中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2020/2/13~2/20]
新型コロナウイルスと情報通信産業の今週の動向 ほか
2020年2月21日 16:00
1. 新型コロナウイルス:業界への影響が拡大――イベント中止や在宅勤務が拡大
新型コロナウイルスの影響は各方面に影響を与えている。情報通信技術に関するイベントも中止が発表されている。2月29日と3月1日に予定されていた技術書の販売イベント「技術書典8」(技術書典公式ブログ)、2月27日から3月1日に予定されていたカメラや写真に関する大規模展示会「CP+」(デジカメWatch)と、相次いで発表された。
また、NTTグループ(ロイター)やドワンゴ(日本経済新聞)をはじめとし、いくつもの企業では在宅勤務が指示されたり、推奨されるようになっている。
これまでもテレコンファレンスやファイル共有を駆使することで、出社しなくてもリモートワークで成果を出せる環境はあるといわれていたが、こうしたできごとを契機に実際の運用が始まりつつあるようだ。
また、ヤフーでは100人を超す会合への参加が禁止されたことが報じられている(日本経済新聞)。このまま推移すると、コンファレンスはライブ配信で行われるようになるのかもしれない。これも首都圏にいない人にとっては参加機会の増加になる。
2. 新型コロナウイルス:市場規模や各社企業業績にも影響を与え始める
新型コロナウイルスの影響は産業全体にも影響が出つつある。
まず、IDCが「世界ICT市場に関する調査結果」を発表しているが、それによると「2020年の支出額は5兆2000万ドル(約571兆円)で、前年比6%増と予測。5G導入の効果で全体的なIT支出は増えるものの、PC販売の鈍化と新型コロナウイルスに対する懸念が重しになり、成長を抑制すると見込む」としている(CNET Japan)。
また、台湾の市場調査会社TrendForceは新型コロナウイルスの先端技術産業に与える影響についての分析結果を報告した。それによれば、「スマートフォン産業については、サプライチェーンが労働集約的であることから、アウトブレイクの影響が比較的大きく、第1四半期のスマートフォン生産は前年比で12%減少すると予測され、過去5年間で最低の生産量の四半期となる見込み」とし、さらに「カメラモジュールなどを含む上流サプライチェーンの部品も不足しているため、2月末までにアウトブレイクが抑制されない場合、第2四半期にも悪影響が続く可能性があるほか、流行が激化した場合、スマートフォン業界の長期分析において重要な市場ニーズにも影響が出る」としている(PC Watch)。いずれもある程度は予測されていたことではあるが、長期化とともに産業のみならず世界経済にも影響が及んでいきそうだ。
既報のとおり、スペインのバルセロナでの開催が予定されていたモバイル関連の大規模コンファレンス「MWC2020」の中止も単なるイベントの中止というだけでなく、地元経済や産業に対する影響(ロイター)や産業への直接的な影響(WIRED日本版)の面で危惧されつつある。
そのようななか、アップル社がこの1~3月期の売上高予想について、新型コロナウイルスの影響から「達成できない見込みだ」と発表したことは株式市場にもインパクトを与えた(日本経済新聞)。こうした発表が続かないことを願いたいところではあるが、これからの各社の企業業績に与える影響は無視できないほどになりつつあるということだ。
ニュースソース
- IDC、5Gで世界ICT支出は2020年に6%増--PC販売鈍化と新型コロナウイルスが影を落とす[CNET Japan]
- 新型コロナウイルス流行でスマホ産業に打撃、過去5年で最低の出荷台数予測 ~ノートPCやディスプレイ産業も台数減、メモリは影響軽微で上昇続く[PC Watch]
- MWC見本市中止で広がる波紋、地元経済に打撃 独自対応の企業も[ロイター]
- 新型コロナウイルスの影響で開催中止の「MWC」は、その存在感を維持できるか?[WIRED日本版]
- Apple、新型肺炎で売上高予想未達と発表 1~3月[日本経済新聞]
3. 新型コロナウイルス:こちらの“ウイルス”にも要注意
新型コロナウイルスの広がりに乗じ、その予防を呼び掛けるメールにコンピューターウイルスが添付されている事例が報告されている(INTERNET Watch)。そのメールに添付されているWordファイルを開くと、「Emotet(エモテット)」に感染するという手口だ。また、世界保健機関(WHO:World Health Organization)をかたるフィッシング詐欺も確認されている(INTERNET Watch)。新型コロナウイルスに関連する内容のメールで、ユーザー名やパスワードの入力、記載されたリンクのクリック、添付ファイルを開くよう促してくるものだという。
こうした社会状況のなか、本物の新型コロナウイルスに対する情報感度も高める必要はあるが、悪意のある手法についても十分な留意が必要だ。
ニュースソース
- 新型コロナウイルスの感染予防を呼び掛けるウイルスメールが出回る[INTERNET Watch]
- WHOかたるフィッシング詐欺に注意、機密情報やマルウェア感染狙うメールが拡散 WHOが注意呼びかけ[INTERNET Watch]
4. 建設業界での情報通信技術への取り組み事例
建設大手の大林組はさまざまな情報通信技術関連の事業者らと実証実験を進めている。1つは大林組とKDDI、NECによる「3台の建設機械(油圧ショベル/クローラキャリア/ブルドーザ)の遠隔操作と自動運転システムを搭載した振動ローラの同時連携や、工事に必要な施工管理データのリアルタイム伝送・解析(ITmedia)の実証実験、もう1つは大林組とSkyDrive社が共同で行った「カーゴドローン」による建設現場における重量物運搬の実証実験である(ドローンジャーナル)。
昨年秋のCEATECでも大手ゼネコン各社が出展していたことが記憶にある方も多いだろう。建設業界がこれほどまでに積極的に取り組む背景には豊富な経験と技術を持つベテラン世代の大量退職、一方で新たな労働力の不足、さらに高まる建設ニーズとともに、これまで作られてきた社会インフラの老朽化への対応などと大きな課題がある。こうした課題を情報通信技術で解決しようとする“建設テック”と呼ばれる分野の動向は活発だというわけだ。こうした異なった業種間の技術開発にいかに取り組むかが、これからの社会的イノベーションを成功させる上でのポイントとなる。
5. 「レジなしローソン」の実証実験開始
米国ではアマゾンがレジなし店舗を開店したことはいろいろなメディアが報じたことからご存じの方も多いことだろう。日本でも類似のアイデアは散発的に試みられてきたが、定着していなことから、課題も多いのだろう。そして、今度はローソンがレジなし店舗の実証実験を開始した。場所は「富士通新川崎TS レジレス店」で、富士通新川崎テクノロジースクエアに勤務する従業員専用の店舗だ。
この店舗では「専用アプリに表示されたQRコードを店頭にある端末にかざして入店し、購入したい商品を手に持って店外へ出ると、事前に登録した決済手段(クレジットカード)で自動的に決済する」(CNET Japan)という手順になっている。仕組みは「店内に設置されたカメラで利用者の動きを確認し、商品が置かれた棚のセンサーと合わせることで、どの商品をいくつ手にとったのかを判別して決済する」ということだ。
まだまだクローズドな実証実験の段階ではあるが、昨今のコンビニ各店舗の過酷な労働環境が社会問題化するなか、うまく実用化ができれば大きな改善の手段ともなりそうだ。
ニュースソース
- ローソン、川崎に“レジなし”実験店--商品を持ったまま店を出ると自動でクレカ決済[CNET Japan]