中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2020/9/3~9/10]
ドコモ利用者だけの問題ではない「ドコモ口座」事件 ほか
2020年9月11日 12:00
1. ドコモ利用者だけの問題ではない「ドコモ口座」事件
NTTドコモの電子マネーウォレットサービス「ドコモ口座」と紐付けられた銀行口座から不正に現金が引き出されるという事件が発生した(ケータイWatch)。
ドコモ口座とは、銀行口座から資金をドコモ口座に移動(チャージ=プリペイド)すると、その資金をドコモのQRコード決済d払いで利用できたり、ドコモ口座の間での送金ができたりするサービスだ。ドコモ口座はNTTドコモのモバイル通信サービスを利用していなくても(本人性が確認できていなくても)利用でき、かつメールアドレスだけで口座を開設できるということがこうした事件につながった原因の1つであったとみられる。また、銀行口座と紐付ける際にも、何らかの方法で銀行側の口座名義、口座番号、暗証番号が悪意のある人に知られ、それを利用されている可能性もある。具体的な一連の手法については断定されてはいないが、随所で本人性の確認が甘かったことがセキュリティホールとなった可能性が高い。今後、NTTドコモは本人性の確認をするためにeKYC(オンラインでの本人確認プロセス)を導入したり、SMSでの2段階認証を導入したりするなどの対策を発表している(ニュースリリース)。
本人性の確認が甘くなった理由について、NTTドコモのサービスを、同社の通信サービスの利用者だけにではなく、幅広いユーザーに提供をしていくことを念頭に置いた設計だったためとしている。申し込み途上での手続きからの離脱を防ぐために、その手順を簡略化したことが裏目に出た。とりわけ電子マネー、電子決済などは市場においてシェア争いが活発化していることも、セキュリティ面が甘くなった一因とみられる。このサービスに限らず、何らかのサービスのアカウントを作成するプロセスはできるだけ簡略化するのは提供者側の定石だが、サービスを提供する各社には顧客獲得数やシェアだけでなく、セキュリティ優先の発想を忘れないでいただきたい。とりわけ、今回はドコモ口座というサービスを知らない人でも、銀行口座が利用された可能性もあり、銀行の口座番号や暗証番号の管理もあらためて確認した方がいいだろう。
2. 「デジタル庁」などの創設を検討か――菅官房長官
安倍総理大臣の辞任表明を受け、自民党の新たな総裁選びが進んでいる。総裁選に立候補していて、最有力候補とされている菅義偉官房長官は7日の記者会見で「デジタル行政の一本化の必要性について『新型コロナウイルス(の感染拡大)を機にテレワークが広がるとともに、行政や民間の間でデジタル化の必要性があらためて明らかになった』」と述べたことが報じられている(ITmedia)。具体的には新たに「デジタル庁」の創設を検討しているとされているようだ。
コロナ禍のなか、行政もビジネスも、社会全体としてのデジタル化の遅れが指摘されてきているが、今後の総裁選の結果次第では、これまでよりもデジタル化政策がより推進されていくことになりそうだ。
ニュースソース
- デジタル行政一本化の必要性強調 菅官房長官、省庁再編に前向き[ITmedia]
3. 電通らが日本のメディアコンテンツ業界のDXを推進する企業連合コンソーシアムに加盟
株式会社電通、株式会社電通国際情報サービス(ISID)、エイベックス・テクノロジーズ株式会社、SingulaNet株式会社が「Japan Contents Blockchain Initiative(JCBI)」に加入したことが発表された(INTERNET Watch)。JCBIは日本のメディア、コンテンツ業界のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進することを目的とするコンソーシアムであり、株式会社博報堂、株式会社朝日新聞社など7社が加盟をしている。そして、ブロックチェーンシステムを基盤に、デジタルコンテンツを安全に管理するためのプラットフォームを運用することを目指すとしている。すでに、テレビ番組を通じてデジタルコンテンツを配布できるサービスである「Card Hunter」やデジタルコンテンツの著作権保護するサービス「C-Guardian」の2つが開発され、提供が開始されている。
こうして大手広告代理店、スタートアップ、システムインテグレーターらが集い、デジタルメディア、デジタルコンテンツ分野における知見を持ち寄り、技術の応用を各社が模索し、かつ相互に情報共有していくことによる市場の活性化に期待をしたい。
ニュースソース
- 電通など4社、博報堂ら共同運営のブロックチェーン活用を進める企業連合に加入 メディア・コンテンツ業界のDXを推進[INTERNET Watch]
4. 日本でもアップルウォッチの心電図機能がいよいよ提供開始? 医療機器としてついに承認される
アップル社のスマートウォッチ「アップルウォッチ」には心電図機能が実装されていたにもかかわらず、日本では医療機器としての承認がされていなかったことから、これまでは利用することができなかった。他のスマートウォッチでも、さまざまなバイタルを計測する機能が付加される流れとなっている。とりわけ、米国ではこの機能が人の命を救うきっかけになったことなどが報じられたこともあり、待ち望んでいた人も多かった。
そして、ついに先頃、アップルウォッチが医療機器として承認されたようだ(INTERNET Watch)。いつから利用できるのかということは分からないが、大きな一歩となったのは間違いなさそうだ。また、ややフライング気味ではあるが「アップルウォッチ外来」と称する診療科を開設した医院についても報じられている。主に、この機能を利用して、患者の状態を監視したり、治療の指標としたりすることになるとみられる。
さらに、米国時間9月15日(日本時間9月16日午前2時)にはアップル社の新製品発表イベントが行われることが確定した(ケータイWatch)。タイミングからすると新型スマートフォンの発表が主と思われるが、アップルウォッチについても何らかの発表が期待される。
ニュースソース
- Apple Watchの心電図機能、医療機器としてついに承認。「アップルウォッチ外来」を発表する医院も[INTERNET Watch]
- アップル、9月15日にイベント開催[ケータイWatch]
5. ガートナージャパン、日本における未来志向型インフラテクノロジーの「ハイプサイクル」2020年版を発表
先頃、米国ガートナー社は「テクノロジーハイプサイクル2020」という最新のテクノロジートレンドの動向を発表した(Business Network)。今週、ガートナージャパン社は「日本における未来志向型インフラ・テクノロジのハイプ・サイクル:2020年」を発表した。テクノロジーハイプサイクルとは、さまざまなテクノロジーが黎明期から安定期に入るまでどのような段階にあるのかを可視化したチャートであり、ビジネスリーダーによって参照されている資料だ。
今回発表されているハイプサイクルは日本におけるインフラ技術に絞ったものだ。それによると「5G」が「過度な期待」のピーク期に位置し、一部でのインフラが整備され、端末が発売されつつあるなか、5Gならではのサービスの実装など、実現の困難にぶつかる直前に位置するとしている。また、昨年来、このチャートに登場していた「モノのインターネット」「量子コンピュータ」「DevOps」「人工知能」「スマートロボット」「ブロックチェーン」「拡張現実(AR)」は、「過度な期待」を過ぎ、実装にあたっての現実の困難に直面をする「幻滅期」にあるとされる。
ニュースソース
- 「5Gは過度な期待のピーク期」 ガートナーがインフラ技術のハイプ・サイクルを発表[Business Network]