中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/3/18~3/26]

新型コロナウイルス:「巣ごもり景気」を支えるECにも危機が忍び寄る ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 新型コロナウイルス:春のイベントとコンファレンスの動向――その後

 新型コロナウイルスの世界的な流行により、各国で予定されていた春のイベントやコンファレンスは中止となっていることはこれまでもお伝えしてきたところだ。

 今週、新たに発表になったものとしては、「Japan IT Week 春」が本年10月28日~30日の秋の開催になったことである(リードエグジビションジャパン)。さらに、中止が発表された「Interop Tokyo」は、「Interop Online」として4月13日から6月30日までオンラインで新製品情報やオンライセミナーを展開する(クラウドWatch)。

 海外では、台湾で開催予定だった「COMPUTEX TAIPEI」も本年9月28日~30日に(4Gamers.net)、「GDC 2020」は本年8月4日~6日へと延期になった(CNET Japan)。

 さらに、リアルイベントの開催中止とともに、オンラインでの開催が示唆されていた「Google I/O」はそれも中止(ケータイWatch)、「Google Cloud NEXT」のオンラインも中止(CNET Japan)となった。

 そして、米国オライリーメディア社はフェイスツーフェイスのコンファレンス事業の撤退を発表した(O'Reilly)。IT業界で広く知られるところでは、2004年、ウェブの新しい技術ムーブメントを捉えた「Web 2.0 Conference」は伝説となっているし、オープンソースに関するコンファレンスでは世界をリードする役割を果たしてきた。今回の決定の理由として、新型コロナウイルスの流行を契機として、別の方法での新しい知識や情報の普及の方法も模索する段階だとしている。

ニュースソース

  • Japan IT Week 春[リード エグジビション ジャパン
  • 中止になったInterop Tokyo 2020、「Interop Online」としてオンラインで展開へ[クラウドWatch
  • 「COMPUTEX TAIPEI 2020」は9月28~30日に延期が決定。世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの影響がここにも[4Gamers.net
  • 「Google I/O」は中止、コロナウイルス感染症の影響で[ケータイWatch
  • From Laura Baldwin - O’Reilly Media[O'Reilly
  • グーグル、オンライン開催を予定していた「Google Cloud Next」を延期に--新型コロナで[CNET Japan
  • 延期の「GDC 2020」は8月4~6日に開催へ[CNET Japan

2. 新型コロナウイルス:「巣ごもり景気」を支えるECにも危機が忍び寄る

 各国が外出を禁止したり、自粛を要請したりするなか、ECは消費者にとっての重要な基盤である。すでにアマゾンは需要の高まりを受け、米国で10万人を新たに雇用することを発表している(CNET Japan)。しかし、それでも十分な対応ができず、「より多くの医療用品や生活必需品を顧客に届けるための同社の取り組みの一環として、米国における非必需品の配送を大幅に遅らせている」(CNET Japan)ことを発表、「販売されている商品の中には、配送時期が1カ月先となっているものもある」ということだ。また、「イタリア、フランスの2国で、いずれも生活必需品を優先的に配送するため、重要でない商品の注文を一時的に停止している」(INTERNET Watch)という報道もある。倉庫である物流センターのパワーだけでなく、流通経路はもとより、商品の製造や供給が追いつかなければこうした事態になることは明らかである。

 また、ニューヨーク(TechCrunch日本版)と日本(小田原)の物流倉庫では従業員に新型コロナウイルスの陽性者が出たことも報じられていて、一時的な休止なども報じられている(GAPSIS.JP)。

 当たり前のことだが、ECがあるからこそ外出を控えるような措置が可能ともいえるが、しょせんは人が運用していることであり、それすらも危機に瀕することもあるという事例として、念頭に置く必要がある。

ニュースソース

  • アマゾン、米国で10万人を新たに雇用へ--新型コロナで需要増[CNET Japan
  • Amazonの小田原の物流拠点で新型コロナウイルス感染者確認。施設内を消毒の上、25日に再稼働[GAPSIS.JP
  • Amazon、新型コロナウイルスの影響で一部の国で注文受付を一時停止。日本への影響は[INTERNET Watch
  • ニューヨークの倉庫で働くAmazon従業員が新型コロナ陽性[TechCrunch日本版
  • 米アマゾン、不要不急品の配送に最大1カ月の遅れ--新型コロナの余波[CNET Japan

