5Gの延長と、「超カバレッジ拡張」「超高信頼通信」「超低消費電力・低コスト化」である。とりわけ、「超高速・大容量通信では100Gbps(5Gでは10Gbps)、超低遅延ではエンドツーエンドで1ミリ秒(5Gでは10ミリ秒)、超多接続では1000万デバイス/平方キロメートル(5Gでは100万デバイス/平方キロメートル)を目指す」(ITmedia)としていて、いずれも目標値は5Gの10倍の規模である。

 主導権を握るためには、技術コンセプトや実装みならず、知的財産の構築、国際市場での標準化活動なども重要となる。こうして、すでに10年後を見据えた動きが始まっている。

ニュースソース

  • 5Gの次はすぐに6G 総務省、主導狙い会議立ち上げへ[朝日新聞デジタル
  • ドコモ、5Gの次世代「6G」のコンセプト公開 「5Gの10倍」「複数要素の同時実現」「宇宙までのカバレッジ拡大」など[ITmedia

2. 一気に開始されたMaaS実証実験

 さまざまな交通手段を組み合わせてスムーズな交通サービスを実現しようというMaas(Mobility as a Services)の発表が相次いでいる。

 1つはauとトヨタによる「my route for au」(ケータイWatch)で、複数の交通手段を組み合わせたルート検索や、交通チケットの手配などが利用できるアプリの提供だ。また、JR東日本はスマートフォン用のアプリ「Ringo Pass」により、あらかじめSuicaのID番号やクレジットカード情報を登録することで、複数の交通手段をスムーズに利用できるとしている(ITmedia)。

 さらに、実証実験としては、東京空港交通、T-CAT(東京シティ・エアターミナル)、日本交通、日の丸交通、三菱地所、JTB、ZMPの7社によるもので、羽田空港や成田空港から、T-CATまでを空港リムジンバス、T-CATから丸の内パークビルまでの約3kmを自動運転タクシー、丸の内パークビルを起点とした丸の内仲通り付近を自動運転モビリティで走行するルートを設定した連携サービスの実証実験である(トラベルWatch)。

 各都市の特性にもよるが、東京の場合には多様な交通サービスが存在していることからも、それらが融合していくことで、より効率的な移動が実現されたり、さらには混雑の分散なども行われたりできることを期待したいと思う。

ニュースソース

  • auとトヨタからMaaSアプリ「my route for au」、交通チケット25%割引も[ケータイWatch
  • JRの都市型MaaSアプリ「Ringo Pass」始動 タクシーやシェアサイクルと連携[ITmedia
  • 羽田/成田~丸の内をバスと自動運転で。スマホで一括予約できるMaaS実証実験が始まる[トラベルWatch

3. 進むQRコード決済によるキャッシュレス化

 各社がQRコード決済をサービスインし、派手なキャッシュバックキャンペーンを実施したこと、そして秋の消費税増税などをきっかけとして、キャッシュレス化は進んだのだろうか。

 MMD総研の調査によれば、「対象者の4割近くが『キャッシュレス決済で支払うことが増えた(39.3%)』と回答。(中略)『QRコード決済』は10ポイント、『スマホ非接触決済』は2.7ポイント、利用率が高まっている」(ITmedia)としている。

 また、ICT総研の発表によれば、利用できる店舗数が多いイメージのあるQRコード決済は圧倒的にPayPay(ITmedia)、さらに、App Annie社の調査によれば、2019年に日本でダウンロード数の多かったアプリもPayPayだった(Markezine)ことから、QRコード決済の代名詞になりつつあるような状況といえそうだ。

 ただし、各社の大型キャッシュバックキャンペーンによるところも多く、こうした支払い方法が生活に定着するかどうかはこれからの動向を見ていく必要がある。

ニュースソース

  • 「キャッシュレス・消費者還元事業」の認知度は9割 「キャッシュレスの支払いが増えた」は約4割――MMD研究所とVisaが共同調査[ITmedia
  • 2019年アプリDL数1位は「PayPay」、支出が多いのはマンガ系[Markezine
  • QRコード決済を使える店鋪は「PayPay」が大差でトップ ICT総研調べ[ITmedia

4. ブロックチェーンによるコンテンツの「n次流通」収益化の研究が始まる

 電通はブロックチェーンを活用するコンテンツのマネタイズに関する共同研究「n次流通プロジェクト」の開始を発表した(仮想通貨Watch)。ニュース、マンガ、アニメなどのコンテンツの2次創作以降の流通で、原著作者へ権利料やn次創作者などの報酬が正しく発生する流通基盤の研究を行うとしている。参加企業は電通、電通国際情報サービス(ISID)、VOYAGE GROUP、シビラ、角川アスキー総合研究所、朝日新聞社、スタートバーンの各社。

 実用化に向けてはさまざまなハードルもあると思われるが、コンテンツビジネスにおける新たな経済活動の基盤を目指す取り組みとして、そしてブロックチェーンの応用として要注目である。

ニュースソース

  • 電通と朝日新聞社ら7社、ニュースやマンガ等「n次流通」収益化の研究に着手 ~スタートバーンのアート用ブロックチェーン×シビラの分散型ID[仮想通貨Watch

5. イベント:部屋に入るだけで充電――「DOCOMO Open House 2020」レポート

 1月23日~24日、NTTドコモは「DOCOMO Open House 2020」を開催した。主に、5Gの技術を応用するものが中心のようだが、それ以外にでも興味深い展示が報じられている(ITmedia)。

 とりわけ、「部屋に入るだけ」で充電できる「遠距離ワイヤレス充電技術」のWi-Chargは興味深い(ケータイWatch)。さまざまなモバイルデバイスやウェアラブルデバイスが増加しているなか、こうした技術なくしては本来の利便性は得られないということに多くの人も気付きつつある。人体への影響もないともされていることから、今後の実用化への期待も高まる。

ニュースソース

  • 口の動きを共有、長距離ワイヤレス充電、クラウド型乗車券、タッチレス決済――ドコモが見せる未来[ITmedia
  • 「置くだけ」の次は「部屋に入るだけ」、ドコモが遠距離ワイヤレス充電技術を実演[ケータイWatch

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。