中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2020/6/25~7/2]

総務省が「Beyond 5G」(6G)に向けたロードマップを公表 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. アマゾンの次の一手――宇宙産業と自動運転

 米国アマゾンに新規事業への動きが見られた。1つは「クラウド部門Amazon Web Services(AWS)は米国時間6月30日、地球規模の航空宇宙産業と衛星産業を専門とする新しい事業部門を設置すると発表」したことである(CNET Japan)。米軍の宇宙軍創設を主導したとされる元米空軍少将のClint Crosier氏がその任にあたり、「宇宙システムのアーキテクチャーの増強と、地上や軌道上で宇宙のデータを処理する新サービスの立ち上げ」をするとしている。

 また、自動運転技術のスタートアップZooxを買収することで合意に至ったことも報じられている(CNET Japan)。Zoox社は「新しく完全自動運転向けに特別に設計された自動車」で、「前後の区別のない車両」を設計していると報じられている。

 自動運転は基幹事業であるECにおける配送や自動運転タクシーとしての利用か。また、宇宙事業は「プロジェクト・カイパー」といわれていた衛星通信網上での利用か。

ニュースソース

  • アマゾン、宇宙産業に取り組む新部門を設置[CNET Japan
  • アマゾン、自動運転のスタートアップZooxを買収へ[CNET Japan

2. スコアリングサービスの日本での定着は困難か? 「Yahoo!スコア」終了

 スコアリングサービスは個人の(主にインターネット上や経済的な活動などでの)行動などの履歴をもとにして、点数化し、個人の信用度を表そうというものだ。それを利用するサービスからは個々のスコアに応じた優待サービスなどが提供される。日本ではクレジットカードなどの支払い履歴によって、信用度を定量化していることは知られているが、それをさらに多様な行動履歴へと拡大し、従来の信用という概念を拡大して展開しようということでもある。これまで、LINE、ヤフー、Jスコアがその主要な事業者として報じられてきた。

 ここにきて、「Yahoo!スコア」の終了が発表された。終了の理由としては、「現在の状況を総合的に勘案した結果、お客様・パートナー企業にご満足いただける『Yahoo!スコア』サービスの提供に至らないと」判断したことだという。

 当初、プライバシーが含まれるデータの取り扱いについて、利用者らからの指摘があり、デフォルトでスコアが作成されなくなるように仕様を変更するという経緯もあった。利用者にとっては、日々の活動履歴から、より利便性が向上するなら、あるいは優良な顧客であることをアピールできるなら、こうしたスコアリングも価値があると考えた人もいるだろうが、やはりそれが知らず知らずに定量化されて評価につながるということには、多くの利用者からの理解は得られなかったということか。

ニュースソース

  • Yahoo! スコア終了。「満足いただけるサービス提供に至らない」[Impress Watch

3. 総務省が「Beyond 5G」(6G)に向けたロードマップを公表

 総務省は、5Gの次の世代にあたるインフラ技術「Beyond 5G」(いわゆる「6G」)の導入が見込まれてる2030年代における技術や政策の方向性などを取りまとめた「Beyond 5G推進戦略 -6Gへのロードマップ-」を公表した(ケータイWatch)。また、総務省は「Beyond 5G推進戦略懇談会」(座長:五神真東京大学総長)は提言案を公表した。ロードマップでは、5Gの特徴的な機能である「超高速・大容量」「超低遅延」「超多数同時接続」をさらに高度化し、「自律性」「拡張性」「超安全・信頼性」「超低消費電力」という4つの機能が必要だとしている。また、日本がグローバル市場でのBeyond 5Gの技術開発の一端を担う上において、「グローバル・ファースト」「イノベーションを生み出すエコシステムの構築」「リソースの集中的投入」という3つの基本方針を示している。

 そして、5G、そして次の世代の技術開発を後押しするためとし、「政府は国内の電機メーカーや通信会社などに対して700億円規模の支援を行う方針を固めた」(NHK)とも報じられている。

