中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/6/18~6/25]

接触確認アプリ「COCOA」、リリース後6日で434万件のダウンロード ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 接触確認アプリ「COCOA」、リリース後6日で434万件のダウンロード

 接触確認アプリ「COCOA」は予定通り、6月19日にリリースされた(ケータイWatch)。また、6日後の25日の午後5時時点で434万件のダウンロードになったと発表した(ケータイWatch)。

 リリース後、インストールしようとしてもアプリストアでこのアプリを検索できないという事象も報告されていたが、時間経過とともにこうした問題が解決され、さらにメディアでも盛んに取り上げられたことから、順調にインストールが進んだようだ。当初言われていたように「人口の6割がインストールする」ことで、感染の拡大を早期に検知できるという効果が期待できるとしていることを考えると、アプリのインストール数はまだまだ少ないとみるべきか。ただし、日本全国でのインストール数ではなく、日々感染事例が報告されている首都圏、とりわけ東京だけでも一定比率でのインストールがされることでも意味はあると考えられ、これが最初に目指すべき目標ともいえるだろう。

 一方で、この接触確認アプリの不具合も報告された(ITmedia)。現在、その不具合は修正中で、間もなくアップデートされるとみられる。技術者コミュニティが開発を主導したことが知られてはいるが、このアプリは国がリリースしたものあること、さらには課題に対する国民的な関心も高いこと、何よりもアプリによるプライバシー問題に対するモヤモヤとした懸念も解消されないなかでのリリースということもあり、その品質には通常のアプリ以上に厳しい目が向けられることは致し方ない。ただ、開発したコミュニティとリリースした国との責任分界点も微妙に見える。かつ最終的なアプリの責任があるとみられる国から、このアプリについて十分に説明が行われていないようにも感じられることが、開発に参加した技術者個人を批判の矢面に立たせてしまうことになっているのではないだろうか。

 海外に目を移すと、ドイツ、英国でも同様なアプリが用意されている。ドイツではリリース後1日で650万件ダウンロードされ(CNET Japan)、英国では独自路線からアップルとグーグルのAPIを利用する方向へと転換をしたと報じられている(ITmedia)。

ニュースソース

  • 「接触確認アプリをダウンロードして」。安倍首相が呼びかけ[Impress Watch
  • 厚労省の接触確認アプリ「COCOA」、Android版がリリース[ケータイWatch
  • 厚労省の接触確認アプリ「COCOA」、ダウンロードは約434万件に[ケータイWatch
  • 接触確認アプリ、19日15時頃リリース[ケータイWatch
  • 開発コミュニティー破綻? 接触確認アプリの問題点と批判の在り方で激論[ITmedia
  • ドイツの新型コロナ接触通知アプリ、公開後1日で650万ダウンロード達成[CNET Japan
  • 英国もコロナ追跡アプリでAppleとGoogleのAPI採用に方向転換「Appleがシステムを変更しないので」[ITmedia

2. 日本のスパコン「富岳」が世界ランキング1位

 スパコン世界ランキングを発表しているTOP500において、富士通と理化学研究所が開発した国産スパコンの「富岳」が1位になった(PC Watch)。

 また、開発した理化学研究所は、富岳を使った新型コロナウイルス感染症の研究成果として「空いている電車はオフィスより換気が効いている」「(感染拡大の対策に)『接触確認アプリ』は有効」とする研究成果を発表した(ITmedia)。

 いま、まさに新型コロナウイルスへの対策をするために、創薬などをはじめとするさまざまな分野において高性能な計算資源の利用が期待されている。国際的な大規模感染症の拡大という難局において、こうしたスーパーコンピューターという最新鋭の道具を利用することで、1日も早い問題の解決という成果へとつながっていってほしい。

ニュースソース

  • スパコン「富岳」で感染症の広がり、通勤電車内の気流をシミュレーション 理研らが研究成果を公開[ITmedia
  • 日本の「富岳」がスパコン世界ランキング1位[PC Watch

3. テレワークへの取り組み状況と課題、SNSでの新型コロナウイルスに関する情報認識――政府発表

 内閣府はインターネットで全国1万128人に意識や行動の変化を聞いた調査結果を公表した(ITmedia)。それによると、「新型コロナウイルス感染症の影響で全国の3割以上の人がテレワークを行い、実施者のうち、仕事より生活重視に意識が変化した人が約6割、地方移住に関心が高まった人が約2割となるといった変化がみられた」という。さらに、テレワークによって「仕事より生活重視に変化した」という人、「地方移住への関心が高まった」という人も目立つ一方で、「社内の意思決定の仕方の改善」や「書類のやり取りの電子化」を課題として上がっている。さらに、回答者全体の47.7%が「生産性が減少した」と回答している。

 これまでも複数の調査会社や業界団体が類似のアンケートを実施してきているが、それぞれ調査方法や母集団によってかなり結果が異なるように見受けられる。これは回答者の意識が多様化しているということでもあり、業種、職種、業務内容、ITスキル、そして自宅環境なども考慮した分析も必要だろう。

 また、総務省は「新型コロナウイルス感染症に関連して間違った情報や誤解を招く情報が拡散している」として、その情報流通の実態把握をするために、インターネットユーザーに対してアンケート調査を実施し、その結果を公表した(ITmedia)。それによると、主にSNS、ブログ、まとめサイトなどで「新型コロナウイルス感染症について、間違った情報や誤解を招く情報を見たことがある」という認識をしている人が多く見られるという。

