中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2020/2/27~3/5]
新型コロナ対策:臨時休校と各種コンテンツ無償公開 ほか
2020年3月6日 12:10
1. 新型コロナウイルス:国内外の主要イベント中止とオンラインイベント
国内外では展示会、コンファレンスの中止が相次いで決定されている。しかし、単に中止するだけではなく、ビデオ会議システムなどを活用することも試みられている。
情報処理学会の全国大会はオンライン会議システム「Zoom」を利用して3000人規模を対象に配信をする(ITmedia)。金融庁のフィンテック関連コンファレンスである「FIN/SUM BB」も延期が発表されたが、一部はオンラインで開催する(金融庁)。IPAの「未踏会議2020」もニコニコ生放送、Facebook Liveでの配信をする(IPA)。
考えてみれば、インターネット時代にあっても、こうした物理的な場所で一堂に会するコンファレンスにも意味はあるが、並行してオンラインでの配信はもっと積極的に行ってもいいのかもしれない。そうすることで首都圏だけでない多くの人が参加できるようになる可能性があるからだ。そうしたニーズの拡大を見据え、アイティメディアはイベントのオンライン開催を支援するとしている(Media Innovation)。
海外でも、グーグルの年次コンファレンス「Google I/O」(CNET Japan)とフェイスブックの年次コンファレンス「F8」(CNET Japan)が中止を発表した。オンラインでの開催も検討されているようであり、ひょっとすると例年よりも参加しやすくなる可能性もある。続報を待ちたい。
こうした国際的な危機のときこそ、それを乗り越えるためにオンラインの特性を生かした工夫をしたり、それを利用していこうとしたりするユーザーのマインドから、これまでの固定的な「常識」も変わっていくのではないだろうか。
ニュースソース
- 情報処理学会の全国大会、現地は中止もオンライン会議「Zoom」で一部開催 3000人規模さばけるか[ITmedia]
- BG2C、FIN/SUM BB延期のお知らせ[金融庁]
- 未踏会議2020:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構[IPA]
- 経済産業省、ビデオ会議サービス「Zoom」を教育関係者向けに無償提供--4月30日まで[CNET Japan]
- アイティメディア、イベントのオンライン開催を支援[Media Innovation]
- 新型コロナウイルスによるイベント中止の損害を補填するクラウドファンディング開始[INTERNET Watch]
- 「GDC 2020」、新型コロナで参加やめる企業が続出--マイクロソフト、Epic Gamesも[CNET Japan]
- 「Google Cloud Next」、オンラインで開催へ--新型コロナ懸念で[CNET Japan]
- 「Google I/O」も中止、別の方法を模索--新型コロナウイルスを懸念[CNET Japan]
- Facebook、開発者会議「F8」を中止--新型コロナウイルスを懸念[CNET Japan]
- Facebookも「SXSW 2020」への参加を取りやめ--Twitterに続き[CNET Japan]
- Twitter、大規模フェス「SXSW 2020」への参加を取りやめ--新型コロナを懸念[CNET Japan]
2. 新型コロナウイルス:テレワークの増加とツール事業者のマーケティング
企業活動としてはテレワークの導入が進みつつある。それに合わせて、ビデオ会議などのテレワーク向けサービスを提供する事業者が期間限定での無償サービスの提供をこぞって開始している。例えば、グーグルは「Hangout Meet」のプレミアム機能を無料提供(Engadget日本版)を、ブイキューブはウェブ会議システムを教育など非営利団体向けに5月末まで無償提供する(ITmedia)としている。
また、テレワークを導入した中小企業に対して、助成金を出すことを厚生労働省が発表している(ITmedia)。
さらに、テレワークは設備やソフトウェアだけでなく、運用ノウハウも必要とされることから、いくつかの組織からノウハウが記された資料が配布された。1つはレノボの「はじめようテレワークスタートガイド」で、無償でPDFファイルが配布されている(INTERNET Watch)。サイボウズはテレワークのポイントまとめたサイトを公開している(ITmedia)。海外でも、マイクロソフト中国法人の従業員によるテレワークのノウハウ(CNET Japan)や、GitLabの「リモートワークマニフェスト」も参考になる(ITmedia)。