ニュースソース

  • 総務省、2030年代の「Beyond 5G」(6G)に向けたロードマップを公表[ケータイWatch
  • 「Beyond 5G推進戦略 −6Gへのロードマップ−」の公表[総務省
  • 2025年の万博でBeyond 5G/6Gを世界にアピール——総務省の提言案[ケータイWatch
  • 5Gなどの技術開発に700億円規模の支援へ 中国に対抗 政府[NHK

4. 進むオンライン上での誹謗中傷に対する対策

 SNSでの誹謗中傷が社会問題となっているなか、各所において対応が開始されているようだ。

 一般社団法人セーファーインターネット協会は「誹謗中傷ホットライン」での被害者からの相談の受付を開始した(INTERNET Watch)。NTTドコモは「ネットトラブルあんしんサポート」の「ネットトラブル電話相談」を7月1日~8月31日の期間で無償提供する(ケータイWatch)。

 そして、YouTuberのマネージメント事務所であるUUUMでは専属クリエイターを守るための「誹謗中傷および攻撃的投稿対策専門チーム」を設置したことを発表している(ITmedia)。記事によれば「誹謗中傷や著しい侮蔑、危害の予告などの攻撃的書き込みによる被害が深刻化している」とし、「従来から取り組んできた法的措置に加え、より『断固とした』対応を行うために専門チームを設置した」という。

 また、元大阪府知事の橋下徹氏がジャーナリストを相手取った訴訟において、大阪高裁が名誉毀損を認定し、「経緯や動機を問わず、リツイート主は投稿の責任を負う」と具体的に明示した(ITmedia/産経新聞)ことが報じられている。

 今後も各社によるSNSによる誹謗中傷への対策、そして社会的ルールの合意形成やその浸透が急速に進むものと思われる。

ニュースソース

  • 「誹謗中傷ホットライン」で相談受付開始、あなたの代わりに国内外のサイトへ削除依頼を申請 セーファーインターネット協会が運営[INTERNET Watch
  • ドコモ、SNSの誹謗中傷相談を無償提供、8月31日まで[ケータイWatch
  • UUUM、所属YouTuberへの誹謗中傷の通報窓口設置 専門チームで対策[ITmedia
  • その「リツイート」大丈夫? 削除済み、炎上なしでも名誉毀損に[ITmedia

5. イベントカレンダー:今秋のイベントも「オンライン開催」へ

 新型コロナウイルスの感染者が増加傾向にあるなか、今秋に予定されていた大型イベントのオンライン開催案が発表された。

 すでに「CEATEC 2020」のオンライン開催は決定はしていたが、今週、開催概要が発表された(INTERNET Watch)。開催期間は10月20日から23日の4日間で、12月31日までオンデマンド配信も行う。「ニューノーマルエリア」「企業エリア」「Co-Creation PARK」という3つのオンライン展示エリアと「コンファレンスエリア」「公式イベントエリア」の合計5つのオンラインエリアで構成されるとしている。ニューノーマル(新しい日常)を具現化する上でのデジタルテクノロジーの活用という意味で、各社の取り組みを知るよい機会になると思われる。

 また、メディア総合イベント「Inter BEE 2020(インタービー 2020)」もオンラインでの開催が発表されている(JEITA)。こちらも「アフターコロナ時代のニューノーマル社会における、メディアとエンターテインメント関連産業の取り組みや試みを総合的に発信するオンラインイベントとして実施」としていて、デジタルメディア産業での動向に注目してみていきたい。

 そして、グーグルは中止された「Google I/O」の代わりとなる「"Hey Google" Smart Home Summit」を7月8日(現地時間)開催するとしている(Engadget日本版)。これはスマートホーム関連の開発者イベントになるということだ。なんらかの新しい製品や協業なども発表される可能性もある。

ニュースソース

  • 「東京ゲームショウ2020」オンライン開催が正式決定[ケータイWatch
  • CEATEC 2020 ONLINEの開催概要を発表、「ニューノーマル社会と共に歩む CEATEC」目指す 「このような状況だからこそ、CEATECには果たすべき役割がある」[INTERNET Watch
  • Inter BEE 2020、オンラインでの開催を決定[JEITA
  • 「Hey Google」スマートホームサミット、7月8日にオンライン開催[Engadget日本版

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。