中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/2/20~2/27]

新型コロナ対策:広がるテレワーク、そしてイベントの中止 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 今週の新型コロナウイルス関連と情報通信産業の動向(国内):広がるテレワーク、そしてイベントの中止

 新型コロナウイルスの業界内への影響はさらに広がりつつある。2月26日の新型コロナウイルス感染症対策本部会合で「多数の方が集まる全国的なスポーツ、文化イベントに関し、大規模な感染リスクがあることを勘案し、今後2週間は中止、延期、または規模縮小の対応を要請する」と述べたことが大きく影響をしている(ITmedia)。

 1994年のインターネット黎明期から毎年開催されてきた「Interop Tokyo」の中止が発表された(Interop)。今年はオリンピックの開催時期との兼ね合いから4月13日から開催される予定となっていたが、Interopは展示会の会期中のみならず、事前に会場のネットワークの検証や構築などの準備期間もあることから、やむを得ない選択だっただろう。この時期に開催されている他の展示会について、SNSなどでの報告を見ると来場者は少なく閑散としているようだ。

 企業の記者会見や新製品発表もオンラインで開催する事例が出てきている。KDDI(ITmedia)、メルカリ(TechCrunch日本版)、日産(ITmedia)などの事例が報じられている。

 また、企業のテレワークへの取り組みも進んでいる。梶山経済産業相らが経団連などの主要経済団体や連合の幹部に対し、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるため、時差通勤やテレワークの推進に向けた協力を要請した(ロイター)。新型コロナウイルスの感染者がいたことをきっかけに、電通の本社ビル全従業員はテレワークが指示された(CNET Japan)ことは大きく報じられていた。LINEでは新型コロナウイルスに関する取り組みと方針を発表(CNET Japan)した。全従業員へフレックスタイム制度を導入し、ラッシュアワーを回避したり、希望する従業員については、在宅勤務も選択できるとしている。また、採用面接については、オンラインでの面接へ変更するとしている。

 一方で、実際にテレワークをしてみたことによる課題も指摘されつつある。GMOでは「どうしても人が出てきてやらなければならない業務があった」(産経新聞デジタル)、日産自動車は「感染拡大防止という最大の目的を押さえた上で、PR効果を落とさないためにはどうするか考え、できる限りのことをやった」(ITmedia)と報じられている。

ニュースソース

  • au、Jリーグ開幕戦での5G体験イベントを延期[ケータイWatch
  • Interop Tokyo 2020:ベント開催中止につきまして[Interop
  • 梶山経産相ら3閣僚が労使団体代表に時差通勤・テレワーク要請[ロイター
  • 首相、今後2週間のイベント開催中止・延期を要請 新型肺炎で[ITmedia
  • 農水省がテレワーク、時差通勤を拡大 総務省も積極活用[朝日新聞デジタル
  • シスコ、ウェブ会議システム「Cisco Webex Meetings」の90日間無償プログラムを公開[CNET Japan
  • GMOインターネットが新卒採用をオンラインに切り替え、新型肺炎の拡大受け[日経XTECH
  • KDDI、発表会をVR化 肺炎対策、5G普及前のVRサービスアピールにも[ITmedia
  • LINE、新型コロナウイルスに関する取り組みと方針を発表[CNET Japan
  • 電通従業員、新型コロナウイルスで陽性--本社ビル全従業員はリモートワーク[CNET Japan
  • 日産が異例の新車ネット発表会、記者質問はメールのみ…… 苦肉の策、運用に難しさも[ITmedia
  • LINEリサーチ、新型肺炎にに関する職場での対応を調査[マイナビニュース
  • 「在宅勤務に切り替え」がごく一部にしか広がらない根本原因 新型コロナ渦でも「通勤地獄」は不変[プレジデントオンライン
  • テレワークにも「限界」 導入企業でもやむなく出社 政府要請でも浮かぶ課題[産経新聞デジタル
  • 新型コロナウイルス、メディア各社が特設サイトを開設・・・SNSはフェイクニュースへの対策[Media Innovation
  • 米ITイベントで複数企業が出展中止、現場で見た新型コロナ対策の「現実」とは[日経XTECH
  • メルカリがマルイと連携、リアル店舗「メルカリステーション」を新宿マルイ本館にオープン[TechCrunch日本版
  • 新型コロナでデマ拡散「インフォデミック」に踊らされない“リテラシー”とは[ITmedia

2. 今週の新型コロナウイルス関連と情報通信産業の動向(国際):懸念される業績への影響

 新型コロナウイルスが各国への広がりを見せていることから、IT業界の国際企業でも対応が進みつつある。

 まず、フェイスブックが毎年開催しているデベロッパーコンファレンス「F8」の中止を発表した(CNET Japan)。多くの国から人が集まることはもとより、米国での感染拡大が懸念されることからの措置だ。

 マイクロソフトは1月~3月期売上高への影響を予告した(ITmedia)。先のアップル社の業績未達見通しについても、その影響はサプライチェーン全体に及ぶとする懸念も指摘されている(ITmedia)。さらに、サムスンでは韓国亀尾市の工場を一時閉鎖した(CNET Japan)。

