中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/3/5~3/12]

新型コロナ対策:テレワークの効果と課題 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 新型コロナウイルス:大型イベントが次々と中止・延期を発表

 新型コロナウイルス感染拡大を防止する意味から、今春、国内外で予定されていた主要イベントの中止や延期が発表された。

 国内では「ニコニコ超会議2020」と「闘会議2020」(ドワンゴ)が開催中止となり、代わりに「ニコニコネット超会議」を開催すると発表された(GAME Watch)。また、「コンテンツ東京」(リードエグジビションジャパン)は2020年10 月28日から30日までパシフィコ横浜で開催をすると延期が発表された(コンテンツ東京)。なお、リードエグジビションジャパン社による他のイベントは安全対策を講じた上での開催が予定されている。

 さらに、「ジャパンドローン」(一般社団法人日本UAS産業振興協議会、コングレ、スペースメディアジャパン)も本年秋までの開催延期が発表された(Japan Drone)。

 海外では、映像・放送関連の展示会「NAB Show」(Inter BEE)、ゲーム展示会「E3」(CNET Japan)、ゲーム開発者会議「GDC」(ITmedia)、スタートアップ企業らによるテクノロジーイベント「SXSW」(ITmedia)も中止や延期となった。ただ、なかにはオンラインでの開催を模索しているとしているイベントもあるので、主催者からの発表を待ちたい。

 こうした商業イベントのみならず、インターネットの標準化会議である「IETF」(IETF)も中止となっている。

 現在の状況を見ると、こうしたイベントの中止や延期は短期的な出来事で終わるとは思えず、今後はオンラインを活用したイベント開催が活発になっていく可能性もある。

 日本では、U-NEXTが無観客のイベントをライブ配信するインフラを無償提供(ケータイWatch)するなど、一連の出来事をネガティブに捉えるだけでなく、むしろビジネスチャンスとする事業も活発になると思われる。

ニュースソース

  • 「ニコニコ超会議2020」および「闘会議2020」が開催中止に。代わりに「ニコニコネット超会議」の開催が決定[GAME Watch
  • 3月6日の「モバイルフォーラム2020」はオンラインでの開催に[ITmedia
  • コンテンツ東京[コンテンツ東京
  • ジャパンドローン 2020 / Japan Drone 2020[Japan Drone
  • U-NEXTが無観客のイベントに対してライブ配信インフラを無償提供[ケータイWatch
  • ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学などが「全ての授業をオンラインに移行する」ことを決定[Gigazine
  • 「CES Asia 2020」が延期、新型コロナウイルスの影響で[ケータイWatch
  • IETF 107 Vancouver In-Person Meeting Cancelled[IETF
  • NAB Showの4月開催は中止 「最も可能性の高い代替案を検討」[Inter BEE
  • SXSW 2020も新型コロナで開催断念 バーチャルイベントを検討中[ITmedia
  • The London Book Fair[London Book Fair
  • ゲーム見本市「E3」も開催中止に--新型コロナウイルス感染拡大で[CNET Japan
  • 新型コロナで延期の「GDC 2020」、講演をオンラインで Microsoftは別途Mixerでゲーム開発者イベント[ITmedia
  • アップルの「WWDC 2020」が新型コロナウイルスでなくなる可能性は?[CNET Japan

2. 新型コロナウイルス:コンテンツやサービスの無償公開がさらに進む

 主に臨時休校で自宅にいざるを得なくなった子どもたちへの施策として、先週に続き、今週もさまざまなコンテンツが期間限定で無償公開され始めている。

 そのなかでも目についたのは動画や音声などの配信サービスである。Amazonプライムビデオ(ケータイWatch)、DAZN(CNET Japan)、Hulu(CNET Japan)、niconico(マイナビニュース)、ピューロランド(Yahoo!ニュース/Walker+)の主要な配信サービスのほか、ホリプロでは所属タレントによる日本昔ばなしの読み聞かせシリーズ10作品をYouTubeで配信開始した(ニュースリリース)。第1弾ということなので、今後もコンテンツは増加するものと思われる。

 IT系のコンテンツでは、インプレスが解説書「できるシリーズ」など44タイトルを全文公開(PC Watch)し、さくらではPythonの基礎講座を無償で公開している。

 さらに、小学館の人気シリーズ「日本の歴史」電子版(ITmedia)をはじめ、岩波書店(岩波書店)、文藝春秋(新文化)など出版各社も取り組みを開始している。各社がこうした施策がとれるのも、出版物の電子版を発行していたからということもできよう。

 こうしたことを契機に、デジタル化されたコンテンツの特性や価値が再評価されることにつながるのではないだろうか。

ニュースソース

  • 「Amazon Prime Video」が休校中の子ども向けに一部を無料配信、ポケモンや妖怪ウォッチ[ケータイWatch
  • DAZN、新規登録者向けに2カ月無料キャンペーンを実施--ホンダと共同で[CNET Japan
  • Hulu、日テレドラマなど100作品以上を無料配信--会員登録不要、3月31日まで[CNET Japan
  • niconico、ハルヒやユーフォなど京アニ17作を無料で連続配信[マイナビニュース
  • 休館中のピューロランド、無観客パレードをYouTubeハローキティチャンネルで無料配信[Yahoo!ニュース/Walker+
  • 日本昔ばなし よみきかせシリーズ公開[ニュースリリース
  • インプレス、解説書「できるシリーズ」など44タイトルを全文公開[PC Watch
  • さくら、Pythonの基礎講座を無償提供 新型コロナで外出控える人向け[ITmedia
  • au、「ブックパス」を3月28日まで無料で読み放題に[ケータイWatch
  • 新型コロナ対策のための一斉臨時休校を受け、小社の電子書籍181冊を期間限定公開[岩波書店
  • 小学館、学習まんが「日本の歴史」電子版を無料公開[ITmedia
  • 自習室や図書館もバーチャル化 教材会社がネットで休校時の学習サポート[ITmedia
  • 文藝春秋、小中学生向けの電子書籍33点を無料配信[新文化
  • 出版各社、自社サービスを期間限定で無料公開[新文化
  • 「りぼん」「別冊マーガレット」などネットで無料公開 臨時休校受け[ITmedia