いまだテレワークに取り組めていない企業にとっての課題は制度設計や業績への影響の懸念、そして従来の慣行とのギャップなどが大きいと思われるが、いち早くテレワークの指示を出したGMOは従業員の意識調査結果を公表している(仮想通貨Watch)。アステリアでは37.5度以上の発熱で休む場合も出勤扱いにすること(マイナビニュース)や、ドワンゴが新型肺炎対応として、在宅勤務手当と休校手当を支給すること(マイナビニュース)なども報じられていて、テレワークの制度を検討中の企業にとっては参考になる情報ではないだろうか。
ニュースソース
- 厚労省、テレワーク導入の中小企業に助成金 上限100万円[ITmedia]
- BONX、コミュニケーションツール「BONX」を無償貸与--リモートワークを支援[CNET Japan]
- テレセールスをテレワークで、新型コロナ対策でAI搭載IP電話「MiiTel」が2カ月無償に[TechCrunch日本版]
- ブイキューブ、Web会議システムを無料提供 教育など非営利団体向けに 5月末まで[ITmedia]
- GoogleがHangout Meetのプレミアム機能を無料提供。新型コロナ対策のテレワーク支援[Engadget日本版]
- Microsoft、中国法人従業員が記したリモートワークのノウハウを公開[CNET Japan]
- TeamViewerが日本でのフォーカスや計画を語る、テレワークの問い合わせも急増中 東京オリンピックや働き方改革[INTERNET Watch]
- Zoomの株価上昇が止まらない。「新型コロナで伸びる会社」アナリスト評価、SlackとDropboxも[BUSINESS INSIDER]
- KDDI、約8000人を原則在宅勤務に[日本経済新聞]
- テレワーク実践のポイントまとめたサイト、サイボウズが公開 新型コロナ感染拡大受け[ITmedia]
- アステリア、新型コロナ感染防止策として37.5度以上発熱も出勤扱いに[マイナビニュース]
- ドワンゴ、新型肺炎対応として在宅勤務手当と休校手当を支給[マイナビニュース]
- Twitter、全従業員に在宅勤務を強く奨励 全社会議は「G Suite」で開催[ITmedia]
- 「テレワークしているのに出社した」が6割以上、なぜ?[ITmedia]
- 新型コロナウイルス対策で自宅勤務実施のGMO、従業員7割は「大きな問題なし」 ~テレワークの課題はリモート環境が遅い・紙ベースの業務など[仮想通貨Watch]
- 1200人以上の全社員がリモートワーク GitLabが公開する「リモートワークマニフェスト」は何を教えているか?[ITmedia]
- リモートワーク増で日本でも利用者100万超のSlack。“非対面”は職場のコミュニケーションをどう変えるか[BUSINESS INSIDER]
- 「緊急テレワーク、対応マニュアル」無償の小冊子PDFでレノボが配布、テレワークの経験が少ない企業に向けてノウハウまとめ[INTERNET Watch]
3. 新型コロナウイルス:臨時休校と各種コンテンツ無償公開
一般消費者向けにも各社の取り組みは活発である。とりわけ、臨時休校や博物館などの公的機関の休業に対する対応である。
東京国立博物館は一部の展示をYouTubeで公開した(美術手帖)。
教育分野においてはオンライン教材の各社が無償での提供を開始している。ドワンゴの教育アプリ(日本経済新聞)、ヤフーの「ヤフーきっず おうち学校」(ITmedia)、LINEによる中高生を対象とする5教科の学習動画(ITmedia)、教育プラットフォーム「Classi」の一部機能(CNET Japan)など、いくつもの事例が相次いで報道されている。
さらに、仮想通貨・ブロックチェーンのオンライン学習サービス「PoL(ポル)」を運営するtechtec(テックテク)は、小中高生のいる全ての家庭を対象に、仮想通貨とその税金、ブロックチェーン技術や活用事例についてのカリキュラムの無償提供を発表した(仮想通貨Watch)。こうしたチャンスに動機づけられた子どもたちが将来この技術を高めていくきっかけとなるかもしれない。
また、エンターテインメント分野での出版各社がコミックなどのコンテンツを無料公開し(ITmedia)。KADOKAWAも児童書207冊の無料公開をしている(ITmedia)。