 この調査結果から、総務省では「SNSは、新型コロナウイルスに関する情報流通全般の対応についての評価が低いことから、信頼度を高める工夫や、透明性を高める工夫、ファクトチェック結果を届ける工夫などを行っていくことが期待される」「若い年代ほど間違った情報や誤解を招く情報を信じてしまった割合や拡散してしまった割合が高くなる傾向が見られたことから、特に若い年代に対してリテラシー向上の取組を充実させていくことが必要である」とまとめている(総務省)。

ニュースソース

  • 新型コロナでテレワーク3割超実施、23区内は5割越す 内閣府初調査[ITmedia
  • 「新型コロナに関する誤情報、見たことある」7割、ソースはTwitterやまとめサイト 総務省がネットユーザーに調査[ITmedia
  • 「新型コロナウイルス感染症に関する情報流通調査 報告書」[総務省

4. 各種免許証や証明書に電子化の動き

 政府の「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」では、マイナンバーカードを各種の免許証、証明書などしても利用できる制度改革の検討を始めている。2021年3月からは健康保険証として利用できるようになる予定になっているが、さらに運転免許証、国家資格証、外国人の在留カードなどにも適用することが検討されるようだ(Engadget日本版)。利便性を高めることで、マイナンバーカードの保有者を増やすことと、事務効率の向上を狙ってのことだろう。ただし、情報の利用環境の整備や運用の課題などの技術的、経済的な問題も検討しないとカードだけができただけで、またまた普及せずに終わる可能性も否定できない。

 また、国土交通省では「自動車の検査・登録手続について、運輸支局等への来訪を不要とし、オンラインで完結した申請を可能とする」ためとして、「自動車検査証の電子化に関する検討会」からの報告書を公表した(国土交通省)。こちらも今後の検討が進むものと思われる。

 そして、パスポートや運転免許証といった身分証明書をスマートフォンで実現することを目指す国際標準規格の審議がISO(国際標準化機構)とIEC(国際電気標準会議)が設立した合同専門委員会で始まると報じられている(ITmedia)。これは日本が提案している仕様だという。国際標準化組織で標準化されたとしても、すぐに国内外で普及するかどうかはまた別の問題ではあるが、長期的な観点では、現在の物理的な証明書は、いずれこうした電子的なものに置き換えられていく方向にはあるのだろう。

ニュースソース

  • 「スマホで身分証明」規格案、国際審議始まる 22年の標準化目指す[ITmedia
  • 車検証を紙から電子へ!~「自動車検査証の電子化に関する検討会」報告書とりまとめ~[国土交通省
  • 政府がマイナンバーカードと免許証の一体化を検討。国家資格証のデジタル化も視野に[Engadget日本版

5. アップルが「WWDC2020」で発表したことのまとめ

 6月22日、アップル社はデベロッパーコンファレンスである「WWDC2020」をオンラインで開催し、多くの発表を行った。中でも注目すべきはデスクトップ型、ノート型の製品であるMacに採用しているプロセッサをインテル製から、ARMアーキテクチャの自社設計プロセッサへと移行するという点だ(Engadget日本版)。プロセッサという大掛かりな変更により、電力効率(消費電力あたりの演算性能)と、より高いグラフィック性能が期待できるとしている。また、秋にリリースが予定されている次期オペレーティングシステムも発表されている。これらにより、Mac、iPhone、iPadなどの製品間において、技術的な一貫性が高まるものとみられる。

 さらに、Apple Watchには睡眠追跡機能(Engadget日本版)や手洗い時間タイマー機能(Engadget日本版)が付加された。ウェラブルデバイスのヘルスケア向け機能の向上とともに、「手洗いタイマー」は新型コロナウイルス感染症の予防を狙った機能か。今後は「新しい日常」を前提とし、そこでの生活をサポートするデバイス、機能、アプリがちょっとしたブームとなるのかもしれない。

ニュースソース

  • AirPods Proが立体音響対応、7.1chやAtmosまで仮想サラウンド化。頭の動きに追従[Engadget日本版
  • Apple Watchに手洗い時間タイマー機能。水の音と手の動き検知[Engadget日本版
  • Apple Watchに睡眠追跡機能が追加。睡眠の質をインテリジェントに分析[Engadget日本版
  • iOS 14が正式発表。「Appライブラリ」やホーム画面にウィジェットなど新機能多数[Engadget日本版
  • iOS 14ではスマートホームも身近に。新ホームアプリで家中まとめてコントロール。玄関カメラは顔認識も[Engadget日本版
  • iOS 14でプライバシーはさらに強化。「大まかな位置情報」や「マイク動作中の表示」など[Engadget日本版
  • iOS 14でホーム画面ウィジェットが大幅強化。アプリと並べて表示可能に[Engadget日本版
  • iOS 14にアップル純正の翻訳アプリ。日本語含む11か国語を音声翻訳[Engadget日本版
  • iOS 14新機能「Appライブラリ」、大量のアプリを自動分類・素早く起動[Engadget日本版
  • iPhoneが車のキーになるCarKey発表。シェアも簡単に、2021年のBMW車に搭載[Engadget日本版
  • インストール不要で利用出来るApp Clips発表[Engadget日本版
  • 次期macOSは『Big Sur』に。基本画面やアイコンを再設計した「MacOS史上最大のリリース」[Engadget日本版
  • 速報:アップル、Macの独自チップ移行を正式発表。初のARM版Macは年内[Engadget日本版

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。