 一方で、インターネットアーカイブと国際インターネット保存コンソーシアムは新型コロナウイルスに関するウェブ上にある公開情報のアーカイブを実施している(カレントアウェアネス)。コロナウイルスの起源、感染の広がりに関する情報、地域の感染症封じ込めに関する活動、医学・科学的側面、社会的側面、経済的側面、政治的側面などの情報を優先的に収集するとしている。世界的に広がりつつあるこの感染症について、記録に残すということは将来への知見を蓄積することにも有用だと思われる。

ニュースソース

  • Internet Archive(IA)と国際インターネット保存コンソーシアム(IIPC)、「新型コロナウイルス感染症」の拡大に関するウェブ上の公開情報源のアーカイブ化を実施中[カレントアウェアネス
  • サムスン、韓国亀尾市の工場を一時閉鎖--従業員が新型コロナウイルスに感染[CNET Japan
  • ファーウェイ、新製品発表会と開発者向けイベントを2月24日22時よりオンライン開催、YouTube配信へ[GAPSIS.JP
  • Microsoftも新型コロナウイルスの1~3月期売上高への影響を予告[ITmedia
  • ビットコイン100万円割れ、新型コロナ感染拡大で広がる先行き不透明感──他の仮想通貨も下落[coindesk
  • 「マスク」の検索数が新型コロナウイルスの影響で前例のないほど増加[Gigazine
  • アップル失速、日本のメーカーにも大打撃の懸念[ITmedia
  • 新型肺炎でスマートグラスに注目 日本から中国の作業員に遠隔指導[ITmedia
  • 焦点:新型ウイルス、新型アイフォーンにも影 製造日程に暗雲[ロイター
  • 新型コロナウイルス、世界のIT市場に今後どう影響するのか[ZDnet Japan
  • Facebook、開発者会議「F8」を中止--新型コロナウイルスを懸念[CNET Japan

3. アマゾンの新店舗、そして日本での売り上げは?

 アマゾンの無人店舗である「Amazon Go」に新店舗が登場した(CNET Japan)。従来の店舗との違いは生鮮食品を購入できることだ。これまではスナック、飲料、惣菜などの売れ筋商品を販売するコンビニエンスストアの形態で、すでに全米の都市部で25店舗を開店しているという。生鮮食品が扱えるようにするためには技術的なアップデートも必要だったようだが、パッケージされていない商品まで扱えるというのはかなりの技術的なジャンプがあると思われる。

 そのアマゾンに関連する話題として、同社の日本での売上高に関する分析が報じられている(Web担当者フォーラム)。これは米国アマゾンの年次報告書をもとにした数字で、「アマゾン日本事業の2019年(2019年1~12月)売上高は円ベースで1兆7442億1900万円だった。円ベースの伸び率は前期比13.6%増」としている。

ニュースソース

4. 期待のメルカリ新サービス

 メルカリが事業戦略などを説明する事業戦略発表会「Mercari Conference 2020」で新サービスを発表している(TechCrunch日本版)。

 「あとよろメルカリ便」は、出品した売れる前の商品の保管や売れたあとの梱包・発送を全て任せられるサービス。また、ヤマト運輸との連携により、無人配送拠点である「メルカリポスト」を設置する。これはメルカリで売れた商品を投函するだけで発送できる「ポスト」で、ドコモショップなどに設置される予定だという。さらにこれを進化させ、自動採寸や顔分析、無人レジ、無人発送投函などの機能を備える端末「メルカリポストプラス」も開発中としている。

 そして、メルカリのリアル店舗と位置付けられる「メルカリステーション」を都内の試験店舗をかわきりに、全国主要都市に展開すると発表した(TechCrunch日本版)。ここではメルカリ教室、撮影ブース、梱包資材の販売、発送までを担う店舗で、マルイとの提携をするという。

ニュースソース

  • メルカリがオープンロジと「あとよろメルカリ便」を開始、ヤマトと無人配送拠点「メルカリポスト」を設置[TechCrunch日本版
  • メルカリがマルイと連携、リアル店舗「メルカリステーション」を新宿マルイ本館にオープン[TechCrunch日本版

5. NECがヒアラブルデバイスを使った新認証方式

 NECが耳音響認証技術による個人認証とバイタル情報を一括管理できるサービス「NEC ヒアラブルデバイストライアルキット」の提供を開始した(ITmedia)。NECはかねてより「ヒアラブルデバイス」の技術を見せてきているが、より具体的なかたちでのサービスとして進化した。

 耳に装着するヒアラブルデバイスに搭載した耳音響認証技術で個人認証をしたり、温度センサーと加速度センサーにより、バイタル情報や活動量を計測して一元的な管理を行え、製造現場での現場改善、カメラが設置できない屋外での作業者確認、倉庫内作業者の検品効率化、医療現場での遠隔支援などでの利用を想定しているということだ。

 そもそも耳は人間にとっての重要なセンサーの1つであり、そこでのデジタル化というアイデアは大変に興味深い技術である。

ニュースソース

  • “耳音響認証”で個人認証とバイタル情報を一括管理する「NEC ヒアラブルデバイス」[ITmedia

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。