中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2020/2/6~2/13]
情報通信技術は、新型コロナウイルス対策となりうるか ほか
2020年2月14日 12:00
1. 広がる新型コロナウイルスのIT産業への影響
新型コロナウイルスの影響はIT産業に影響を与えている。
アップル社に供給をしている鴻海は、新型コロナウイルスの感染拡大により、深セン工場の操業停止をしていたが、中国政府から操業再開の許諾を得たと報じられている(ロイター)。一方で、アップル社は今後の生産拠点を台湾にシフトしていくということも報じられている(ITmedia)。また、任天堂も中国で生産をしている家庭用ゲーム機「Nintendo Switch」の本体や周辺機器の生産や出荷の遅延が避けられない見通しだと発表した(ITmedia)。ソフトバンクでは「端末や基地局を含めて、既存在庫でやりくりできており困っていない」としつつも、長期化した場合の影響には懸念を示している(ケータイWatch)。情報通信分野、とりわけ、ハードウェア製品に関しては中国を生産拠点としていることが多く、感染拡大と長期化による今後への影響には注視していく必要がある。
2. 新型コロナウイルスの影響により「MWC2020」は開催中止
毎年2月中旬にスペインのバルセロナで開催されているモバイル関連技術・機器・サービスに関する国際的な展示会とコンファレンスである「MWC2020」の開催中止が決定された(ケータイWatch)。新型コロナウイルスの拡大に合わせて、この1週間~2週間に、大手携帯通信キャリアや大手端末メーカーらが出展を取りやめたことが報じられたり、主催者からは会場での握手禁止や登壇者のマイクの衛生管理について公表されたりとさまざまな懸念はあったが、ついにイベント自体が中止ということになった。
今年の産業的な話題は当然5Gに関するものと期待されていたところだが、社会情勢を考えれば致し方のないことであろう。さらに、今後の新型コロナウイルスの感染拡大状況によっては、他の国際的な展示会やコンファレンスも影響を受ける可能性もある。ビジネスのみならず、国際標準化などの議論をはじめ、この産業の発展にも大きな影響を与えることになる。
ニュースソース
- 「MWC2020」中止決定、新型コロナウィルスの影響[ケータイWatch]
3. 情報通信技術は、新型コロナウイルス対策となりうるか
新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、消費者向けの情報サービスがいくつか立ち上がり始めている。LINEはコロナウイルス情報を配信する公式アカウントを設置(ITmedia)し、ヤフーは新型コロナウイルスの感染予防や電話相談窓口の情報提供を開始した(ケータイWatch)。さらに、医療相談アプリ「LEBER」では、コロナウイルスの相談を無料で受け付けている(ITmedia)。SNSでは根拠が不確かな情報も流布しているなかで、こうした企業が、アクセスしやすいかたちで情報を提供していくことは歓迎すべきことだろう。
また、計画ではオリンピックが開催される期間をめどに、テレワークなどの推進をするはずだったが、すでにテレワークに取り組む事例も見られる(日経ビジネス)。中国では「テクノロジーのポジティブな側面も注目を集めている。AIやロボットなど、デジタル技術の進化を背景に、中国テック企業の活躍が、感染の拡大防止に一役買いつつある」(東洋経済オンライン)とする記事では、「危機は機会でもある」として、いくつかの取り組みが紹介されている。ファーウェイもモバイル端末からエレベーターを呼べるソリューションを開発し、エレベーターのボタンに直接触らなくてもよいというアプローチを試みている(PC Watch)。
見えない危機に際して、萎縮するばかりではなく、情報通信技術による積極的な応用によって、課題を解決し、工夫をすることもまさにデジタルイノベーションといえるだろう。
4. スマート東京――元ヤフーの宮坂副知事が会見
東京都は「スマート東京実施戦略」を策定し、その目指す姿や都の取り組みについて、ヤフー前社長の宮坂学副知事による会見が行われた(Impress Watch)。宮坂副知事は「IoTデバイスを通じて都市が丸ごとネットワークにつながる『スマートシティ』に東京が生まれ変わることで、都民のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を向上させたい」と述べるとともに、喫緊の課題としてデジタルに関する人材の不足を指摘し、「都庁の中にもICTに詳しい技術部門を作る必要性がある」とした。これらの具 体的な実施は2020年度となるが、関連する予算は158億円であるとしている。ヤフーで陣頭指揮をとってきた手腕に期待したい。
ニュースソース
- 東京都、「スマート東京」になる。元ヤフーの宮坂副知事が会見[Impress Watch]
5. モバイルバッテリーの自動貸出機が登場
首都圏ではモバイルバッテリーの貸し出しが広がりつつあるようだ。かつては店頭などでの充電装置の貸し出しサービスがあったが、いまやモバイルバッテリーを貸し出すというビジネスの転換がなされている。そのようななか、スマートフォン用のモバイルバッテリーレンタルサービス「ChargeSPOT」を展開するINFORICHは自動販売機大手の富士電機と共同で、ChargeSPOT対応の自動貸出機を発表した(ITmedia)。
すでに、ChargeSPOTは全国の駅や商業施設、コンビニエンスストアなど1万3000カ所にバッテリースタンドを展開しているとし、こうした自動貸出機は利用者の多いターミナル駅などを想定しているとみられ、どこにでもバッテリーがあるというドリンクの販売機並みにに利便性が高まるサービスになるかも。
ニュースソース
- モバイルバッテリーが借りられる自動販売機、ChargeSPOTが富士電機と共同開発[ITmedia]