中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/1/23~2/6]

新型コロナウイルスの情報通信産業分野への影響 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 新型コロナウイルスの情報通信産業分野への影響

 新型コロナウイルスは人々の健康問題のみならず、情報通信産業へも大きな影響を与えている。

 この事件に便乗してマルウェア「Emotet」への感染を狙う不審なメールが拡散されていることについては独立行政法人情報処理推進機構(IPA)やトレンドマイクロ株式会社が注意を呼び掛けている(INTERNET Watch)。また、マスクや手洗い用アルコール除菌液などが店頭から姿を消し、インターネットの販売サイトやオークションサイトでは高値で販売(転売)されている例も見られる(Impress Watch)。これに対して、政府はメーカーへの増産を働きかけてはいるようだが、転売などについては需求バランスによる市場原理であるとして、介入はしないようだ(ITmedia)。

 国内の企業ではGMOインターネットがおよそ4000人以上の従業員の在宅勤務体制をいち早く実施した(ITmedia)。国や都は東京オリンピックを契機としてリモートワークを推進したいとしてきたが、皮肉にもこうした差し迫った問題によって、企業の勤務体制に対する課題が突きつけられたことになる。一方、海外ではアップル(ニューズウィーク日本版)やグーグル(CNET Japan)が中国国内のオフィスや店舗の閉鎖を決めるなどしている。今後、中国国内のサプライヤーの稼働状況によっては製品の製造に対する懸念も生じることになる。

 そして、バルセロナで開催が予定されている国際的なモバイル関連カンファレンスと展示会であるMWCバルセロナ2020は予定どおり開催はするが、講演者が用いるマイクに関するルールの策定、「握手禁止ポリシー」を全ての参加者へ伝えていくとしている(ケータイWatch)。また、LGとZTEが出展をキャンセルしたことも報じられている(ITmedia)。

ニュースソース

  • 「新型コロナウイルス」に便乗、保健所をかたる不審なメールが拡散中 不正マクロ含む添付のWord文書から「Emotet」に感染[INTERNET Watch
  • GMO、従業員の一部を在宅勤務に 新型コロナウイルスの感染拡大で[ITmedia
  • ヤフオク!、マスク出品について配慮呼び掛け[Impress Watch
  • 通販サイトでのマスク価格高騰、政府対応は後手に 経産省「価格は需給で決まる」[ITmedia
  • コロナウィルス でGMO「一斉在宅勤務」迅速な決定の決め手は?[ITmedia
  • Google、新型コロナウイルス対策でWHOと協力 検索結果に「SOSアラート」[ITmedia
  • Twitter、新型コロナウイルスの正しい情報を広める取り組みを案内[ケータイWatch
  • アップル、中国すべての店舗とオフィス一時閉鎖へ 新型コロナウイルス感染拡大で[ニューズウィーク日本版
  • アップル主要サプライヤー、10日から中国での生産再開か(Bloomberg報道)[Engadget日本版
  • グーグル、中国の全オフィスを臨時閉鎖へ--新型コロナウイルスの感染拡大で[CNET Japan
  • ビル&メリンダ・ゲイツ財団、新型コロナウイルス治療に1億ドルを寄付[CNET Japan
  • 仮想通貨Quantumの開発団体、新型コロナウイルスの拡散対策支援 ~湖北の寄付団体通じ20万元を寄付[仮想通貨Watch
  • 新型コロナウイルス、春節の仮想通貨市場に2つの影響 ~投機的取引拡大、一方ブロックチェーン企業は資金難直面か[仮想通貨Watch
  • 新型コロナウイルス対策で「MWCは握手禁止」、業界団体が声明[ケータイWatch
  • 新型肺炎、iPhone出荷に影響も 鴻海工場が停止延長なら[ロイター
  • ブロックチェーン企業が相次ぎ新型コロナウイルス対策支援 ~中国・武漢などにマスクを寄付[仮想通貨Watch
  • MWCバルセロナ、コロナウイルスでLGとZTEがキャンセル[ITmedia