3. 新型コロナウイルス:テレワーク推進のための助成金制度

 厚生労働省や東京都は新型コロナウイルスへの対応するための施策として、テレワーク導入の企業に対する助成金制度を発表している。

 厚生労働省は「時間外労働等改善助成金(テレワークコース、職場意識改善コース)」の「特例コース」を設け、速やかに申請を受け付けると発表した(INTERNET Watch)。

 また、東京都は、都内の中小企業を対象として、テレワーク導入の経費を助成する取り組みを始めた。「助成対象は機器やソフトウェアなどの購入費などで、1社当たりの上限は250万円。同日から5月12日まで申請を受け付ける」(ITmedia)としている。

 そもそも東京都は東京オリンピック開催時の交通の混雑緩和を趣旨としてテレワークの推進をしてきたところだが、こうしたかたちでより強い動機付けの上でテレワークが推進されていくということは想定外ともいえるが、これまで以上にインターネットに支えられる社会へと進化しつつあるとも捉えられる。

ニュースソース

  • 厚労省、新型コロナ対策で最大100万円のテレワーク助成金[INTERNET Watch
  • 東京都、テレワーク導入の中小企業に助成金 新型コロナ対策、上限は250万円[ITmedia

4. 新型コロナウイルス:テレワークの効果と課題

 ビジネスパーソンにとってはテレワーク、就活生にとってはオンライン面接やオンライン会社説明会と、社会情勢の深刻化とともにネットワークでのコミュニケーションは日々活発化しつつあるようだ。こうしたテレワークを経験した人はどのように感じているのだろうか。

 各社からはさまざまな定量調査が発表されつつあるが、おおむね、生産性へのマイナスの影響は少ないどころか、むしろ仕事に集中できるという声すらあるようだ。一方で、十分でない自宅の作業スペースやネットワーク環境によって困難との声も少なからずあるようだ。さらには紙の書類や押印手続きがあることから出社が余儀なくされていることも指摘されている(CNET Japan)。これまではこうした働き方が想定されていたわけではないので環境が十分でないのは当たり前のことではあるが、今回の経験を踏まえて、組織の制度の整備や自宅の環境整備などを進めるきっかけにはなっているのだろう。そして、現在のところ、多くの人はその定着を望んでいるともされている(J-CASTニュース)。

 テレワークではコミュニケーションが不足することを懸念する声もあるが、関係者がテレワークの運用に慣れ、ノウハウが蓄積されれば徐々に解決される問題にも思われる。

 半ば“強制的”ともいえるように実施された経験を通じて、これまで漫然と行われてきたミーティングや会議、ペーパーワークが見直されたりすると、結果としての生産性向上につながることになるのではないか。

ニュースソース

  • 在宅勤務、一度やったらやめられぬ? テレワーク社員96%が「定着」望む[J-CASTニュース
  • 紙書類やハンコの対応で6割がやむなく出社--テレワーク推進の課題、アドビが調査[CNET Japan
  • 新型コロナ対策で「テレワーク実施」は8割 「業務計画の見直し」を始めている企業は……[ITmedia
  • アマゾン、マイクロソフト…テック企業の8割が在宅勤務中。「仕事の生産性に影響なし」は6割超える[BUSINESS INSIDER
  • 「選考期間を延ばしてほしい」「Web面接では熱意を伝えにくい」 新型コロナの影響と就活生の本音[ITmedia

5. 電通が「2019年 日本の広告費」を発表――インターネット広告費がテレビメディアを上回る

 電通から「2019年 日本の広告費」が発表(電通)された。今年の最大のトピックスはインターネット広告費がテレビメディアを上回ったことである。

 電通報の解説記事によれば、「総広告費におけるそれぞれの構成比は、マスコミ4媒体が37.6%、インターネットが30.3%、プロモーションメディアが32.1%です。マスコミ4媒体のうちテレビメディアは26.8%でした。2014年以来2桁成長を続けるインターネット広告の構成比が、テレビメディアの構成比を上回りました」(電通報)としている。

 さらに、2019年からはインターネット広告費に「物販系ECプラットフォーム広告費」という項目を追加されている。これは昨年まではなかった項目で、「生活家電・雑貨、書籍、衣類、事務用品などの物品販売を行うEC(電子商取引)プラットフォーム(これを、本広告費では「物販系ECプラットフォーム」と呼ぶ)上において、当該プラットフォームへ“出店”を行っている事業者(これを、本広告費では「店舗あり事業者」と呼ぶ)が当該プラットフォーム内に投下した広告費」と定義されている。この項目でも大きく成長していて、今後はさらにインターネット広告費を増大させる要素になると見込まれている。

ニュースソース

  • 「2019年 日本の広告費」[電通
  • 「2019年 日本の広告費」解説―インターネット広告費が6年連続2桁成長、テレビメディアを上回る[電通報

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。