そして、エイベックスは浜崎あゆみやAAAなどの所属タレントのライブコンテンツをYouTubeで無料公開している(CNET Japan)。
自粛ムードが高まる現在、このようなかたちでデジタルコンテンツに慣れ親しんでもらうことが、将来の新たな顧客として定着してもらえるチャンスと捉えるなら、産業にとっては多少なりともプラスとなる話題ではなだろうか。
ニュースソース
- 東京国立博物館が展示をYouTubeで公開。新型コロナによる臨時休館受け[美術手帖]
- 「Studyplus」で自宅学習応援企画、抽選でAmazonギフト券プレゼント[ケータイWatch]
- 「週刊少年チャンピオン」もネットで公開 臨時休校受け、出版各社が無料配信[ITmedia]
- ebookjapan、最大20%のPayPay還元+『刃牙』1~41巻無料公開を「開始(はじ)めいッ!!」[マイナビニュース]
- KADOKAWA、児童書など207冊をネットで無料公開 臨時休校受け[ITmedia]
- エイベックス、浜崎あゆみやAAAなどのライブコンテンツを無料公開--YouTube公式で[CNET Japan]
- オンライン教材・知育アプリ相次ぎ「無償提供」へ 休校要請に対応...「本当にありがたい」[J-CASTニュース]
- クックパッド、3月15日まで「人気順検索」機能を無料開放--コロナウイルス対策の一環で[CNET Japan]
- ドワンゴ、学習アプリを無料公開 休校受け[日本経済新聞]
- ヤフー、小学1年生~6年生の自宅学習を支援する「ヤフーきっず おうち学校」開設[ITmedia]
- 教育プラットフォーム「Classi」、学校活動を休止する高校へ一部機能を無償提供[CNET Japan]
- 新型コロナウイルス対策の臨時休校受けPoLがオンライン講座を一部無料化 ~小中高生にブロックチェーン技術の学習機会を提供[仮想通貨Watch]
- 臨時休校の中高校生を対象としたLINE公式アカウント開設 5教科の学習動画などを無償提供[ITmedia]
4. 成層圏インターネットへの取り組み
無人飛行機(UAV)からの通信サービス提供を計画しているソフトバンク傘下のHAPSモバイルと、成層圏気球による通信サービス提供を目指しているGoogle兄弟会社のLoonは、高高度疑似衛星(High Altitude Pseudo-Satellite:HAPS)の活用促進団体「HAPS Alliance(HAPSアライアンス)」を結成すると発表した(CNET Japan)。また、楽天は宇宙空間や地上に関連する豊富な特許を保有し、衛星通信ネットワークを手掛ける米AST & Science, LLCへリードインベスターとして出資したと発表した(GAPSIS.JP)。
人工衛星、無人飛行機、成層圏気球などを利用する上空でのモバイルネットワークの構築はちょっとSFっぽい話と思われるかもしれないが、着々とその準備が進んでいる。これまでの地上基地局では、コスト的にも、環境的にもカバーしきれないエリア(海上や山岳地帯など)や大規模災害時の情報孤立化した地域への通信サービスを満遍なく展開できるだけでなく、通信衛星間でルーティングすることで、地上のインフラをバイパスする新たな通信経路が構築できる可能性がある。
ニュースソース
- 成層圏の無人機でネット環境を構築する「HAPSアライアンス」--ソフトバンクなど12社[CNET Japan]
- 楽天が米ASTと業務資本提携。衛星通信活用で携帯サービスのエリア強化[GAPSIS.JP]
5. 仮想通貨「リブラ」は法定デジタル通過の基盤開発へ向かうのか
米国ブールームバーグの報じるところによると、フェイスブックは仮想通貨プロジェクト「Libra(リブラ)」の見直しを検討しているという。それは「Facebookとリブラ協会はグローバル通貨の発行を棚上げし、法定デジタル通貨(CBDC)を含む複数のデジタル通貨に対応した決済ネットワークの構築を検討している」(仮想通貨Watch)ということだ。
リブラに対してはさまざまな懸念が各国から表明されている。つまり、リブラが既存の法定通貨を駆逐して、世界で共通の通貨システムとなるのではないかとする懸念が大きい。そこで各国の法定デジタル通貨の決済ネットワークの構築を検討しているというわけだ。もちろん、公式の発表に基づくものではないので、ことの真偽は不明なのだが、フェイブックとしてはこのリブラ計画をソフトランディングさせるための案の1つといえるだろう。
ニュースソース
- Facebook、仮想通貨リブラ計画見直しを検討 ~グローバル通貨棚上げし法定デジタル通貨向け開発の方針か[仮想通貨Watch]