2. 2019年の出版市場は前年比でプラスに転じる――紙の落ち込みを電子が挽回

 全国出版協会・出版科学研究所は2019年の出版市場規模を発表した(出版科学研究所)。それによると、紙版と電子版を合算した推定販売金額は前年比でプラスに転じたという。2019年(1月~12月)は、前年比0.2%増の1兆5432億円となり、紙版が4.3%減少したものの、電子版が23.9%増加したことにより、トータルではプラスになった。電子版で最も伸びたのはコミックで、29.5%の増加。その背景には海賊版サイトの閉鎖があるのではないかとしている。一方、電子雑誌は16.7%減とふるわず、かつての雑誌のサブスクリプションサービス開始時の賑わいはない。

ニュースソース

3. コンテンツのストリーミング配信が成長を続ける

 米Walt Disney Companyは11月13日に米国で開始した定額動画配信サービス「Disney+」の世界での会員数を累計2650万人であると発表した(ITmedia)。また、同社の傘下にあるHuluの会員数は、前年同期より33%増え、3040万人であると発表している。また、ESPN+の会員数も4倍以上増加し、660万人になったとしている。記事によれば、米Netflixの会員数は北米で約6800万人、世界全体では1億6700万人であるとしていて、まだまだ水をあけられてはいるものの、急速な追い上げをしているといえるだろう。

 一方、音楽配信サービスのSpotifyは2019年末時点の有料会員数が前年比29%増の1億2400万人に達したと発表した(CNET Japan)。アップル社も直近の決算でサービス分野での売り上げが伸びていることを示しているので、こちらもSpotifyを追い上げ中といえそうだ。

ニュースソース

  • Disneyの定額動画配信サービス「Disney+」会員が開始2カ月で2650万人に[ITmedia
  • Spotify、有料会員数が1億2400万人に--The Ringerの買収も発表[CNET Japan

4. 家庭用プリンターで電子回路を印刷? ――独ザールラント大学

 独ザールラント大学 、メキシコINM、仏Potioc、仏Inriaによる研究チームが「Soft Inkjet Circuits」という技術を発表した(ITmedia)。これは、市販されている家庭用インクジェットプリンターで電子回路を印刷するという技術だ。インクカートリッジには「導電性銀ナノ粒子インク」「導電性ポリマーインク」「絶縁インク」を入れ、プリンターにセットし、設計データを印刷することで電子回路が印刷できるという。一方で、先週、東レが印刷技術によってRFIDタグを従来の5分の1の単価で量産できるようになったとするニュースも報じられていた(WWD)ことも記憶に新しい。

 両者の技術的な差異については不明だが、いずれにしてもトレーサビリティを実現するためにRFIDが十分に普及しない理由の一つがその単価と装着の手間であったことから、今後、こうした印刷の技術で量産ができるようになることで、課題が解決され、一気に実現する可能性もある。

ニュースソース

  • 家庭用プリンタ1台で電子回路を印刷 独ザールラント大学など「Soft Inkjet Circuits」開発[ITmedia

5. [イベントカレンダー]日経と金融庁、国際ブロックチェーンサミットを3月9日より開催

 来たる3月9日・10日の2日間、東京・日本橋の室町三井ホール&カンファレンスにおいて、「ブロックチェーン・グローバル・ガバナンス・カンファレンス/フィンサム・ブロックチェーン&ビジネス」(略称:BG2C FIN/SUM BB)が開催されると発表された。主催は日本経済新聞社と金融庁で、内閣府特命担当大臣(金融担当)の麻生太郎氏や金融庁長官の遠藤俊英氏をはじめ、国内外の有識者らの登壇が予定されている。

ニュースソース

  • 日経と金融庁、国際ブロックチェーンサミットを3月9日より開催 ~麻生金融担当相・遠藤金融庁長官などが登壇予定の「BG2C FIN/SUM BB」[仮想通貨Watch

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。