3. 新型コロナウイルス:ソフトウェア開発にも影響が及ぶ

 大手IT企業では従業員の在宅勤務などが実施されているのは既報のとおりである。また、ユーザー企業としても情報システム部門が在宅勤務を余儀なくされ、通常よりも運用に伴う作業が滞ることが危惧されることなどから、オペレーティングシステムやウェブブラウザーなどの基幹ソフトウェアのアップデートサイクルの変更などが発表されている。

 グーグルは「Chrome」「Chrome OS」のリリースを一時停止し、Chrome 80セキュリティアップデートは引き続き行うと発表した(INTERNET Watch)。その後、一時的に停止していたChromeのアップデートを再開したと発表している(CNET Japan)。また、マイクロソフトはWindows 10のオプション累積更新プログラムを5月から一部停止(CNET Japan)、さらにウェブブラウザー「Edge」のStableチャネルへのアップデートを一時停止(CNET Japan)すると発表している。

 こうした状況下では適切な対応といえるが、今後は他の基盤となるソフトウェアベンダーの対応にも注視しておく必要があるだろう。

ニュースソース

  • Google、「Chrome」「Chrome OS」のリリースを一時停止、原因は「作業スケジュール調整のため」 「Chrome 80」セキュリティアップデートは引き続き優先[INTERNET Watch
  • グーグル、一時的に停止していた「Chrome」のアップデートを再開[CNET Japan
  • 「Windows 10」のオプション累積更新プログラム、5月から一部停止へ[CNET Japan
  • マイクロソフト、「Edge」の「Stable」チャネルへのアップデートを一時停止[CNET Japan

4. 新型コロナウイルス:動画配信サービスも負荷軽減策をとる

 各国で在宅勤務や外出禁止などの措置がとられるのに伴い、ネットワークトラフィックが増大をしている。幸いなことに、日本国内ではネットワークトラフィックの「オーバーシュート」は見られないようだが、世界的に見れば日本ほどのネットワーク環境にはない国も多く、引き続き留意していく必要がありそうだ。

 そのようななか、YouTube(CNET Japan)やNetflix、アマゾン(CNET Japan)といった動画配信サービスを提供する各社では、画質を「標準」に制限し、デフォルトでの高画質配信を控えている。また、さまざまな国の人が参加するオンライン会議では必要な場合を除き、各参加者の動画をオフにするということもあると聞く。こうしたことが長期化するとともに、これまではあまり気に留めていなかったインターネット網のキャパシティについても懸念しなければならないときがくるのかもしれない。

ニュースソース

  • YouTube、全世界で配信動画の画質を「標準」に制限--ネット負荷軽減策[CNET Japan
  • Netflixやアマゾンら、欧州で動画配信の画質を抑制--通信量の削減要請を受け[CNET Japan

5. NTTとトヨタが資本業務提携――スマートシティ計画が本格化

 NTTとトヨタ自動車がスマートシティ構想において資本業務提携を発表した。トヨタはすでに今年初めに米国ラスベガスで開催された「CES 2020」の基調講演において、大々的なスマートシティ構想である「コネクテッド・シティ」プロジェクトの概要を発表してる。また、両社は2017年にコネクティッドカー分野での協業を発表していた。今回の資本業務提携では「両社がこれまで培ってきた事業基盤の強化と、協力関係の構築により、持続的な成長を可能とする新しい価値の創造を目指していく」(ケータイWatch)としている。

 また、3月24日には内閣府、総務省、経済産業省、国土交通省では「政府による令和2年度のスマートシティ関連事業~共通リファレンスアーキテクチャを踏まえた一体的推進~」(総務省)を発表し、「全国各地のスマートシティ関連事業を推進するため、スマートシティ関連事業の募集」を行うとしている。

 現下の重要課題である新型コロナウイルスにより、人々の移動の意味や社会的距離などについても新たに問われる点であり、スマートシティのような構想の上で解決できる、あるいはしなければならない課題は当初のコンセプト段階からより明確なものになっていくだろう。そうした意味においては、この日本を代表する両社による成果が次の社会基盤を作る上においては大いに期待されるところである。

ニュースソース

  • NTTとトヨタ自動車がスマートシティ構想で資本業務提携を締結、相互に2000億円を出資[ケータイWatch
  • トヨタとNTTが資本業務提携、スマートシティで連携へ――「未来をもっと良くしたい」[ケータイWatch
  • 政府による令和2年度のスマートシティ関連事業[総務省

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。